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業務委託で二重派遣になる場面|受け入れ企業が迷う10の疑問
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 二重派遣は雇っていない人を別の会社の指示の下で働かせる形で、受け入れて指示した側も職業安定法第44条に触れます。
- 業務委託で受け入れた人への作業や時間の指示は本人を雇う受注側の責任者を通し、面談で人を選ぶことも避けます。
- 受け入れる前に契約の相手が本人を雇っているかを確かめ、勤怠と入館の決まりを誰が管理するかを契約で決めます。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
SES(技術者が客先で作業する時間を提供する契約の形)の会社から紹介されたエンジニアに来てもらったら、契約の相手は紹介の会社で、本人の雇い主はさらにその先の会社だった。毎朝の打ち合わせで作業を割り振っているが、これは二重派遣にならないのか——業務委託で外部のエンジニアを受け入れる現場では、こうした不安がよく聞かれます。
本記事は、業務委託や再委託の商流でエンジニアを受け入れる企業の開発マネージャーや情報システム部門の方に向けて、二重派遣と労働者供給について迷いやすい点を10の問いに分けてQ&Aで整理します。答えは、職業安定法と労働者派遣法の条文、厚生労働省の業務取扱要領と37号告示、ガイドで言えることに限っています。
目次
業務委託で二重派遣が問題になる場面
二重派遣は、派遣で受け入れた人をさらに別の会社へ派遣する形を指す言葉です。ただ、業務委託の現場で気をつけたいのは派遣契約の場合に限りません。業務委託(請負や準委任)の契約で受け入れた人に自社が直接作業を指示し、しかも契約の相手がその人を雇っていない場合も、同じ禁止の条文に触れるおそれがあります。
本記事は、業務委託や再委託の商流でエンジニアを受け入れる企業が迷う点を、10の問いに分けて整理します。次の表で、自社の疑問がどの問いに当たるかを確かめてから読んでください。
| 問いの種類 | 主な疑問 | 答えの決め手 | Q&A |
|---|---|---|---|
| 二重派遣と労働者供給 | 二重派遣とは何か、受け入れた側も違反になるか、仲介の会社が入るとどうなるか | 職業安定法第44条と派遣の業務取扱要領 | Q1〜Q3 |
| 商流と人の選び方 | 業務委託の人に直接指示したとき、フリーランスへの再委託、面談や経歴書、1人だけの常駐 | 37号告示とガイドのQ&A | Q4〜Q7 |
| 勤怠と職場の決まり | 出退勤の管理、入館や服装の決まり、問題になったときに受け入れ側に起きること | 37号告示と労働者派遣法第40条の6 | Q8〜Q10 |
商流の深さと単価の関係は「SES多重下請けの商流と単価」で、パートナーを選ぶ段階で下請負の有無を尋ねる方法は「SESパートナーの選定で聞ける項目」で扱っています。本記事は、受け入れた後の現場で何を確かめるかに絞ります。
二重派遣と労働者供給のQ&A
最初に、二重派遣がなぜ禁じられているのかを、条文と厚生労働省の業務取扱要領で押さえます。鍵になるのは、働く人を雇っている会社と、その人に指示を出す会社が一致しているかどうかです。

Q1. 二重派遣とは何ですか
- 答えの要点:派遣先が、派遣で受け入れた人をさらに別の会社へ派遣することです。派遣先はその人を雇っていないため派遣にはならず、労働者供給(契約に基づいて人を他の会社の指揮命令の下で働かせること)の形として、職業安定法第44条で禁じられています。
- 判断の根拠:労働者派遣事業関係業務取扱要領 第1*3、職業安定法第4条第8項・第44条*1
- 労働者派遣法は、派遣を「自己の雇用する労働者」を他人の指揮命令を受けて働かせることと定めています。雇っていない人を送り込む形は、この定義に当たりません。*2
Q2. 受け入れた側も違反になりますか
- 答えの要点:なります。職業安定法第44条は、労働者供給事業を行うことだけでなく、供給される人を自らの指揮命令の下で働かせることも禁じています。
- 判断の根拠:職業安定法第44条。違反には1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の定めがあり(第64条第10号)、会社にも罰金を科す定めがあります(第67条)。*1
Q3. 間に仲介の会社が入るだけで二重派遣になりますか
- 答えの要点:派遣契約を仲介するだけなら、通常は二重派遣とは判断されません。要領は、人を雇う会社と、その人に直接指示する会社の間だけで派遣契約が結ばれていれば、二重派遣に当たらないとしています。
- 判断の根拠:労働者派遣事業関係業務取扱要領 第1*3
- 契約書の当事者を確かめ、指示を出す自社と本人の雇い主が契約で直接つながっているかを見ます。
業務委託の商流で受け入れるときのQ&A
次は、業務委託の契約で受け入れる場合です。業務委託では、受け入れ側は作業の結果や要望を契約の相手に伝え、作業の指示は相手の会社が自分の社員に出すのが前提です。下の図は、問題が起きにくい形と、労働者供給に当たるおそれがある形を並べた本記事の整理です。
Q4. 業務委託で受け入れた人に直接指示すると何に当たりますか
- 答えの要点:契約が準委任でも、自社と本人の間に指揮命令の関係があれば、労働者派遣事業に当たると判断されます(いわゆる偽装請負)。さらに契約の相手が本人を雇っていなければ、労働者供給に当たるおそれがあります(本記事の整理)。
- 判断の根拠:ガイドに収録された疑義応答集(第3集)Q1は、契約の形式を問わず実態で判断するとしています。*6労働者供給事業業務取扱要領は、供給契約かどうかは形式でなく実体で判断し、請負契約の形をとる場合も含むとしています。*4
- 疑義応答集(第3集)が扱う開発担当者には、再委託先の開発担当者も含まれています。
Q5. フリーランスに再委託されている人ならどうですか
- 答えの要点:受注側の会社と再委託先の間に雇用の関係がない限り、労働者派遣法の問題にはなりません。ただし、実態から本人が労働者と認められ、受け入れ側から指揮命令を受けていれば、偽装請負となります。
- 判断の根拠:「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」の偽装請負についての参考*6
- 労働者に当たるかは、契約の名前ではなく、他人の指揮監督の下で働いているか、報酬がその労働の対価かで判断されます。
Q6. 職務経歴書や事前の面談で人を選んでよいですか
- 答えの要点:本人の職務経歴書を求めたり事前に面談したりすると、一般には人の配置に影響するため、労働者派遣事業や労働者供給事業と判断されることがあります。施設の保安のために名前を前もって受け取るだけなら、それだけで直ちにそう判断されるわけではありません。
- 判断の根拠:ガイドのQ&A第2集 Q12・Q13*6
- 特に、面談の結果で特定の人を指名したり断ったりすると、配置の決定に関わっていると判断されます。
Q7. 1人だけで常駐してもらう場合は何に気をつけますか
- 答えの要点:常駐する本人が1人だけなら、本人が受注側の管理責任者を兼ねることはできません。受注側の管理責任者が巡回などで指示と管理を行い、受け入れ側との連絡の道筋を前もって決めておきます。
- 判断の根拠:ガイドのQ&A第1集 Q4・第2集 Q8*6
- 第2集 Q8は、出退勤の管理を含む労働時間の管理を、受注側が自ら行えるようにしておくことを求めています。
勤怠と職場の決まりのQ&A
続いて、出退勤や入館の決まりなど、毎日の受け入れで自社の規則を当てはめたくなる場面です。37号告示は、時間の管理と職場の規律の管理を受注側が自ら行うことを、適正な請負の条件に挙げています。

Q8. 出退勤の時刻は受け入れ側で管理してよいですか
- 答えの要点:始業と終業の時刻、休憩、休日、残業の指示と管理は、受注側が自ら行います。受け入れ側が稼働時間を知るだけの単なる把握は、この条件から除かれています。
- 判断の根拠:37号告示 第2条第1号ロ*5
- ガイドは、作業の日時を前もって打ち合わせ、作業中は受け入れ側から直接指示を受けないよう書面を作り、受注側の責任者を通じて指示し、業務時間の実績を受注側が把握しているかを見るとしています。*6
Q9. 入館の決まりや服装を自社に合わせてもらえますか
- 答えの要点:入退場の決まりや服装などの規律は、受注側が自ら決めて管理するのが原則です。安全衛生や機密の保持などの合理的な理由があれば、受け入れ側が関わっても直ちに偽装請負とは判断されません。
- 判断の根拠:37号告示 第2条第1号ハ*5、ガイドの具体的判断基準とQ&A第1集 Q9*6
- 作業服について受け入れ側が本人に直接指示すると偽装請負と判断され、合理的な理由で双方が合意して前もって契約で決めておく形なら、それだけで偽装請負とはされません。
Q10. 偽装請負と判断されたら受け入れ側に何が起きますか
- 答えの要点:派遣法の適用を免れる目的で、請負など派遣以外の名目で契約して人を受け入れていた場合、受け入れ側がその人に、そのときと同じ労働条件で労働契約を申し込んだものとみなされます。
- 判断の根拠:労働者派遣法第40条の6第1項第5号*2
- 受け入れ側が、その行為に当たることを知らず、知らなかったことに過失がなかったときは、この定めは適用されません。
ここまでの答えは、条文と厚生労働省の資料から言えることに限っています。自社の商流や受け入れ方が当てはまるかの個別の判断は、都道府県労働局や弁護士などの専門家に確認してください。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
二重派遣の心配は、受け入れる前に商流と指示の道筋を決めておくほど小さくなります。業務委託の人材を探す前に、次の点を書き出しておくと相談が進めやすくなります。
- 範囲:任せる作業と成果物、優先順位を伝える窓口
- 期間:始める時期と、作業量が変わったときの協議の仕方
- 体制:契約の相手が本人を雇っているか、受注側の責任者は誰か
- 費用の決まり方:月額・時間単価・精算の幅のどれで払うか
- 引き継ぎ:終わるときに資料とアカウントを誰が受け取るか
日々細かく指示しながら進めたい仕事なら、業務委託ではなく、リモートで働く社員として迎える道もあります。業務委託で受け入れるなら、契約の相手と本人の雇用の関係を最初に確かめておくと、商流が深くなっても線を引きやすくなります。
まとめ:業務委託の二重派遣で確かめる点
業務委託の二重派遣で確かめたい点は3つです。第一に、二重派遣は雇っていない人を別の会社の指揮命令の下で働かせる労働者供給の形で、供給を受けて自社の指示の下で働かせた側も職業安定法第44条に触れること。第二に、業務委託で受け入れた人への作業の順序や時間の指示は本人を雇う受注側の責任者を通し、面談や経歴書で特定の人を選ぶことも避けること。第三に、受け入れる前に契約の相手が本人を雇っているかを確かめ、出退勤や入館の決まりを誰が管理するかを契約で決めておくことです。
よくある質問
SESの契約は二重派遣になりやすいのですか
SESという呼び名だけで二重派遣になるわけではありません。問われるのは、本人を雇っている会社と本人に指示を出す会社の関係です。受け入れ側が本人に直接作業を指示し、契約の相手が本人を雇っていない場合に問題になります。
派遣で受け入れた人を取引先の現場で働かせてもよいですか
取引先の指示の下で働かせると、派遣で受け入れた人をさらに派遣する形になり、二重派遣に当たります。取引先の指示の下で働いてもらう必要があるなら、本人を雇う派遣元と取引先の間で派遣契約を結ぶ形を考えます。
受注側の責任者が常駐していないとき急ぎの連絡はどうしますか
ガイドのQ&Aは、管理責任者が常駐していなくても、確実な連絡の体制を前もって決め、受注側が指示と管理を自ら行えるようにしておくことを求めています。急ぎの依頼もまず受注側の責任者に送り、本人への指示は責任者から出してもらいます。
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出典
- *1 参考:職業安定法(昭和22年法律第141号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:デジタル庁 e-Gov法令検索。第4条第8項(労働者供給の定義)、第44条(労働者供給事業の禁止)、第64条第10号、第67条を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *2 参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088)。出典:デジタル庁 e-Gov法令検索。第2条第1号(労働者派遣の定義)、第40条の6第1項第5号(労働契約の申込みのみなし)を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *3 参考:厚生労働省職業安定局「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(令和8年10月)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001683183.pdf)。出典:厚生労働省。第1 労働者派遣事業の意義等のうち、いわゆる「二重派遣」の項を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *4 参考:厚生労働省職業安定局「労働者供給事業業務取扱要領」(平成30年1月)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171113_4.pdf)。出典:厚生労働省。第1の1(労働者供給の意義、「供給契約」の意義、労働者供給事業と請負により行われる事業との関係)を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *5 参考:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf)。出典:厚生労働省。第2条第1号ロ(労働時間等に関する指示その他の管理)、ハ(服務上の規律、配置等の決定及び変更)を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *6 参考:厚生労働省・都道府県労働局「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001704200.pdf)。出典:厚生労働省・都道府県労働局。偽装請負についての参考、区分基準の具体的判断基準、Q&A第1集 Q4・Q9、第2集 Q8・Q12・Q13、第3集 Q1を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)