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2026.07.13 らしくコラム

契約書レビューAI導入を外注で進める方法

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

契約書レビューのイメージ

この記事のポイント

  • 契約書レビューAI(リーガルテック)は、条項抽出やリスク条項の指摘、自社ひな形との差分確認などをAIが支援する仕組みで、法務省は2023年8月に弁護士法72条との関係を整理する見解を公表しました。
  • 生成AIに契約書の内容を入力する場面では、個人情報保護委員会が入力情報の学習利用リスクへの注意喚起を行っており、機密保持の確認が欠かせません。
  • AIの出力には誤り(ハルシネーション)が含まれる可能性があるため、最終的な契約締結の可否判断は法務担当者や弁護士など人が行う必要があります。

契約書レビューAI・リーガルテックとは何か

文書AIのイメージ

契約書レビューAIとは、生成AIや自然言語処理の技術を使い、契約書の条項確認やリスク箇所の洗い出しを支援するツールを指します。法務(リーガル)分野にテクノロジーを組み合わせた取り組みは一般にリーガルテックと呼ばれており、契約審査の効率化はその代表的な活用場面のひとつです。

図
図:契約書レビューAIが担う主な支援機能の流れ

契約書レビューAIは、あくまで条項の抽出やリスク箇所の提示といった支援を行うツールであり、契約締結の可否を判断するものではありません。最終的な法的判断は法務担当者や弁護士など人が行う前提で使われる点が、一般的な位置づけとして整理されています*1

次章では、契約書レビューAIが具体的にどのような場面で使われているかを整理します。

契約書レビューAIでできること――5つの機能

条項抽出——契約書から主要条項を自動的に洗い出す

契約書レビューAIの基本機能として、契約書のテキストから当事者・契約期間・支払条件・解除条件などの主要条項を自動的に抽出し、一覧化する機能があります。読み込む契約書の分量が多い場合でも、確認すべき箇所を早い段階で把握できるようになります。

リスク条項の指摘——注意すべき表現をハイライトする

賠償責任の上限が定められていない条項や、解除条件が一方に偏っている条項など、あらかじめ設定した基準やパターンに沿って注意すべき箇所をハイライト表示する機能です。基準の作り方によって検出の粒度が変わるため、自社のリスク許容度に合わせた調整が求められます。

自社ひな形との差分確認——登録した雛形と照らし合わせる

自社で使用している契約ひな形をあらかじめ登録しておき、相手方から提示された契約書との差分を表示する機能です。どの条項が自社ひな形と異なるかを機械的に洗い出せるため、レビューの初期段階で確認すべき箇所を絞り込みやすくなります。

表記・体裁チェック——誤字脱字や定義語の不一致を確認する

誤字脱字や条項番号のずれ、定義語(「甲」「乙」など)の不一致といった体裁面の確認を行う機能です。内容面のリスク判断とは性質が異なりますが、実務では見落としが起きやすい部分でもあります。

要約——契約全体の要点をまとめる

長文の契約書について、主要な取り決めやリスクとなり得る条項を短くまとめる機能です。関係部署への説明資料や、決裁前の確認材料として使われることが多い機能です。

生成AIによる契約審査と弁護士法72条——法務省が示した整理

契約書レビューAIの活用を検討する際、多くの企業が気にかけるのが弁護士法第72条との関係です。同条は、弁護士や弁護士法人でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを禁じる規定です。

この点について法務省大臣官房司法法制部は、2023年8月1日付で「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」と題する見解を公表しています*1。この見解では、①報酬を得る目的があること、②権利関係に関する争い(事件性)がある事案であること、③法律の専門知識に基づく鑑定など法律事務に該当することという要件が示されており、これらが全て満たされて初めて同条の問題になり得るという整理が示されています*1

そのうえで、通常の企業間取引に伴う契約締結に向けた話し合いや、契約書作成・レビューの支援サービスが利用される場面の多くは、権利関係の争いを伴う「事件性」がないケースが多いという考え方が示されています*1。一方で、この整理はあくまで一般的な事業スキームを前提としたものであり、個別の事案が実際に該当するかどうかまで判断するものではありません。自社の利用場面が整理に当てはまるかどうかは、契約する内容や利用方法によって変わり得るため、断定はできません。

なお弁護士法72条とリーガルテックサービスの関係については、その後も規制改革推進会議のワーキング・グループなどで議論が続いており、2026年1月にも法務省から関連資料が示されています*4。制度の考え方は今後も更新され得るため、契約書レビューAIを継続的に業務利用する場合は、最新の公的情報を確認する姿勢が欠かせません。本記事の内容は一般的な情報整理であり法的助言ではないため、個別の利用の可否については弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

機密保持と学習利用の可否——入力データの扱いに注意

契約書には、自社だけでなく取引先の社名・取引条件・金額といった機密情報が含まれます。契約書レビューAIやリーガルテックのSaaSに契約書の内容を入力する場合、そのデータがサービス提供者側でどのように扱われるかを事前に確認しておく必要があります。

個人情報保護委員会は2023年6月2日、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました*2。この中では、個人情報を含む内容を生成AIサービスに入力する場合、利用目的の範囲内であるかを十分に確認する必要があるという考え方が示されています*2。契約書には担当者名や連絡先など個人情報が含まれることも珍しくないため、この注意喚起は契約書レビューAIの利用場面にも関わってきます。

確認しておきたい観点としては、入力したデータがAIの学習(モデルの再学習や改善)に利用されるかどうか、利用される場合に停止(オプトアウト)の設定があるかどうか、データの保存期間や保存先のリージョンがどうなっているか、といった点が挙げられます。取引先との間で秘密保持契約(NDA)を結んでいる場合、その契約書自体をどの範囲まで外部サービスに入力してよいかも、あわせて社内で整理しておく事項です。

ハルシネーションと人手確認——最終判断は人が行う理由

生成AIには、事実と異なる内容や存在しない条文・判例を、あたかも正しい情報であるかのように出力してしまう現象があり、一般にハルシネーションと呼ばれています。契約書レビューAIについても、この特性は前提として理解しておく必要があります。

総務省・経済産業省が策定した「AI事業者ガイドライン」では、生成AIに特有のリスクとして、誤った情報や偏った情報が生成・拡散される可能性が挙げられています*3。契約書レビューAIの出力についても、指摘されたリスク条項や要約された内容をそのまま鵜呑みにせず、担当者が原文と照らし合わせて確認する運用が前提になります。

そのため、契約書レビューAIはあくまで確認作業を効率化する支援ツールと位置づけ、契約締結の可否を最終的に判断するのは法務担当者や必要に応じて依頼する弁護士であるという役割分担を、社内で明確にしておくことが望ましいといえます。AIの指摘結果を参考情報として扱い、重要な契約ほど人による確認の比重を高めるという運用ルールが、実務では現実的な落としどころになりやすいところです。

既製SaaSか自社文書に合わせた開発か——比較の軸

契約書レビューAIを導入する方法は、大きく分けて既製のSaaSを利用する方法と、自社の契約書運用に合わせてシステムを開発する方法があります。どちらが適しているかは、契約書の種類や量、既存の運用体制によって変わってきます。

項目 既製SaaS 自社文書に合わせた開発
導入までの期間 比較的短い(申込後すぐ利用開始できる場合が多い) 要件定義から構築まで一定の期間を要する
初期費用の傾向 月額・年額課金が中心で初期費用を抑えやすい 開発費用が発生し初期投資は大きくなりやすい
自社ひな形への対応 機能の範囲内でひな形登録・カスタマイズを行う 業界特有の条項や社内基準を細かく反映しやすい
既存システムとの連携 提供されるAPI・連携機能の範囲に依存する 契約管理システムなどとの連携を柔軟に設計できる
保守・アップデート 提供事業者側で機能追加や法令対応が行われる 自社または委託先での継続的な保守が前提になる

契約件数が比較的少なく、まずは効率化の効果を確かめたい場合は既製SaaSから始めやすいといえます。一方、業界特有の契約類型が多い場合や、既存の契約管理システムと密接に連携させたい場合は、自社文書に合わせた開発を選ぶ企業もあります。

社内文書・ひな形の整備——導入前に済ませておくこと

契約書レビューAIは、自社のひな形やリスク基準が整理されているほど、差分確認やリスク指摘の精度を発揮しやすくなります。逆に、ひな形が部署ごとにばらばらであったり、リスク許容度の考え方が言語化されていなかったりすると、AIに何を基準として判断させればよいかが定まらず、導入効果を測りにくくなります。

導入前に済ませておきたい準備としては、契約類型ごとの標準ひな形の統一、注意すべき条項パターン(賠償上限・解除条件・秘密保持の範囲など)の洗い出し、既存契約データの保管状況の整理などが挙げられます。あわせて、どの部署がAIの指摘結果を確認し、誰が最終承認を行うかという役割分担も、この段階で決めておくと運用がスムーズになります。

導入の進め方と外注時に確認したい点

契約書レビューAIの導入は、現状の契約審査フローの可視化から始めるのが実務的な進め方です。どの契約類型を、誰が、どのくらいの時間をかけて審査しているかを洗い出したうえで、対象となる契約類型を絞り込みます。次に候補となるツールでPoC(概念実証)を行い、自社のひな形やリスク基準に沿った検出ができるかを確認します。運用ルールが固まった段階で、対象範囲を広げていく進め方が一般的です。

外部の専門会社に導入支援を依頼する場合は、確認しておきたい点がいくつかあります。まず、入力データの取り扱い方針(学習利用の可否・保存先・NDAとの関係)を明確に説明してもらえるかどうかです。加えて、自社のひな形やリスク基準に合わせたカスタマイズ範囲、既存の契約管理システムとの連携可否、導入後の運用サポート体制なども確認しておくと、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。生成AIを使ったシステム開発を外注する場合の契約条件(著作権・データ利用など)については、別途整理が必要な論点も多いため、契約条件を個別に確認しておくことをおすすめします。

。自社の契約審査フローや保有する契約類型によって最適な進め方は変わるため、現状の業務フローを整理したうえで導入方法を検討することが実務的です。

まとめ:契約書レビューAI導入で押さえる3つの判断軸

本稿では契約書レビューAI・リーガルテックの導入について、公的機関の見解をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、契約書レビューAIは条項抽出やリスク条項の指摘、自社ひな形との差分確認などを支援するツールであり、通常の企業間契約の審査場面では弁護士法72条上の事件性がないケースが多いという整理が法務省から示されています*1。ただし個別の利用可否は事案によって変わるため断定はできず、専門家への確認が前提になります。第二に、契約書には機密情報や個人情報が含まれるため、入力データの学習利用可否や保存先の確認が欠かせません*2。第三に、生成AIの出力にはハルシネーションが含まれる可能性があるため、最終的な契約締結の判断は人が行う運用を前提に、既製SaaSと自社開発のどちらを選ぶか、社内のひな形整備状況を踏まえて検討することが実務的です*3

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステムの企画から開発・保守運用までを一貫して受託しています。契約書レビューAI・リーガルテックの選定支援から、自社ひな形に合わせたシステム開発、外注時のセキュリティ・データ取り扱い要件の整理まで、状況に応じた体制構築をご提案します。既存の契約審査フローを踏まえて導入方法を検討したい企業様は、現状整理からご相談いただけます。

よくある質問

契約書レビューAIを導入すれば、弁護士への確認は不要になりますか。

いいえ、不要になるとは言い切れません。契約書レビューAIは条項抽出やリスク指摘を支援するツールであり、最終的な契約締結の可否判断は法務担当者や弁護士など人が行うことが前提です*1。本記事の内容は一般的な情報整理であり法的助言ではないため、個別の契約内容については弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

契約書の内容を生成AIツールに入力しても情報漏えいの心配はありませんか。

契約書には取引先の機密情報や個人情報が含まれることがあります。個人情報保護委員会は生成AIサービスへの入力に関する注意喚起を行っており*2、入力データが学習に利用されるかどうか、保存先やオプトアウトの設定があるかどうかを、利用前にサービス提供事業者へ確認しておく必要があります。

契約書レビューAIの指摘結果はそのまま信用してよいのでしょうか。

生成AIには誤った内容を出力するハルシネーションという特性があるとされています*3。指摘されたリスク条項や要約結果は参考情報として扱い、担当者が契約書の原文と照らし合わせて確認する運用が前提になります。

自社のひな形が整備されていない場合でも導入できますか。

導入自体は可能ですが、ひな形やリスク基準が整理されているほど差分確認やリスク指摘の精度を発揮しやすくなります。導入前に契約類型ごとの標準ひな形や注意すべき条項パターンを整理しておくことをおすすめします。

導入を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。

入力データの取り扱い方針(学習利用の可否・保存先)、自社ひな形へのカスタマイズ範囲、既存の契約管理システムとの連携可否、導入後の運用サポート体制などを事前に確認しておくと、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:法務省大臣官房司法法制部「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(2023年8月1日公表・アクセス制限によりリンク不可、法務省ウェブサイト内で公表)
  2. *2 出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)(https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/
  3. *3 出典:総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」(2025年3月28日)(https://www.soumu.go.jp/main_content/001002576.pdf
  4. *4 出典:内閣府 規制改革推進会議 スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ資料「弁護士法72条とAIリーガルテックサービス」(法務省大臣官房司法法制部、2026年1月9日)(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2501_06ai/260109/ai06_05.pdf


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