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2026.11.04 らしくコラム

治具管理システムの選び方|台帳と電子タグをつなぐ4つのポイント

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

治具が並ぶ保管棚にハンディリーダーを向ける担当と、タブレットを操作する同僚

この記事の結論

  • 治具管理システムは、治具1個ずつの所在・貸し出し・点検の記録を台帳にまとめる仕組みです。
  • RFIDは離れた所からまとめて読めますが、金属の影響を受けるため実物での読み取り試験が欠かせません。
  • 番号の付け方・タグ・台帳とのつなぎ方・電波の手続きの4つを、導入の前に決めておくことが大切です。

※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

あの治具はいまどのラインにあるのか、台帳を見ても分からない。返却の記入が漏れていて、段取りの直前に探し回る——。治具を紙やExcelの台帳で管理している工場では、こうした食い違いが起こりがちです。治具管理システムは、治具(加工や組み立てで部品を決まった位置に固定する道具)に1個ずつ番号を付け、保管場所・貸し出し・点検の記録を1つの台帳で管理する仕組みです。

バーコードやRFID(電波でタグの番号を読み取る仕組み)と組み合わせると、読み取った番号から台帳を自動で更新できます。ただし万能ではなく、金属の多い治具では読み取りの試験が欠かせません。本記事では、工場のシステム化を担当する方に向けて、治具管理システムでできること、Excel台帳との違い、台帳とRFIDをつなぐ仕組み、選び方の4つのポイント、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

治具管理システムとは

治具は製品の型番や工程ごとに種類が増えやすく、同じ形のものがいくつも並ぶ道具です。治具管理システムは、その1個ずつを区別して、どこにあるか・誰が使っているか・いつ点検したかを追えるようにします。主な機能は次のとおりです。

  • 治具台帳:番号・名称・対応する製品や工程・保管場所を登録する
  • 貸し出しと返却:持ち出した人とラインを記録し、返却されるまで追う
  • 点検と使用回数:点検日や使用回数を記録し、修理や交換の時期を知らせる
  • 棚卸し:台帳の数と現物の数が合っているかを確かめる

GS1 Japan(流通の識別コードを管理する財団)は、企業の資産を1つずつ管理するための識別コードとしてGIAI(資産管理識別コード)を定めています。レンタル・リース品や手術器具のメンテナンス管理など、「個々を識別する必要のある資産管理」に使われるコードです。*2 治具もこの考え方にあてはまるため、番号の付け方を決めるときの参考になります。

Excel台帳やバーコードとの違い

治具の管理は、Excelの台帳から始めるのが手軽です。数が少ないうちはそれで足りますが、返却の記入漏れや棚卸しの手間が重くなると、読み取り機器と台帳をつないだ仕組みが候補に挙がります。読み取りの方法は大きく3つに分かれます。

カウンターに返された治具にペン型の読み取り機を近づける担当と、ヘルメットを抱えた作業者

治具の記録の取り方の違い
方法 読み取り方 向いている場面
Excel台帳(手入力) 人が番号を見て書き写す 治具の数が少なく、管理する人が限られるとき
バーコード・2次元コード 読み取り機を1個ずつ向けて読む 費用を抑えて読み取りを始めたいとき
RFID(電子タグ) 電波で離れた所から複数をまとめて読む 棚卸しや出し入れで扱う数が多いとき

GS1 Japanは、RFIDの特徴として、離れた所から読み取れること、金属を除く遮蔽物があっても読めること、1つずつ固有の番号を持つので二度読みの心配がなく短時間で大量に読めることを挙げています。表面の汚れにもバーコードより強いとされます。*1 一方で、どの周波数帯も金属の影響を大きく受けると整理されています。*1 治具は鉄やアルミでできたものが多く、ここが選ぶときの分かれ目になります。

台帳とRFIDをつなぐ仕組み

RFIDを使う治具管理は、タグに番号を書く、読み取る、台帳と照らし合わせる、という流れで動きます。RFIDタグは情報を収めるICチップと小さなアンテナでできていて、通常は電池を持たず、リーダ・ライタ(タグを読み書きする機器)の電波を受けて通信します。*1 流れを4つの段階に分けると次のようになります。

  • ステップ1:治具1個ずつに重複しない番号を決め、タグに書き込んで取り付ける
  • ステップ2:保管棚や出入口で、ハンディリーダーや据え置きのアンテナで読み取る
  • ステップ3:読み取った番号を台帳と照らし合わせ、貸し出し・返却・所在を更新する
  • ステップ4:台帳に無い番号や、期限を過ぎても戻らない治具を一覧で知らせる

RFIDを使う治具管理の流れを4つの段階で左から順に並べた図。STEP1 番号を決めてタグに書く、STEP2 保管棚や出入口で読み取る、STEP3 台帳の番号と照らし合わせる、STEP4 未返却や不明な番号を知らせる。

GS1の標準は、タグとリーダの間の通信手順や、リーダと業務の仕組みをつなぐ方法を、別々の仕様として定めています。各社の製品がこの標準に沿えば、どの会社のタグでも、さまざまな会社のリーダで読めるようにするためです。タグとリーダの通信手順はISO/IEC 18000-63としてISOの規格にもなっています。*3 治具管理システムを選ぶときは、どの機器とつながるかを確かめておくと、あとで機器を替えやすくなります。

選び方の4つのポイント

治具管理システムの選び方は、画面の使いやすさより先に、番号・タグ・台帳・電波の手続きの4つを決めておくと迷いません。どれも導入した後に変えると、タグの貼り直しや台帳の作り直しにつながるからです。

ステンレスの台の治具を前にハンディリーダーを構える技術者と、治具を指す担当

  • ポイント1 番号の付け方:社内だけの番号でも動きますが、他社の物が混ざる場面では番号が重なるおそれがあります。GS1 Japanは、RFIDを導入するときにEPC(GS1の番号をRFIDで使う形式)の採用を検討するよう勧めています。*5 どちらでも、同じ番号を2つの物に付けないことが大切です。*4
  • ポイント2 タグと周波数帯:周波数帯ごとに読み取り距離や一括読み取りのしやすさが違います(下の表)。実際の治具に貼り、保管棚に並べた状態で読めるかを試してから決めます
  • ポイント3 台帳とのつなぎ方:いまのExcel台帳や生産管理の仕組みから番号を取り込めるか、読み取れなかったときに手入力で補えるかを確かめます。GS1 Japanは、タグの破損に備えてバーコードや目で読める文字の印字を併せて行うことを勧めています。*4
  • ポイント4 電波の手続き:920MHz帯のRFIDは、使う機器によって免許局か登録局の申請が必要で、どちらにするかは機器で決まります。特定小電力の機器なら申請は要りません。*6
RFIDの主な周波数帯の違い
項目 HF(13.56MHz) UHF(880〜960MHz) 2.45GHz
読み取り距離 短い 長い 比較的長い
一括読み取り 比較的容易 容易 困難
金属の影響 大きく受ける 大きく受ける 大きく受ける
水の影響 あまり受けない 大きく受ける 大きく受ける

表はGS1 Japanの整理をもとにしています。*1 UHF帯は読み取り距離や一括読み取りのしやすさから、さまざまな業務で使われ始めていると説明されています。ただ、治具のように金属が多い物では、どの帯でも試験の結果で判断するのが確実です。

外部に頼むときに確認しておきたい点

治具管理システムは、タグの選定、読み取りの試験、台帳の移行、現場の運用までがそろって初めて使えるようになります。開発や導入を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

  • どこまで頼むか:機器とタグの選定、読み取り試験、台帳の設計、データ移行、現場への説明のうち、どれを任せるか
  • 読み取り試験:実物の治具と保管棚で試すか。何回読んで何回読めたら合格とするかを先に決めるか
  • 台帳の移行:Excelの重複や欠番を誰が直すか。移す前と後の件数をどう照らし合わせるか
  • ほかの仕組みとの連携:生産管理や設備保全の仕組みと番号をそろえるか
  • 運用後の見直し:読み取れなかった記録や返却の遅れを見て、置き場所やアンテナの位置を直す場を設けるか

工場の設備そのものの点検や修理の記録までまとめたい場合は、設備保全管理システム(CMMS)の外注の進め方が参考になります。工具や備品の貸し出し管理を広く扱う考え方は、備品管理システムの選び方で整理しています。

まとめ:治具管理システムで確かめておきたい3つの点

治具管理システムを入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、治具1個ずつに重複しない番号を付け、その付け方を最初に決めること。第二に、タグを実物の治具と保管棚で試し、読める条件を確かめてから機器を選ぶこと。第三に、いまの台帳や生産管理の仕組みとどうつなぐか、読み取れなかったときにどう補うかを決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「タグを貼ったのに読めず、結局Excelの台帳に戻ってしまった」という事態を避けやすくなります。機器の選定や台帳の設計に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

治具管理システムの構築では、UHF帯パッシブタグ(EPC UHF Gen2準拠)と、金属面に貼る治具での読み取り距離を、実物と保管棚で試験してからタグとアンテナの配置を決めます。リーダの制御はLLRP、台帳側はPostgreSQLなどのリレーショナルデータベースとWeb APIで組み、同じタグを何度も読んだ記録をまとめる処理や、台帳に無い番号を知らせる処理を設計に入れます。番号はGIAIを使うか社内の番号にするかを、取引先の物が混ざるかどうかで決めます。移行では、Excelの台帳の重複と欠番を洗い出し、移す前と後で件数を照らし合わせます。運用では、読み取れなかった記録とタグの交換手順を文書にし、置き場所やアンテナ位置の見直しを提案します。

よくある質問

最初はバーコードだけで始めてもよいですか

始められます。治具の数が少なく、1個ずつ読み取る手間が負担にならないなら、バーコードや2次元コードで台帳とつなぐだけでも記録の漏れは減らせます。あとでRFIDに移る場合に備えて、番号の付け方だけは最初に決めておくと、台帳を作り直さずに済みます。

RFIDの読み取り機を使うのに届け出は必要ですか

機器によって違います。920MHz帯の機器は、種類によって免許局か登録局の申請が必要で、特定小電力の機器なら申請は要りません。*6 機器の技術基準適合証明の番号で種別を確かめ、分からない場合は納入業者やメーカーに尋ねるよう案内されています。

GS1事業者コードが無いとRFIDは使えませんか

社内だけで閉じた仕組みなら、社内の番号で動かすこともできます。GS1の標準の番号(EPC)を使う場合はGS1事業者コードが必要ですが、すでに持っていれば追加の申請や費用は要りません。*4 取引先の物が混ざる場面があるかどうかで選ぶとよいでしょう。

治具管理の仕組みづくりのご相談

治具台帳の設計からRFIDの読み取り試験、生産管理など既存の仕組みとの連携まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「EPC/RFID(電子タグ)」(https://www.gs1jp.org/standard/epc/)。出典:RFIDタグの構成と通信の仕組み、非接触・遮蔽物・一括読み取り・汚れへの強さなどの特徴、周波数帯ごとの読み取り距離・一括読み取り・金属と水の影響の表、UHF帯の活用についての記述を参照(2026年11月確認)
  2. *2 参考:GS1 Japan「GIAI(資産管理識別コード)」(https://www.gs1jp.org/standard/identify/giai/)。出典:GIAIが企業の資産を管理するための識別コードであり、レンタル・リース品や医療器材・手術器具のメンテナンス管理など個々を識別する必要のある資産管理に使われるとの記述を参照(2026年11月確認)
  3. *3 参考:GS1 Japan「GS1 EPC/RFID標準」(https://www.gs1jp.org/standard/epc/epcrfidstandards.html)。出典:データ標準とインタフェース標準の区分、各社のタグとリーダをつなぐための標準化、EPC UHF Gen2がISO/IEC 18000-63になっているとの記述を参照(2026年11月確認)
  4. *4 参考:GS1 Japan「EPC/RFIDの利用方法」(https://www.gs1jp.org/standard/epc/how_epc.html)。出典:EPCの利用にGS1事業者コードが必要で既存の事業者コードなら追加の申請や費用は不要であること、同じ番号を二つのものに付けないこと、バーコード表示や目視可能文字の印字の併用を勧める記述を参照(2026年11月確認)
  5. *5 参考:GS1 Japan「EPCの必要性」(https://www.gs1jp.org/standard/epc/why_epc.html)。出典:独自コードでは他社の物と混在したときに判別や重複の問題が起こり得ること、RFID導入時にEPCの採用を勧める記述を参照(2026年11月確認)
  6. *6 参考:総務省 関東総合通信局「RFID(電波による個体識別)の申請」(https://www.soumu.go.jp/soutsu/kanto/ru/rfid.html)。出典:920MHz帯のRFIDで使用する無線設備により免許局または登録局の申請が必要で任意に選べないこと、特定小電力の機器は申請不要であること、技術基準適合証明番号で種別を確かめる手順の記述を参照(2026年11月確認)




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