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業務委託の見積依頼の手順と依頼書の項目|開発の担当者向け
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 業務委託の見積依頼書には、作業範囲・技能・稼働・期間・成果物・精算の幅・回答期限など12の項目を書きます。
- 範囲を決め、依頼書を書き、社内で確かめ、同じ依頼書を同じ日に出し、回答を前提ごとにそろえる5つの手順で進めます。
- 回答を受けたら一方的に単価を決めずに話し合い、作業が増えたら依頼書を直して見積りを取り直します。
※ 本記事は2026年11月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
業務委託のエンジニアを1人迎えたい。SES(技術者の作業を提供する取引)の会社2社と、知り合いから紹介された個人のエンジニアに見積りを頼んだところ、返ってきた金額は週の稼働日数も期間もばらばらの前提で、どれが高いのか比べられなかった——。業務委託の見積依頼で、こうした行き違いは少なくありません。
本記事は、業務委託のエンジニアやSES会社に見積りを頼む開発マネージャーや情報システム責任者に向けて、依頼書に書く12の項目を表で示し、何を決め、何を書き、誰に出すかを5つの手順で整理します。根拠は、IPAのモデル契約書、フリーランス法と関係する規則・考え方、公正取引委員会のテキストです。
業務委託の見積依頼とは
業務委託のエンジニアに開発へ加わってもらうとき、最初にするのが見積りの依頼です。相手は業務委託で働く個人のエンジニアのこともあれば、エンジニアを抱えるSES会社のこともあります。どちらの場合も、こちらの条件を書いた見積依頼書を渡し、金額と稼働できる時期を返してもらいます。
依頼書に書いた条件は、そのまま契約の土台になります。IPAの「情報システム・モデル取引・契約書」は、提案依頼書と、相手から出た提案書・見積書を基礎として、個別の契約の取引条件を定める形をとっています。*1 定める条件として、作業の内容(範囲、仕様等)、契約の類型(請負・準委任)、作業期間、作業環境、委託料と支払方法などが並びます。*1
- 依頼書に無い条件は、相手が自分の前提で埋めて見積もる
- 相手ごとに前提が違うと、金額を並べても比べられない
- 依頼書の条件は、発注のときに示す条件の下書きになる
システムの開発を丸ごと任せるときの提案依頼書とは、書く中身が違います。人を確保する見積依頼では、完成させる物よりも、任せる作業、求める技能、稼働、期間が中心です。届いた見積もりの内訳の確かめ方はSESパートナーの開発見積もりで扱っています。本記事は、その前の段階である依頼の出し方を扱います。
見積依頼書に書く12の項目
次の表が、業務委託のエンジニアに見積りを頼むときの依頼書の項目です。記入の例の「〇〇」は、自社の名前や数に置き換えます。

| 項目 | 書く中身 | 記入の例 | 抜けると起きること |
|---|---|---|---|
| 依頼元と窓口 | 会社名、担当者、質問を受ける窓口 | 〇〇部の〇〇・質問はメールで受け付け | 質問の行き先が分からず、相手が推測で見積もる |
| 任せる作業の範囲 | 任せる作業と、任せない作業 | 〇〇システムの画面の改修(設計から単体テストまで) | 範囲の外の作業が後から加わり、見積りと合わなくなる |
| 求める技能 | 欠かせない技能と、あれば望ましい技能 | 〇〇での開発経験・設計書を読んで作業できること | 水準の違う提案が混ざり、比べられない |
| 稼働の目安と場所 | 週の日数か月の時間の目安、リモートか出社か | 週〇日程度・リモート(月〇回出社) | 相手ごとに稼働の前提が違い、金額を並べても比べられない |
| 期間 | 開始の時期、最初の契約の長さ、更新の考え方 | 〇月開始・最初は〇か月・更新は協議 | 長く続ける前提の見積りを、短い契約に当てはめてしまう |
| 契約の形 | 準委任か請負か | 準委任(作業の遂行に対して支払う) | 完成を求めるのか作業を求めるのかが、あいまいになる |
| 成果物と報告 | 納めてもらう物と、作業の報告の形 | 修正したプログラム一式・月1回の作業報告 | 検収で何を確かめるかが決まらない |
| 精算の幅 | 稼働時間で精算するときの基準時間の幅と、外れたときの扱い | 月〇〇〜〇〇時間・幅の外は時間単価で精算 | 回答の金額の前提がそろわない |
| 渡す資料と環境 | 渡す資料、使う端末、入る環境 | 既存の設計書・貸与する端末・検証環境 | 環境を整える作業が見積りから漏れる |
| 情報の扱い | 個人データに触れるか、秘密保持の取り決め | 本番の個人データには触れない | 後から作業の制限が加わり、進め方が変わる |
| 回答の期限と形 | いつまでに、何を出してほしいか | 〇月〇日まで・見積書と稼働できる時期 | 回答の形がばらばらで比べにくい |
| 相手の形の確認 | 個人か会社か、従業員がいるか・何人か | 個人で従業員なし/会社で従業員数の欄に記入 | どの法律の決まりに沿えばよいかが後で分からなくなる |
項目は12あります。中でも「稼働の目安と場所」「期間」「精算の幅」の3つは、相手ごとに前提がずれやすく、金額の比べやすさを左右します。決めきれない項目は空欄にせず、「〇月までに決める」と書いておくと、相手は前提を置いて見積もれます。
精算の幅は、毎月の稼働時間に基準の幅を決め、幅を超えた分や足りない分を時間単価で精算する形の取り決めです。準委任で稼働時間をもとに支払うときに使います。請負で成果物の完成に対して支払うなら、この項目は要りません。
「相手の形の確認」は、後の手順で使います。相手が従業員を使わない個人なら、フリーランス法の対象になります。*2 会社なら、規模によっては中小受託取引適正化法(取適法)の対象です。公正取引委員会のテキストは、見積依頼書に従業員数を確かめる欄を設け、見積書と一緒に返してもらう方法を例に挙げています。*6
見積依頼を出すまでの5つの手順
依頼書は、思いついた順に書くと抜けが出ます。次の5つの手順で、何を決め、何を書き、誰に出すかを順に固めます。
- 手順1:任せる作業と任せない作業、開始の時期を決める(開発マネージャが現場の担当と)
- 手順2:稼働の目安、期間、精算の幅、成果物を決めて依頼書を書く(開発マネージャ)
- 手順3:予算の枠、情報の扱い、契約の形を社内で確かめる(決裁者と情報システムの担当)
- 手順4:出す相手を決め、同じ依頼書を同じ日に出す(業務委託の個人、SES会社、人材サービス)
- 手順5:回答を前提ごとに並べ、質問への答えを全員にそろえて返す(開発マネージャ)
手順4で何人、何社に出すかは、比べたい形で決めます。個人に直接頼む形と、会社を通す形を両方比べたいなら、両方に同じ依頼書を出します。依頼書を相手ごとに書き換えると、手順5で前提がそろいません。
手順5で1人から質問を受けたら、答えはほかの相手にも同じ内容で返します。複数の回答の点のつけ方はSESパートナー選定の見積もり比較で詳しく整理しています。
回答を受けてから決めるまで
回答がそろったら、金額を決める前に、相手と話し合います。公正取引委員会のテキストは、十分な協議をせずに一方的に単価を指定する指値で低い代金を定めることは買いたたきのおそれがあるとし、見積書を出してもらった上で十分に話し合うことが肝要だとしています。*6

フリーランス法も、1か月以上続く業務委託で、通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めることを禁じています。*2*3 厚生労働省などの「考え方」は、そのおそれがある例に、見積りの使い方に関わるものを挙げています。*5
- 継続して大量に頼む前提で見積もらせ、その単価で短く少しだけ頼む
- 見積もらせた段階より作業が増えたのに、当初の見積価格のまま決める
- 自社の予算の単価だけを基準に、一方的に低い単価で決める
作業が増えたときは、テキストも、最終的な作業内容を反映した再見積りを取り、単価を見直す必要があるとしています。*6 依頼書の範囲を直し、同じ相手に出し直します。
決まったら、相手が個人なら業務委託をしたら直ちに、業務の内容、報酬の額、支払期日などを書面かメールなどで示します。*2*4 時間単価と実際の作業時間で報酬が決まる形なら、金額の代わりに算定方法を示すことも認められています。*5 精算の幅は、この算定方法として書いておきます。
外部人材に頼むときに確認しておきたい点
見積依頼書を書き終えたら、そのまま外部人材への相談の準備に使えます。頼む前に、次の点を相手と確かめておくと、見積りの回答と、その後の契約の話が早く進みます。
- 範囲:任せる作業と任せない作業、個人データに触れるかどうか
- 期間:開始の時期、最初の契約の長さ、更新の考え方
- 体制:質問の窓口と、作業を受ける相手側の責任者
- 費用の決まり方:稼働の目安、精算の幅、締め日と支払期日
- 引き継ぎ:終わるときの資料の受け渡しと、作業の記録の残し方
社内の決裁に見積りを添えるときは外部人材活用の稟議、稼働の日数の決め方は業務委託エンジニアの稼働日数で整理しています。本記事は法令と公的な資料による一般的な整理です。個別の契約の扱いは弁護士などの専門家に確認してください。
まとめ:業務委託の見積依頼
業務委託の見積依頼で押さえたい点は3つです。第一に、依頼書には作業範囲、技能、稼働、期間、成果物、精算の幅、回答期限などの12の項目を書き、決めきれない項目は決める時期を書くこと。第二に、範囲を決めて依頼書を書き、社内で確かめてから、同じ依頼書を同じ日に出し、回答を前提ごとにそろえること。第三に、回答を受けたら一方的に単価を決めずに話し合い、作業が増えたら見積りを取り直すことです。
よくある質問
見積依頼は何人、何社に出せばよいですか
決まった数はありません。比べたい形で決めます。個人に直接頼む形と会社を通す形を比べたいなら、両方に同じ依頼書を出します。出す相手が多すぎると、質問への答えをそろえる手間が増えます。
見積依頼書に予算を書いてもよいですか
書くかどうかは社内で決めて構いません。書く場合も、予算の単価だけを基準に一方的に金額を決めず、回答を受けてから相手と話し合って決めます。
見積りを頼んだ相手に断るときはどうすればよいですか
回答の期限のあとに、選ばなかったことを早めに伝えます。依頼書で回答の期限と選ぶ時期を書いておくと、相手も次の予定を立てやすくなります。
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出典
- *1 参考:IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」ソフトウェア開発委託基本モデル契約書(ひな型)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html)。出典:独立行政法人情報処理推進機構。第4条(個別契約)を参照。ひな型(Word)から確認(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:e-Gov法令検索。第2条(定義)、第3条(給付の内容その他の事項の明示等)、第5条(特定業務委託事業者の遵守事項)を参照。条文はe-Gov法令APIで確認(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」(https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200)。出典:e-Gov法令検索。第1条(法第5条第1項の期間は1月)を参照。条文はe-Gov法令APIで確認(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *4 参考:e-Gov法令検索「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/506M60200000003)。出典:e-Gov法令検索。第1条(明示する事項)を参照。条文はe-Gov法令APIで確認(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *5 参考:公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001572556.pdf)。出典:厚生労働省。報酬の額の算定方法の明示、買いたたきの禁止(本法第5条第1項第4号)を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)
- *6 参考:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)(PDF)(https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf)。出典:公正取引委員会。Q15(従業員数の確認方法)、Q108(指値)、Q111(見積書を取り直さずに発注すること)を参照(確認日2026年11月2日)(2026年11月確認)