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障害履歴の公開仕様|豪州はCSV配布と20項目を義務化
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 項目も書式も条文で決まった:別表1が20項目を並べます*1。
- CSVでの取り出しが要件:列見出しの並びも指定です*1。
- 義務は業界標準へ移った:旧の決定は廃止されました*3。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
障害情報の公開は、出すか出さないかより「どう出すか」で価値が変わります。豪州は、そこを条文で決めました。項目、書式、取り出し方、到達性まで指定されています。
電気通信(障害時の顧客への通知)業界標準2024に、変更2026(第1号)が第4部 障害登録簿を追加しました*1。変更は2026年3月26日に制定され、2026年3月31日に施行しています*1。
背景には、義務の引っ越しがあります。もともと単独の決定2025で始まった掲示の義務が*2、業界標準へ移り、旧の決定は2026年7月に廃止されました*3。まず、その経緯から見ていきます。
目次
義務は「単独の決定」から「業界標準」へ移った
まず全体像です*1*2*3。
出発点は電気通信サービス提供者(ネットワーク障害登録簿)決定2025です*2。通信大臣が電気通信法1997の第99条第1A項に基づいて作り、2025年12月15日から常時の掲示を求めました*2。
内容は簡潔でした*2。移動体の設備を運用する搬送事業者である搬送サービス提供者は、公衆移動体通信サービスの供給に影響した障害の情報を載せた登録簿を、公開のウェブサイトに設けて掲示します*2。載せる情報は開始した日、継続時間、地理的な位置、影響した搬送サービスの数の4つでした*2。保持は解消した日から2年、到達性はWCAG 2.2 のレベルAAです*2。
そこへ、業界標準の側が追いつきました*1。ACMAが2026年3月26日に変更2026を制定し、業界標準2024へ第4部を追加します*1。適用は2026年3月31日からで、登録簿そのものは2026年6月30日以後、常に稼働していることが求められました*1。
そしてネットワーク障害登録簿 廃止決定2026が、決定2025を全部廃止します*3。制定は2026年7月1日、施行は登録の翌日です*3。役割が重複したため、単独の決定を畳んだ形です*3。
移設で範囲も変わりました*1*2。決定2025は移動体に限られていましたが、第4部は該当搬送サービスを利用者へ供給するために使われるネットワークを持つ搬送事業者と、該当搬送サービスを利用者へ供給する搬送サービス提供者に適用されます*1。固定回線も入ってきます*1。
20の項目が、選択肢の中身まで決められている
第22条第2項が、記載する情報を(a)から(m)まで列挙します*1。そして第25条第1項が、別表1の第1欄に掲げる各項目区分と、第2欄の指示に沿ったその情報を、少なくとも含む形で提示することを求めます*1。
| 区分 | 項目と書式の指示(要旨) |
|---|---|
| 識別 | 障害のタイトル(平易な短い説明。例「ブロードバンドの障害―バララット」)/参照番号(事業者が割り当てる固有の識別子)/障害の種別(大規模障害または重大な局所障害から選択) |
| 時刻 | 開始の日(DD/MM/YYYY)/開始の時刻(24時間表記のxx:xxに時間帯を併記)/終了の日/終了の時刻/継続時間(時間.分。例:14.25で14時間25分) |
| 範囲 | 影響した郊外地区・町/影響した州・準州(8つから選択)/影響した郵便番号(先頭の0を含めて完全な形で)。複数値は「;」で区切る |
| 規模 | 影響したサービスの種別(携帯の音声、携帯のデータ、固定ブロードバンドなど15の選択肢)/種別ごとの回線数/固定回線が影響した建物の数。不明な場合は「Information not available – no technical visibility」と記載 |
| 原因 | 解消に責任を負う事業者の名称(該当しなければ「Not Applicable」)/原因の高位の分類(電源の中断、機器やシステムの故障、第三者による損傷、その他、不明から1つだけ選択)/自然現象または天候に起因するか(Yes/No) |
| 履歴 | 追加情報(任意の自由記述)/記載を最初に公表した日/該当する場合は最後に訂正した日 |
選択肢の値まで条文に置いた点が特徴です*1。サービスの種別は、携帯の音声、携帯のデータ、固定ブロードバンド、固定電話、衛星ブロードバンド、衛星の音声、固定無線、NBNの音声のみ、固定無線によるNBNのブロードバンド、FTTB、FTTC、FTTN、FTTP、HFC、衛星の15個から選びます*1。語彙をそろえないと集計ができないという判断でしょう*1。
不明な場合の書き方まで指定されているのも実務的です*1。回線数や建物数が分からない場合は、空欄にするのではなく「技術的な可視性がなく情報を得られない」旨の定型文を入れます*1。空欄と「不明」を区別できる形になっています*1。
参照番号の定義も丁寧です*1。第21条は、その障害に固有であることと、記載が訂正され、削除され、その他の変更を受けても、その障害との対応づけが保たれることを求めます*1。訂正のたびに番号が変わる実装は認められません*1。
CSVで取り出せることが、公開の条件になっている
第25条は、公開の仕方にも条件を付けました*1。
まず場所です*1。登録簿は、事業者のウェブサイトで公表します*1。自社のサイトを持たない場合は、他の事業者のウェブサイトまたは閲覧の目的に適していると自ら考える他のウェブサイトでもかまいません*1。そして、ネットワークの状態または障害に関するウェブページの目立つ位置に、登録簿そのものか、そこへのリンクを置きます*1。
次に機械可読性です*1。第25条第5項は、登録簿の情報を、CSV形式のファイルとしてダウンロードできる方法で提供することを求めます*1。第6項は、そのCSVについて、別表1の各項目区分と、指示に沿った情報を含むこと、そして各項目区分を横方向の列見出しとして提示し、その下に情報を並べることまで指定しました*1。
ここまで書かれていると、実装の自由度はほぼありません*1。逆に言えば、複数の事業者の登録簿を機械的に突き合わせられるということです*1。障害の傾向を横断で分析する用途が想定されているのでしょう*1。
到達性も条件です*1。第25条第7項は、公表される版がWCAGのレベルAAの達成基準を満たすことを求めます*1。同じ豪州では、携帯カバレッジ地図の業界標準にも同じ水準の要件が置かれていました*1。公開物にアクセシビリティの水準を課すのは、この国の定型になりつつあります*1。
表現の要件もあります*1。記載は平易な英語で表すこととされ、登録簿は電子的な手段で維持しなければなりません*1。
3日と2年、そして原因を書かなくてよい場合
期限は3つあります*1。
掲載は、該当する障害が解消してから3日以内です*1。訂正は、情報が古い、または正確でないと気づいてから3日以内*1。保持は、解消した日から少なくとも2年が終わるまで、記載を登録簿に残します*1。
3日という期限は、障害対応の実務から見ると短めです*1。原因の切り分けが終わっていない段階でも、分かっている範囲で載せることになります*1。そのために、原因の分類に「不明」が用意されていると読めます*1。後から分かった時点で訂正すればよい、という組み立てです*1。
ただし、書かなくてよい場合も明示されました*1。第22条第4項は、その情報を開示することが、自社の電気通信ネットワークの保安、または重要インフラ安全保障法2018にいう国家安全保障を害しうると信じる合理的な根拠がある場合には、原因の高位の分類を提供する必要がないとしています*1。
攻撃を受けた事実や、設備の弱点を推測させる情報を、公開の場に出さなくてよい設計です*1。裏を返せば、原因が空欄になっている記載は、その可能性を含むということでもあります*1。重要インフラの側の制度とは、リスク管理計画の強化要件で接続しています*1。
対象となる障害の範囲も定義されました*1。該当障害とは、事業者が所有し該当搬送サービスの供給に使われるネットワークに影響する大規模障害または重大な局所障害であって、2026年3月31日より前に始まり、同日前に解消していないもの、または2026年3月31日以後に始まるものです*1。施行日をまたいで続いた障害も入ります*1。
網を持たない事業者はリンクを出す
第26条が、再販の事業者を扱います*1。
該当搬送サービスを利用者へ供給しているが搬送事業者ではない搬送サービス提供者は、2026年6月30日以後は常に、自社のウェブサイトの目立つ位置に、その該当搬送サービスのために網を持つ事業者が公表している登録簿へのリンクを表示しなければなりません*1。
ここでいう「網を持つ事業者」は、その搬送サービス提供者が利用者へ該当搬送サービスを供給するために使っている電気通信ネットワークの搬送事業者と定義されます*1。卸元をたどってリンクを張る形です*1。
決定2025にも同じ趣旨の規定がありました*2。移設後もこの構造は維持されています*1*2。
第27条は、疑義を避けるためとして、第4部の義務が、この標準の他の部の要件に追加されるものであり、それらに代わるものではないと述べます*1。注記は、第4部が該当障害についての履歴の情報を、広く一般に利用できるようにするための追加の要件を含むと説明しました*1。
つまり、障害の最中に顧客へ知らせる義務(従来の部)と、終わった後に履歴を公開する義務(第4部)は別建てです*1。前者は通知、後者は記録です*1。運用の設計でも、この2つは別の経路になります*1。
日本のIT部門が持ち帰れる論点
この標準は豪州の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1*2*3。ただし、障害情報の公開を設計する立場では参考になります*1。
第一に、語彙をそろえないと集計できないという点です*1。サービスの種別も、原因の分類も、州の名前も、選択肢として固定されました*1。自社の障害報告でも、原因を自由記述に任せると、後から傾向を出せません*1。分類の一覧を先に決め、「その他」と「不明」を分けておくのが実務的です*1。
第二に、不明を明示することです*1。回線数が分からない場合の定型文が指定されています*1。空欄は「まだ入力していない」のか「調べたが分からない」のか区別できません*1。状態を値として持つ設計にしておくと、督促の対象を絞れます*1。
第三に、識別子を訂正で変えないことです*1。参照番号は、記載が訂正・削除・変更されても対応づけが保たれることとされました*1。障害の管理番号を、チケットの起票単位ではなく事象の単位で採番し、統合や分割が起きたときの対応表を残す設計が要ります*1。
第四に、公開と通知を分けて設計することです*1。第27条が明示したとおり、履歴の公開は、障害中の通知とは別の義務です*1。社内でも、リアルタイムのステータスページと、事後の障害報告の一覧は、目的も更新の頻度も違います*1。同じ画面に押し込まず、データの持ち方から分けておくと、それぞれの要件に応えやすくなります*1。
まとめ:豪州の障害登録簿で押さえる3つの視点
豪州では、通信障害の履歴を公開する登録簿の義務が、単独の決定から業界標準へ移りました。電気通信サービス提供者(ネットワーク障害登録簿)決定2025が、電気通信法1997第99条第1A項に基づき、2025年12月15日からの掲示を求めていました。その後、ACMAが2026年3月26日に電気通信(障害時の顧客への通知)業界標準変更2026(第1号)を制定し、2026年3月31日から業界標準2024へ第4部 障害登録簿を追加しました。登録簿は2026年6月30日以後、常に稼働している必要があります。決定2025は、2026年7月1日に制定された廃止決定2026により全部が廃止されました。押さえたい視点は三つあります。第一に、記載する項目。別表1は、障害のタイトル、参照番号、種別、開始と終了の日と時刻、継続時間、影響した郊外地区・町、州・準州、郵便番号、サービスの種別、種別ごとの回線数、建物の数、解消に責任を負う事業者の名称、原因の高位の分類、自然現象や天候によるかの別、追加情報、初回の掲載日、最終の訂正日を並べ、選択肢の値や書式まで指示しています。不明な場合の定型文も定められました。参照番号は障害に固有で、記載が訂正・削除・変更されても対応づけが保たれる必要があります。第二に、公開の条件。登録簿は事業者のウェブサイトで、ネットワークの状態または障害に関するページの目立つ位置に置き、CSV形式でダウンロードでき、別表1の項目区分を列見出しとして並べ、WCAGのレベルAAを満たさなければなりません。記載は平易な英語で表し、登録簿は電子的な手段で維持します。第三に、期限と例外。掲載は障害の解消から3日以内、訂正は気づいてから3日以内、記載は解消から少なくとも2年残します。原因の高位の分類は、開示が自社のネットワークの保安または重要インフラ安全保障法2018にいう国家安全保障を害しうると信じる合理的な根拠がある場合には、提供を求められません。搬送事業者ではない搬送サービス提供者は、2026年6月30日以後、自社サイトの目立つ位置に、網を持つ事業者の登録簿へのリンクを表示します。
よくある質問
旧の決定と新しい業界標準は、何が違いますか。
対象と項目が広がりました。決定2025は、移動体の設備を運用する搬送事業者である搬送サービス提供者に対して、公衆移動体通信サービスに影響した障害について、開始した日、継続時間、地理的な位置、影響した搬送サービスの数の4つを載せることを求めていました。業界標準2024へ追加された第4部は、該当搬送サービスの供給に使われるネットワークを持つ搬送事業者と、該当搬送サービスを供給する搬送サービス提供者に適用され、別表1が20の項目区分と、その書式や選択肢を指定しています。決定2025は、廃止決定2026により全部が廃止されました。
障害の記載は、いつまでに載せる必要がありますか。
解消から3日以内です。第22条第3項は、第22条第2項に掲げる情報を、該当する障害が解消してから3日以内に登録簿へ含めることを求めています。第23条第2項は、情報が古い、または正確でないと気づいた場合に、3日以内に訂正することを求めます。第24条により、記載は障害が解消した日から少なくとも2年が終わるまで登録簿に残ります。登録簿そのものは、第22条第5項により2026年6月30日以後、常に稼働している必要があります。
障害の原因を公開しなくてよい場合はありますか。
あります。第22条第4項は、原因の高位の分類について、その情報を開示することが、自社の電気通信ネットワークの保安、または重要インフラ安全保障法2018にいう国家安全保障を害しうると信じる合理的な根拠がある場合には、提供を求められないとしています。なお、原因の選択肢には「不明」も用意されており、調査中の段階では、分かっている範囲で記載し、後から訂正する運用が想定されています。
回線を借りて提供している事業者も、登録簿を作る必要がありますか。
リンクの表示で足ります。第26条は、該当搬送サービスを利用者へ供給しているが搬送事業者ではない搬送サービス提供者について、2026年6月30日以後は常に、自社のウェブサイトの目立つ位置に、その該当搬送サービスのために網を持つ事業者が公表している登録簿へのリンクを表示することを求めています。網を持つ事業者とは、その提供者が利用者へサービスを供給するために使っている電気通信ネットワークの搬送事業者を指します。
出典
- *1 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Telecommunications (Customer Communications for Outages) Industry Standard Variation 2026 (No. 1)」(F2026L00382・2026年3月26日制定/2026年3月31日施行)(https://www.legislation.gov.au/F2026L00382/asmade/text)。本記事の一次情報。第2条の施行(2026年3月31日)、第3条の根拠(電気通信法1997 第125AA条第1項および大臣指令2025の第5条・第6条)、別表1により業界標準2024(F2024L01447)へ追加された第4部(第20条の適用、第21条の定義―記載・障害登録簿・該当障害・固有の識別子、第22条の登録簿と(a)から(m)の記載事項・3日以内の掲載・原因の不提供が認められる場合・2026年6月30日以後の常時稼働、第23条の3日以内の訂正、第24条の2年の保持、第25条の別表1に沿った提示と平易な英語・電子的手段での維持・掲示の場所・CSVでのダウンロードと列見出し・WCAGレベルAA、第26条の搬送事業者でない提供者によるリンクの表示、第27条の他の部との関係)、ならびに追加された別表1の各項目区分と第2欄の指示(時刻の24時間表記と時間帯、継続時間の表記、区切り文字、サービス種別の選択肢、不明時の定型文、原因の選択肢)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *2 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Telecommunications Service Provider (Network Outages Register) Determination 2025」(F2025L01399・2025年11月11日制定)(https://www.legislation.gov.au/F2025L01399/asmade/text)。移設前の義務の一次情報として。第3条の根拠(電気通信法1997 第99条第1A項)、第4条の定義(移動体の搬送事業者、障害=大規模障害または重大な局所障害)、第5条(登録簿の設置と公開、2025年12月15日以後の常時の掲示、解消から2年の保持、開始日・継続時間・地理的な位置・影響した搬送サービスの数の4項目、解消後すみやかな掲載と正確性および重要な変化後の更新、WCAG 2.2 レベルAA、移動体の搬送事業者ではない提供者によるリンクの表示、業界標準2024の要件に追加されるものである旨の注記)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)
- *3 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Telecommunications Service Provider (Network Outages Register) Repeal Determination 2026」(F2026L00918・2026年7月1日制定)(https://www.legislation.gov.au/F2026L00918/asmade/text)。廃止の一次情報として。第2条の施行(登録の翌日)、第3条の根拠(電気通信法1997 第99条第1A項)、および別表1により決定2025の全部が廃止されたことを確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)