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2026.09.10 らしくコラム

取締役の本人確認の手順、英国は42日で失効させる


監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 経路は登記官かACSPの2つ:どちらでも固有識別子が出ます*1。
  • 確認の根拠まで提出させる:何を見て納得したかを書きます*1。
  • 再確認通知が出ると42日:応じなければ失効します*1。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

本人確認を制度に組み込むとき、難しいのは一度確認した後をどう扱うかです。英国の会社登記は、そこに期限を置きました。

登記官(本人確認および認可法人サービス提供者)規則20252025年1月20日に制定されました*1。取締役の本人確認を求める会社法2006の第167M条は、2025年11月18日に施行済みです*2。

確かめたいのは3点です。どう確認するのか何を登記官へ出すのかいつ失効するのか。条文から順に見ていきます。

木目の机の上に置かれた手漉き紙の封筒に、銅色の封蝋が押されている様子を真上から写した写真

施行の日付は、後から法令で固定された

まず全体像です*1*2。

英国の登記官(本人確認および認可法人サービス提供者)規則2025がSI 2025年第50号として2025年1月20日に制定され施行が経済犯罪・企業透明化法2023の第65条・第66条・第68条の全部施行に連動すること、取締役の本人確認を定める会社法2006第167M条が2025年11月18日に施行済みでありSI 2026年第57号がその日付を明記したこと、本人確認の経路が2つで経路1は登記官へ直接申請し書面で所要の個人情報と所要の証拠と所要の連絡先を記載して提出し登記官が合理的に実行可能な限りすみやかに判断し認められると通知が出てその日付から本人確認済みの個人になること、経路2はACSPによる確認で本人が依頼し必要な情報と証拠を渡しACSPが所要の個人情報を真実と認めると成立しACSPが登記官へ確認声明を提出でき登記官が本人へ氏名と提出日と固有識別子を記した通知を出すこと、確認声明と一緒に出す情報が本人の生年月日と所要の連絡先とACSPの固有識別子および所要の個人情報を真実と認めるに至った基礎となった情報と証拠の記述であること、再確認通知は申請で提出された情報や登記官が依拠した情報やACSPへ渡された情報が重要な点で誤解を招くか虚偽か欺瞞的であると信じる合理的な理由があるときに出せること、通知の日から42日以内に第8条第1項の通知を受けるか再確認声明が提出されない限り本人確認済みの個人ではなくなること、ならびに登記官規則が連絡先の種類や追加の個人情報や証拠の種類や追加の手順(面談や第三者による確認を含む)を定めることを整理した図

規則2025の第2条は、施行を日付ではなく出来事で定めました*1。経済犯罪・企業透明化法2023の第65条(本人確認の手続き等)が全部施行したときに規則が施行し、第3部は第66条(法人サービス提供者の認可)第4部は第68条(固有識別子の割当て)の全部施行に連動します*1。

その日付が、後から別の法令で明記されました*2。経済犯罪・企業透明化法2023(施行第7号)規則2026の第3条は、既存の規則にある「〜が施行したとき」という表現を、実際の日付へ置き換えています*2。そこで示された日が2025年11月18日です*2。

置き換えの対象には、会社法2006の第167M条(本人確認が済んでいない限り取締役として行動することの禁止)が施行した日と、第790LA条(確認された実質的支配者を登記官へ届け出る義務)が全部施行した直後が挙がります*2。いずれも2025年11月18日です*2。

この書き換え自体が、実務では助かる作業です*2。「〜が施行したとき」のままだと、いつからなのかを調べるために別の法令をたどる必要があります*2。日付へ置き換えれば、条文を読むだけで分かります*2。

施行を出来事に連動させる書き方は、法令を作る側には便利です*1。関連する規定が順に動く制度では、日付を先に決めると齟齬が出るためです*1。ただ、読む側には不便で、いつからかを知るために複数の法令をたどることになります*1。今回のように後から日付へ置き換える改正が入るのは、その不便を認めた対応と読めます*2。

同じ施行第7号規則は、2026年1月26日から、会社が社員の情報を中央登記簿に置く選択肢を廃止する規定も動かしました*2。登記の電子化と一元化が、続けて進んでいます*2。

経路は2つ、どちらでも固有識別子が出る

規則2025の第2部が、確認の手続きを定めます*1。

ひとつ目は登記官へ直接申請する経路です*1。第6条により、本人確認済みでない個人は、登記官へ確認の申請ができます*1。申請は書面で行い、所要の個人情報所要の証拠所要の連絡先を記載します*1。以前に割り当てられ、その後に廃止された固有識別子があれば、分かる範囲で記載します*1。

第7条は、登記官が合理的に実行可能な限りすみやかに申請を判断しなければならないとします*1。所要の個人情報が真実であると登記官が納得すれば、その申請人の本人確認は成立します*1。登記官は、申請に含まれない他の情報や証拠も判断に用いることができます*1。

第8条により、認められた場合は通知が出ます*1。通知には、申請人の氏名通知の日付割り当てられた固有識別子が記載されます*1。そして通知の日付をもって、本人確認済みの個人になります*1。

ふたつ目がACSP(認可法人サービス提供者)による確認です*1。第9条は、本人がACSPへ確認を依頼し第6条第3項(b)から(e)の情報と証拠をACSPへ提供しACSPが所要の個人情報を真実であると納得したときに、ACSPがこの規則に従って本人確認を行ったことになるとします*1。

2つの経路は、成立の仕方が違います*1。登記官の経路では、登記官が納得することが要件です*1。ACSPの経路では、ACSPが納得することで確認が成立し、登記官はその結果を受け取る立場になります*1。判断の主体が外へ出る分、後述する根拠の記述が重みを持ちます*1。

ACSPは、確認したうえで、登記官へ確認声明を提出できます*1。第12条により、提出があると登記官は本人へ通知を出し、氏名確認声明が提出された日割り当てられた固有識別子を記載します*1。

「何を見て納得したか」まで提出させる

ACSPの経路で注目したいのが、提出する情報の中身です*1。

第10条第2項により、確認声明には本人の氏名ACSPが所要の個人情報を真実であると納得した日、そして第11条の情報を提出済みである、または同時に提出している旨の記載が必要です*1。

表1:確認声明とあわせて提出する情報(規則2025 第11条)
内容
(a) 本人の生年月日
(b) 所要の連絡先(登記官規則が種類を定める)
(c) 所要の個人情報を真実であると納得するに至った基礎となった、情報と証拠の記述
(d) ACSPの固有識別子

(c)が、この制度の性格を示しています*1。結論だけでなく、その根拠の記述を求めています*1。何の書類を見て、どのように照合して納得に至ったのかを、登記官が後から追える形にしておく設計です*1。

提出する側から見れば、これは手順の記録が成果物になるということです*1。確認の作業を人が個別の判断で行っていると、この記述を毎回書き起こすことになります*1。手順を型として決め、使った証拠の種類を選択式で残す仕組みにしておけば、記述の作成まで自動化できます*1。

同じ発想は、豪州がプリペイド携帯の本人確認で方法の名称の記録を条件にしたのと通じます。プリペイド携帯の本人確認では、9つの方法のそれぞれに、記録すべき名称が指定されていました*1。

再確認通知が出ると、42日で失効する

第5章が、確認済みの状態を失う場面を定めます*1。

第13条第1項は、一定の情報または証拠が、重要な点において誤解を招くもの、虚偽のもの、または欺瞞的なものであると信じる合理的な理由がある場合に、登記官が再確認通知を出せるとしました*1。

対象となる情報は4つの類型です*1。第6条の申請で本人により、または本人のために登記官へ提出されたものそれ以外で、第7条の判断にあたり登記官が依拠したもの第9条の依頼に関連して本人により、または本人のためにACSPへ提出されたものそれ以外で、ACSPが依頼を判断する際に依拠したものです*1。

通知の効果が、第4条の定義に書かれています*1。再確認通知は、通知が与えられた日から42日の期間内に、第8条第1項の通知を受けるか、その個人に関する再確認声明が登記官へ提出されない限り、本人確認済みの個人ではなくなる旨を記載しなければなりません*1。

通知には、本人の氏名登記官による再確認を希望する場合に第6条第2項の申請を提出すべき最長の期間、そして通知の日付も記載されます*1。

第13条第3項により、通知には本人が満たすべき要件を含められます*1。登記官規則で定める種類の情報や証拠を提出させたり、追加の手順を求めたりできます*1。これらは、再確認の申請の前または提出時までに満たす必要があります*1。

再確認声明のほうも、定義で中身が決まっています*1。対象となる個人の氏名その個人の固有識別子ACSPがこの規則に従って再確認を行った旨の確認ACSPの監督機関所要の個人情報を真実であると納得した日、そして第11条の情報を提出済みまたは同時に提出している旨です*1。監督機関を書かせる点が、確認声明との違いです*1。

実務の中身は「登記官規則」が決める

もうひとつ押さえておきたいのが第5条です*1。

第1項は、登記官は、申請や依頼にあたり本人が提供すべき連絡先の種類を、規則で定めなければならないとします*1。ここは義務です*1。

第2項は任意の権限です*1。「所要の個人情報」の定義に挙がっていない種類の個人情報と、証拠の種類を、規則で定められます*1。これらは、第6条の申請で登記官へ、または第9条の依頼でACSPへ提出することになります*1。

第3項も任意で、申請や依頼を判断するために本人が取るべき追加の手順の種類を定められます*1。第5項は、その例として2つを挙げました*1。登記官またはACSPとの面談への出席(対面であるかどうかを問わない)と、規則が定める記述に当てはまる第三者から、所要の個人情報が真実である旨の確認を得ることです*1。

第4項が実務的です*1。登記官とACSPは、第2項(b)の規則で定める種類の証拠を、所要の個人情報が真実であることの十分な証明として扱ってよい*1。証拠の種類を規則で示すことで、確認の水準をそろえる仕組みです*1。

つまり、何を出せばよいかの具体は、法令ではなく登記官規則にあるということです*1。英国は、この形の委任を各所で使っています。承認データ標準の仕組みも、標準の本体を法令の外に置いていました*1。

日本のIT部門が持ち帰れる論点

この規則と法は英国の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1*2。ただし、本人確認を実装する立場では参考になります*1。

第一に、確認済みの状態に期限の概念を持たせることです*1。多くの実装では、確認は一度きりの出来事として扱われます*1。英国の制度は、疑いが生じたときに42日という猶予つきで状態を戻す仕組みを持ちました*1。状態を「未確認・確認済み・再確認中」で持ち、期限を属性として管理する設計が、これに対応します*1。

第二に、確認の根拠を構造化して残すことです*1。第11条(c)は、納得に至った基礎となった情報と証拠の記述を求めます*1。自由記述で残すと、後から集計も検証もできません*1。証拠の種類、照合した項目、判断した担当を、選択式のコードで残すのが実務的です*1。

第三に、識別子を人に紐づけることです*1。この制度では、確認済みの個人にもACSPにも固有識別子が割り当てられます*1。名前や生年月日で人を突き合わせる設計は、同姓同名や改名で崩れます*1。確認の成立と同時に識別子を発行し、以後はそれで参照する形にしておくと、後の統合が楽になります*1。

第四に、委託先の確認結果を受け取る前提で作ることです*1。ACSPの経路は、外部の事業者が確認し、その結果を声明として登記官へ渡す構造です*1。同じ形を社内で作るなら、確認を行う主体、確認の日付、根拠の記述、主体の識別子を、1件のレコードとして受け取れるインタフェースを先に決めておくことになります*1。

まとめ:英国の登記における本人確認で押さえる3つの視点

英国では、登記官(本人確認および認可法人サービス提供者)規則2025が2025年1月20日に制定され、施行は経済犯罪・企業透明化法2023の第65条、第66条、第68条の全部施行に連動する形とされました。会社法2006第167M条(本人確認が済んでいない限り取締役として行動することの禁止)は2025年11月18日に施行しており、経済犯罪・企業透明化法2023(施行第7号)規則2026が、既存の規則にある「施行したとき」という表現をこの日付へ置き換えています。押さえたい視点は三つあります。第一に、確認の経路。登記官へ直接申請する経路では、書面で所要の個人情報、所要の証拠、所要の連絡先を提出し、登記官が合理的に実行可能な限りすみやかに判断します。認められると、氏名、日付、固有識別子を記した通知が出て、その日付から本人確認済みの個人になります。ACSPによる経路では、本人が依頼して情報と証拠を提供し、ACSPが所要の個人情報を真実であると納得すれば確認が成立し、ACSPは登記官へ確認声明を提出できます。第二に、提出する情報。確認声明には、本人の氏名、ACSPが納得した日、第11条の情報を提出済みまたは同時に提出している旨を記載します。第11条の情報は、本人の生年月日、所要の連絡先、納得するに至った基礎となった情報と証拠の記述、そしてACSPの固有識別子です。再確認声明では、これらに加えて固有識別子とACSPの監督機関を記載します。第三に、失効の仕組み。登記官は、申請や依頼で提出された情報や、判断で依拠した情報が、重要な点で誤解を招く、虚偽である、または欺瞞的であると信じる合理的な理由がある場合に、再確認通知を出せます。通知が与えられた日から42日以内に、第8条第1項の通知を受けるか、再確認声明が登記官へ提出されない限り、その個人は本人確認済みの個人ではなくなります。確認の具体的な要件は、第5条に基づく登記官規則で定められ、面談への出席や第三者による確認といった追加の手順も含められます。

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よくある質問

本人確認はどこで受けられますか。

2つの経路があります。規則2025の第6条から第8条は、本人確認済みでない個人が登記官へ直接申請する経路を定め、書面で所要の個人情報、所要の証拠、所要の連絡先を提出すること、登記官が合理的に実行可能な限りすみやかに判断すること、認められた場合に氏名・日付・固有識別子を記した通知が出て、その日付から本人確認済みの個人になることを定めています。第9条から第12条は、ACSP(認可法人サービス提供者)へ依頼する経路を定め、ACSPが所要の個人情報を真実であると納得したときに確認が成立し、ACSPが登記官へ確認声明を提出できるとしています。

ACSPは登記官へ何を提出しますか。

確認声明と、第11条の情報です。第10条第2項により、確認声明には、本人の氏名、ACSPが所要の個人情報を真実であると納得した日、そして第11条の情報を提出済みまたは同時に提出している旨を記載します。第11条の情報は、本人の生年月日、所要の連絡先、所要の個人情報を真実であると納得するに至った基礎となった情報と証拠の記述、そしてACSPの固有識別子です。再確認声明の場合は、これらに加えて本人の固有識別子とACSPの監督機関の記載が必要です。

再確認通知が出ると、どうなりますか。

42日の期限が始まります。規則2025第4条の定義により、再確認通知は、通知が与えられた日から42日の期間内に、第8条第1項の通知を受けるか、その個人に関する再確認声明が登記官へ提出されない限り、本人確認済みの個人ではなくなる旨を記載しなければなりません。通知には、本人の氏名、登記官による再確認を希望する場合に申請を提出すべき最長の期間、通知の日付も記載されます。第13条第1項により、通知は、提出された情報や登記官・ACSPが依拠した情報が、重要な点で誤解を招く、虚偽である、または欺瞞的であると信じる合理的な理由がある場合に出されます。

必要な書類は法令に書かれていますか。

登記官規則に委ねられています。規則2025の第5条第1項は、申請や依頼にあたり本人が提供すべき連絡先の種類を、登記官が規則で定めなければならないとしています。第2項は、所要の個人情報の定義に挙がっていない個人情報の種類と、証拠の種類を規則で定められるとし、第3項は、申請や依頼を判断するために本人が取るべき追加の手順の種類を定められるとしました。第5項は、その例として、登記官やACSPとの面談への出席(対面かどうかを問わない)と、規則が定める記述に当てはまる第三者からの確認を挙げています。

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出典

  1. *1 参考:英国法令データベース「The Registrar (Identity Verification and Authorised Corporate Service Providers) Regulations 2025」(SI 2025 No. 50・2025年1月20日制定)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2025/50/made)。本記事の一次情報。根拠(会社法2006 第1082条、第1098F条第2項〜第4項、第1098G条、第1110A条第4項・第6項・第7項、第1110B条、第1292条第1項(b))と両院の承認、第1条第2項の適用地域、第2条の施行(経済犯罪・企業透明化法2023 第65条・第66条・第68条の全部施行への連動)、第3条の定義、第4条の定義(旧氏名、所要の証拠、所要の個人情報、再確認通知の記載事項と42日、再確認声明の記載事項)、第5条(登記官規則で定める連絡先・個人情報・証拠・追加の手順、証拠を十分な証明として扱える旨、面談や第三者による確認の例示)、第6条(申請の要件)、第7条(判断、追加の手順の通知、他の情報の考慮)、第8条(通知の記載事項と、通知の日付をもって本人確認済みとなる旨)、第9条(ACSPによる確認と再確認の成立要件)、第10条(確認声明・再確認声明の記載事項)、第11条(あわせて提出する情報の4項目)、第12条(登記官から本人への通知)、および第13条(再確認通知を出せる場合と、通知に含められる要件)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
  2. *2 参考:英国法令データベース「The Economic Crime and Corporate Transparency Act 2023 (Commencement No. 7) Regulations 2026」(SI 2026 No. 57 (C. 7)・2026年1月23日制定)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/57/made)。施行日の確定の一次情報として。第2条(同法第49条および別表1、社員の登記簿について中央登記簿を用いる選択肢の廃止を2026年1月26日に施行する旨)、ならびに第3条(既存の規則にある「〜が施行したとき」という表現を実際の日付へ置き換える改正。会社法2006 第167M条(本人確認が済んでいない限り取締役として行動することの禁止)が2025年11月18日に施行したこと、第790LA条(確認された実質的支配者を登記官へ届け出る義務)が同日に全部施行したこと、および2023年法第43条が同日に施行したことを明記している)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)




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