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2026.11.02 らしくコラム

Sybase移行とは?版上げか乗り換えかの判断と進め方を解説

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

サーバー室で古いサーバーに手を添え、台車のノートPCと見比べる担当者

この記事の結論

  • Sybaseは現在SAP ASEとして提供が続いており、移行には版上げと別製品への乗り換えの2つの道があります。
  • 版上げは16.0以降なら直接でき、それより古い版は2段階になり、上げた後は前の版へ戻せません。
  • 乗り換えはツールで変換を試して作業量を見積もり、新旧を並べて動かしてから切り替えます。

※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

Sybaseの時代から動いている基幹システムのデータベースを、この先も使い続けてよいのか分からない。中身を説明できる担当者が異動して、誰も手を付けられない——。長く使ってきた業務システムを抱える情報システム部門では、こうした悩みが起こりがちです。Sybase移行とは、SAP ASE(旧Sybase ASE)で動くデータベースを、新しい版や別のデータベース製品へ移す作業を指します。

移す先を選べば、古いOSのサーバーやライセンスの見直しにもつながります。ただし万能ではなく、データベースの中に書かれた処理が多いほど、書き換えと試験の手間は増えます。本記事では、Sybaseのデータベースを抱える情報システムの担当者に向けて、SAP ASEの現状、版上げと乗り換えの違い、それぞれの進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

Sybase(SAP ASE)とは

Sybaseは、もともと米Sybase社が開発したデータベースの名前です。いまはSAPの製品「SAP Adaptive Server Enterprise(SAP ASE)」として提供が続いており、SAPの製品ページにもSybaseの名前が残っています。SAPはこの製品を、受注や入出金のような細かい取引を速く処理するためのデータベースと位置づけています。*1

  • 置き場所は、自社のサーバー(オンプレミス)、クラウドの仮想サーバー、SAPが運用まで受け持つクラウドのサービスから選べます*1
  • 通信や列・データベース全体の暗号化、社内の認証の仕組み(Active Directoryなど)との連携に対応しています*1
  • 障害に備えて2〜3台で組む構成(HA/DR)を取れます*1
  • 各版の保守がいつまで続くかは、SAPの製品情報の一覧(PAM)で確かめます。閲覧にはSAPのアカウントでのログインが必要です*2*8

つまり「Sybaseだからもう使えない」わけではありません。困るのは、古い版のまま更新が止まっている場合と、中身を説明できる担当者がいなくなった場合です。移行を考える前に、まず自社のASEがどの版で、どのOSの上で動いているかを確かめます。

版上げと乗り換えの違い

Sybase移行には、大きく分けて2つの道があります。SAP ASEの新しい版へ上げて使い続ける道と、SQL ServerやPostgreSQLのような別のデータベースへ乗り換える道です。乗り換えには、データベースの会社やクラウドの会社が移行ツールを用意しています。

会議室で2つの枠が並んだ資料を指す課長と、考える担当者

Sybase移行の主な選択肢
選択肢 公式に用意された道具 向いている場面
SAP ASEの新しい版へ上げる SAPの版上げ前の点検ツール(preupgrade) アプリを大きく変えずに使い続けたいとき
SQL Server・Azure SQLへ移す Microsoftの移行ツール(SSMA for SAP ASE) 社内の他のシステムがSQL Serverでそろっているとき
PostgreSQL・MySQLへ移す AWSの変換ツール(AWS SCT)とデータ移行サービス(AWS DMS) AWSへ移す計画があり、ライセンスの費用を見直したいとき

MicrosoftのSSMAは、SAP ASEのデータベースをSQL Server 2019以降やAzure SQL Databaseなどへ移すためのツールです。*5 AWS SCTは、表の定義やデータベースの中に保存した処理(ストアドプロシージャ)を、PostgreSQLやMySQLの形に書き換えます。*6 どちらも、移す先が決まってから使う道具です。先に移す先を決め、その後でツールの変換結果を見て作業量を見積もります。

版上げで確かめておきたい点

同じSAP ASEのまま新しい版へ上げる場合も、何も変えずに済むわけではありません。SAPの手引きと新機能の資料には、次のような注意が書かれています。

  • 16.0以降からは16.1へ直接上げられます。15.5や15.7からは、いったん16.0へ上げてから16.1へ上げる2段階になります*3
  • 16.1へ上げた後は、前の版へ戻せません*3
  • 16.1では、HP-UXとSolarisというOSでの利用が非推奨になりました*4
  • 16.1では、旧版の動きに合わせる互換モードと、OData Server(Web経由でデータを渡す機能)がなくなりました*4

特にOSの条件は見落としやすい点です。古いUNIXのサーバーで動いているなら、版上げとあわせてサーバーの置き換えも計画に入ります。戻せない作業なので、版上げの前に本番と同じデータで試験環境を作り、点検ツールと業務の動きの両方を確かめておきます。

別製品へ移すときの進め方

別のデータベースへ乗り換える場合は、データを移す作業よりも、データベースの中に書かれた処理を書き換える作業のほうが重くなりがちです。次の4つの段階で進めると、見積もりの外れを小さくできます。

  • ステップ1:表・ストアドプロシージャ・夜間の処理など、ASEの中にある物を一覧にする
  • ステップ2:移行ツールで変換を試し、自動で変換できない箇所の数を見る
  • ステップ3:本番と同じ量のデータで移行を試し、かかる時間と件数の一致を確かめる
  • ステップ4:新旧を並べて動かし、結果が同じになることを確かめてから切り替える

Sybaseから別のデータベースへ乗り換える流れを4つの段階で左から順に並べた図。STEP1 中にある物を一覧にする、STEP2 ツールで変換を試す、STEP3 データ移行を試す、STEP4 並べて動かし切り替える。

AWS DMSでデータを移しながら差分も追いかける場合は、1つのASEのデータベースにつき差分を追う作業は1本しか動かせず、移行中は表や列の名前を変えられないといった制約があります。*7 切り替えの日までの変更の止め方も、ステップ3の段階で決めておきます。Oracleからの移行で論点がどう違うかは脱Oracle DBとPostgreSQL移行で扱っています。

外部に頼むときに確認しておきたい点

Sybaseで長く動いてきたシステムは、作った人がすでに社内にいないことも少なくありません。移行を外部に頼むときは、見積もりの前に次の点を確かめておくと、後から作業が増えるのを防げます。

タブレットを傾けて説明する委託先の技術者と、メモを取る発注側の担当者

  • どこまで頼むか:現状の調査、移す先の選定、変換、データ移行、試験、切り替えのうち、どれを任せるか
  • 現状の調査:ASEの版・OS・ストアドプロシージャの数を、委託先が自分で確かめる工程が入っているか
  • 変換の検証:ツールで変換できなかった処理を、どの試験で確かめるか
  • 切り替えの計画:新旧を並べて動かす期間と、問題が出たときに元へ戻す手順があるか
  • 移行後の運用:新しいデータベースの更新とバックアップを誰が受け持つか

移行のあとにデータベースを見る人が社内にいない場合は、運用まで含めて考えておく必要があります。DBA(データベース管理者)不足を外部の力で補う方法もあわせて参考にしてください。

まとめ:Sybase移行で確かめておきたい3つの点

Sybase移行を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社のASEの版とOSを確かめ、保守の期限をSAPの製品情報で調べること。第二に、版上げで使い続けるのか、別のデータベースへ乗り換えるのかを先に決めること。第三に、乗り換えるなら移行ツールで変換を試し、自動で変換できない処理の量から作業を見積もることです。この3点を踏まえておけば、「移してみたら夜間の処理が動かず、切り替えを延ばすことになった」という事態を避けやすくなります。移す先の選び方や進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

Sybase移行では、まずSAP ASEの版・OS・ストアドプロシージャや夜間の処理を一覧にし、版上げか乗り換えかを判断できる材料をそろえます。版上げでは、SAPの点検ツール(preupgrade)で事前の確認を行い、ページサイズの異なる環境へ移す場合はsybmigrateの使用を検討します。乗り換えでは、SQL Serverへ移すならMicrosoftのSSMA、PostgreSQLやMySQLへ移すならAWS SCTで変換を試し、自動で変換できない処理を洗い出します。データ移行ではAWS DMSなどで本番と同じ量の試行を行い、件数と結果を新旧で照らし合わせます。切り替え後は、新しいデータベースの更新とバックアップの手順を文書にして運用に引き継ぎます。

よくある質問

Sybase ASEをこのまま使い続けることはできますか

製品はSAP ASEとして提供が続いており、新しい版の16.1も出ています。ただし版ごとに保守の期限があるため、いまの版がいつまで保守されるかをSAPの製品情報の一覧(PAM)で確かめ、版上げの時期を決めておくことが前提になります。*2

移行にかかる期間はどのくらいですか

一律には決まりません。ストアドプロシージャの数、データの量、新旧を並べて動かす期間で大きく変わります。移行ツールで変換を試した結果をもとに見積もると、期間の見込みが立てやすくなります。

SAP ERP(SAPの基幹業務システム)の土台としてASEを使っている場合はどう考えればよいですか

データベースだけでなく、SAP ERP側の保守の計画と合わせて考えます。SAPはSAP Business Suite 7の中核アプリの通常の保守を2027年末まで、追加料金で選べる延長保守を2030年末までとしています。*8 移す先や時期は、SAPや導入を担当した会社と相談して決めると進めやすくなります。

Sybase(SAP ASE)移行のご相談

SAP ASEの現状調査から、版上げや別のデータベースへの乗り換え、移行後の運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:SAP「SAP Adaptive Server Enterprise(SAP ASE)」製品ページ(https://www.sap.com/products/technology-platform/sybase-ase.html)。出典:取引処理向けのデータベースという位置づけ、オンプレミス・クラウドの置き場所、暗号化、AD/LDAP/Kerberos連携、2〜3台のHA/DR構成の記述を参照(2026年11月確認)
  2. *2 参考:SAP Support Portal「Release, Upgrade and Maintenance」(https://support.sap.com/en/release-upgrade-maintenance.html)。出典:Product Availability Matrix(PAM)で保守期間などの製品情報を確認できること(閲覧にはログインが必要)の記述を参照(2026年11月確認)
  3. *3 参考:SAP「SAP ASE 16.1 SP00 PL02 Installation and Upgrade Guide for Linux」(https://help.sap.com/doc/a6167530bc2b1014a88ec21bab8c671f/16.1.0.2/en-US/SAP_ASE_Installation_Guide_Linux_en.pdf)。出典:6章「SAP ASE Upgrades」の直接・2段階の版上げの条件、版上げ後は前の版へ戻せないこと、preupgradeとsybmigrateの記述を参照(2026年11月確認)
  4. *4 参考:SAP「SAP ASE 16.1 SP00 PL02 What’s New」(https://help.sap.com/doc/5f8c23557c0a4831bb191f0378647d41/16.1.0.2/en-US/SAP_ASE_Whats_New_en.pdf)。出典:「Deprecated and Removed Features」のHP-UX・Solarisの非推奨、互換モードとOData Serverの削除の記述を参照(2026年11月確認)
  5. *5 参考:Microsoft Learn「Sybase 用 SQL Server Migration Assistant(SybaseToSQL)」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/sql/ssma/sybase/sql-server-migration-assistant-for-sybase-sybasetosql)。出典:SSMA for SAP ASEの対象(SQL Server 2019以降、Azure SQL Database、Azure SQL Managed Instance)の記述を参照(2026年11月確認)
  6. *6 参考:AWS「Connecting to SAP Databases with the AWS Schema Conversion Tool」(https://docs.aws.amazon.com/SchemaConversionTool/latest/userguide/CHAP_Source.SAP.html)。出典:SAP ASEからMySQL・PostgreSQLなどへの表定義・データベースのコード・アプリのコードの変換の記述を参照(2026年11月確認)
  7. *7 参考:AWS「Using an SAP ASE database as a source for AWS DMS」(https://docs.aws.amazon.com/dms/latest/userguide/CHAP_Source.SAP.html)。出典:差分を追う作業は1データベースにつき1本、表や列の名前を変えられないなどの制約の記述を参照(2026年11月確認)
  8. *8 参考:SAP Support Portal「Innovation Commitment for SAP S/4HANA until 2040 / Clarity and Choice on SAP Business Suite 7」(https://support.sap.com/en/release-upgrade-maintenance/maintenance-information/maintenance-strategy/s4hana-business-suite7.html)。出典:SAP Business Suite 7中核アプリの通常の保守(2027年末まで)と延長保守(2030年末まで)、PAMの閲覧にログインが必要であることの記述を参照(2026年11月確認)




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