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社内ネットワークの保守で決めておく5つの範囲|社内と外部の分担
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 社内ネットワークの保守は、ルーター・UTM・スイッチ・無線LANを止めずに使い続けるための点検と更新と修理の仕事です。
- 保守は構成の把握、ファームウェアの更新、設定と権限、ログ、障害時の対応の5つの範囲に分けて担当を決めます。
- 何を守りどこまで止めるかの判断は社内に残し、機器の作業は外部に頼み、責任と対策は契約書に明記します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
スイッチの調子が悪いと言われても、どこに連絡すればよいか分からない。UTMの保守契約がいつ切れるのか、誰も把握していない——。社内ネットワークの機器を、総務や情報システムの担当者が兼務で見ている会社では、こうした食い違いが起こりがちです。社内ネットワークの保守とは、スイッチ・ルーター・無線LAN・UTMといった機器を、止めずに使い続けるための点検・更新・修理の仕事を指します。
機器は一度つなげば動き続けるため、保守の範囲を決めないまま年月が過ぎやすい分野です。ただし万能な任せ方はなく、すべてを外部に頼めば済むわけでもありません。本記事では、社内ネットワークの担当を任された方に向けて、保守の対象となる機器、決めておく5つの範囲、社内と外部の分担、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
社内ネットワークの保守とは
保守の対象は、社内のパソコンやサーバーをつなぎ、インターネットとの出入り口を守る機器です。中心になるのは次の4種類です。
- ルーター:社内のネットワークとインターネットをつなぐ機器。社外から社内へ暗号化してつなぐVPNの機能を持つものもあります
- UTM(統合脅威管理):ファイアウォールや不正な侵入の検知、メールやURLのフィルタリングなど、複数の守りの機能を1台にまとめた機器です*1
- スイッチ:フロアのパソコンやプリンタ、無線LANの親機を束ねて、社内の通信を中継する機器
- 無線LANのアクセスポイント:パソコンやスマートフォンを電波でつなぐ親機
図のように、機器は1本の道でつながっています。途中の1台が止まると、その先の機器もまとめて使えなくなるため、保守は機器ごとではなく構成全体で考えます。IPA(情報処理推進機構)の中小企業向けガイドラインも、拠点ごとのネットワークについて構成機器と保守事業者の情報を整理し、ネットワーク図(構成図)を作って、構成を変えるたびに更新するよう勧めています。*1
保守で決めておく5つの範囲
公的機関の資料が求めている対策を並べると、次の5つの範囲に整理できます。範囲ごとに、誰がいつ行うかを決めておくと、抜け漏れが見えるようになります。

| 範囲 | 中身 | もとにした資料 |
|---|---|---|
| 1. 機器と構成の把握 | 機器の一覧、保守事業者の連絡先、ネットワーク図を最新に保つ | IPAのガイドライン |
| 2. ファームウェアの更新 | 機器を動かすソフト(ファームウェア)を更新し、サポートのある機器を使う | IPAのガイドライン・総務省のサイト |
| 3. 設定と管理者権限 | 設定を変えられる人を最小限にし、管理画面に入れる経路を絞る | 総務省のテレワークセキュリティガイドライン |
| 4. ログの取得と保管 | 通信の記録を機器とは別の場所に保管し、機器の時刻をそろえる | 総務省のサイト |
| 5. 障害時の対応 | 故障の切り分け、機器の交換、復旧の手順と連絡先を決めておく | IPAのガイドライン |
見落としやすいのが2番目のファームウェアです。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」は、止められないという理由で更新を先延ばしにしたサーバーが攻撃を受けると、長い業務停止につながるおそれがあるとして、安易な先延ばしをしないよう求めています。*3 ネットワーク機器でも、更新の時間帯と止まる範囲をあらかじめ社内で合意しておくと、先延ばしを防ぎやすくなります。
3番目の権限について、総務省のテレワークセキュリティガイドラインは、VPN機器などの管理者権限を業務上必要な最小限の人だけに与え、IPアドレスの制限などでアクセスの経路も限るよう求めています。*2 4番目のログについて、総務省のサイトは、ファイアウォールを通った通信や拒否した通信の記録を例に挙げ、ログを機器の中ではなく別の管理の仕組みに保管すること、NTP(機器の時刻を合わせる仕組み)で時刻をそろえることを勧めています。*5
社内と外部の分担
5つの範囲は、すべてを社内で抱える必要はありませんが、外部に頼めないこともあります。分け方の目安は、何を守り、どこまで止めてよいかを決める仕事は社内に残し、機器に触る作業や専門的な調べものは外部に頼む、という線引きです。
| 範囲 | 社内で持つこと | 外部に頼みやすいこと |
|---|---|---|
| 機器と構成の把握 | 一覧と構成図の保管場所を決め、最新版を受け取る | 構成図の作成と、変更のたびの更新 |
| ファームウェアの更新 | 作業してよい時間帯と止まる範囲の承認 | 更新情報の確認、事前の検証、作業、切り戻し |
| 設定と管理者権限 | 管理者のパスワードを誰が持つかの決定 | 設定の変更作業と、変更前後の設定の控えの保存 |
| ログの取得と保管 | 保存する期間と、誰が見てよいかの決定 | ログを集める仕組みづくりと定期的な確認 |
| 障害時の対応 | 社内の連絡窓口と、業務を止めるかどうかの判断 | 故障の切り分け、機器の交換、復旧の作業 |
表の左の列は、作業を外部に頼んでも最後は社内に残る判断です。IPAのガイドラインは、委託する場合、委託先でも自社と同等の対策が行われるよう、契約書に情報セキュリティに関する委託先の責任や実施すべき対策を明記し、合意する必要があるとしています。*1 機器の監視の仕組みはLibreNMSとObserviumの違い、構成の管理はNetBoxでネットワーク構成管理を外注構築で扱っています。
放置しやすい点
範囲を決めていても、手が止まりやすい場面があります。総務省のテレワークセキュリティガイドライン(第5版)は、2020年8月にVPN機器のIDやパスワードが流出し、日本でも40社近くの企業などが不正アクセスを受けた事例を紹介しています。*2 メーカーはファームウェアの修正を出していましたが、更新していない機器が攻撃を受けました。
- 使っていない機器の再利用:同じガイドラインは、運用から外していたVPN機器を臨時で動かしたところ、残っていた弱点を突かれた例も挙げています*2
- サポートが切れた機器:IPAのガイドラインは、サポートのあるOS・ソフトウェア・ネットワーク機器を使うことを対策の例に挙げています*1
- 管理者のパスワード:初期の値のまま、または退職した担当者だけが知っている状態だと、設定を変えたいときに手が出せません
- 古い構成図:機器や配線を足したのに図を直していないと、障害のときに切り分けに時間がかかります
どれも、ふだんは機器が動いているために気づきにくい点です。年に1回でも、機器の一覧とサポート期限、管理者パスワードの持ち主、構成図の日付を見直しておくと、放置に早く気づけます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
社内ネットワークの保守を外部に頼むときは、金額より先に、どの範囲をどこまで任せるかを確かめます。見積もりの前に、次の点をすり合わせておきます。

- 対象の機器:ルーター・UTM・スイッチ・無線LANのうち、どれを何台含めるか。メーカーとの保守契約と重なっていないか
- ファームウェアの更新:更新情報を誰が確認し、どの頻度で作業するか。作業前の検証と切り戻しの手順があるか
- 障害時の対応:連絡を受け付ける時間帯、現地に来るか遠隔で対応するか、交換用の機器を誰が用意するか
- 記録の受け渡し:構成図・設定の控え・作業の記録を、いつ、どの形で社内に渡してもらえるか
- 運用後の見直し:機器の入れ替えの時期やサポート期限を、定期的に報告してもらえるか
特に記録の受け渡しは、契約を見直すときに効いてきます。構成図や設定の控えが保守会社の手元にしか無いと、別の会社へ切り替えるときに一から調べ直すことになります。保守と運用の仕事の違いは保守と運用の違いで整理しています。
まとめ:社内ネットワークの保守で確かめておきたい3つの点
社内ネットワークの保守を外部と分担するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、機器の一覧と構成図を最新に保ち、保守事業者の連絡先とあわせて社内に置くこと。第二に、ファームウェアの更新・設定と権限・ログ・障害時の対応について、社内で決めることと外部に頼む作業を分けること。第三に、委託するときは責任と対策を契約書に書き、記録を社内で受け取る形にすることです。この3点を踏まえておけば、「障害が起きてから、誰に何を頼んでいたのか分からない」という事態を避けやすくなります。範囲の決め方や分担に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
メーカーの保守契約があれば、ほかの保守は要りませんか
メーカーの保守契約で何が含まれるかは、契約ごとに異なります。故障した機器の交換だけなのか、ファームウェアの更新や設定の変更まで含むのかを契約書で確かめ、含まれない範囲を社内か別の保守会社で受け持ちます。
保守を頼む会社に管理者パスワードを渡してもよいですか
作業に必要なら渡しますが、渡す相手と期間を決めておきます。総務省のテレワークセキュリティガイドラインは、VPN機器などの管理者権限を業務上必要な最小限の人に限るよう求めています。*2 総務省のサイトも、人員構成が変わったときにアクセス権を見直すよう勧めています。*4 契約を終えるときや担当者が替わるときは、パスワードを変えておきます。
機器が数台の小さな会社でもネットワーク図は必要ですか
台数が少なくても、作っておくと障害のときに役立ちます。IPAのガイドラインは、ネットワーク図を作って版を管理し、構成を変えるたびに更新するよう勧めています。*1
社内ネットワークの保守のご相談
ルーター・UTM・スイッチ・無線LANの保守範囲の整理から、ファームウェアの更新や障害時の対応まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html)。出典:資産管理(構成機器や保守事業者の情報の整理、ネットワーク図の作成と更新)、委託先の責任と対策の契約書への明記、サポートのあるネットワーク機器の利用、UTMの説明を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000752925.pdf)。出典:VPN機器などの管理者権限の最小化とアクセス経路の限定(管理者D-3)、VPN機器の脆弱性の放置の事例を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」ソフトウェアの最新化・脆弱性管理(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/admin/03/)。出典:更新の安易な先延ばしをしないことについての記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」アクセス制御・管理(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/admin/11/)。出典:社内ネットワークでの最小限の権限付与と、人員構成の変更時のアクセス権の見直しを参照(2026年10月確認)
- *5 参考:総務省「国民のためのサイバーセキュリティサイト」監査ログの管理(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/security/business/admin/12/)。出典:監査ログの例、ログの別保管、NTPによる時刻同期の記述を参照(2026年10月確認)