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OCR(文字の読み取り)で紙の書類の入力を減らす:費用と精度の見方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- OCR(文字の読み取り)で減るのは打ち込みの時間で、読み取った結果を人が確かめる手間は残ります。
- 費用は料金の形と月の枚数で決まり、精度は書類の様式と手書きの多さで変わるため、自社の書類で試して確かめます。
- まず自社の書類を数種類選び、試しの読み取りで確かめにかかる時間を測ってから、導入を判断します。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
毎朝届く紙の申込書や請求書を、1枚ずつ打ち込む。この作業を読み取りで減らせるかを調べると、OCR(文字の読み取り)という言葉に行き当たります。OCRを入れれば紙の入力がなくなる、と考えがちですが、減るのは打ち込みの時間で、読み取った結果を確かめる手間は残ります。
答えを先に示すと、費用は料金の形と月の枚数で出し、精度は自社の書類で試して見ます。まず自社の書類を数種類選び、試しの読み取りで確かめにかかる時間を測ってから、導入するかを判断します。本記事では、自治体の公開の例をもとに、方法を選ぶ基準と、費用対効果、個人情報の扱い、導入の手順を整理します。
目次
紙の書類の打ち込みは、量が増えるほど遅れと誤りを生む
紙で届く申込書や注文書、請求書を、1枚ずつ表計算や業務のシステムに打ち込む。1件あたり数分の作業でも、枚数が増えれば他の仕事の時間を押し出します。締めの前に書類が集まると、急いで打ち込む分だけ誤りも出やすくなります。
この打ち込みを減らす手段が、OCR(光学的文字認識。紙や画像の文字を読み取り、データに変える仕組み)です。ただし、OCRで減るのは打ち込みの時間で、読み取った結果を人が確かめる手間は残ります。
悩みごとに、先に読むとよい章を次の表にまとめました。
| 悩み | 読む章 |
|---|---|
| 料金がいくらになるか見当がつかない | 費用対効果:料金の形と減る時間で見る |
| 手書きの書類も読めるのか不安 | OCR(文字の読み取り)の仕組みと種類:活字向けと手書きにも対応する読み取り |
| 読み取った結果を確かめる手間が減らない | 導入の手順:試しの読み取りから本番まで |
公的な資料には、読み取りを自動の入力と組み合わせて、作業の時間を減らした自治体の例があります。総務省の地域DXポータルサイトに載る2つの市の数値を並べると、次の図のとおりです。
長岡市は、RPA(パソコンの定型の操作を自動で行うソフト)とAI-OCR(AIの技術で手書きなども読み取るOCR)を導入した100業務で、導入前に約23,980時間だった作業時間が、導入後は約5,377時間になったとしています。*2 豊中市は、令和6年3月末時点で83業務にRPA・AI-OCRを活用し、年間約10,900時間の削減効果としています。*1
どちらも、読み取りだけでなく、読み取ったデータを自動で入力する仕組みと組み合わせた結果です。長岡市は、減った時間を窓口対応や企画立案など、職員でなければできない業務にあてられているとしています。
意外な原因:読み取りの精度より、書類の様式がばらばらなこと
読み取りの精度は、書類の様式、手書きの多さ、紙の状態で変わります。様式がそろわないまま読み取りを始めると、書類ごとに読み取る位置の設定が要り、誤りを直す時間も残ります。

宜野湾市の共同の実証実験の報告書には、2ページ目以降の読み込みがおかしいと確かめたところ、帳票の種類が微妙に異なっていた、という記録があります。*3 豊中市も、姓名の記載箇所を分ける、数字の記載箇所にマス目を設ける、選択の回答をチェックボックスに変える、といった様式の工夫をしています。*1
読み取りを考える前に、次の3つを確かめてみてください。
- 月に入力する書類の種類と枚数を数えているか
- 自社で様式を決められる書類と、取引先の様式の書類を分けているか
- 読み取ったデータを入れる先のシステムが決まっているか
自社で様式を決められる書類は、読み取りやすい形に直してから試せます。取引先の様式の書類は種類が多く、読み取りの設定と確かめに手間がかかりやすいため、後の段で扱うと決めておくと計画が立てやすくなります。
読み取りの方法を選ぶ4つの基準
読み取りの方法は、製品の名前より先に、次の4つの基準で比べます。基準ごとに自社の書類と枚数を当てはめると、合う方法が絞れます。
| 基準 | 目安 | 試しで見ること |
|---|---|---|
| 読める書類 | 活字・手書き・様式の違いのどこまで読めるか | 自社の書類を種類ごとに数枚ずつ読ませ、誤りの出る項目を記録する |
| 料金の形 | 月額・枚数ごと・買い切りのどれで、自社の枚数ならいくらになるか | 多い月と少ない月の枚数を当てはめ、月と年の費用を出す |
| 確かめのしやすさ | 読み取りの自信が低い箇所を示すなど、人が直しやすい画面があるか | 1枚を確かめて直すのにかかる時間を測る |
| データの渡し先 | 表計算や会計のシステムに、手作業なしで渡せるか | 読み取った結果を渡し先に入れるまでの手順を試す |
4つのうち見落とされやすいのが、確かめのしやすさです。豊中市は、入力項目が少ないと読み取り作業・結果を確認する処理時間の方が、手作業よりも時間がかかる場合があるとして、導入する業務の選定に注意しています。*1
月末の請求書の山を前にした判断
4つの基準を使って、担当者が上長に提案するまでの判断の流れを一例として示します。
- 書類を分ける:月末に届く書類を、社内の様式の申込書と、取引先の様式の請求書に分ける
- 基準を当てはめる:社内の申込書は様式がそろい、項目も多いため、試しの読み取りに向くと判断する
- 後に回す書類を決める:取引先の様式の請求書は種類が多いため、次の段で決めると書き添える
- 上長に提案する:試す書類、枚数、試しの期間、測る時間(確かめにかかる時間を含む)をまとめる
全部の書類を一度に読み取りにかけず、結果を比べやすい書類から始めると、効果と手間を数字で示せます。宜野湾市の報告書も、処理件数が少なくても、1件当たりの入力項目数が多いほど効果が出るとしています。*3
ここまでで、読み取りで減る作業と残る作業、方法を選ぶ基準を見てきました。後半では、OCRの仕組みと種類、費用対効果、個人情報を含む書類の扱いの確認点、導入の手順、承認を得るための判断の材料を順に確かめられます。
OCR(文字の読み取り)の仕組みと種類:活字向けと手書きにも対応する読み取り
活字の決まった様式に向く方式と、手書きや様式の違いに対応する方式があり、扱う書類で選びます。どちらも、紙をスキャナーや複合機で画像にし、その画像から文字を読み取ってデータに変える流れは同じです。
| 方法 | 向く書類 | 確かめること |
|---|---|---|
| 複合機やスキャナーに付いた読み取り | 活字の書類、決まった様式の書類 | 手書きや様式の違いをどこまで読めるかを、自社の書類で試す |
| 手書きにも対応する読み取りのサービス | 手書きを含む申込書、様式の違う書類 | 料金の形と、読み取った画像とデータの保存先 |
| 入力の作業ごと外注する | 枚数の波が大きい書類、社内で確かめる時間を取れない書類 | 個人情報を含む書類なら、委託先の監督の方法 |
手書きの読み取りの精度も高くなっています。宜野湾市の実証実験では、手書きの医療券の380項目のうち374項目を正しく読み取り、正読率は98.4%でした。*3 一方で、読み取りの範囲の外への記入や、漢数字などでは誤認識が出ています。
スキャンした書類はPDFで保存することが多く、読み取りの前にページを結合したり分けたりする場面もあります。その作業を無料の道具で済ませられるかは、PDF編集は無料で足りるか:業務で使うときの見分け方で整理しています。
- 活字で様式がそろう書類:複合機などに付いた読み取りから試せる
- 手書きが多い書類:手書きにも対応する方式で、自社の書類を試す
- 様式が書類ごとに違う書類:読み取る位置の設定の手間も含めて比べる
費用対効果:料金の形と減る時間で見る
月の枚数で料金を出し、減る打ち込みの時間から確かめの時間を引いた分と比べます。料金だけ、または減る時間だけを見ると、判断を誤りやすくなります。
| 項目 | 出し方 |
|---|---|
| 料金 | 料金の形(月額・枚数ごと・買い切り)に、自社の月の枚数を当てはめる |
| 今の打ち込みの時間 | 1枚あたりの入力の時間×月の枚数 |
| 読み取り後の時間 | スキャンの時間+確かめて直す時間(試しの読み取りで測る) |
| 減る時間 | 今の打ち込みの時間から、読み取り後の時間を引く |
宜野湾市の手書きの医療券の入力では、職員の作業時間が年16時間から3.2時間になる一方で、自動の処理に4.4時間がかかり、別にシナリオ(自動の処理の手順)の作成に8時間を使っています。*3 減る時間を出すときは、こうした準備と確かめの時間も入れて計算します。
料金の形は、費用の内訳にも表れます。長岡市の例では、1年あたりの費用の内訳に、AI-OCRのASP使用料(クラウドで使うサービスの利用料)2,266千円と、AI-OCRのスキャナの賃借料283千円が、RPAの機器等の賃借料とは別の行で並んでいます。*2 100業務で使う市の金額なので、自社の費用は自社の枚数で見積もります。
- 料金は、枚数の多い月と少ない月の両方で出す
- 減る時間には、確かめて直す時間も入れる
- 入力項目が少ない書類は、手作業の方が早い場合がある
確認点:個人情報を含む書類の扱い
外部のサービスで読み取るときは、データの保存先と保存の期間、委託先の監督を社内の規程と照らします。申込書や請求書には、氏名や住所、口座などの個人情報が含まれることが多いためです。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、個人データの取扱いを委託する場合の委託先の監督を定め、委託の例として個人データの入力を挙げています。*4 読み取りを外部のサービスで行う場合や、入力の作業ごと外注する場合は、委託に当たるかを確かめたうえで、次の点を見ます。
| 確認点 | 確かめる中身 |
|---|---|
| データの保存先 | 読み取った画像とデータが、どこに保存されるか |
| 保存の期間 | 読み取りの後、いつ、どの方法で消されるか |
| 委託先の選定 | 委託先の個人データを守る措置が、自社に求められる水準と同じかを、あらかじめ確かめる |
| 委託の契約 | 個人データの取扱いの内容と、取扱いの状況を自社が把握できることを契約に盛り込む |
| 取扱いの状況の把握 | 定期的に確かめ、必要なら委託の内容を見直す |
| 再委託 | 委託先がさらに他社に作業を任せるときに、事前に報告を受けるか承認する |
ガイドラインは、委託する業務の内容に対して必要のない個人データを提供しないようにすることにも触れています。*4 読み取りにかける項目を必要な分に絞ると、委託先に渡すデータも減らせます。
- 読み取りにかける書類に、どの個人情報が含まれるかを書き出す
- 保存先と保存の期間を、サービスの利用条件で確かめる
- 再委託の有無と、その場合の扱いを契約の前に確かめる
導入の手順:試しの読み取りから本番まで
書類を選ぶ、試す、確かめの工程を決める、渡し先とつなぐ、の順に進めます。いきなり全部の書類を対象にせず、結果を比べやすい書類から始めます。

| 段階 | すること | 決めること |
|---|---|---|
| 1. 書類を選ぶ | 様式がそろい、入力項目の多い書類を数種類選ぶ | 試す書類と枚数 |
| 2. 試す | 選んだ書類を読み取りにかけ、誤りの出た項目を記録する | 正しく読めた項目の割合と、1枚を確かめる時間 |
| 3. 確かめの工程を決める | 誤りが出やすい項目を決め、人が確かめる手順を組み込む | 確かめる項目と、確かめる人 |
| 4. 渡し先とつなぐ | 読み取ったデータを表計算や会計のシステムへ渡す | 渡し方と、渡した後の照合の方法 |
試しの段階では、様式を見直すことも検討します。宜野湾市の報告書は、日付を年・月・日に分けて読むより、年月日を1つの欄にまとめて読み込む方が精度が高いという助言や、そのままでは値が取れない部分があり様式を少し修正する必要があったことを記録しています。*3
読み取ったデータを自社の業務のシステムへ自動で入れる仕組みを、開発で作る場合の進め方は、AI-OCR帳票入力システム開発の外注の進め方で取り上げています。
- 試しの段階で、誤りの出た項目と原因(範囲の外への記入など)を記録する
- 確かめる項目を絞り、全部の項目を見直す手順にしない
- 本番の前に、渡し先へ入れた後の照合の方法を決める
承認を得るための判断の材料
対象の書類、月の費用、減る時間、補助金を使える見込みを一枚にまとめます。上長が承認するかを決めるのに要るのは、費用と、それで減る時間と、残る手間です。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 対象の書類 | 試しで選んだ書類の種類と月の枚数、手書きの割合 |
| 月の費用 | 料金の形と、月の枚数を当てはめた費用 |
| 減る時間 | 今の打ち込みの時間と、読み取り後の時間(確かめを含む)の差 |
| 残る手間 | 確かめる項目と、確かめる人 |
| 補助金の見込み | 使えそうな制度と、公募の時期 |
読み取りの導入の費用には、補助金を使える場合があります。中小機構の補助金活用ナビは、IT導入補助金が令和8年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変わったことと、業務のデジタル化やインボイス制度への対応のためにITツールを導入する事業者向けの補助金であることを案内しています。*5
申請はIT導入支援事業者を通じて行う必要があり、詳細な条件は最新の公募要領で確定します。対象になるかと公募の時期は、中小機構の案内と事務局のホームページで確かめます。
- 費用は、枚数の多い月と少ない月の幅で示す
- 減る時間は、試しの読み取りで測った値で示す
- 取引先の様式の書類を、次の段で扱うかを書き添える
まとめ:自社の書類で試してから決める
OCR(文字の読み取り)で減るのは打ち込みの時間で、読み取った結果を確かめる手間は残ります。費用は料金の形と月の枚数で、精度は書類の様式と手書きの多さで変わるため、4つの基準で方法を比べ、自社の書類で試して確かめます。今日からは、社内の書類を数種類選び、試しの読み取りの計画を立ててください。
よくある質問
OCR(文字の読み取り)とは何ですか
紙や画像の文字を読み取り、データに変える仕組みです。スキャナーや複合機で紙を画像にし、その画像から文字を読み取ります。活字向けの方式と、手書きにも対応する方式があり、扱う書類で選びます。
手書きの書類も読めますか
手書きに対応する方式もありますが、精度は自社の書類で試して確かめます。宜野湾市の実証実験では手書きの医療券で正読率98.4%でしたが、読み取りの範囲の外への記入や漢数字などで誤認識が出ています。
費用はどのくらいかかりますか
料金の形と月の枚数で変わるため、自社の枚数で見積もりを取ります。そのうえで、減る打ち込みの時間から確かめの時間を引いた分と、料金を比べて判断します。
読み取った後の確かめは要りますか
要ります。誤りが出やすい項目を決めて、人が確かめる工程を組み込みます。入力項目が少ない書類では、読み取りと確かめの時間の方が手作業より長くなる場合もあります。
補助金は使えますか
デジタル化・AI導入補助金の対象になる場合があるため、対象と公募の時期を中小機構の案内で確かめます。申請はIT導入支援事業者を通じて行い、詳細な条件は最新の公募要領で確かめます。
紙の書類の入力の見直し
書類の種類と月の枚数、手書きの割合、データを入れる先のシステムと今の入力の手順をお手元にご用意いただければ、読み取りの進め方とデータのつなぎ方をご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:総務省 地域DXポータルサイト「83業務にRPA・AI-OCRを活用し、年間約10,900時間を削減【大阪府豊中市】」(https://www.soumu.go.jp/denshijiti/digital_transformation_portal/case/r07_dx3_20.html)。出典:事例のPDF(事業の概要、工夫している点や課題)を参照(確認日2026年10月31日)(2026年11月確認)
- *2 参考:総務省 地域DXポータルサイト「RPA・AI-OCRにより100業務で約1.8万時間の削減、職員を本来業務へシフト【新潟県長岡市】」(https://www.soumu.go.jp/denshijiti/digital_transformation_portal/case/r07_dx3_18.html)。出典:事例のPDF(事業効果、コストの内訳)を参照(確認日2026年10月31日)(2026年11月確認)
- *3 参考:宜野湾市「「RPA・AI-OCR活用による業務自動化の共同実証実験」実施結果について」(2020年6月30日)(https://www.city.ginowan.lg.jp/soshiki/kikaku/gyoseikeiei/1/2/1/5269.html)。出典:共同実証実験結果報告書(就学援助入力業務、AI-OCRによる読取結果、まとめ)と概要版を参照(確認日2026年10月31日)(2026年11月確認)
- *4 参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/)。出典:3-4-4 委託先の監督(法第25条関係)を参照(確認日2026年10月31日)(2026年11月確認)
- *5 参考:中小企業基盤整備機構 補助金活用ナビ「デジタル化・AI導入補助金(旧 IT導入補助金)のご案内」(https://seisansei.smrj.go.jp/subsidy_info/it_subsidy.html)。出典:名称の変更、補助金の概要、IT導入支援事業者を通じた申請を参照(確認日2026年10月31日)(2026年11月確認)