LASSIC Media らしくメディア

2026.08.18 らしくコラム

デジタルツインとは|現実を仮想で再現し活用

工場の生産ラインを止めずに、レイアウト変更の効果を試したい。ビルの設備を、現場に行かずに見守りたい。そんな「現実では試しにくいこと」を、デジタルの世界で先に確かめられたら——。それを叶える技術として注目されているのが「デジタルツイン」です。現実のモノや設備を、デジタル空間にそっくり再現した「双子」をつくり、現実のデータで動かしながら、さまざまな検討を進める考え方です。

言葉だけ聞くと近未来的ですが、めざすところは実務的です。本記事では、デジタルツインの活用を検討する情報システム部門や事業部門の担当者に向けて、デジタルツインとは何か、単なる3Dモデルとどう違うのか、どんな場面で役立つのか、そして外注の勘所を整理します。

現実とデジタルをつなぐデジタルツインのイメージ

デジタルツインとは——現実とデジタルの双子

デジタルツインとは、現実のモノ・設備・空間を、デジタル空間にそっくり再現した「双子」を指します。ツイン(twin)は双子という意味です。ただ形を似せた模型をつくるのではなく、現実に取り付けたセンサーから、温度・振動・稼働状況といったデータを取り込み、デジタル側の双子へ絶えず反映していきます。現実が動けば、デジタルの双子も同じように動く——両者が結びつき、連動し続けるのが、デジタルツインの核となる考え方です。

なぜ、そんな双子をつくるのでしょうか。答えは、「現実では試しにくいことを、デジタルの側で先に確かめられる」からです。たとえば、稼働中の設備を止めて実験するのは、コストもリスクも大きいものです。けれど、デジタルの双子の上でなら、条件を変えて何度でも試せます。現場に足を運ばずに状態を見守ることも、故障の予兆をつかむこともできます。現実とデジタルを行き来しながら、判断の質を高めていく——それがデジタルツインの狙いです。

この記事のポイント

  • デジタルツインは、現実のモノや設備をデジタル空間に再現し、現実のデータで動かし続ける双子です。
  • 一度作って終わりの3Dモデルと違い、現実と連動して更新され続ける点が特徴です。
  • シミュレーション・遠隔監視・予測に使えますが、センサーやデータ整備の手間を見込む必要があります。

単なる3Dモデル・シミュレーションとの違い

デジタルツインは、「3Dモデル」や「シミュレーション」と混同されがちです。どこが違うのかを押さえておくと、理解がはっきりします。全体像を図にまとめました。

デジタルツインの仕組みと単なる3Dモデルとの違いを示す図

まず、3Dモデルとの違いです。製品や建物の3Dモデルは、形を再現した「模型」です。よくできたものでも、多くは一度作れば、その姿のまま変わりません。対してデジタルツインは、現実のセンサーから届くデータで、絶えず中身が更新されます。いわば「生きたまま」現実を映し続けるのが違いです。次に、シミュレーションとの違いを見てみます。従来のシミュレーションは、あらかじめ用意した条件のもとで計算を回すものが中心でした。デジタルツインは、現実の「今」のデータを土台にシミュレーションを行い、その結果を現実へ返す、という往復が組み込まれています。つまり、現実と切り離された計算ではなく、現実とつながり続けている点が、デジタルツインならではの特徴です。3Dモデルやシミュレーションの技術を土台にしつつ、「現実との連動」を加えたもの、と捉えると分かりやすいでしょう。

仮想側でできること

現実とつながった双子があると、デジタルの側で何ができるのでしょうか。代表的な使い方を整理しました。

できること 内容 うれしい点
シミュレーション 変更や対策を仮想で試す 現実を止めずに検証できる
遠隔での監視 現場に行かず状態を把握 移動の手間を減らせる
予測・最適化 故障の予兆や無駄を見つける 先手の対応につなげられる

一つ目は、シミュレーションです。生産ラインのレイアウトを変えたらどうなるか、設備の設定を見直したら効率はどう変わるか——現実を動かす前に、デジタルの双子で試せます。うまくいかない案を、現実に持ち込む前にふるい落とせるのが値打ちです。二つ目は、遠隔での監視です。離れた場所にある設備の状態を、デジタルの双子を通して手元で把握できます。現場への移動を減らし、異変にも早く気づけます。三つ目は、予測と最適化です。データの移り変わりから、故障の予兆をとらえたり、エネルギーの無駄を見つけて減らしたりできます。異常の検知と組み合わせれば、先手を打つ運用に近づくのです。いずれも、「現実で起きる前に、デジタルで気づく・試す」という点が共通しています。

業務での使いどころ

デジタルツインは、設備やモノを扱う現場で持ち味を発揮します。たとえば製造業では、工場の生産ラインを双子にして、ボトルネックの発見や、レイアウト変更の事前検証に使えます。ラインを止めずに改善案を試せるのは、大きな利点です。設備の保全でも力を発揮します。ポンプやモーターといった機器の双子をつくり、振動や温度の変化から不調の兆しをとらえれば、壊れる前の手当てにつなげられます。これは、機器の状態に応じて手を打つ予兆保全(状態基準保全)とも深く関わる使い方です。ビルや施設の管理では、空調や電力設備の双子で、エネルギーの使われ方を見える化し、無駄を抑える検討ができます。こうした活用の土台になるのが、現実のデータを集めるセンサーやIoTの仕組みです。何をデジタル化し、どのデータを取り込むかによって、双子でできることは変わってきます。

つまずきやすい難所

デジタルツインは可能性の広い技術ですが、過度な期待を避けるためにも、知っておきたい難所があります。

一つ目は、データとセンサーの準備にかかる手間です。現実を映す双子をつくるには、現場にセンサーを取り付け、データを集め、整える必要があります。ここには相応のコストと時間がかかります。二つ目は、目的が曖昧なまま始めてしまうことです。「何を試したいのか」「どの判断に役立てたいのか」が定まらないまま双子をつくると、立派な模型はできても、使いどころのない仕組みになってしまいます。三つ目は、双子の精度への向き合い方です。デジタルの双子は現実を映したものですが、現実そのものではありません。どこまで細かく再現するかは目的しだいで、必要以上に作り込むと、費用ばかりがかさみます。四つ目は、一度に完璧をめざすことです。最初から工場全体をまるごと双子にしようとすると、大がかりになりすぎます。小さな範囲から始め、手ごたえを確かめながら広げるのが現実的です。

外注時に確認しておきたい点

デジタルツインの構築を外部に委託する場合は、次の点をすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、何のためにつくるのか、という目的です。シミュレーションで何を試したいのか、監視や予測で何を実現したいのか——ここがはっきりしていないと、作り込みの方向が定まりません。目的を起点に、どこまで再現する必要があるのかを、一緒に見極めてもらうとよいでしょう。曖昧なまま進むと、費用ばかりが膨らみかねません。

次に、データとセンサーの整備をどう進めるかです。現実のどのデータを、どうやって集めるのか。既存の設備から取れるのか、新たにセンサーが要るのか。この見立てが、費用と期間を大きく左右します。あわせて、小さく始めて段階的に広げる進め方を描いてもらえると無理がないはずです。まずは一つの設備やラインで手ごたえを確かめ、成果を見ながら対象を広げる——そうした段取りまで含めて相談できると、任せたあとのつまずきを抑えやすくなります。

まとめ:デジタルツインで押さえる3つの視点

デジタルツインは、現実とデジタルをつなぎ、「試す・見る・予測する」を支える技術です。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、デジタルツインは現実のモノや設備をデジタル空間に再現し、現実のデータで動かし続ける双子であり、一度作って終わりの3Dモデルとは、現実との連動という点で違うこと。第二に、シミュレーション・遠隔監視・予測に使え、製造・設備保全・施設管理などの現場で持ち味を発揮すること。第三に、センサーやデータ整備の手間がかかるため、目的をはっきりさせ、小さく始めて広げるのが現実的だということです。この3点を押さえておけば、「とりあえずデジタルツインを」という飛びつきを避け、目的に見合った活用を選びやすくなります。構築の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステムの構築から運用までを一貫して受託しています。デジタルツインで何を実現したいのかの見極めから、データとセンサーの整備、小さく始めて広げる段階的な進め方、そして現実との連動の作り込みまで、分断せずに対応できるのが強みです。どこから手を付けるべきか、現状把握の段階からご相談いただけます。

よくある質問

デジタルツインと3Dモデルは、何が違いますか。

3Dモデルは形を再現した模型で、多くは一度作ればその姿のまま変わりません。デジタルツインは、現実のセンサーから届くデータで中身が絶えず更新され、現実と連動し続けます。いわば「生きたまま」現実を映す点が違いです。3Dモデルを土台にしつつ、現実とのつながりを加えたもの、と捉えると分かりやすいでしょう。

どんな業務で役立ちますか。

設備やモノを扱う現場で持ち味を発揮します。工場の生産ラインの改善検証、ポンプやモーターなどの設備の予兆保全、ビルや施設のエネルギーの見える化などが代表的です。現実を止めずに試したい、現場に行かず見守りたい、壊れる前に手を打ちたい、といった場面で候補になります。

導入には、何が必要ですか。

現実のデータを集める仕組みが土台になります。設備にセンサーを取り付け、稼働状況などのデータを集め、整えたうえで、デジタルの双子へ取り込むわけです。既存の設備から取れるデータもあれば、新たにセンサーが要ることもあります。この準備が費用と期間を左右するため、あらかじめ見立てておくことが大切です。

小さく始めることはできますか。

むしろ、小さく始めるのがおすすめです。最初から工場全体を双子にしようとすると大がかりになりすぎます。まずは一つの設備やラインに絞って双子をつくり、手ごたえを確かめてから対象を広げる進め方が現実的です。段階的に広げることで、費用の見通しも立てやすくなります。

デジタルツインは現実とまったく同じですか。

同じではありません。デジタルの双子は現実を映したものですが、現実そのものではなく、どこまで細かく再現するかは目的によって変わります。必要以上に作り込むと費用がかさむため、何を試したいのかに照らして、再現する範囲を見極めることが大切です。あくまで判断を助ける道具と捉えるとよいでしょう。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

デジタルツインの構築・活用のご相談はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、目的の見極めから、データとセンサーの整備・小さく始めて広げる進め方・現実との連動の作り込みまで、貴社の活用に合わせてご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 参考:Amazon Web Services「What is Digital Twin Technology?」(https://aws.amazon.com/what-is/digital-twin/)。デジタルツインの一般的な解説の参考として。


View