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Dynamics 365導入支援の選び方|頼める範囲と進め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Dynamics 365導入支援は、要件の整理から稼働後の安定までを支援会社と進める仕事で、製品の系統によって中身が変わります。
- Business Centralの日本向けの機能はパートナーのアプリで補うため、どのアプリを前提にするかを最初に確かめます。
- 支援会社は、作業の分担と範囲外の明記、年2回の大きな更新への備えまで含めて選ぶことが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
営業の案件はExcel、会計は別のパッケージ。Dynamics 365でまとめたいが、どこまで社内で進められるのか分からない。支援会社に見積もりを頼んだものの、何を比べればよいのか見当がつかない——。基幹の業務を入れ替える導入では、こうした迷いが起こりがちです。Dynamics 365は、営業の管理から会計・在庫・生産の管理までをそろえたMicrosoftの業務アプリケーション群で、導入支援はその設計から稼働までを外部の担当者と進める支援です。
製品が多いぶん、どの製品を入れるかで支援の中身も変わります。ただし万能ではなく、標準の機能に業務を合わせきれないと、追加の開発と保守の負担が後に残ります。本記事では、Dynamics 365を新しく導入する情報システムの担当者に向けて、製品ごとの違い、頼める範囲、導入の進め方、そして支援会社を選ぶときの確認点を整理します。
目次
Dynamics 365導入支援とは
Microsoftは、Dynamics 365の導入を進めるための手引きとして「Success by Design」を公開しています。数千件の導入プロジェクトの経験をまとめたもので、導入を請け負う会社と利用する会社の両方が使えるとしています。*1 Dynamics 365導入支援は、こうした進め方に沿って、要件の整理から稼働後の安定までを利用する会社と一緒に進める仕事です。
- Business Centralでは、契約の窓口になる販売パートナーが、業務に合わせた設定や前のシステムからのデータの取り込みを手伝う形が案内されています*6
- Microsoft自身も、製品の開発チームが運営するFastTrack for Dynamics 365という導入支援の取り組みを持っています
- 支援の範囲は、業務の流れの整理、データ移行、他のシステムとの連携、テスト、教育、切り替えまで広く、契約ごとに違います
Success by Designは特定の手法を押しつけるものではなく、支援会社がそれぞれ持つ進め方に重ねて使う位置づけです。そのため支援会社を比べるときは、手法の名前よりも「どの作業を誰が受け持つか」を確かめるほうが役に立ちます。GPやNAVからの移行はDynamics GP/NAV移行の内製と外注の比較で扱っています。
製品ごとの違い
Dynamics 365は、業務ごとに分かれたアプリケーションの集まりです。新しく導入するときに検討することの多い系統は次の3つで、どれを選ぶかで支援会社に求める知識も稼働までの手続きも変わります。
| 系統 | 主な業務 | 導入で押さえる点 |
|---|---|---|
| Business Central | 中小・中堅企業向けの業務管理。会計、販売、購買、在庫、プロジェクト、生産など*3 | 日本向けの機能(ローカライズ)は、Microsoftではなくパートナーが提供する |
| Finance・Supply Chain Management | 財務と、調達・生産・倉庫などのモノの流れの管理 | 本番の環境は、Microsoftとの稼働準備のレビューを経てから用意される*9 |
| Sales | 営業の取引先・案件の管理(CRM=顧客関係管理) | Dataverse(Microsoftのデータの基盤)の上で動き、Power Appsで画面を作り込める*7 |
Business Centralを日本で使う場合、日本向けの機能と日本語の表示は、Marketplace(Microsoftのアプリの公開の場)にあるパートナーのアプリで補う形です。*4 見積もりを比べる前に、どのローカライズのアプリを前提にしているかを確かめておきます。営業の管理と基幹の業務をつなぐ考え方は基幹システムのAPI連携を外注で進める方法で扱っています。
頼める範囲と社内に残す作業
Microsoftの実装ガイドは、契約書や作業範囲記述書(SoW)に作業が大まかにしか書かれず、利用する会社と支援会社の双方が「相手がやるもの」と思い込む行き違いを、よくある失敗として挙げています。作業ごとに前提と役割を書き、範囲外の作業も明記するよう勧めています。*2

| 作業 | 支援会社に頼める作業 | 社内で決めること |
|---|---|---|
| 業務の流れの整理 | 今の業務の聞き取りと文書化、標準機能との照らし合わせ | 標準機能に業務を合わせるか、追加で開発するか |
| データ移行 | 移行の手順づくり、項目の対応づけ、取り込み | どのデータを持っていくか、誤りを誰が直すか |
| 他システムとの連携 | 連携の設計と開発 | 連携先のシステムの担当との調整 |
| テスト | テストの計画と実施 | 受け入れテストで業務部門が確かめる項目 |
| 権限の設計 | 役割ごとの権限の設定 | 誰にどこまで見せるか |
| 切り替えと定着 | 切り替えの手順書の作成、操作の教育 | 稼働日と社内への案内 |
データの誤りを直す作業は、支援会社だけでは進みません。実装ガイドも、データをいちばんよく知る利用者こそが、データを整える作業の門番になるべきだとしています。*11 移行の作業を頼む場合でも、取引先や品目の重複を誰が見て直すかは、社内で先に決めておきます。
導入の進め方
Success by Designは、Dynamics 365の導入の流れを、特定の手法によらない5つの段階に分けています。*1 支援会社の手法はウォーターフォールやアジャイルなどさまざまですが、段階ごとにやることの骨組みは変わりません。
- ステップ1 探索:業務の要件を集めて確かめ、全体の方針を決める
- ステップ2 開始:対象とする作業の範囲を決め、計画を更新する
- ステップ3 構築:合意した設計と範囲に沿って作り、データの形・権限・連携を点検する
- ステップ4 準備:最後の受け入れテストと教育、切り替えの計画と本番の予行を済ませる
- ステップ5 運用:稼働後の安定を図り、次の改善へ進む
つまずきやすいのはステップ4です。予算や期日が苦しくなると、終盤の性能のテスト、データの検証、教育が削られやすいと、実装ガイドは注意を促しています。*2 Finance・Supply Chain Managementでは、Microsoftとの稼働準備のレビューを終えてから本番の環境が用意されるので、この段階の日程には余裕を見ておきます。
支援会社を選ぶときに確認しておきたい点
Dynamics 365導入支援は、見積もりの金額だけでは比べにくい支援です。稼働してからの更新や保守まで含めて、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- 作業の範囲:上の表の作業のうち、どこまでを受け持ち、何を範囲外とするかを契約に書くか
- 標準機能との合わせ方:追加の開発は最初の費用だけでなく保守の費用も生むため、標準機能で済ませる案を先に出すか
- 更新への備え:Business Centralは毎年4月と10月に大きな更新があり、ほかの月にも小さな更新が出ます。追加した機能を更新のたびに確かめる段取りがあるか*5
- ローカライズ:日本向けの機能をどのアプリで補う前提か
- 稼働後の体制:運用の段階での問い合わせ対応と改善を、誰がどの頻度で受け持つか
更新への備えは見落としやすい点です。Business Centralでは、更新に合わない追加機能が、猶予の期間を過ぎると自動で外されることがあり、データは残っても業務は止まりかねません。大きな更新の前に試験用の環境で新しい版を試す手順を、支援会社と決めておきます。
まとめ:Dynamics 365導入支援で確かめておきたい3つの点
Dynamics 365導入支援を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、製品の系統と日本向けの機能の補い方を最初に決めること。第二に、作業ごとの分担と範囲外の作業を契約に書くこと。第三に、年2回の大きな更新と稼働後の改善を、誰がどう受け持つかを導入の前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「稼働したのに、更新のたびに追加した機能が動かなくなる」という事態を避けやすくなります。支援会社の選び方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
契約する前にDynamics 365を試せますか
試せます。Business Centralは見本のデータで試せる試用版があり、自社のデータで試したい場合は30日間の無料試用に切り替えられます。*6 FinanceとSupply Chain Managementにも30日間の試用版がありますが、試用版ではカスタマイズはできません。*8
導入の費用はどんな項目で決まりますか
Microsoftの実装ガイドは、利用料(サブスクリプション)、データの保存容量、設計・テスト・展開・旧システムからの移行・教育・定着・継続的な改善といった導入の作業を、予算に入れる項目として挙げています。*2 支援会社の見積もりに入らない利用料と保存容量は、別に見込んでおきます。
稼働してからの更新は自社で止められますか
止めることはできず、時期をずらせるだけです。Business Centralでは、大きな更新を受ける日を5か月の更新期間の中で選び直せます。*5 環境ごとに更新を受ける時間帯も決められるので、業務の少ない時間に合わせておきます。
Dynamics 365の導入のご相談
Dynamics 365の製品の選定と要件の整理から、データ移行と他システムとの連携、更新に備えた運用の設計まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:Microsoft Learn「Introduction to Success by Design」(Dynamics 365 実装ガイド)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/guidance/implementation-guide/success-by-design)。出典:数千件の導入プロジェクトに基づく手引きであること、導入会社と利用者が使えること、FastTrack for Dynamics 365、手法によらない5つの段階(Discover・Initiate・Implement・Prepare・Operate)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Microsoft Learn「Plan an implementation strategy」(Dynamics 365 実装ガイド)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/guidance/implementation-guide/implementation-strategy)。出典:SoWでの役割と範囲外の明記、作業の一覧、予算の項目、更新の周期、拡張の保守費用、終盤の作業が削られやすい点の記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:Microsoft Learn「Welcome to Microsoft Dynamics 365 Business Central」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/business-central/welcome)。出典:中小・中堅企業向けの業務管理であること、対象の業務(財務・製造・販売・出荷・プロジェクト管理など)の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Microsoft Learn「Country/regional availability and supported languages」(Business Central)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/business-central/dev-itpro/compliance/apptest-countries-and-translations)。出典:日本のローカライズの提供者がパートナーであること、Marketplaceのアプリで提供されること、複数のパートナーがある国があることの記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:Microsoft Learn「Major and minor updates for Business Central online」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/business-central/dev-itpro/administration/update-rollout-timeline)。出典:4月と10月の大きな更新、毎月の小さな更新、5か月の更新期間と日付の変更、プレビュー環境、互換性のない拡張機能の自動アンインストールとデータの扱いの記述を参照(2026年10月確認)
- *6 参考:Microsoft Learn「Sign up for a Business Central trial」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/business-central/trial-signup)。出典:見本データでの試用、30日間の無料試用、販売パートナーによる設定とデータの取り込みの支援の記述を参照(2026年10月確認)
- *7 参考:Microsoft Learn「Dynamics 365 Sales へようこそ」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/sales/overview)。出典:Microsoft Dataverse上で動き、Power Appsのモデル駆動型アプリで作られている点の記述を参照(2026年10月確認)
- *8 参考:Microsoft Learn「購入する前に」(財務と運用アプリ)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/fin-ops-core/fin-ops/get-started/before-you-buy)。出典:Finance・Supply Chain Managementの30日間の試用とカスタマイズができない点の記述を参照(2026年10月確認)
- *9 参考:Microsoft Learn「Go Live の準備」(財務と運用アプリ)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/fin-ops-core/fin-ops/imp-lifecycle/prepare-go-live)。出典:稼働準備レビューで準備状況が検証された後に運用環境がプロビジョニングされる点の記述を参照(2026年10月確認)
- *10 参考:Microsoft Learn「Choose a methodology」(Dynamics 365 実装ガイド)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/guidance/implementation-guide/implementation-strategy-choose-methodology)。出典:ウォーターフォール・アジャイル・ハイブリッドの各モデルの記述を参照(2026年10月確認)
- *11 参考:Microsoft Learn「Data management」(Dynamics 365 実装ガイド)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/dynamics365/guidance/implementation-guide/data-management)。出典:データを最もよく知る利用者がデータを整える作業の門番になるべきとする記述を参照(2026年10月確認)