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エンジニアリングマネージャーの採用要件と役割の違いを解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- EMは人とチームのマネジメントを受け持つ役割で、技術判断を担うテックリード、プロジェクトの完了に責任を持つPMとは分けて考えます。
- 求人票は任せる仕事を3つに分けて書き出し、必須条件は年数ではなく、評価や育成を担った中身で書きます。
- 長く任せる役割は社員で採り、決まるまでの間は外部人材に一部を任せ、評価や採否の判断は社内に残します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
「メンバーが増えて、評価や育成に手が回らない」「テックリードに人のことまで任せてしまっている」——。開発チームの人数が増えてきた企業では、こうした悩みが起こりがちです。エンジニアリングマネージャー(EM)は、開発チームのメンバーの採用・評価・育成と、チームが仕事を進めやすい状態づくりを受け持つ管理職です。
EMの採用で迷いやすいのは、テックリードやPM(プロジェクトマネージャー)と役割が重なって見える点です。本記事では、開発組織の責任者や採用担当の方に向けて、EMの役割、テックリード・PMとの違い、求人要件の決め方、EMが決まるまでのチームの回し方を整理します。
エンジニアリングマネージャーとは
エンジニアリングマネージャーが受け持つ仕事は、大きく次の3つに分けられます。
- 人のマネジメント:1on1(上司と部下が定期的に1対1で話す面談)、目標の設定と評価、育成、採用の面接
- チームの運営:仕事の割り振り、メンバーの負荷の調整、ほかの部署との調整
- 開発の進め方の改善:見積りや品質管理のやり方、チームで開発するための決まりごとを整える
IPA(情報処理推進機構)のデジタルスキル標準は、DXを進める人材の役割とスキルを定めた指針です。この標準は、プロジェクト管理や特定領域のチームの取りまとめ、人材育成の担い手はプロジェクトの性質によって変わる可能性があるとして、独立したロール(役割の区分)にはせず、ロールに必要なスキルとして定義しています。*1 公的な職種の定義が無い分、自社でEMに何を任せるかを先に言葉にしておくことが、採用の出発点になります。
テックリード・PMとの違い
EMと混同されやすいのが、テックリードとPMです。3つの役割は、主に何に責任を持つかで並べると違いが見えてきます。
| 観点 | EM | テックリード | PM |
|---|---|---|---|
| 主に見るもの | 人とチーム | 設計と技術の選び方 | 1つのプロジェクトの計画と完了 |
| 責任を持つこと | メンバーの育成と評価、チームが続けて成果を出せる状態 | 技術判断の質と、その判断の説明 | 品質・費用・納期 |
| 続く期間 | チームがある限り続く | 製品やシステムがある限り続く | プロジェクトの開始から終了まで |
| 面接で聞くこと | 評価・育成・採用をどこまで担ったか | 比べた案と選んだ理由 | 全体の責任者として完了させた回数と規模 |
PMについて、IPAのITスキル標準(ITSS)は、プロジェクトの提案、立上げ、計画、実行、監視コントロール、終結を実施し、計画された納入物やサービスの品質、コスト、納期に責任を持つ職種と説明しています。*3 PMの責任はプロジェクトが終われば区切りがつきますが、EMはプロジェクトが変わっても同じメンバーを見続けます。
小さな会社では、1人が2つ以上を兼ねることも珍しくありません。デジタルスキル標準も、数十名以上のエンジニアのチームを持つ企業を想定したうえで、それより小規模な企業では定義した全てのロールを少数または一人のエンジニアが担うこともあるとしています。*1PMを採る場合の要件は「PM(プロジェクトマネージャ)中途採用の要件と経験の見極め方」で扱っています。
なぜEMを置くのか
EMを置くきっかけとして多いのは、メンバーの育成や評価に手が回らなくなることです。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が80.1%ありました。*4

同じ調査で挙がった問題点の上位3つは次のとおりです(複数回答)。*4
- 指導する人材が不足している:59.5%
- 人材を育成しても辞めてしまう:51.6%
- 人材育成を行う時間がない:45.5%
育成をテックリードが兼ねていると、技術の仕事と人の仕事の両方が後回しになりがちです。次のような状態が続いていれば、EMを置くことを考える時期です。
- 1on1や評価の面談が、予定どおりに開かれていない
- テックリードが、設計よりも面談や調整に多くの時間を取られている
- 採用面接に入る人が決まらず、選考が止まる
- 辞めたメンバーの理由を、誰も聞けていない
求人要件の決め方
EMの求人票は、任せる仕事から書き始めます。仕事を先に書き出しておくと、求人票の条件と面接で聞くことがそろいます。

進め方は次の4ステップです。
必須条件は「マネジメント経験3年以上」のような年数ではなく、担ってきた中身で書くと、求める水準が伝わりやすくなります。書き方の例は次のとおりです。
- 仕事:開発チーム(エンジニア6名)の1on1、目標の設定と評価、採用の面接を受け持つ
- 必須:メンバーの評価を自分で書き、その結果を本人に説明した経験
- 歓迎:エンジニアとして設計や開発に関わった経験、採用の面接官の経験
デジタルスキル標準は、リーダーシップを、社内外の関係者が参画しやすいチーム作りや、関係者それぞれの強み・関心を踏まえてタスクの遂行を働きかけるスキルとしています。*2 学習項目には、チームビルディングやエンパワーメント(権限を渡して任せること)が並びます。*2 面接では「リーダーシップがあるか」を尋ねるより、メンバーに任せた仕事と、その人が独り立ちするまでに何をしたかを聞くほうが、答えを比べやすくなります。経験の聞き方は「エンジニア中途採用で責任者のマネジメント経験を見極める方法」で詳しく扱っています。
社内登用・社員採用・外部人材
EMを確保する方法は、社内のエンジニアから登用する、社員として採用する、業務委託の外部人材に一部を任せる、の3つです。
| 方法 | 向く場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 社内から登用 | チームの事情をよく知る人がいて、本人もマネジメントを望んでいる | 本人の技術の仕事が減るため、その仕事を引き継ぐ人を決めておく |
| 社員として採用 | 長くチームを見続ける人が要る。評価や採用の仕組みも一緒に作りたい | 決まるまで時間がかかることがあり、その間の体制を決めておく |
| 業務委託の外部人材 | EMが決まるまでの間、開発の進め方の改善やチーム運営の一部を任せたい | 評価や採否の判断は社内に残し、任せる仕事を契約で決める |
外部の人材に入ってもらう場合も、メンバーの評価や採否のように社員の処遇に関わる判断は、社内の責任者が持つのが基本です。業務委託では、発注する側が細かな指示を出すと契約の形と合わなくなることがあります。任せる仕事と報告の方法は契約で取り決め、迷う点は専門家に確かめてください。外部の支援でEMの役割を補う進め方は、らしくコラムの「EM・VPoE不足を外部支援で補う進め方」でも扱っています。
まとめ:EMの採用で確かめたい3つの点
エンジニアリングマネージャーの採用で確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、EMは人とチームのマネジメントを受け持つ役割として、テックリードやPMと分けて考えること。第二に、求人票では任せる仕事を3つに分けて書き出し、必須条件は評価や育成を担った中身で書くこと。第三に、社内登用・社員採用・外部人材を比べ、EMが決まるまでの体制も決めておくことです。この3点を押さえておけば、「採ったものの、何を任せるかが決まっていなかった」という事態を避けやすくなります。採用が決まるまでのチーム運営に不安があれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
EMにも技術力は必要ですか
テックリードほど深い技術判断は求めなくても、メンバーの仕事の中身が分かり、見積りや設計の話についていける程度の開発経験があると進めやすくなります。必須条件にするか歓迎条件にするかは、テックリードが社内にいるかどうかで決めるとよいでしょう。
EMとテックリードを1人に兼ねてもらってもよいですか
小さなチームでは兼ねることも珍しくありません。ただし、人の仕事と技術の仕事が同時に増えると、どちらかが後回しになりがちです。兼ねてもらう場合は、時間配分の目安と、忙しいときにどちらを優先するかを本人と決めておきます。
エンジニアリングマネージャーの評価は何で行えばよいですか
チームの開発の成果だけで評価すると、育成や採用の仕事が見えにくくなります。1on1を予定どおり行えたか、メンバーに任せられる仕事が増えたかなど、EMに任せた仕事ごとに目標を置くと、本人とも話し合いやすくなります。
EMを社員で採るか外部で補うか迷ったとき
任せたい仕事と見てもらうチームの人数が分かっていれば、そのままご相談いただけます。社員を採るか、決まるまでの間を業務委託で補うかを決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:IPA「デジタルスキル標準 ver.2.0」(PDF)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/rcu1hd000000j76k-att/sep_dss-p_swe.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構(2026年4月)。第Ⅲ部第1章のDX推進スキル標準の類型の範囲(プロジェクト管理、チームの取り纏め、人材育成をロールに必要なスキルとして定義)、第Ⅲ部第3章のソフトウェアエンジニアのロール(ロールの分担について)を参照(確認日2026年10月17日)(2026年10月確認)
- *2 参考:IPA「DX推進スキル標準 共通スキルリスト」(Excel)(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/rcu1hd000000j76k-att/dss-p_ver2.0_skilllist.xlsx)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「デジタルスキル標準 ver.2.0」共通スキルリスト。スキル項目一覧と学習項目一覧のうち、パーソナルスキル(リーダーシップ)を参照(確認日2026年10月17日)(2026年10月確認)
- *3 参考:IPA「職種の概要と達成度指標(プロジェクトマネジメント)」(https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/ps6vr70000004x60-att/000024937.pdf)。出典:経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 職種の概要と達成度指標(5)プロジェクトマネジメント」(PDF)。職種の説明を参照(確認日2026年10月17日)(2026年10月確認)
- *4 参考:厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」調査結果の概要(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf)。出典:厚生労働省。事業所調査の人材育成に関する問題点(図35・図36)を参照(確認日2026年10月17日)(2026年10月確認)