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工程別のAI導入の違い、実装と運用・保守で14.9ポイント
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 実装は導入済みが40.3%:6工程の中で上端です*2。
- 運用・保守は25.4%:差は14.9ポイントです*2。
- 人材が過剰は0件:不足が306件84.5%です*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
人が足りないという話は毎月出るのに、どの工程に何人足すのかは決めきれない。そんな状態が続いていないでしょうか。
手がかりは、工程ごとに人手の要り方が違うという事実です。
IPAのオープンデータを集計すると、AIを導入済みと答えた割合は工程で大きく開いていました*1*2。
実装は146社で40.3%、運用・保守は92社で25.4%です*2。差は14.9ポイントあります*2。
一方で人材が過剰と答えた企業は0社でした*2。不足は306社84.5%で、全体の前提になっています*2。
目次
増減を決めるには工程ごとの差を見る
人数を増やすか減らすかを全社で一律に決めると、まず不足の話だけが残ります。
工程ごとに見ると別の姿が出ます*2。同じ会社の中でも、人手が要る工程と要らない工程が分かれます*2。
その分布を業界の形で測れる資料があります*1。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」で、公開は2025年11月25日、最終更新は2026年5月13日と記されています*1。
回答数も示されています*1。2026年2月9日時点で362件の回答を得たとされています*1。
実施しているのはIPAのデジタル基盤センターです*1。ソフトウェアを取り巻く国内の動向を調査することを目的に、前年度から引き続き実施したと書かれています*1。
調査の位置づけも確かめられます*4。IPAは近年のソフトウェア開発環境の変化を踏まえたエンジニアリングの在り方を検討していると記しています*4。
案内ページは3つの区分を並べています*4。組込みとIoT産業の動向把握等に関する調査、ソフトウェア開発に関する調査、ソフトウェア開発分析データ集です*4。今回の調査は2番目に含まれます*4。
先に設問の条件を確かめます*3。今回使うQ2-6、Q11-3、Q11-4には、いずれも回答条件が付いていません*3。
つまり母数は共通です*3。3つとも全回答者が対象で、分母は362社です*3。
同じ調査でも条件付きの設問があります*3。回答企業の種別で絞られる設問は母数が247社になるため、そちらの割合とは並べていません*2*3。
数値の作り方も先に書きます*2*3。設問一覧で列の意味と選択肢を確かめ、調査結果CSVの該当列を数えて件数と割合を出しました*2*3。
IPAが公表した集計値の引用ではありません*2。公開データから筆者が集計した値です*2。
単位も押さえます*2。数えているのは回答した企業の件数と割合で、人数でも工数でもありません*2。
3つの設問の役割を分けておきます*3。Q11-3が工程ごとの人手の要り方、Q11-4が工数と進捗の記録、Q2-6が充足の感覚です*3。
まず工程ごとの差から見ます*2。
実装だけ導入済みが40.3%
Q11-3は、6つの開発工程それぞれについてAIの導入状況を1つ選ぶ設問です*3。
対象の工程は決まっています*3。システム企画・要求定義、要件定義、システム設計、実装、テスト、運用・保守の6つです*3。
選択肢は5つです*3。全社レベルで導入済み、一部の部門・プロジェクトで導入済み、検討中、予定なし、わからないです*3。
回答は必須でした*3。設問一覧では必須のマトリクス選択と指定されており、6工程それぞれについて362社が1つを選んでいます*3。
ここでは全社レベルと一部での導入を合わせて「導入済みの計」として数えます*2。
実装が高く出ています*2。導入済みの計は146件で40.3%です*2。
内訳も見ます*2。全社レベルが20件5.5%、一部の部門・プロジェクトが126件34.8%でした*2。
次がテストです*2。導入済みの計は115件、31.8%です*2。
システム設計は109件30.1%、システム企画・要求定義は107件29.6%でした*2。
要件定義は98件27.1%です*2。上流の中では低い側に入ります*2。
いちばん低いのは運用・保守でした*2。92件、25.4%です*2。
実装との差は14.9ポイントです*2。件数では146件と92件で、54件の開きがあります*2。
6工程を高い順に並べると形が見えます*2。実装40.3%、テスト31.8%、システム設計30.1%、企画29.6%、要件定義27.1%、運用・保守25.4%です*2。
全社レベルはどの工程も5%前後
導入済みの計を分解すると、もう1つの形が見えます*2。
全社レベルで導入済みは、どの工程も少数でした*2。実装が20件5.5%、システム設計が18件5.0%です*2。
残りの工程も同じ水準です*2。企画とテストが16件4.4%、要件定義が14件3.9%、運用・保守が13件3.6%でした*2。
つまり工程間の差は、一部の部門やプロジェクトでの導入から出ています*2。実装の126件34.8%が全体を押し上げています*2。
「予定なし」の並びも見ます*2。システム設計が113件31.2%で上端、運用・保守が109件30.1%です*2。
実装は「予定なし」が最も低くなります*2。98件、27.1%です*2。
「検討中」は逆の形です*2。要件定義と運用・保守が112件30.9%で並び、実装は74件20.4%にとどまります*2。
読み方が決まります*2。実装では検討の段階を過ぎた企業が多く、他の工程は検討か予定なしに寄っています*2。
「わからない」も一定あります*2。実装が44件12.2%で最も少なく、運用・保守が49件13.5%で最も多くなります*2。
残りの工程も同じ水準です*2。システム企画・要求定義とテストが45件12.4%、要件定義が46件12.7%、システム設計が47件13.0%でした*2。
5つを足すと各行が母数に戻ります*2。6工程それぞれについて合計が362社になることを確かめました*2。
ただし、この調査は効果を聞いていません*3。AIを入れた結果として工数が減ったかどうかは、この設問からは読めません*3。
費用と効果の考え方そのものは別に整理されています。AI導入のROI・費用対効果の考え方と見極め方が参考になります。
次に、増減を決めるための記録を見ます*2。
工数と進捗の分析は34.3%で下端
Q11-4は、開発と運用でデータを活用する取組の実施状況を項目ごとに1つ選ぶ設問です*3。
項目は4つです*3。品質向上、運用改善、機能改善、そしてプロジェクト管理の高度化です*3。
選択肢は5つあります*3。全社レベルで実施済み、一部の部門・プロジェクトで実施済み、検討中、予定なし、わからないです*3。
この設問も必須でした*3。必須のマトリクス選択と指定されており、4項目それぞれについて362社が1つを選んでいます*3。
実施済みの計がいちばん多いのは機能改善でした*2。147件で40.6%です*2。
次が品質向上です*2。「開発プロセスや不具合情報、テスト結果などの分析による品質向上」が143件、39.5%でした*2。
運用改善は128件35.4%です*2。運用ログやパフォーマンスメトリクスの可視化と分析を指しています*3。
いちばん低いのがプロジェクト管理でした*2。「開発工数や進捗データの分析によるプロジェクト管理の高度化」が124件、34.3%です*2。
「予定なし」でも同じ順位です*2。この項目は111件30.7%で、4項目の中で最も多くなります*2。
内訳も見ます*2。全社レベルで実施済みが27件7.5%、一部の部門・プロジェクトが97件26.8%でした*2。
他の3項目の内訳も並べます*2。全社レベルで実施済みは品質向上が43件11.9%、機能改善が32件8.8%、運用改善が23件6.4%です*2。
「検討中」は4項目で大きく変わりません*2。機能改善が81件22.4%、プロジェクト管理が77件21.3%、運用改善が76件21.0%、品質向上が70件19.3%でした*2。
「わからない」も同じ幅です*2。品質向上とプロジェクト管理が50件13.8%、運用改善が49件13.5%、機能改善が46件12.7%です*2。
「予定なし」の並びも見ておきます*2。運用改善が109件30.1%、品質向上が99件27.3%、機能改善が88件24.3%で、プロジェクト管理の111件30.7%が上端です*2。
ここが増減の判断に直接かかわります。工数と進捗の記録が無ければ、何人足せばよいかを数字で示せません。
運用側の評価基準の作り方は別に整理されています。システム運用委託の評価基準とKPIで委託先管理をご覧ください。
人材が過剰と答えた企業は0件
Q2-6は、DXを推進する人材の充足状況を1つ選ぶ設問です*3。
選択肢は5つです*3。やや過剰である、過不足はない、やや不足している、大幅に不足している、わからないです*3。
この設問も必須でした*3。必須の単一選択と指定されているため、362社すべてがいずれか1つを選んでいます*3。
いちばん多いのは「やや不足している」でした*2。183件で50.6%です*2。
次が「大幅に不足している」です*2。123件、34.0%でした*2。
2つを合わせると306件になります*2。母数362社に対して84.5%です*2。
この84.5%は実数から出しています*2。50.6%と34.0%という丸めた割合を足したものではありません*2。
「過不足はない」は44件12.2%、「わからない」は12件3.3%でした*2。
そして「やや過剰である」は0件でした*2。362社の中で、この選択肢を選んだ企業はありませんでした*2。
5つを足すと母数に戻ります*2。合計は362社です*2。
設問文の書き方も押さえます*3。DXを推進する人材の充足状況について最も当てはまるものを1つ選ぶ形で、開発の要員に限定した設問ではありません*3。
ここから言えることは限られます。不足しているという回答が全体の前提になっているため、不足の有無は工程を選ぶ材料になりません。
資料は人数も聞いていません*3。何人足りないのか、どの工程で足りないのかは、この設問からは読めません*3。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で扱っています。
3つを並べると設計の順番が決まる
ここまでの3つを、判断の材料として並べ直します*2。
1つめは、工程ごとの差です*2。導入済みの計は実装40.3%から運用・保守25.4%まで開いており、人手の要り方は工程で違います*2。
2つめは、記録です*2。工数と進捗の分析を実施済みは34.3%で、4項目の下端でした*2。
3つめは、充足の感覚です*2。不足が84.5%、過剰が0件なので、この設問は工程の選択には使えません*2。
順番が決まります。まず工程ごとの差を出し、次に記録を確かめ、最後に人を当てます。
逆にすると進みません。不足しているという前提から人数を決めると、どの工程に入れるかが後回しになります。
ここで注意が必要です*2。3つは別の設問なので、かけ合わせた集計はしていません*2。
たとえば「実装にAIを入れた企業が工数を記録しているか」は、この記事の集計では答えられません*2。
母数が同じ362社であることは確かめました*3。ただし同じ母数であることと、個々の回答が対応することは別です*2*3。
工程ごとにどこを自社に残しているかの分布は別に集計しました。工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
次に、実際の順番を書きます*2。
稼働を工程単位で設計する
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 工程 | 導入済みの計 | 検討中 | 予定なし |
|---|---|---|---|
| システム企画・要求定義 | 107件 29.6% | 103件 28.5% | 107件 29.6% |
| 要件定義 | 98件 27.1% | 112件 30.9% | 106件 29.3% |
| システム設計 | 109件 30.1% | 93件 25.7% | 113件 31.2% |
| 実装 | 146件 40.3% | 74件 20.4% | 98件 27.1% |
| テスト | 115件 31.8% | 97件 26.8% | 105件 29.0% |
| 運用・保守 | 92件 25.4% | 112件 30.9% | 109件 30.1% |
1段目は書き出しです。6つの工程それぞれについて、今の人手の要り方を多いか少ないかで記します。
分布と比べる材料があります*2。実装で導入が進み、運用・保守で進んでいないという並びが業界の形です*2。
2段目は量が動く工程を選ぶことです。月ごとに作業量が変わる工程だけを残します。
テストと運用・保守は、リリースの時期で量が動きやすい工程です。ただし、動き方は自社の案件の性質で決まります。
3段目は記録の確認です。選んだ工程について、工数と進捗が残っているかを確かめます。
ここで手が止まるなら、記録を作るほうが先です*2。実施済みが34.3%という分布は、多数派がまだ持っていないことを示します*2。
4段目は人を当てることです。量が動く工程だけを対象に、増えた月に足して落ち着いたら戻す形にします。
社員の人数は月ごとに変えられません。ここで期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。
短期で入れる工程と、長く任せる工程は分けて考えます。量が動く工程は短期、動かない工程は社員か長期の体制が向きます。
分ける単位も決めておきます。人単位ではなく工程単位で契約を切ると、量が戻ったときに体制を縮められます。
運用の委託まで含めて考える場合は、費用の考え方も変わります。SRE運用を外注・委託する進め方と費用の考え方が近い内容です。
この集計から読めないことも押さえます*2。不足している人数や工数の実数、AIを入れた効果や削減量、繁忙期の幅や周期は含まれていません*2。
それでも使い道はあります*2。工程ごとに人手の要り方が違うことを、362社の分布という形で社内に示せます*1*2。
まとめ:工程で分けて決める
第一に、母数です。IPAの「2025年度ソフトウェア動向調査」は2026年2月9日時点で362件の回答を得ています。今回使ったQ2-6、Q11-3、Q11-4はいずれも回答条件が付いておらず、母数は362社で共通です。件数と割合は公開されている調査結果CSVから筆者が集計した値です。第二に、工程ごとの差です。AIの導入済みの計は実装が146件40.3%で上端、運用・保守が92件25.4%で下端でした。差は14.9ポイント、件数では54件です。第三に、その中身です。全社レベルで導入済みはどの工程も13件から20件で、割合では3.6%から5.5%にとどまります。工程間の差は一部の部門やプロジェクトでの導入から出ており、実装の126件34.8%が全体を押し上げています。第四に、検討の段階です。「検討中」は要件定義と運用・保守が112件30.9%で並び、実装は74件20.4%にとどまります。「予定なし」はシステム設計が113件31.2%で上端でした。第五に、記録です。データ活用の実施済みの計は機能改善147件40.6%、品質向上143件39.5%、運用改善128件35.4%に対し、開発工数や進捗データの分析によるプロジェクト管理の高度化は124件34.3%で4項目の下端でした。第六に、充足の感覚です。「やや不足している」が183件50.6%、「大幅に不足している」が123件34.0%で合わせて306件84.5%、「やや過剰である」は0件でした。不足が全体の前提になっているため、この設問は工程の選択には使えません。第七に、限界です。3つは別の設問なのでかけ合わせた集計はしておらず、不足している人数や工数の実数、AIを入れた効果や削減量、繁忙期の幅や周期は今回の集計に含まれていません。
よくある質問
AIの導入が最も進んでいる工程はどこですか。
IPAの2025年度ソフトウェア動向調査の公開データを集計すると、実装でした。全社レベルで導入済みが20件5.5%、一部の部門・プロジェクトで導入済みが126件34.8%で、合わせて146件、362社に対して40.3%です。いちばん低い運用・保守の92件25.4%との差は14.9ポイントです(確認日2026年9月3日)。
全社で導入している企業はどれくらいありますか。
どの工程も少数です。「全社レベルで導入済み」は実装が20件5.5%、システム設計が18件5.0%、システム企画・要求定義とテストが16件4.4%、要件定義が14件3.9%、運用・保守が13件3.6%でした。工程間の差は、一部の部門やプロジェクトでの導入から出ています。
工数や進捗のデータはどれくらい分析されていますか。
「開発工数や進捗データの分析によるプロジェクト管理の高度化」を実施済みと答えたのは124件、34.3%です。データ活用の4項目の中で下端で、「予定なし」も111件30.7%と4項目の中で最も多くなります。分析の中身や指標については設問に含まれていません。
人材が足りていると答えた企業はありますか。
「過不足はない」が44件12.2%あります。一方で「やや過剰である」を選んだ企業は0件でした。「やや不足している」183件50.6%と「大幅に不足している」123件34.0%を合わせると306件84.5%です。
この数字から必要な増員数が分かりますか。
分かりません。この調査は人数も工数の実数も聞いていないため、何人足せばよいかは読めません。分かるのは、工程ごとに人手の要り方が違うという分布と、増減を判断するための記録がどれくらいの企業で整っているかだけです。
出典
- *1 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。公開日・最終更新日・回答362件・オープンデータ公開の方針の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 調査結果(選択肢項目文字列)」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-result-data-str.csv)。Q2-6・Q11-3・Q11-4の回答を集計した元データとして(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査 設問一覧」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/j5u9nn000000hkhs-att/software2025-c-questions.xlsx)。各設問の回答条件・選択肢・回答種別の確認として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発関連調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/index.html)。この調査が置かれている調査群の構成と検討の趣旨の記述として(2026年9月確認)