LASSIC Media らしくメディア

2026.10.30 採用支援コラム

業務委託の指揮命令はどこまで許されるかの判断基準|5つの場面

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

発注側のマネージャーの肩越しに少し離れた席で顔を上げる外部エンジニアを見る

この記事の結論

  • 成果物・納期・仕様・優先順位は伝えてよく、作業の順序・時間・場所・残業の指示は受注側の責任者を通します。
  • チャットに全員が入っても対等な情報共有なら問題になりにくく、本人への直接の作業指示や即答の要求は避けます。
  • 個人のエンジニアには断れる依頼として相談し、日々細かく指示したい仕事は派遣か雇用で迎えることを考えます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

業務委託で来てもらったエンジニアに、チャットで「先にこっちをお願いします」と送ってよいのか。会議に合わせて朝の時間をそろえてもらうのは指示に当たるのか。納期が迫ったときに残業を頼んでよいのか——現場では毎日のように迷います。

本記事は、業務委託のエンジニアを受け入れる開発マネージャーや情報システム部門の方に向けて、作業の順序・時間・場所・チャットの即答・残業の5つの場面で、何を言ってよく何を避けるかを判断フローと表で示します。根拠は厚生労働省の37号告示と疑義応答集、ガイド、労働基準法研究会報告で言える範囲にとどめます。

業務委託で指揮命令が問題になる理由

業務委託のエンジニアに作るものや納期を伝えるのは当然ですが、作業の進め方や働く時間まで発注側が直接決めると、契約の名前と実態がずれます。業務委託で指揮命令がどこまで許されるかは、契約の相手によって見られる基準が分かれます。

  • 会社に雇われた技術者(受注側の会社と契約):37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)で、受注側が自分の労働者への作業の指示や時間の管理を自ら行っているかを見る
  • 個人のエンジニア(本人と直接契約):労働基準法研究会報告で、仕事の進め方への指揮命令や、勤務場所と勤務時間の拘束などから、労働者に当たるかを見る

疑義応答集(第3集)は、準委任契約でも、実態として発注者と受注側の労働者の間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たるとしています。*2 ただし、話すこと自体が問題なのではありません。疑義応答集(第1集)は、業務に関係のない日常的な会話は指揮命令に当たらないとしています。*3 問われるのは、何を誰が決めているかです。

偽装請負と判断されたときのリスクは「システム開発の偽装請負リスクと回避策」、個人との契約が雇用に近づかないかは「業務委託か雇用かの判断基準」で扱っています。本記事は、日々の場面で何を言ってよいかに絞ります。

指示する前に確かめる判断フロー

エンジニアに何かを伝える前に、次の4つの問いを上から順に確かめます。右に外れたところが、その伝え方の行き先です。図は一次情報をもとにした本記事の整理です。

業務委託のエンジニアに伝える前に確かめる4つの問いの判断フロー。問1 契約で決めた範囲の中の話か。いいえなら契約を変える(受注側と協議)。問2 作業の順序・時間・場所・残業に触れるか。いいえ(成果物・納期・仕様・優先順位の話)ならそのまま伝えてよい。問3 相手は会社に雇われた技術者か。はいなら受注側の責任者に伝え、受注側から本人に指示してもらう。問4 個人のエンジニアが断れて進め方を自分で決められる頼み方か。はいなら依頼として本人と相談して決める。いいえなら派遣か雇用で迎えることを考える。37号告示、疑義応答集、労働基準法研究会報告をもとにした本記事の整理。

行き先ごとの考え方は次のとおりです。

  • そのまま伝えてよい:成果物・納期・仕様・優先順位の話。疑義応答集(第3集)は、発注側の責任者が作る機能の一覧と優先順位を決め、その詳しい説明や情報提供をしても、それだけで直ちに偽装請負とは判断されないとしています*2
  • 契約を変える:契約の範囲の外の作業。作業工程の見直しなど発注に関わる要求を受注側の会社に出すのは当事者どうしのことで、直接の指揮命令ではないとされています*3
  • 受注側の責任者に伝える:作業の順序・時間・場所・残業に触れる話は、受注側の責任者から本人に指示してもらう
  • 派遣か雇用で迎える:日々細かく指示しながら進めたい仕事は、業務委託のまま続けない

個人のエンジニアと直接契約している場合は、受注側の責任者がいないため、本人に依頼として伝えます。研究会報告は、仕事の依頼を断る自由があれば指揮監督関係を否定する重要な要素になるとし、通常の注文者が行う程度の指示にとどまれば指揮監督を受けているとは言えないとしています。*5 本人が断れ、進め方を本人が決められる頼み方かを確かめます。

作業の順序と時間と場所の線引き

判断フローの問2で「触れる」に当たる場面のうち、順序・時間・場所を表にしました。

エレベーターホールで受注側の責任者が執務フロアを示し発注側の担当者に説明する立ち話

作業の順序・時間・場所で言ってよい例と避けたい例(出典:37号告示、同告示に関する疑義応答集(第1集)、「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」をもとに作成)
場面 言ってよい例 避けたい例 一次情報の要点
作業の順序 「この機能を先に仕上げてほしい」と優先順位と納期を伝える 今日はAの次にBと作業の手順を決める。1人ずつに作業を割り振る 発注者が仕事の順序・方法を指示し、一人ひとりへの割付を決めると偽装請負と判断される。文書で詳しく示してそのとおりに作業させる場合も同じ*3
働く時間 定例会議の時刻を受注側と打ち合わせて決める。稼働時間を報告で知る 本人に始業・終業・休憩の時刻を指示し、守らせる 始業と終業の時刻、休憩、休日などの指示と管理は受注側が自ら行う。単なる把握は除く*1
作業する場所 入館や持ち出しの決まりなど、場所の条件を契約や打ち合わせで決める 当日になって本人に席や作業場所の変更を直接指示する 勤務場所の決定と変更を受注側が自ら行っているかを総合的に勘案する*4

時間と場所は、決めること自体よりも、誰が決めて誰が管理するかが問われます。ガイドは、作業の日時を前もって受注側と打ち合わせ、作業中は発注側から直接指示を受けないよう書面を作り、受注側の責任者を通じて指示しているかを見るとしています。*4

個人のエンジニアでも、勤務場所と勤務時間が指定され管理されていることは、指揮監督関係の基本的な要素とされます。ただし研究会報告は、演奏や建設のように業務の性質から場所や時間が決まる場合もあり、それが業務の性質によるものか、指揮命令のためのものかを見極める必要があるとしています。*5 会議の時刻をそろえる、機密を守るために作業場所を決めるといった理由は、契約や打ち合わせの段階で本人と決めておきます。

チャットの即答と残業の線引き

次は、日々のやり取りで迷いやすいチャットと残業の場面です。

雨の夕方の窓際で受注側の責任者がスマートフォンで電話しながら考える

チャットと残業で言ってよい例と避けたい例(出典:37号告示、同告示に関する疑義応答集(第3集)、「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」をもとに作成)
場面 言ってよい例 避けたい例 一次情報の要点
チャットとメール 全員が入るチャンネルで質問や情報を共有し、仕様を相談する 本人に直接、作業の順序や今日中にやる作業を指示し、すぐの返信を求める チャットに双方の全員が入っていても、対等な情報共有なら偽装請負とされない。直接、業務の遂行方法や労働時間等を指示すれば偽装請負と判断される*2
残業と休日 納期や作業量の変更を受注側の責任者に早めに伝え、対応を協議する 本人に「今日は残ってほしい」「週末に対応してほしい」と頼む 残業や休日の作業の指示と管理は受注側が行う。受注側の責任者が進み具合をみて決め、作業量の増減は前もって発注者から連絡を受ける体制かを見る*1*4

ガイドのQ&A(第2集)は、受注側の責任者あての依頼メールを、責任者の了解の下で本人にも写しで送るだけなら直ちに労働者派遣事業とは判断されないとしています。ただし、詳しい作業の指示を含む場合や本人に直接の返信を求める場合などは、そう判断されるとしています。*4

遅れへの対応も同じです。疑義応答集(第3集)は、進み具合に遅れが出て仕事の割り付け・順序・緩急の調整を指示する必要があるときは、受注側が管理責任者を選ぶなどして自ら指揮命令を行う必要があり、発注側が直接行えば偽装請負と判断されるとしています。*2 遅れの報告を受けたら、受注側の窓口と対策を協議します。

チャットの即答を本人に求め続けると、時間の使い方を発注側が決める形に近づきます。返信の期限は優先順位の一つとして受注側と決めておくと、線を越えにくくなります(本記事の整理)。進み具合を報告で受け取る書式は「業務委託の稼働報告書テンプレート」で整理しています。

外部人材に頼むときに確認しておきたい点

業務委託のエンジニアを探す前に、伝え方の道筋も含めて次の点を書き出しておくと、相談が進めやすくなります。

  • 範囲:任せる作業と成果物、優先順位を誰が決めるか
  • 期間:始める時期と、納期が動いたときの協議の仕方
  • 体制:発注側の窓口と受注側の責任者。個人と契約するなら、依頼と相談の連絡の決まり
  • 費用の決まり方:月額・時間単価・精算の幅のどれで払うか
  • 引き継ぎ:終わるときに資料とアカウントを誰が受け取るか

日々細かく指示したい仕事なら、リモートで働く社員として迎える道もあります。本記事は一次情報による一般的な整理で、条文の解釈を示すものではありません。個別の判断は、弁護士や社会保険労務士などの専門家、または都道府県労働局に確認してください。

まとめ:業務委託の指揮命令はどこまでか

業務委託の指揮命令はどこまでかで押さえたい点は3つです。第一に、成果物・納期・仕様・優先順位は伝えてよく、作業の順序・働く時間・作業する場所・残業に触れる指示は、受注側の責任者から本人に出してもらうこと。第二に、チャットに双方の全員が入っていても対等な情報共有なら問題になりにくい一方、本人への直接の作業指示や即答の要求は避け、返信の期限は優先順位として受注側と決めておくこと。第三に、個人のエンジニアには断れる依頼として相談し、日々細かく指示したい仕事は派遣か雇用で迎えることを考えることです。

LASSICに相談するメリット

伝え方の道筋を決めてから探せば、任せる作業と体制に合う業務委託の専門人材の候補を比べられます。業務委託で迎えるか社員で迎えるか迷う段階からご相談いただけます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

業務委託のエンジニアと雑談してもよいですか

業務に関係のない日常的な会話は、指揮命令を行ったことにはならないとされています。昼休みの会話や挨拶を控える必要はありません。気をつけたいのは、雑談の流れで作業の順序や時間の指示が混ざることです。

受注側の責任者が毎回の会議に出ていなくても大丈夫ですか

疑義応答集(第3集)は、双方が対等な関係で協働し、受注側の担当者が自律的に作業を進めている限り、責任者が会議に同席していない場合があることだけで直ちに偽装請負とは判断されないとしています。作業の進め方や時間の指示が必要になったら、受注側の責任者から出してもらいます。

スキルシートを受け取って人を選んでもよいですか

疑義応答集(第3集)は、個人を特定できず、それによって特定の人を指名したり就業を拒んだりできない形なら、スキルシートを求めても直ちに偽装請負とは判断されないとしています。発注側が特定の人を指名する形は、受注側が配置を決めていないと判断されます。

業務委託で開発に加わるエンジニアを探す

任せたい作業の範囲と始めたい時期が分かっていれば、そのままご相談いただけます。業務委託で迎えるか社員で迎えるか迷う段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf)。出典:厚生労働省。第2条第1号イ(業務の遂行に関する指示その他の管理)、ロ(労働時間等に関する指示その他の管理。単なる把握を除く)、ハ(配置等の決定及び変更)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001704257.pdf)。出典:厚生労働省。Q1〜Q8(準委任の場合、基本的考え方、管理責任者の選任、開発責任者と開発担当者のコミュニケーション、会議・チャットツール等、スキルシート、アジャイル型開発以外への適用)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」(第1集)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001328443.pdf)。出典:厚生労働省。1(日常的な会話)、2(発注者からの注文)、7(作業工程の指示)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001704200.pdf)。出典:厚生労働省・都道府県労働局。区分基準の具体的判断基準(労働時間等の管理、時間外・休日労働、配置等の決定及び変更)と、Q&A第2集のQ10(依頼メールの写しの送付)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001477330.pdf)。出典:昭和60年12月19日。厚生労働省掲載。第2の1(1)イ(諾否の自由)、ロ(業務遂行上の指揮監督)、ハ(拘束性)を参照(確認日2026年10月28日)(2026年10月確認)




View