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電子追跡はなぜ2営業日以内か、英国が課した記録の義務
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 期限は翌々営業日の終わり:受け入れた荷ごとに記録します*1。
- ソフトの承認も国が行う:承認ソフトで作った記録が対象*1。
- 使えない人には別の道がある:書面と排除番号で運用します*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
行政が電子システムを作り、民間に記録を義務づける制度は増えています。設計として学べるのは、止まったときと使えない人をどう扱うかです。
デジタル廃棄物追跡(イングランド)規則2026が2026年6月24日に制定され、2026年10月1日に施行します*1。根拠は環境保護法1990の第34CA条と第34CB条で、これらの権限に基づく最初の規則です*1。
廃棄物の話ですが、中身はデータ収集の仕組みの設計です。運営側の義務、記録側の義務、そして例外の道を順に見ていきます。
目次
国が電子システムを運営し、ソフトも承認する
まず全体像です*1。
第3条第1項は、大臣を「指定者」として指定すると定めます*1。第2項は、その指定者が規制対象の廃棄物を追跡する目的で、電子システム(デジタル廃棄物追跡システム)を構築し、維持し、運営しなければならないとしました*1。
第3項が目を引きます*1。第2項の職務には、ソフトウェアの承認が含まれる(ただしこれに限られない)*1。国がシステムを持つだけでなく、民間が使うソフトウェアの承認も行う建て付けです*1。
定義の側でも、この点が効いています*1。承認ソフトウェアとは、第3条第3項に従って指定者が承認したソフトウェアであり、デジタル廃棄物記録とは、その承認ソフトウェアを使って作成された電子的な記録です*1。承認されていないソフトで作った記録は、この制度上の記録になりません*1。
第4項は、指定者の側の義務です*1。デジタル廃棄物記録の情報がシステムへ入った時点で、その記録に固有の識別番号(デジタル廃棄物記録番号)を割り当てること、そして割当ての後できるだけ早く、その情報を記録した事業者へ番号を送ること*1。
ソフトウェアを承認の対象にしたことには、実務上の意味があります*1。記録の様式や項目を仕様として配り、各社が自由に実装する形だと、送られてくるデータの品質がばらつきます*1。承認を通したソフトだけを入口にすれば、検証を入口の側へ寄せられます*1。反面、承認の維持は運営側の負担になり、対応ソフトの選択肢が限られる副作用もあります*1。
ただし第5項に留保があります*1。事業者が情報を記録したものの、第5条に従って手数料を支払っていない場合、指定者はその情報のシステムへの登録を保留できる*1。支払いと登録が連動する仕組みです*1。年に一度の支払いを忘れると、記録を作っても番号が返らず、確認の要件を満たせないまま期限が過ぎることになります*1。費用の管理と記録の運用が、同じ流れの中で結びついている点は押さえておきたいところです*1。
期限は「翌々営業日の終わり」、確認まで含む
第4条が、記録する側の義務です*1。
適用されるのは、許可施設の運営者が、その施設で規制対象の廃棄物を受け入れたときです*1。第2項に例外があり、廃棄物処分当局の取決めによる場所で、その区域の住民等が家庭廃棄物を持ち込む場合は外れます*1。
義務の中身は第5項の2つです*1。別表1の第2部に定める情報(特定情報)をデジタル廃棄物記録に記録すること、そしてその特定情報がシステムへ入ったことを確認すること*1。記録して終わりではなく、登録されたことの確認までが義務です*1。
確認したと言えるかどうかも、第6項が定めています*1。第3条第4項(b)に従ってデジタル廃棄物記録番号を受け取れば、確認の要件は満たされます*1。逆に、手数料を支払っていないため、またはエラーを示す電子メッセージを受け取ったのに、記録の誤りや、記録した特定情報の誤り・欠落を調査して訂正しなかったために番号を受け取っていない場合は、満たされません*1。
期限は第8項です*1。荷を受け入れた日の翌々営業日の終わりまでに、これらの手順を完了します*1。パイプラインで送られる有害廃棄物については、第9項が受領の日の数え方を別に定めました*1。
誤りへの対応も条文にあります*1。第7条は、運営者が記録の誤りを発見し、その結果として誤った情報がシステムへ入っている場合、できるだけ早く、いかなる場合も誤りを知った日から1か月以内に、正しい情報をシステムへ入れることを求めます*1。
期限を「営業日」で数えている点も、設計としては意識的です*1。暦日で数えると、連休をまたぐ荷の扱いが厳しくなります*1。営業日にすれば、受け入れの実務に合った猶予になります*1。ただし、営業日の定義と休日の扱いは、システム側に持たせる必要があります*1。
手数料は第5条で26ポンドです*1。第4条第4項の義務が最初に生じた機会と、その各応当日に、指定者へ支払います*1。
何を記録するかは、別表で細かく決まっている
別表1の第2部が、記録する項目を並べます*1。
| 区分 | 記録する内容 |
|---|---|
| 許可施設の運営者 | 氏名または名称/(あれば)電子メールと電話番号/その施設の環境許可番号/移動式プラントで、その配置に庁の承認が条件となっている場合は配置の参照番号 |
| 許可施設 | 施設の所在地(移動式プラントの場合は、承認に記載された配置場所の所在地)/規制対象の廃棄物を受け入れた日時 |
| 運搬した者 | 運搬した者の氏名または名称/(あれば)住所・電話・電子メール/運搬業者の登録番号または運搬の認可番号/いずれも無い場合はその理由 |
| 有害廃棄物の場合 | 荷に付随した委託票の符号。委託票がない場合はその理由 |
| 仲介者・取引業者 | 運搬の手配を他人に代わって行った者がいる場合の、その者に関する情報 |
番号を持つ項目が多いのが特徴です*1。環境許可番号、配置の参照番号、運搬業者の登録番号、運搬の認可番号、委託票の符号*1。既存の登録制度が発行した識別子を、そのまま鍵として使う設計です*1。
そして、無い場合はその理由を書かせる項目が複数あります*1。運搬業者の登録番号がない場合、委託票がない場合のいずれも、理由の記載が求められます*1。空欄を許さず、なぜ無いのかをデータとして残す作りです*1。
受け入れの日時まで記録させる点も見ておきたいところです*1。日付だけなら手作業でも書けますが、時刻まで求めると、計量や受付の機器から取る設計が自然になります*1。項目の粒度が、運用の作り方を規定する例です*1。
廃棄物の分類には、EUの廃棄物リストの6桁のコードが使われます*1。別表1の第1部は、廃棄物コードを、その種別に廃棄物リストで与えられた6桁のコードと定義しました*1。既存の国際的な分類を、そのまま採り入れています*1。
止まったときの手順が、条文に書かれている
第6条が障害(outage)を扱います*1。
定義は第4項です*1。許可施設の運営者の制御を超える要因によって生じ、第4条第8項の期限までに特定情報をシステムへ入れることを妨げる事情を障害といいます*1。あわせて障害の通知を、システムが利用できない旨をシステムの利用者へ知らせる連絡と定めました*1。
手順は第2項の3つです*1。障害の通知を受けていない場合は、合理的に実行可能な限りすみやかに庁へ届け出ること、第4条第8項の期限内に、特定情報を書面で記録すること、そして障害が解消した日の翌日から7日以内に、その書面の情報をシステムへ入れることです*1。
書面の扱いも第3項が定めます*1。容易に見つけて取り出せる方法で保存できるのであれば、電子的な形で作ってもよい*1。そして、システムへ入れ終わるまではその記録を保持し、求められたら合理的に実行可能な限りすみやかに庁へ示すことになります*1。
この設計には学ぶところがあります*1。まず、期限は動かないという点です*1。障害があっても、第4条第8項の期限内に記録は作らせます*1。動くのはシステムへ入れる期限だけで、それも7日と区切られています*1。
次に、誰が知らせるかを場合分けしている点です*1。運営者側から庁へ届け出るのが原則ですが、すでに障害の通知を受けている場合は不要とされました*1。運営側が広く知らせていれば、個別の届出を求めない整理です*1。逆に言えば、通知が出ていない障害は、利用者の側から拾って伝えることが前提になっています*1。障害の情報を公開させる制度は各国にあり、豪州の障害登録簿もその一つです*1。
「デジタルから排除された者」に別の道を用意した
第3部が、この制度でもっとも設計上の示唆に富む部分かもしれません*1。
第8条は、デジタルから排除された者(digitally excluded person)である運営者を対象とします*1。第3項により、この運営者は第4条から第7条までの要件を免除されます*1。
代わりに課されるのが3つです*1。受け入れた荷ごとに、特定情報を書面で記録すること、その記録に自らのデジタル排除番号を含めること、そして第12条に従って記録を保持し、示せるようにすること*1。
期限は同じです*1。第5項は、書面の記録を作る期限を荷を受け入れた日の翌々営業日の終わりとしました*1。電子か紙かで、締切に差はつけていません*1。
デジタル排除番号という考え方も特徴的です*1。第7項は、これを庁が第9条第2項(a)に従ってデジタルから排除された運営者へ割り当てる、固有の識別番号と定義します*1。北アイルランドの所管部局が割り当てる場合も規定されました*1。
免除の範囲にも注意が要ります*1。免除されるのは第4条から第7条までで、記録そのものが不要になるわけではありません*1。手数料の支払い(第4条第3項)を含む一連の義務が外れる代わりに、書面での記録と保持という別の義務が置かれます*1。負担の総量が消えるのではなく、形が変わる整理です*1。
例外の扱いを登録して番号を出す形にした点が重要です*1。単に「使えない人は紙でよい」とすると、誰がその扱いなのかを行政が把握できません*1。番号を発行すれば、母数が分かり、記録の突合もできます*1。例外もデータとして管理するという設計です*1。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この規則は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1。ただし、行政が運営するデータ収集の仕組みとして参考になります*1。
第一に、登録の完了を相手に返すことです*1。この制度は、記録の登録時に固有番号を割り当て、それを事業者へ送ります*1。そして番号を受け取ったことを、義務を果たした証拠にしています*1。送信して終わりではなく、受領の応答をもって完了とする設計は、連携の仕組みで広く応用できます*1。
第二に、エラーへの対応を義務に組み込むことです*1。第4条第6項は、エラーの電子メッセージを受け取ったのに調査と訂正をしなかった場合、確認の要件を満たさないとしました*1。エラー通知を投げるだけでなく、対応しなければ未完了のまま残るという状態設計が要ります*1。
第三に、止まったときの代替を先に決めることです*1。障害の定義、届出の要否、書面での記録、復旧後の投入期限。ここまで書かれていれば、現場は迷いません*1。自社の連携でも、相手方が止まった場合の手順を仕様に含めておくと、障害時の判断が速くなります*1。
そのうえで、入口を絞るかどうかは費用と品質の綱引きだと意識しておくことです*1。この制度はソフトウェアの承認という強い手を採りました*1。社内の仕組みで同じ判断をするなら、承認したクライアントだけを許すのか、仕様を公開して検証を受信側で行うのかを、運用の人員と品質の要求から決めることになります*1。
第四に、例外の経路にも識別子を持たせることです*1。デジタル排除番号の考え方は、社内の仕組みにも使えます*1。紙で受け付ける例外を認めるなら、その例外に番号を付け、件数と理由を集計できるようにしておくと、いつまで例外を維持するかの判断ができます*1。制度の側が標準を外へ置く例としては、承認データ標準の仕組みも参考になります*1。
まとめ:英国のデジタル廃棄物追跡で押さえる3つの視点
英国では、デジタル廃棄物追跡(イングランド)規則2026が2026年6月24日に制定され、2026年10月1日に施行します。環境保護法1990の第34CA条および第34CB条に基づく最初の規則で、両院の決議による承認を経ています。押さえたい視点は三つあります。第一に、運営する側の義務。第3条は、大臣を指定者として指定し、規制対象の廃棄物を追跡する目的で電子システムを構築・維持・運営することを求めます。その職務にはソフトウェアの承認が含まれ、承認ソフトウェアで作成された電子的な記録がデジタル廃棄物記録とされます。指定者は、記録の情報がシステムへ入った時点で固有の識別番号を割り当て、割当ての後できるだけ早く事業者へ送らなければなりません。手数料が支払われていない場合は、登録を保留できます。第二に、記録する側の義務。第4条は、許可施設の運営者が規制対象の廃棄物を受け入れた場合に、別表1第2部の特定情報をデジタル廃棄物記録に記録し、それがシステムへ入ったことを確認することを求めます。期限は、荷を受け入れた日の翌々営業日の終わりです。確認は、デジタル廃棄物記録番号を受け取れば満たされますが、手数料の未払いや、エラーの電子メッセージを受け取ったのに調査と訂正をしなかったことにより番号を受け取っていない場合は満たされません。手数料は26ポンドで、最初に義務が生じた機会と、その各応当日に支払います。誤りが判明した場合は、できるだけ早く、いかなる場合も知った日から1か月以内に、正しい情報をシステムへ入れます。第三に、例外の設計。第6条は障害の場合の手順を定め、障害の通知を受けていなければ庁へ届け出ること、第4条第8項の期限内に書面で記録すること、障害の解消の翌日から7日以内にシステムへ入れることを求めます。第8条は、デジタルから排除された者について第4条から第7条を免除し、代わりに同じ2営業日の期限で書面の記録を作り、庁が割り当てたデジタル排除番号を記載し、第12条に従って保持することを求めています。
よくある質問
記録の期限はいつまでですか。
荷を受け入れた日の翌々営業日の終わりまでです。規則2026の第4条第4項は、許可施設で受け入れた規制対象の廃棄物の荷ごとに、第8項の期限までに特定の手順を完了することを求め、第8項がその期限を、荷が受け入れられた日の後の2番目の営業日の終わりとしています。パイプラインで届く有害廃棄物については、第9項が受領の日の数え方を別に定めています。手順は、別表1第2部の特定情報をデジタル廃棄物記録に記録することと、それがシステムへ入ったことを確認することの2つです。
「確認した」とは、何をすることですか。
固有番号を受け取ることです。規則2026の第4条第6項(a)は、第3条第4項(b)に従ってデジタル廃棄物記録番号を受け取れば、確認の要件が満たされるとしています。同項(b)は、手数料を第5条に従って支払っていないため、または、エラーを示す電子メッセージを受け取ったのに、記録の誤りや、記録した特定情報の誤り・欠落を調査して訂正しなかったために番号を受け取っていない場合には、要件が満たされないとしています。
システムが止まったときはどうしますか。
書面で記録し、復旧後に投入します。規則2026の第6条第2項は、障害の通知を受けていない場合に合理的に実行可能な限りすみやかに庁へ届け出ること、第4条第8項の期限内に特定情報を書面で記録すること、そして障害が解消した日の翌日から7日以内に、その情報をシステムへ入れることを求めています。第3項により、書面の記録は、容易に見つけて取り出せる方法で保存できるのであれば電子的な形でもよく、システムへ入れ終わるまで保持して、求められたら庁へ示す必要があります。
デジタルを使えない事業者はどうなりますか。
書面での記録に切り替わります。規則2026の第8条第3項は、デジタルから排除された者である運営者について、第4条から第7条までの要件を免除したうえで、受け入れた荷ごとに特定情報を書面で記録すること、その記録に自らのデジタル排除番号を含めること、第12条に従って記録を保持し示せるようにすることを求めています。第5項により、書面の記録を作る期限は、電子の場合と同じく、荷を受け入れた日の翌々営業日の終わりです。デジタル排除番号は、第7項により、庁などがその運営者へ割り当てる固有の識別番号を指します。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Digital Waste Tracking (England) Regulations 2026」(SI 2026 No. 729・2026年6月24日制定/2026年10月1日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/729/made)。本記事の一次情報。第1条(施行日2026年10月1日、イングランドおよびウェールズに及びイングランドに適用)、根拠(環境保護法1990 第34CA条第1項ほかおよび第34CB条第1項ほか、両院の決議による承認)、第2条の定義(承認ソフトウェア、指定者、デジタル廃棄物記録ほか)、第3条(指定者の指定、電子システムの構築・維持・運営、ソフトウェアの承認、固有番号の割当てと送付、手数料未払いによる登録の保留)、第4条(適用と除外、手数料の支払い、特定の手順としての記録と確認、確認が満たされる場合と満たされない場合、荷の数え方、翌々営業日の終わりという期限、パイプラインの場合の受領日)、第5条(26ポンドと、最初の機会および各応当日の支払い)、第6条(障害の定義と障害の通知、庁への届出、期限内の書面の記録、解消の翌日から7日以内の投入、書面の電子的な作成と保持・提示)、第7条(誤りの訂正、できるだけ早くかつ1か月以内)、第8条(デジタルから排除された運営者の免除と、書面の記録・デジタル排除番号・保持、同じ期限、デジタル排除番号の定義)、ならびに別表1(第1部の廃棄物コードと廃棄物リストの定義、第2部の特定情報として運営者・施設・運搬者・仲介者に関する各項目と、番号が無い場合の理由の記載)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)