LASSIC Media らしくメディア
RHEL 7の延長サポートの選び方|延命か移行かの判断基準と費用
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- RHEL 7の延長サポート(ELS)は、RHEL 7.9を対象に2029年5月31日まで重要な脆弱性の修正を受けられる追加契約です。
- ELSは移行の代わりではなく、移行を終えるまでの時間を買う仕組みです。
- 延命か移行かはサーバーごとに決め、延命したサーバーにも期限より前の移行の日程を引くことが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
RHEL 7のサーバーがまだ社内で動いている。サポートが切れたと聞いたが、延長サポートを買えば当面は困らないのか、それとも急いで移行すべきなのか——。業務システムの土台にRHEL 7を使ってきた会社では、こうした迷いが起こりがちです。RHEL 7の延長サポートは、Red Hatが標準の10年間のサポートを終えたRHEL 7向けに用意している有料の追加契約で、正式にはELS(Extended Life Cycle Support)と呼ばれます。
ELSを買えば、重要度の高い脆弱性の修正を受けながら移行の時間を稼げます。ただし万能ではなく、期限があり、対象となる版や契約にも条件があります。本記事では、RHEL 7を運用している情報システムの担当者に向けて、ELSの内容と条件、買わない場合や移行との違い、延命か移行かの決め方、費用の考え方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
RHEL 7の延長サポートとは
Red HatはRHELのメジャーリリースごとに10年間のライフサイクルを設けていて、RHEL 7の標準のサポートは2024年6月30日に終わりました。*1 その後も使い続ける会社に向けた延長サポートがELSです。RHEL 7向けには2024年7月1日から始まる特別な延長期間が設けられ、その終わりは2029年5月31日まで延びています。*2
- 対象はRHEL 7の最後の版であるRHEL 7.9だけで、それより古い版のままでは使えません*1
- 受けられるのは、Red Hatが「重要」「重大」と評価した脆弱性(セキュリティ上の弱点)の修正、緊急度の高い一部の不具合修正、問い合わせへの対応です*1
- 申し込めるのは、RHEL Serverの Standard または Premium のサブスクリプション(年単位の利用契約)だけです*3
- 対応するサーバーは、x86(64ビットのみ)とIBM Zです*3
Red Hat自身も、ELSで猶予は得られるものの、新しい版へ早めに移ることを強く勧めています。RHEL 7の延長サポートは移行の代わりではなく、移行を終えるまでの時間を買う仕組みです。
買わない場合や移行との違い
RHEL 7のサーバーについて取れる道は、大きく3つです。延長サポートを買わずにそのまま使う、ELSを買って延命する、RHEL 8や9へ移る、の3つで、受けられる修正と後に残る作業がそれぞれ違います。

| 選択肢 | 受けられる修正 | 期限 | 後に残る作業 |
|---|---|---|---|
| ELSを買わずに使い続ける | 過去に出た修正や文書は見られるが、新しい修正は出ない*4 | なし(修正は止まったまま) | 脆弱性が見つかっても、塞ぐ手立てを自社で考える |
| ELSを買って延命する | 重要・重大の脆弱性の修正と一部の不具合修正 | 2029年5月31日まで | 期限までに移行を終える |
| RHEL 8・9へ移行する | 移行先の版の通常のサポート | 移行先の版のライフサイクルに従う | 移行の作業とアプリの動作確認 |
表で見落としやすいのは「後に残る作業」の列です。ELSを買っても移行の作業は無くならず、先に送られるだけです。一方で、ELSを買わずに使い続けると、修正が出ないサーバーを動かし続けることになります。インターネットに面したサーバーや、個人情報を扱うサーバーでは選びにくい道です。CentOS 7から移る場合の選択肢はCentOS 7終了後のLinux移行で扱っています。
延命か移行かの決め方
延命か移行かは、サーバーを1台ずつ見て決めます。全部をまとめて決めると、すぐに移せるサーバーにまでELSの費用を払うことになりがちです。次の4つの段階で進めると、判断の材料がそろいます。
- ステップ1:RHEL 7のサーバーを洗い出し、版が7.9か、どの契約で使っているかを確かめる
- ステップ2:サーバーごとに、動いているアプリと、そのアプリがRHEL 8や9で動くかを調べる
- ステップ3:すぐに移せるものは移行、アプリの改修や機器の入れ替えを待つものはELSで延命、と振り分ける
- ステップ4:延命したサーバーにも、2029年5月31日より前に終わる移行の日程を引く
ステップ2では、アプリを作った会社やパッケージの提供元に、新しい版での動作を確かめます。Red Hatは、サーバーを入れ替えずに版を上げるインプレース・アップグレードのツールを用意しています。*1 そのツールであるLeappについては、本番の前に同じ構成の試験環境で試し、バックアップを手元に置いておくよう案内しています。*5 試験環境で通らないサーバーは、新しいサーバーを作ってアプリを載せ替えるか、延命するかを検討します。
延長サポートの費用の考え方
RHEL 7の延長サポートの費用を考えるときは、ELSの料金だけを見ないことが大切です。延命を選んでも移行の費用はいずれかかるため、比べるのは「ELSの料金と後で払う移行費用の合計」と「いま払う移行費用」です。
- ELSは追加の契約で、もとのRHELのサブスクリプションとは別に費用がかかります
- 延長期間が始まった後に申し込むと、契約の開始日は2024年6月30日までさかのぼります*3
- 移行の費用は、アプリの動作確認、新旧のサーバーを並べて動かす期間、移行後の監視の設定などで膨らみます
- 延命する期間が長いほど、古い版の中身を知る担当者の異動や退職で、移行の調査に手間がかかりやすくなります
ELSの料金は台数や契約の種類で変わるため、Red Hatか販売店に見積もりを取って比べます。契約の開始日がさかのぼる決まりは、申し込みの時期によって見積もりの金額を左右するので、最初に確かめておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
RHEL 7のサーバーは長く動いてきた分、中身を把握している人が社内に残っていないこともあります。移行や延命の判断を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- どこまで頼むか:サーバーの洗い出し、アプリの動作確認、移行の作業、移行後の運用のうち、どれを任せるか
- 振り分けの根拠:延命と移行を分けた理由を、サーバーごとの一覧で受け取れるか
- 試験の方法:本番と同じ構成の試験環境で確かめるか。うまくいかないときに元へ戻す手順を用意するか
- ELSの手配:延命するサーバーの台数と契約の種類を、誰が確かめて申し込むか
- 移行後の運用:移行先の版のサポート期限と、次の更新の時期まで見通した計画になっているか
特に振り分けの根拠は、後で食い違いが起きやすい点です。延命したサーバーの移行が期限の直前に集まると、試験の時間が足りなくなります。延命したサーバーの移行の日程まで見積もりに含まれるかを確かめておくと、計画が崩れにくくなります。
まとめ:RHEL 7の延長サポートで確かめておきたい3つの点
RHEL 7の延長サポートを検討するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、ELSの対象がRHEL 7.9とStandard・Premiumの契約に限られ、期限が2029年5月31日であること。第二に、ELSは移行の代わりではなく、移行を終えるまでの時間を買う仕組みであること。第三に、延命か移行かをサーバーごとに決め、延命したサーバーにも移行の日程を引くことです。この3点を踏まえておけば、「ELSを買ったまま移行を後回しにして、期限の直前に間に合わなくなった」という事態を避けやすくなります。移行の計画や作業の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
RHEL 7.9より古い版のサーバーでもELSを申し込めますか
ELSの対象はRHEL 7.9です。*1 古い版のサーバーは、まず7.9へ上げてから申し込む形になります。版を上げるとアプリの動きが変わることもあるため、試験環境で確かめてから本番のサーバーに当てます。
移行先はRHEL 8とRHEL 9のどちらがよいですか
RHELはどの版も10年間のライフサイクルで、新しい版ほど長く使えます。*6 RHEL 8の最後の版の延長は、ELCP(Extended Life Cycle Premium)という別の追加契約に切り替わると案内されています。*6 アプリがRHEL 9で動くなら、次の移行までの期間を長く取れるRHEL 9を候補にするとよいでしょう。
クラウド上のRHEL 7でもELSは使えますか
AWS、Azure、Google Cloudの上で動くRHEL 7でも、ELSを利用できると案内されています。*4 申し込みの方法はクラウドごとに違うため、利用中のクラウドの窓口とRed Hatの案内の両方で確かめます。
RHEL 7の移行と延長サポートのご相談
RHEL 7のサーバーの洗い出しから、延命と移行の振り分け、RHEL 8・9への移行の作業、移行後の運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:Red Hat「Red Hat Enterprise Linux 7 について最長 4 年間の延長ライフサイクルサポート (ELS) を発表」(Red Hat Blog)(https://www.redhat.com/ja/blog/announcing-4-years-extended-life-cycle-support-els-red-hat-enterprise-linux-7)。出典:10年間のライフサイクルと2024年6月30日の終了、2024年7月1日からのELS、RHEL 7.9が条件であること、重要・重大のCVEの修正、アドオンの契約であること、新しい版への移行の推奨、インプレース・アップグレードのツールの記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Red Hat「Announcing up to 4 years of Extended Life Cycle Support (ELS) for Red Hat Enterprise Linux 7」(Red Hat Blog・英語版)(https://www.redhat.com/en/blog/announcing-4-years-extended-life-cycle-support-els-red-hat-enterprise-linux-7)。出典:RHEL 7のELSが1年延び、2029年5月31日に終わるとの追記を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:Red Hat カスタマーポータル「Legacy Extended Support Offerings」(https://access.redhat.com/ja/support/policy/updates/errata_legacy)。出典:RHEL 7 ELSの対象アーキテクチャ(IBM Z・x86の64ビット)、Standard・Premiumのサブスクリプションのみが対象であること、2024年6月30日より後に購入した場合の契約開始日のさかのぼりの記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Red Hat「Red Hat Enterprise Linux Extended Life Cycle Support (ELS) アドオン」(データシート)(https://www.redhat.com/ja/resources/els-datasheet)。出典:延長ライフフェーズでは既定で修正が提供されないこと、パブリッククラウド(AWS・Azure・Google Cloud)でのRHEL 7のELSの記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:Red Hat「Upgrading from RHEL 7 to RHEL 8 with Leapp and BOOM」(Red Hat Blog)(https://www.redhat.com/en/blog/upgrading-rhel-7-rhel-8-leapp-and-boom)。出典:Leappがインプレース・アップグレードを助けるツールであること、本番の前に試験環境で試しバックアップを用意するよう勧める記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Red Hat カスタマーポータル「Red Hat Enterprise Linux のライフサイクル」(https://access.redhat.com/ja/support/policy/updates/errata)。出典:3つの運用フェーズからなる10年間のライフサイクル、RHEL 8.10以降はELCPがELSに代わるとの記述を参照(2026年10月確認)