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電気主任技術者の外部委託|受変電設備の保安を任せる方法
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 工場やビルのように600ボルトを超えて受電する設備は事業用電気工作物に当たり、設置者は電気主任技術者を選任して届け出ます。
- 電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備などは、要件を満たす受託者と契約して承認を受ければ、選任しないことができます。
- 承認には受託者の免状と実務経験、点検の頻度、2時間以内に到達できる体制などの条件があり、個別の判断は産業保安監督部に確かめます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
電気主任技術者の外部委託とは、電気保安法人や電気管理技術者と保安管理業務の委託契約を結び、経済産業大臣または産業保安監督部長の承認を受けることで、電気主任技術者を選任しないで済ませる制度です。対象は電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備など、電気事業法施行規則第52条第2項に挙がる設備に限られます。*2 対象から外れる設備や、承認を受けていない設備では、電気事業法第43条により、設置者が免状を持つ人を電気主任技術者として選任し、届け出る必要があります。*1
自社ビルの受変電設備や工場の設備を持つ企業にとっては、「免状を持つ人を採用するか、外部に委託して承認を受けるか」が最初の分かれ目です。本記事では、選任が必要になる設備、外部委託が認められる範囲と承認の要件、自社で選任する場合の形を順に整理します。個別の設備が対象に当たるかは、事業場を管轄する産業保安監督部に確かめることが前提です。
目次
電気主任技術者の外部委託とは
外部委託の根拠は、電気事業法施行規則第52条第2項です。一定の自家用電気工作物について、保安管理業務の委託契約が第52条の2の要件に該当する者と結ばれていて、保安上支障がないものとして承認を受けた事業場は、電気主任技術者を選任しないことができると定めています。承認するのは経済産業大臣ですが、事業場が1つの産業保安監督部の管轄区域内だけにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長が承認します。*2
対象は同じ項の各号に5つ挙がっており、オフィスビルや工場、店舗の受変電設備がかかわるのは第4号の「電圧七千ボルト以下で受電する需要設備」です。
| 号 | 対象になる自家用電気工作物 |
|---|---|
| 第1号 | 出力5,000キロワット未満の太陽電池発電所または蓄電所で、電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの |
| 第2号 | 出力2,000キロワット未満の水力・火力・風力の発電所で、電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの |
| 第3号 | 出力1,000キロワット未満の発電所(第1号・第2号のものを除く)で、電圧7,000ボルト以下で連系等をするもの |
| 第4号 | 電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備 |
| 第5号 | 電圧600ボルト以下の配電線路 |
e-Gov法令検索の電気事業法施行規則第52条第2項より作成(確認日2026年10月7日)。
委託先には2つの種類があります。規則第53条第3項は、要件に該当する個人の受託者を「電気管理技術者」、法人の受託者を「電気保安法人」と呼んでいます。関東東北産業保安監督部の案内も、外部委託先は電気保安法人だけでなく個人の電気管理技術者でもよいとしています。
経済産業省の資料によると、この制度は1965年に300キロワット未満の需要設備を対象に始まりました。小規模な設置者に電気主任技術者を雇って選任させる負担を考えた仕組みで、2004年には一定の条件を満たした法人・個人が受託できるよう自由化されています。
選任が必要になる設備
まず、自社の設備に選任義務があるかを確かめます。電気事業法第43条第1項は、事業用電気工作物を設置する者に、工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから主任技術者を選任するよう求めています。選任したときと解任したときは、遅滞なく主務大臣に届け出ます(同条第3項)。*1
事業用電気工作物とは、第38条で一般用電気工作物以外の電気工作物と定められています。一般用電気工作物は、低圧で受電し、構外の電気工作物と低圧受電電線路以外でつながっていない設備などで、一般家庭の屋内配線がその例です。経済産業省の資料は、自家用電気工作物の例として「工場・ビルなどの600Vを超えて受電する需要設備」を挙げ、これらは電気主任技術者の選任が必要な設備に分類しています。*4
一方、10キロワット以上50キロワット未満の太陽電池発電設備などは小規模事業用電気工作物とされ、主任技術者の選任に代えて、基礎情報の届出と使用前自己確認が求められます。
選任する場合に必要な免状の種類は、扱う電圧で決まります。規則第56条によると、第一種は事業用電気工作物の全般、第二種は電圧17万ボルト未満、第三種は電圧5万ボルト未満(出力5,000キロワット以上の発電所または蓄電所を除く)の保安の監督ができます。経済産業省の資料は第三種の例として「ビル、工場、コンビニ」を挙げており、7,000ボルト以下の高圧で受電する一般的な建物は第三種の範囲に入ります。
外部委託承認の要件
承認の要件は、受託する側と、委託契約や体制の側に分かれます。受託する側の要件は規則第52条の2です。個人の場合は、電気主任技術者免状の交付を受けていること、告示で定める要件に該当し機械器具を持っていること、受け持つ事業場の種類と規模から算定した値が告示で定める値未満であること、などが並びます。法人の場合は、保安管理業務に従事する者が免状と告示の要件を満たすことに加え、業務を遂行する体制に支障がないことが求められます。*2
告示の中身は、経済産業省の資料に要約されています。必要な実務経験は第一種が3年以上、第二種が4年以上、第三種が5年以上で、保安管理業務講習や保安管理業務訓練の受講で短縮されます。受託できる量は、告示の算定方法で算定した値が33点未満であることとされています。*4 1人が多くの設備を受け持って点検がおろそかになるのを防ぐ上限です。
委託契約や体制の側の条件は、規則第53条第2項にあります。契約は保安管理業務の委託だけを内容とすること、告示で定める頻度で点検すること、非常時の連絡など設置者と受託者の義務と責任を契約に定めること、受託者の主たる連絡場所が事業場に「遅滞なく到達し得る場所」にあること、などです。経済産業省の内規「主任技術者制度の解釈及び運用」は、この「遅滞なく到達」を2時間以内に到達することと解釈しています。*3
| 観点 | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 受託者の資格 | 電気主任技術者免状の交付を受け、告示の要件と機械器具を満たす | 規則第52条の2 |
| 実務経験 | 第一種3年以上、第二種4年以上、第三種5年以上(講習・訓練で短縮) | 経済産業省の資料(告示の要約) |
| 受託できる量 | 告示の算定方法で算定した値が33点未満 | 経済産業省の資料(告示の要約) |
| 契約の中身 | 保安管理業務の委託だけを内容とし、点検の頻度と双方の義務・責任を定める | 規則第53条第2項 |
| 到達時間 | 受託者の主たる連絡場所から事業場へ2時間以内に到達できる | 規則第53条第2項、内規4.(9) |
| 設置者側の体制 | 保安に必要な事項を受託者に連絡する責任者を選任している | 内規4.(8) |
電気事業法施行規則、経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用」「電気保安人材を巡る対応状況について」より作成(確認日2026年10月7日)。
設置者の側にも準備が要ります。内規は、保安に必要な事項を受託者に連絡する責任者が選任されていることを求めており、設備容量が6,000キロボルトアンペア以上の需要設備では、その責任者に一定の知識と技能が必要とされています。 承認を受けた後も、設置者は委託先の意見を尊重しなければならず(規則第53条第4項)、条件を満たさなくなれば承認が取り消されることがあります(同条第5項)。
点検の頻度について、経済産業省の資料は外部委託での目安を毎月1回としています。令和7年度からは、設備更新計画に沿って設備を更新し、漏電や過度な使用を遠隔で監視して事故が起こりにくい状態を保てる場合に、現地での点検を3か月に1回へ延ばせるようになりました。*4
申請は、規則第53条第1項の保安管理業務外部委託承認申請書に、委託契約書の写しや委託先が要件に該当することを証する書類などを添えて出します。関東東北産業保安監督部は、電子申請の保安ネットを標準的な申請方法としています。*5
自社で選任するときの形
外部委託の対象外だったり、承認を受けずに自社で対応したりする場合は、選任になります。内規は、選任される主任技術者を原則として設置者またはその役員・従業員としています。ただし自家用電気工作物では例外が2つあり、派遣労働者や、保安管理業務の受託者の役員・従業員であっても、選任する事業場に常時勤務し、保安上の意見の尊重などを契約で約していれば選任できます。*3
経済産業省の「主任技術者制度に関するQ&A」は、この形を「外部選任」と呼び、電気保安法人や電気管理技術者に保安管理業務を委託する外部委託とは「別制度」だと説明しています。常時勤務の目安は週40時間(週5日・1日8時間)です。*6 名前は似ていても、外部選任は人を選任する形、外部委託は選任しないで済ませる形と覚えておくと混同しません。
別の事業場にいる人を選任する道もあります。内規は、一定規模未満で7,000ボルト以下で受電する需要設備について、設置者や親会社・子会社の従業員などで、第一種から第三種の免状を持ち、勤務する事業場か住所から2時間以内に到達できる人であれば、設置場所と異なる事業場に勤務する人を選任できるとしています。
このほか、電気事業法第43条第2項は、主務大臣の許可を受ければ免状を持たない人を選任できると定めていますが、内規は許可の対象を小規模な需要設備などに限っています。1人に二以上の事業場を兼ねさせることも、承認を受けた場合を除いて認められません(規則第52条第4項)。
選任義務の考え方は、電気以外の設備にもあります。通信設備の側で選任義務を負う資格は電気通信主任技術者と工事担任者の選任の違い、電気通信事業法で判定で扱いました。
採用で探す場合の母集団
自社で選任すると決めた場合、免状を持つ人の数が採用の前提になります。一般財団法人電気技術者試験センターの試験結果によると、第三種の合格者は令和5年度が9,894人、令和6年度が8,181人、令和7年度が6,365人でした。令和7年度は受験申込者66,551人、受験者48,942人で、受験者数は1科目でも出席した人の合計です。*7
第二種と第一種は一次試験と二次試験の二段階で、令和7年度の二次試験の合格者は第二種が611人、第一種が245人でした。3種類を合わせた令和7年度の合格者は7,221人です。*8*9 ただし、これは合格者の数で、いま選任されている人の数ではありません。
求人票に書く要件は、扱う電圧から逆算できます。7,000ボルト以下で受電する建物なら第三種の範囲に収まるので、第一種や第二種を必須にすると候補者を自ら狭めることになります。合格者数から要件を決める考え方は情報処理技術者試験の合格者数、要件に入れる前に数えるでも整理しています。
選任か外部委託かを決める順番
判断の順番に並べ直すと、1つ目は、自社の設備が事業用電気工作物に当たるかどうかです。600ボルトを超えて受電しているか、発電設備があるかを確かめます。2つ目は、外部委託の対象に入るかどうかです。電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備であれば、規則第52条第2項第4号の対象になり得ます。
3つ目は、委託するか選任するかの比較です。委託するなら、要件を満たす電気保安法人や電気管理技術者を探し、契約の中身、点検の頻度、2時間以内の到達、自社側の連絡責任者をそろえて申請します。選任するなら、自社の従業員か、外部選任か、別の事業場の人かを内規に照らし、必要な免状の種類と募集の時期を決めます。どの道を選んでも、第42条の保安規程の届出は設置者の義務として残ります。
Q&Aは冒頭で、不明な点は事業場を管轄する産業保安監督部等に事前に相談するよう案内しています。設備の区分や承認の可否は、図面と契約案を持って監督部に確かめるのが確実です。
まとめ:外部委託で確かめておきたい3つの点
電気主任技術者の外部委託は、3つの点に整理できます。第一に、600ボルトを超えて受電する工場やビルの設備は事業用電気工作物に当たり、選任と届出が原則であること。第二に、電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備などは、要件を満たす受託者と委託契約を結んで承認を受ければ、選任しないことができること。第三に、承認では受託者の免状と実務経験、受託できる量、契約の中身、2時間以内の到達、連絡責任者が確かめられ、外部選任とは別の制度であることです。委託か選任かを決めたら、必要な人材の要件と時期を早めに整理しておきます。
よくある質問
電気主任技術者を外部委託できるのはどんな設備ですか。
電気事業法施行規則第52条第2項に挙がる自家用電気工作物です。オフィスビルや工場にかかわるのは「電圧七千ボルト以下で受電する需要設備」で、ほかに7,000ボルト以下で連系する一定出力未満の発電所・蓄電所と、600ボルト以下の配電線路が対象です。要件に該当する受託者と委託契約を結び、保安上支障がないものとして承認を受けた場合に、電気主任技術者を選任しないことができます。
外部委託と外部選任は何が違いますか。
外部委託は、電気保安法人や電気管理技術者に保安管理業務を委託して承認を受け、電気主任技術者を選任しない制度です。外部選任は、派遣労働者や受託者の従業員など自社の従業員以外の人を、事業場に常時勤務させたうえで電気主任技術者に選任する形です。経済産業省のQ&Aは、2つを別の制度と説明しています。
外部委託の承認を受けるには、どんな条件がありますか。
受託者が免状と告示の要件を満たし、経済産業省の資料によれば第三種なら5年以上などの実務経験があり、受託できる量が33点未満であることが必要です。契約は保安管理業務の委託だけを内容とし、点検の頻度や双方の義務を定め、受託者が2時間以内に事業場へ到達できることも求められます。個別の可否は産業保安監督部に確かめてください。
求人票には第何種と書けばよいですか。
扱う電圧で決まります。電気事業法施行規則第56条により、第三種は電圧5万ボルト未満(出力5,000キロワット以上の発電所または蓄電所を除く)、第二種は電圧17万ボルト未満、第一種は事業用電気工作物の全般の保安の監督ができます。7,000ボルト以下で受電する一般的な建物であれば、第三種の範囲に収まります。
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出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「電気事業法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170)。第38条の区分、第42条の保安規程、第43条の選任義務・許可・届出の条文として(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「電気事業法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/407M50000400077)。第52条の選任と外部委託の対象、第52条の2の受託者の要件、第53条の承認の基準と申請、第56条の監督の範囲の条文として(2026年10月確認)
- *3 参考:経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/syuningijutsusya_naiki.pdf)。選任される者の範囲、許可の対象、外部委託承認の基準(連絡責任者・2時間以内の到達)として(2026年10月確認)
- *4 参考:経済産業省「電気保安人材を巡る対応状況について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/hoan_seido/pdf/016_01_01.pdf)。令和8年2月19日付け資料。電気工作物の区分の例、外部委託承認制度の概要と変遷、実務経験年数と33点未満、点検頻度として(2026年10月確認)
- *5 参考:経済産業省 関東東北産業保安監督部「外部委託承認制度」(https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/jikayou/e_gaibuitaku.html)。外部委託先と申請方法の案内として(2026年10月確認)
- *6 参考:経済産業省「主任技術者制度に関するQ&A」(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/syuningijutsusya_qa.pdf)。令和8年10月版。外部選任と外部委託の違い、常時勤務の目安、相談先の案内として(2026年10月確認)
- *7 参考:一般財団法人電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験の試験結果と推移」(https://www.shiken.or.jp/chief/third/result/)。令和5年度から令和7年度までの受験申込者・受験者・合格者として(2026年10月確認)
- *8 参考:一般財団法人電気技術者試験センター「第二種電気主任技術者試験の試験結果と推移」(https://www.shiken.or.jp/chief/second/result/)。令和7年度の二次試験の合格者として(2026年10月確認)
- *9 参考:一般財団法人電気技術者試験センター「第一種電気主任技術者試験の試験結果と推移」(https://www.shiken.or.jp/chief/first/result/)。令和7年度の二次試験の合格者として(2026年10月確認)