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2026.10.25 らしくコラム

モダナイゼーションとは?移行(マイグレーション)との違いを解説

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

機械室で古い大型サーバーのケーブルをたどり新しいラックを指す担当者

この記事の結論

  • モダナイゼーションは、古いシステムをデータ連携と変更を続けられる形に作り替える取り組みです。
  • 置き場所を移すマイグレーションと違い、仕様やデータの持ち方、業務の進め方まで見直します。
  • 方式を選ぶ前に、システムの洗い出しと仕分け、既製品に移れるかの検討を先に済ませます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

サーバーをクラウドへ移したのに、保守の費用も手間もほとんど変わらない。刷新を上司に相談したら、マイグレーションと何が違うのかと聞かれて答えに詰まった——。古い業務システムを抱える情報システム部門では、こうした食い違いが起こりがちです。モダナイゼーションとは、古くなったシステムを、事業の変化に合わせて直し続けられる形に作り替えることです。

置き場所を移すだけのマイグレーションと違い、仕様やデータの持ち方まで見直すため、判断することが増えます。ただし万能ではなく、すべてのシステムを作り替える必要はありません。本記事では、古いシステムの扱いを任された情報システムの担当者に向けて、モダナイゼーションの意味、マイグレーションとの違い、判断を進める順番、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

モダナイゼーションとは

経済産業省が2025年5月に公表した「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」は、モダナイゼーション(モダン化)の対象となるレガシーシステムを、「運用維持保守や機能改良が困難な状態に陥り、経営・事業戦略上の足枷、高コスト構造の原因となっているシステム」と説明しています。*1 その原因として挙げているのは次の5つです。

  • 技術の老朽化:古い技術に対応できる技術者が減り、担当者を確保しにくい
  • システムの肥大化・複雑化:機能の追加や変更が難しい
  • ブラックボックス化:仕様や設計の文書が整っておらず、保守が特定の人に頼った状態になる
  • IT投資がされていない:システムをコストとみなし、十分な予算が確保されない
  • 古い制度としがらみ:昔ながらの業務の進め方が残り、システムを変えることに現場が抵抗する

レポートは古さそのものを問題にしていません。メインフレーム(大型の汎用コンピューター)のような古い技術で作られていても、保守の体制が整い、データ連携ができ、仕様が明確であれば、レガシーシステムではないとしています。*1目指す技術も、最新・最先端である必要はないとされています。モダナイゼーションの目的は、新しい技術を入れることではなく、データをほかの仕組みとつなげ、変更を続けられる状態にすることです。

マイグレーションとの違い

マイグレーションは「移行」のことで、プログラムやデータを別の環境へ移す作業を指します。サーバーを新しい機種に入れ替える、オンプレミス(自社に置いたサーバー)からクラウドへ移す、といった作業です。モダナイゼーションの途中でマイグレーションを行うこともあり、2つは対立する言葉ではなく、目的の大きさが違います。

分厚い設計書ファイルとノートPCの表を2人で見比べる手元

マイグレーションとモダナイゼーションの違い(本記事の整理)
観点 マイグレーション モダナイゼーション
目的 動いている仕組みを別の環境へ移す 事業の変化に合わせて直し続けられる形にする
主に変わるもの サーバー、OS、置き場所 仕様、構造、データの持ち方、業務の進め方
終わったあと 仕様が分からない状態や保守の体制はそのまま残ることがある 仕様が文書になり、ほかの仕組みとデータをやり取りしやすくなる
主に判断する人 情報システム部門 経営層、情報システム部門、業務部門

違いがはっきり表れるのは、移したあとです。総括レポートは、メインフレームなどから脱却済みであっても、運用維持保守に問題があれば再びレガシー化する可能性があると指摘し、現場の協力が得られにくい理由の一つにも「インフラ移行で一旦の落ち着き」を挙げています。*1 置き場所を変えただけでは、数年後にまた同じ悩みを抱えます。

なぜいま求められるのか

総括レポートの市場動向調査(約4,000社に依頼し799社が回答、2024年12月〜2025年2月)では、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有していました。メインフレームを持っていた企業の52%はメインフレーム以外へ移っている一方、過半数の企業では移行先のシステムの形態がまだ決まっていません。*1 古いシステムを放置すると、次の困りごとが重なります。

  • 使っている技術の保守期限が来て、部品やソフトウェアの更新が止まる
  • 仕様を知る担当者が辞め、障害が起きても原因をすぐに特定できない
  • データの形式が古く、新しいツールやサービスとつなげられない

IPAの委員会のページも、既存のレガシーシステムが足枷となり、生成AI等の活用をしたくても連携や組み込みが進められない問題が起きていると説明しています。*3

どの順番で判断するのか

移行の方式を選ぶところから始めると迷います。総括レポートとIPAのハンドブックの考え方に沿うと、判断は次の4つのステップで進めると整理しやすくなります。

  • ステップ1:持っているシステムを洗い出す。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、データベース、ツールと、その相互関係を把握します*1
  • ステップ2:仕分けて優先度を付ける。本当にモダン化が必要なシステムを見極め、統廃合の対象も決めます
  • ステップ3:パッケージやSaaS(ネット経由で使う既製のサービス)に移れるかを、最優先で検討します*1
  • ステップ4:既製品が合わなかったシステムについて、作り替え方を選び、データ移行を計画します

モダナイゼーションの判断を4つの段階で左から順に並べた流れ図。STEP1 システムを洗い出す、STEP2 仕分けて優先度を付ける、STEP3 既製品に移れるか検討、STEP4 作り替え方を選ぶ。

ステップ4の作り替え方には、主に次の3つがあります。

  • リホスト:プログラムはほぼそのままで、動かす環境を移す
  • リライト:同じ仕様のまま、別のプログラミング言語に書き換える
  • リビルド:仕様を整理し直したうえで、作り直す

方式より先に決めておきたいのは、いまの機能をすべて残すかどうかです。IPAのハンドブックは、「現行機能保証」を求められるとプロジェクトの難易度が高くなると述べています。*2 総括レポートも、現行踏襲へのこだわりは捨て、あるべき業務の姿から検討することを大原則とし、中堅・中小企業は一から作るスクラッチ開発を避けてパッケージやSaaSを原則とすべきだとしています。*1

外部に頼むときに確認しておきたい点

総括レポートは、大規模システムのモダン化は通常、数年計画におよぶとしています。*1 委託先を選ぶ前に、次の点を確かめておきます。

データセンターの通路で記憶装置にケーブルを差しノートPCで照合する技術者

  • 現状の調査をどこから頼むか:システムの一覧づくり、仕様の復元、優先度付けのうち、どれを任せるか
  • 仕様の復元のやり方:プログラムの解析だけでなく、業務の担当者への聞き取りを含めるか
  • データ移行の計画:データの質と量をいつ調べ、移行の前と後で件数をどう照らし合わせるか
  • 社内に残す知識:設計書や作業の記録を誰が持ち、自社の担当者へどう引き継ぐか
  • 移したあとの保守:運用と保守を誰が受け持ち、次の見直しをいつ行うか

仕様の復元は外部に任せきりにできません。ハンドブックは、プログラムを解析すれば「処理」の仕様は復元できても、なぜその処理が必要かという「業務」の仕様は復元できないと述べています。*2 業務部門の協力まで含めて役割を決めておくと進めやすくなります。費用はレガシーシステム刷新の費用相場、社内に知識を残す進め方は内製化支援をナレッジ移転と伴走で進める方法で扱っています。

まとめ:モダナイゼーションで確かめたい3つの点

モダナイゼーションを進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、目的が置き場所を移すことか、直し続けられる形にすることかを、経営層や業務部門と共有すること。第二に、方式を選ぶ前に、持っているシステムを洗い出して仕分け、既製品に移れるかを検討すること。第三に、いまの機能をすべて残すかを先に決めることです。この3点を踏まえておけば、「クラウドに移したのに、数年後にまた同じ悩みを抱えている」という事態を避けやすくなります。どこから手を付けるかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

モダナイゼーションの初めの調査では、OS、ミドルウェア、データベースの版と保守期限を一覧にし、COBOLやVisual Basic、古い版のJavaなど言語ごとにプログラムの本数と呼び出しの関係を洗い出します。設計の段階では、業務ごとにパッケージやSaaSに移れるかを確かめ、合わない業務だけリホスト・リライト・リビルドのどれで作り替えるかを、保守を続ける体制と合わせて決めます。データ移行では、OracleからPostgreSQLへの移し替えなどで、移行の前と後の件数と合計値を照らし合わせる手順を作り、切り替え前にリハーサルを行います。運用に入ったあとも、保守期限の一覧と仕様の文書を更新し続けます。

よくある質問

モダナイゼーションとDXは同じ意味ですか

同じ意味ではありません。総括レポートは、DXの本質はレガシーな現行システムを刷新・高度化することにとどまらず、企業文化から変革することだとしています。*1 モダナイゼーションは、DXを進めるためのシステム側の下地づくりにあたります。

一度モダナイゼーションをすれば終わりですか

終わりではありません。総括レポートは、モダン化は一過性の取り組みではなく、時間がたつと再び必要になるものだと述べています。*1

一部のシステムから始めてもよいですか

始めて構いません。IPAのハンドブックも、コストやリスクの問題で一度に全体を作り直せず、優先度を付けて一部から作り直すケースがあるとしています。*2 その場合も、仕様を復元する対象は十分に絞り込むことが重要とされています。

古いシステムのモダナイゼーションのご相談

現行システムの洗い出しと仕分けから、作り替え方の選定、データ移行、移したあとの運用保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 情報処理基盤産業室「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月28日)(https://www.ipa.go.jp/disc/committee/begoj90000002xuk-att/legacy-system-modernization-committee-20250528-report.pdf)。出典:レガシーシステムの定義と5つの要因、再レガシー化、モダンな技術の定義、市場動向調査(回答799社)の結果、可視化・仕分け・標準化対応の方針、モダン化が継続的な取り組みであることの記述を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX実践手引書 ITシステム構築編 レガシーシステム刷新ハンドブック」(https://www.ipa.go.jp/digital/dx/hjuojm000000eem6-att/000089583.pdf)。出典:現行機能保証とプロジェクトの難易度、処理の仕様と業務の仕様の復元、一部から優先度を付けて再構築するケースと対象の絞り込みの記述を参照(2026年10月確認)
  3. *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「レガシーシステムモダン化委員会」(https://www.ipa.go.jp/disc/committee/legacy-system-modernization-comittee.html)。出典:委員会の活動内容(レガシーシステムが生成AI等の連携や組み込みの足枷になっている問題)の記述を参照(2026年10月確認)




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