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保守打ち切りへの対応の選び方|引き継ぎ・延命・刷新の比較
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 保守打ち切りの通知を受けたら、まず止まる保守の中身と契約上の終了日を確かめます。
- 選択肢は引き継ぎ・延命・刷新の3つで、あと何年使うかと残っている資料の量で選びます。
- 刷新には4つの手法があり、保守のしやすさと費用の釣り合いを見て決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
「来年の3月末で保守を終了します」と委託先から通知が届いた。作った担当者はもう社内におらず、設計書もどこまで最新か分からない——。長く同じ会社に保守を任せてきた業務システムでは、こうした事態が起こりがちです。保守打ち切りとは、システムの保守を請け負っていた会社が、契約を更新しない、または対応を終えると決めることを指します。
打ち切りを告げられても、すぐにシステムが止まるわけではありません。別の会社に引き継ぐ、しばらく延命する、作り直すといった選択肢があります。ただし万能な答えはなく、システムの状態と残り時間によって選ぶべき道は変わります。本記事では、業務システムを預かる情報システムの担当者に向けて、打ち切りで止まる保守の中身、3つの選択肢の違い、刷新の手法と選び方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
保守打ち切りとは
保守が打ち切られると、何が止まるのでしょうか。経済産業省のシステム管理基準は、保守を次の4つに分けています。*1 打ち切りの通知を受けたら、いまの委託先がこのうちどれを受け持っていたかを書き出すところから始めます。
- 是正保守:「インシデントの原因を取り除くための保守」。障害が起きたときの調査と修正です
- 適応保守:「システム環境の変更に対応し、システムの正常稼動を維持するための保守」。OSや部品の更新への対応です
- 完全化保守:機能の改良や追加の要望に応える保守です
- 予防保守:障害を未然に防ぎ、再発を防ぐための保守です
このうち、打ち切りの後に困りやすいのは是正保守と適応保守です。障害が起きても直す人がいない、OSのサポートが切れても新しい版に合わせられない、という状態になるからです。
契約の面では、保守契約が準委任(作業を行うことを約束する契約)にあたる場合、民法は「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定め、準委任にもこの規定を当てはめています。*2 ただし実際にいつ終わるかは、契約書の期間・更新・解約の条項で決まります。終了日と、それまでに委託先が何をするかは、契約書と専門家に確かめておきます。自社から契約を解約する場合の確認点はシステム保守契約の解約で確認したい5つのポイントで扱っています。
引き継ぎ・延命・刷新の違い
保守の打ち切りを告げられたときの選択肢は、大きく3つに分かれます。別の会社に保守を引き継いでもらう、いまのシステムを手を加えずに使い続ける、システムを作り直す、のいずれかです。どれが合うかは、システムをあと何年使うかと、残っている資料の量で変わります。

| 選択肢 | 中身 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 引き継ぎ | 別の会社(または社内)が保守を受け持つ | システムをまだ何年も使い、業務にも合っているとき | 設計書やソースコードが足りないと、引き継ぎに時間がかかる |
| 延命 | 大きな改修をせず、障害対応を中心に使い続ける | 数年以内に作り直しや廃止の予定があるとき | OSや部品のサポートが切れた後の弱点を抱えたままになる |
| 刷新 | システムを新しい基盤や新しい作りに置き換える | 保守できる人が見つからない、業務に合わなくなっているとき | 費用と期間が大きく、業務を知る社員の協力が欠かせない |
延命は、刷新や引き継ぎまでの時間を稼ぐ手段と考えると判断しやすくなります。いつまで延命するかを決めずに使い続けると、障害が起きたときに直せる人が誰もいない状態に戻ってしまいます。
刷新を選ぶときの4つの手法
IPA(情報処理推進機構)の「システム再構築を成功に導くユーザガイド」は、作り直しのきっかけの一つに「ハードウェア機種やソフトウェアの販売終了 、サポート終了などへの対応」を挙げています。*3 そのうえで、作り直しの手法を4つに分け、現行システムのどこまでを生かすかで選ぶ考え方を示しています。
- ハードウェア更改:基本的に機器だけを入れ替える。OSやミドルウェア(OSと業務ソフトの間で働くソフト)の版が変わる部分は直す
- リホスト:業務のプログラムにはなるべく手を加えず、動かす基盤を移す
- リライト:リホストとほぼ同じだが、プログラムを別の言語に書き換える
- リビルド:業務のプログラムも含めて、一からシステムを作り直す
同じガイドは、リホストとリライトはいまの資産を生かすので業務の再現性を高めやすい一方、保守のしやすさはいまのシステムと同じだとしています。リビルドは保守のしやすさを高められますが、費用と、業務に詳しい社員の関わりがより多く求められます。*3 保守を打ち切られた理由が「古い言語を扱える人がいない」なら、リホストだけでは同じ問題が残る点に注意が要ります。
どう選ぶのか
選択肢を比べる前に、判断の材料をそろえます。次の4つの段階で進めると、期限が迫ってから慌てずに済みます。
- ステップ1:通知と契約書で、保守の終了日と、それまでに委託先が行う作業を確かめる
- ステップ2:システム構成図、プログラム一覧、構成管理の情報など、保守に必要な資料を集める
- ステップ3:あと何年使うか、資料がどこまであるかをもとに、引き継ぎ・延命・刷新を比べる
- ステップ4:終了日から逆算して、引き継ぎ先や作り直しの委託先を決める
システム管理基準は、保守に必要な情報として「保守対象のハードウェアやソフトウェアの構成管理情報、システム構成図、プログラム一覧等」を挙げています。*1 また、ソフトウェアやハードウェアの調達先やサポート条件を書いた管理台帳を作り、更新しておくことも求めています。*1 ステップ2で集まらない資料が多いほど、引き継ぎより刷新に傾きます。ソースコードが手元に無い場合は、委託先から受け取れるかを終了日の前に話し合っておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
引き継ぎでも刷新でも、多くの場合は新しい委託先を探すことになります。見積もりを頼む前に、次の点を確かめておくと比べやすくなります。

- 調査の進め方:資料が足りない部分を、ソースコードや動いている環境からどう読み解くか
- 引き継ぎの期間:いまの委託先と並んで作業する期間を設けるか。終了日に間に合うか
- 保守の中身:是正・適応・完全化・予防のどれを、どの時間帯に受け持つか
- 体制:システムで使っている言語やOSを扱える技術者がいるか。1人に頼り切らない体制か
- 運用後の見直し:障害の件数や対応の記録を定期的に報告し、延命か刷新かを見直す場を設けるか
委託先を移す作業そのものの段取りはベンダー移管・委託の進め方に、サーバーなど機器の保守が切れる場合はEOSLと第三者保守の記事にまとめています。
まとめ:保守打ち切りで確かめておきたい3つの点
保守の打ち切りに向き合ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、いまの委託先が受け持っていた保守の中身と、契約上の終了日を確かめること。第二に、システム構成図やプログラム一覧、ソースコードなど、保守に必要な資料が手元にどれだけあるかを確かめること。第三に、あと何年使うかをもとに、引き継ぎ・延命・刷新のどれを選ぶかを終了日から逆算して決めることです。この3点を踏まえておけば、「終了日を過ぎてから障害が起き、直せる会社がどこにも見つからない」という事態を避けやすくなります。引き継ぎ先探しや刷新の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
保守打ち切りの通知から終了までの期間は決まっていますか
法律で一律に決まった期間はなく、契約書の更新や解約の条項によります。通知を受けたら、まず契約書で終了日と、終了までに委託先が行う作業を確かめます。期間が短く引き継ぎが間に合わない場合は、延長できないかを委託先と話し合うのが先です。
ソースコードが手元に無くても引き継げますか
引き継ぐには、原則としてソースコードと、動いている環境に入る手段が必要です。ソースコードを受け取れるかどうかは契約の内容によるため、終了日より前に委託先と話し合っておきます。受け取れない場合は、刷新を前提に考えることになります。
延命はどのくらいの期間まで続けてよいですか
決まった上限はありませんが、OSやデータベースなど部品のサポートが切れる時期が一つの区切りになります。サポートが切れた部品を使い続けると、見つかった弱点が直されないままになるためです。延命を選ぶときは、刷新か廃止の時期をあわせて決めておきます。
保守打ち切り後の引き継ぎ・刷新のご相談
保守を打ち切られた業務システムの調査から、引き継ぎ・延命・刷新の比較、その後の運用保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:経済産業省「システム管理基準」(令和5年4月26日改訂)(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/sys-kanri-2023.pdf)。出典:Ⅱ.5.4(管理台帳)、Ⅱ.6.1(保守に必要な情報の連携)、Ⅱ.6.2(保守の区分:是正保守・適応保守・完全化保守・予防保守)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:民法(明治二十九年法律第八十九号)e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)。出典:第651条(委任の解除)、第656条(準委任)の条文を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「システム再構築を成功に導くユーザガイド 第2版」(https://www.ipa.go.jp/archive/publish/qv6pgp000000117x-att/000057294.pdf)。出典:表2.1 再構築のテーマ一覧、再構築手法(ハードウェア更改・リホスト・リライト・リビルド)の分類と特徴、表3.3 各再構築手法の方針の例を参照(2026年10月確認)