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2026.07.16 らしくコラム

BIダッシュボード開発|経営データを可視化する外注

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてデータ活用基盤の開発・運用を受託

ダッシュボードのイメージ

この記事のポイント

  • BIダッシュボードは、基幹システムやSaaSに散在する経営データを集約し、KPIをグラフや表で可視化する分析基盤です。データ統合・整備・可視化・権限管理という複数の層で成り立ちます。
  • 予実管理システム・データウェアハウス(DWH)・データカタログとは役割が異なり、それぞれと連携させて初めて信頼できる可視化につながります。
  • 外注時は指標定義の整備・データ品質と鮮度・既存DWHや基幹との連携・内製移管のしやすさが確認の軸になります。

BIダッシュボードとは、経営データを一元的に可視化する分析基盤

データ可視化のイメージ

BIダッシュボードとは、複数のシステムに分散した経営データを集約し、KPI(重要業績評価指標)をグラフや表で一覧できるようにした画面のことを指します。BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの中核機能にあたり、日々更新されるデータを見ながら意思決定を支える役割を担います。Microsoftは自社のBI基盤について、データを実用的なインサイトに変えるための分析プラットフォームだと説明しています*1

図
図:経営データが意思決定に届くまでの流れ(データソース→ETL・整備→DWH→可視化→意思決定)

この図のとおり、ダッシュボードは一連のデータ活用の流れの最終段階に位置する仕組みです。左側のデータソースから可視化までがきちんとつながっていないと、画面に表示される数字の信頼性は揺らぎます。見た目のグラフだけを整えても、その手前のデータ整備が伴わなければ意思決定には使えません。

BIツールは一般に、ドラッグ&ドロップの操作でグラフを作り、フィルターやドリルダウンで深掘りできる機能を備えています*1。自然言語での問い合わせやリアルタイムのダッシュボードに対応する製品もあります*1。こうした表側の使いやすさを活かすには、裏側のデータ基盤づくりが前提になる点を最初に押さえておきましょう。

BIダッシュボード開発を支える5つの構成要素

BIダッシュボードの開発は、単なる画面デザインの作業ではありません。データを集め、整え、意味づけし、見せ、守るという複数の層をつなぐ設計が中心です。ここでは代表的な5つの構成要素を整理します。

1. データソース統合——基幹・SaaS・DWHをつなぐ

最初の要素は、社内外に散在するデータをダッシュボードから参照できるようにする統合です。基幹システムの販売実績、SaaSに蓄積された顧客管理データ、既存のDWHなど、参照先は多岐にわたります。BIツールの中には、データベースやクラウドサービス、ファイルなど100以上のデータソースへ接続できるものもあります*1。接続方式や認証の設計が、後々の運用のしやすさを左右します。

2. ETL・データパイプライン——集めたデータを整える

集めたデータは、そのままでは形式や粒度がばらばらです。そこで必要になるのがETL(抽出・変換・格納)です。ETLは多様なソースのデータを統合先へ集約する処理で、変換の段階では業務ルールに沿ってデータを加工します*2。変換を格納先で行うELT(抽出・格納・変換)という方式もあり、対象システムの処理能力が高い場合に向きます*2。センサーや取引のように絶え間なく発生するデータには、到着した順に処理するストリーミング型の構成が使われることもあります*2。更新をどの頻度で回すかは、この層の設計で決まります。

3. データモデルとKPI定義——指標の意味をそろえる

売上や解約率といった指標は、部門ごとに計算方法が異なると、同じ言葉でも違う数字になってしまいます。これを防ぐのがデータモデルと指標定義の層です。たとえばLookerのモデリング言語LookMLは、SQLの複雑さを一度だけ記述してカプセル化し、同じ計算を繰り返し書かずに済む仕組みを提供します*5。こうした意味づけの層(セマンティックレイヤー)を整えることで、利用者はSQLを書かなくてもディメンションやメジャーを選ぶだけでデータを探索できます*5

4. 可視化とドリルダウン——見せ方を設計する

可視化の層では、KPIをどのグラフで示し、どこまで掘り下げられるようにするかを決めます。折れ線や棒グラフの選択、期間や地域での絞り込み、明細への掘り下げ(ドリルダウン)などが設計対象です。利用者は可視化とドリルダウンを通じて、データモデルの構造を意識せずにパターンを見つけられます*5。経営層向けのサマリーと現場向けの明細では、同じデータでも見せ方が変わってきます。

5. 権限管理と行レベルセキュリティ——見える範囲を制御する

最後の要素は、誰にどのデータを見せるかの制御です。行レベルセキュリティ(RLS)は、特定の利用者に対してデータへのアクセスを行単位で制限する仕組みで、ロールごとに定義したフィルターで実現します*4。たとえば担当地域の行だけを表示するといった制御が可能になります*4。RLSは閲覧権限を持つ利用者に適用される点が重要で、権限設計を誤ると意図しないデータまで見えてしまうおそれがあります*4。埋め込み分析でダッシュボードを外部提供する場合は、この設計がとりわけ効いてきます*4

予実管理システム・DWH・データカタログとの違いと連携

BIダッシュボードは、しばしば予実管理システムやDWH、データカタログと混同されます。いずれもデータ活用に関わる仕組みですが、担う役割はそれぞれ別物です。ここで違いと連携の関係を整理しておきましょう。

予実管理システムとの違い——業務処理か、横断的な可視化か

予実管理システムは、予算と実績を突き合わせて管理する業務システムです。編成や進捗管理といった特定の業務プロセスに最適化されています。一方でBIダッシュボードは、予実だけでなく販売・在庫・人事など複数領域を横断して可視化することに軸足があります。予実管理システムのデータをBIのデータソースの一つとして取り込み、他部門の指標と並べて俯瞰する、という連携が現実的です。

DWHとの違い——貯めて整える基盤か、見せる画面か

DWH(データウェアハウス)は、分析に適した形でデータを蓄積・統合する基盤です。MicrosoftはFabric Data Warehouseを、データレイクを土台とした企業規模のリレーショナルウェアハウスと説明しており、スタースキーマや部門別のデータマート、BI向けに管理されたセマンティックモデルを主な用途に挙げています*3。DWHが「貯めて整える」役割なら、BIダッシュボードは「見せて分析する」役割です。多くの場合、ダッシュボードはDWHを主要なデータソースとして参照します。両者は競合ではなく、上流と下流の関係にあります。

データカタログとの違い——データを説明し、統治する台帳

データカタログは、組織内のデータ資産を検索・理解し、統治するための仕組みです。Microsoft Purviewのようなツールは、データ探索やビジネス用語集(用語定義)、データ品質の管理といった機能を通じて、データガバナンスを支えます*6。BIダッシュボードで可視化する指標の定義や品質を、カタログ側で一元管理しておくと、「この数字は何を意味するのか」という問いに答えやすくなります。カタログが指標の意味と品質を保証する台帳なら、ダッシュボードはその指標を見せる窓口だと整理できます。

仕組み 主な役割 BIダッシュボードとの関係
予実管理システム 予算と実績の管理という業務処理 データソースの一つとして取り込む
DWH 分析向けにデータを蓄積・統合*3 主要な参照元(上流の基盤)
データカタログ データの検索・用語定義・品質管理*6 指標の意味と品質を裏づける台帳
BIダッシュボード KPIをグラフや表で可視化*1 利用者が数字を見る窓口

BIツール導入かスクラッチ開発か——判断の分かれ目

KPIレポートのイメージ

ダッシュボードを実現する手段は、大きく分けて2通りあります。既存のBIツールを導入する道と、自社向けにスクラッチ開発する道です。どちらが適するかは要件次第で、一概にどちらが優れているとは言えません。

BIツール導入が向くケース

Tableau、Power BI、Lookerといった一般的なBIツールは、多様なデータソースへの接続、ドラッグ&ドロップでの可視化、行レベルセキュリティ、埋め込み分析などの機能を標準で備えています*1*4。標準機能で要件の大半をまかなえるなら、比較的短い期間で構築でき、その後の保守もツール提供元の更新に乗せられます。定型的なレポーティングや部門横断の可視化であれば、ツール導入が現実的な選択肢になりやすいでしょう。なお本稿では特定製品の優劣は判断せず、一般的な機能傾向として述べています。

スクラッチ開発が向くケース

一方で、自社サービスの画面にダッシュボードを深く組み込みたい場合や、標準ツールでは表現しづらい特有の操作性を求める場合には、スクラッチ開発が候補になります。顧客向けに分析画面を提供する埋め込み分析のように、認証やデータ分離を作り込む必要がある構成もこれにあたります*4。ただしスクラッチ開発は初期の作り込みだけでなく、その後の保守や機能追加まで自社の責任範囲が広がります。開発・運用のコストと、得たい自由度を天秤にかける判断が求められます。

判断軸の整理

導入かスクラッチかを分ける主な軸は、標準機能で要件を満たせるか、自社プロダクトへの埋め込みが必要か、内製で保守できる体制があるか、扱うデータ規模はどの程度か、の4点に整理できます。この見極めを飛ばして手段を先に決めてしまうと、後戻りのコストが膨らみかねません。まずは要件を言語化し、そのうえで手段を選ぶ順序が大切です。

外注先に確認したい4つのポイント

BIダッシュボードの開発を外部パートナーに委託する場合、見た目の完成度だけで判断すると、運用開始後につまずくことがあります。委託先の選定では、次の4点を具体的に確認しておくとよいでしょう。

1. KPI・指標定義の整備

可視化の前に、そもそも指標の定義が社内でそろっているかを確認します。売上や稼働率の計算方法が部門でばらばらだと、ダッシュボードが部門間の数字の食い違いを露呈させるだけになりかねません。委託先が指標定義の整理を支援できるか、セマンティックレイヤーで計算ロジックを一元管理する設計を提案できるかが見極めどころです*5。データカタログの用語定義と連動させる方針も有効でしょう*6

2. データ品質と鮮度(更新頻度・リアルタイム)

次に、表示されるデータの品質と鮮度をどう担保するかを確認します。データカタログのようにデータ品質のルールを設定して評価する仕組みがあると、品質を継続的に点検できます*6。更新頻度については、日次のスケジュール更新で足りるのか、リアルタイムに近い反映が要るのかを明確にします*1。要件が高頻度なら、ストリーミング型のパイプラインを含めた設計が必要になります*2。鮮度の要件はコストに直結するため、早めにすり合わせておきましょう。

3. 既存DWH・基幹システムとの連携

三つ目は、既存の資産をどう活かすかです。すでにDWHや基幹システムがあるなら、それらを参照元として活かす連携方式を確認します*3。データを取り込む方式か、直接クエリで参照する方式かによって、性能や運用の負荷は変わってきます。委託先が自社の既存構成を踏まえた接続設計を示せるかどうかが、選定の分かれ目になります。

4. 内製移管のしやすさ

四つ目は、将来自社で運用を引き取れるかという観点です。特定の担当者しか触れない属人的な作り方だと、委託先への依存が続きます。指標定義やデータモデルがドキュメント化されているか、権限設計(RLSのロールなど)が整理されているかを確認しておくと、内製移管の際に助かります*4。セルフサービスBIとして現場が自ら分析する運用と、ガバナンスを効かせた統制の両立をどう設計するかも、あわせて話し合っておきたい点です*6

まとめ:BIダッシュボード開発で押さえる3つの判断軸

本稿では、BIダッシュボードとデータ可視化基盤の開発について、公式ドキュメントをもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、ダッシュボードはデータソース統合・ETL・データモデル・可視化・権限管理という複数の層で成り立ち、表側の見やすさは裏側のデータ整備に支えられます*1*2。第二に、予実管理システム・DWH・データカタログとは役割が異なり、それぞれと連携させることで初めて信頼できる可視化につながります*3*6。第三に、外注時は指標定義の整備・データ品質と鮮度・既存基盤との連携・内製移管のしやすさが確認の軸となり、これらを踏まえてツール導入とスクラッチ開発を選び分けることが実務的です*4*5

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、データ活用基盤の開発・運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。データソースの統合からETL・データパイプラインの整備、指標定義の整理、可視化と権限設計まで、一連の工程を一貫して支援する体制を整えています。既存のDWHや基幹システムを活かしながら段階的に整えたい企業様は、現状の構成診断からご相談いただけます。

よくある質問

BIダッシュボードとBIツールは何が違うのですか。

BIツールは、データ接続から可視化、権限管理までを備えたソフトウェア全体を指します*1。ダッシュボードは、そのBIツールで作る「KPIを一覧できる画面」という個別の成果物です。ツールという道具の中で、ダッシュボードという表示物を作る、という関係になります。

すでにDWHがあります。BIダッシュボードは別に作る必要がありますか。

DWHは分析向けにデータを蓄積・統合する基盤で、それ自体は「見せる」機能を主目的としていません*3。既存のDWHを主要なデータソースとして参照し、その上に可視化の層としてダッシュボードを載せる構成が一般的です。DWHがある場合、ダッシュボード開発の多くはデータモデルと可視化・権限の設計に集中できます。

部門ごとに見せるデータを分けたい場合はどうすればよいですか。

行レベルセキュリティ(RLS)を使うと、ロールごとに定義したフィルターで、利用者が見られる行を制限できます*4。担当地域や部門の行だけを表示するといった制御が可能です。ただしRLSは権限設計を誤ると意図しないデータが見えるおそれがあるため、ロールの割り当てを検証する運用が欠かせません*4

ダッシュボードのデータはどのくらいの頻度で更新できますか。

更新頻度は基盤の設計で決まります。日次や時間単位のスケジュール更新が一般的ですが、リアルタイムに近い反映が必要な場合はストリーミング型のパイプラインを組み込みます*1*2。鮮度を高めるほど基盤の負荷とコストは増えるため、業務で本当に必要な頻度を見極めることが大切です。

開発を外注する際、契約前に何を確認すべきですか。

指標定義の整備状況、データ品質と鮮度の担保方法、既存DWHや基幹システムとの連携方式、そして将来の内製移管のしやすさを確認します*3*6。あわせて権限設計の考え方や、ドキュメントの整備範囲もすり合わせておくと、運用開始後のトラブルを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:Microsoft「What is Power BI?」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/power-bi/fundamentals/power-bi-overview
  2. *2 出典:Microsoft「Extract, transform, load (ETL)」(Azure Architecture Center、Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/architecture/data-guide/relational-data/etl
  3. *3 出典:Microsoft「What Is Fabric Data Warehouse?」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/fabric/data-warehouse/data-warehousing
  4. *4 出典:Microsoft「Row-level security (RLS) guidance in Power BI Desktop」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/power-bi/guidance/rls-guidance
  5. *5 出典:Google Cloud「Introduction to LookML」(Looker Documentation)(https://docs.cloud.google.com/looker/docs/what-is-lookml
  6. *6 出典:Microsoft「Learn about Microsoft Purview Unified Catalog」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/purview/unified-catalog


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