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フリーランス活用でデータ基盤を可視化、使われない画面は試作で防ぐ
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- データ基盤の可視化は、ためたデータをグラフや指標に置き換え、見た人が判断や行動に移れる形にする作業です。
- BIツールで組む前に、誰が見て何を決めるかを社内で書き出し、ダミーデータの試作画面で関係者の合意を取ります。
- 試作と実装、チェックリストでの確認はフリーランスに任せ、指標の定義と要望の取捨、運用の担当は社内に残します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
データ基盤にデータはたまってきた。次は経営会議で見るダッシュボードを作りたいが、社内にBIツールを扱える人がいない。そこでフリーランスのエンジニアに頼んで画面を作ってもらったものの、公開から数か月たつと誰も開かなくなっていた——。データ基盤の可視化では、こうしたことが起こりえます。可視化とは、データ基盤にためたデータをグラフや表、指標の数値に置き換え、見た人が判断や行動に移れる形にすることを指します。
可視化の作業はBIツールに慣れた専門人材に頼みやすく、フリーランス活用の候補になります。ただし、画面を見る人が誰で、見た後に何を決めるのかは、外部の人には決められません。本記事では、デジタル庁が公開している「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」をもとに、データ基盤の可視化を進める流れと、フリーランスに任せる作業、社内に残す判断を整理します。
目次
データ基盤のどこが可視化か
デジタル庁は2026年3月31日に、「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」とPower BI用のデザインテンプレートの正式版を公開しました。*2 ガイドブックは、Japan Dashboardや政策データダッシュボードを作ったときの知見に、行政職員や民間有識者の意見を加えて体系化したものです。行政や公共機関の職員だけでなく、民間事業者も対象にしています。
ガイドブックは、ダッシュボードを作るにはデータソースの特定、データの取得や格納、加工や分析、可視化が必要だとしたうえで、扱う範囲を可視化の方法に絞っています。*1 データの準備やクレンジングの方法は扱っていません。示されている流れでは、アンケート調査やログデータなどのデータソースから、収集・保管(クラウドストレージ等)、加工・蓄積(ETLツール等)、参照(高速なデータウェアハウス等)を経て、最後にBIツール等による可視化が来ます。データ基盤のいちばん出口にあたる部分です。
ダッシュボードは2つの類型に分けて説明されています。現状を基準と照らし合わせ、異常などに素早く気づいて行動の必要性を判断する「提示型」と、明確な判断基準がない事柄について差分を見つけ、その源流を掘り下げる「探索型」です。ガイドブックは提示型を中心に扱っています。経営会議や部門の定例で見る画面は提示型にあたるものが多いため、本記事もこちらを前提にします。
画面が使われなくなる理由
ガイドブックは、目的と制約を整理しないまま制作を進めると、「そもそも誰のための、何のためのダッシュボードだったか?」と後になって問い直すものが生まれてしまうと書いています。*1 そのため、すべての工程に先立って要件を整理するよう求めています。
フリーランスに可視化を頼む場面では、この問い直しが起こりやすくなります。発注側が「売上が見られる画面」とだけ伝え、受けた側が手元のデータから載せられるものを並べると、見た目は整っていても、会議で何を決めるための画面なのかが分からない状態になりがちです。完成した後に作り直すと、BIツール上での実装を一からやり直すことになります。
ガイドブックが示す作成の流れは、要件の整理、プロトタイピング、実装の3つのステップです。BIツールで組む前に、スライドなどの上で画面の形を決め、関係者の合意を取るところに重心があります。社内とフリーランスの役割も、この3つのステップに沿って分けると決めやすくなります。
要件の整理で決める5W1H
要件を整理する第一歩は、見る人が誰かを考え、ダッシュボードの目的を定義することだとされています。ガイドブックは、5W1Hの問いにそって次の点を書き出すよう勧めています。*1
- Why:最終的に達成したい目的と、ダッシュボードを見る理由
- Who:見る人の所属、立場、業務内容、リテラシーのレベル感
- When:見るタイミングや頻度
- Where:見る場所、提示する媒体やデバイス
- What:目的達成のために知るべき情報と、見た後にする判断や行動
- How:求められる機能、必要なデータ項目、更新頻度
このうち最上位の目的や見る目的はあまり変わらない一方、ダッシュボードの内容はプロトタイプでの対話やテストで柔軟に変えていく、と整理されています。WhyとWho、それに見た後の行動は社内で書き、How以降はフリーランスと一緒に詰める、という分け方がしやすい構造です。
制約の確認項目も挙がっています。制作上の制約は「情報の種類が多すぎる」「伝える内容が複雑すぎる」「定期的に閲覧する必要がない」の3つ、データの制約は「データに欠損がある」「更新頻度が不十分である」「必要な分解能がない」「指標同士を比較できない」の4つです。*1 データの制約は、データ基盤のテーブルや取り込みの頻度を見れば確かめられるので、データ基盤を読めるフリーランスに調べてもらいやすい部分です。
「定期的に閲覧する必要がない」が当てはまるなら、ダッシュボードではなく一度きりの分析資料で足りるかもしれません。ガイドブックも、目的に照らすとダッシュボードが適切な手段ではないこともあると述べています。
試作の画面で合意を取る
要件の次は、ダッシュボードのイメージが分かるプロトタイプを作ります。ガイドブックは、要件を整理した後すぐ実装に入らず、プロトタイプをもとに関係者と話し合うことで、品質とコスト、納期の向上が期待できるとしています。挙げられている利点は、具体的な要望や意見を引き出せること、周囲と合意が取れて手戻りが少なくなること、成果物が明確になって実装の速度と品質が上がることの3つです。*1
作る順番も示されています。まず載せる情報を一覧にしてグラフの候補を仮に決め、次に骨格となるレイアウト、最後に文言や色、グラフの表現といった表層を詰めます。骨格が定まらないうちに表層を細かく詰めることは勧められていません。道具はPowerPointやFigmaなど使いやすいもので構わず、数値はランダムのダミーデータで問題ないとされています。*1
この段階は、フリーランスに任せやすい作業です。BIツールの画面を何度も組み直すより、スライド上の試作を2案、3案と出してもらうほうが、発注側の確認も速く済みます。ダミーデータで足りるため、本番のデータへの閲覧権限を渡す前から始められます。
試作を見せて集めた意見の扱いにも注意が要ります。ガイドブックは、「こうしたい」という要望だけでなく、その理由や意図を聞き出すよう勧めています。すべての要望を機械的に反映すると情報過多になり、一貫性も損なわれるため、理由が明確で目的にかなうものを選び、必要最小限の変更を加えるという流れです。*1 どの要望を採るかは、目的を決めた社内の人が判断します。
画面づくりの原則
載せる情報を選ぶ原則として、ガイドブックは「目的に則する」「違いに気づける」「分解できる」「鮮度が高い」の4つを挙げています。*1 鮮度については、データを定期的に更新する仕組みやプロセスを構築するとしており、データ基盤側の取り込みの頻度と切り離せません。
レイアウトは、見る人の視線の動きに合わせて左上から右下へ、全体から部分の順に並べます。左上で全体を端的に示し、右下に最も詳しい情報を置く形です。テンプレートには16:9の画面を縦横に分割できるレイアウトグリッドが用意されていて、表やグラフをそのグリッドに沿って配置します。
グラフについては、「知りたいことを知れる」「誤解を生まない」の2つの原則が示されています。時間の変化と傾向を伝えるなら折れ線グラフ、数量を比べるなら棒グラフが向いています。円グラフが適するのは全体の総量が明らかで、構成比をコンパクトに伝える場合で、そうでない多くの場合は棒グラフのほうがデータを正確に伝えられるとされています。棒グラフの原点は原則として0にする、データの更新日を記載する、といった点も含まれます。*1
こうした原則を発注の前に共有しておくと、フリーランスの成果物を見るときの基準がそろいます。「もう少し見やすく」という曖昧な指摘ではなく、「この棒グラフは原点が0になっていない」と具体的に伝えられるようになります。
フリーランスに任せる作業
ここまでの流れを踏まえると、データ基盤の可視化でフリーランス活用がしやすい作業は次のように整理できます。
- データ基盤のテーブルを調べ、欠損や更新頻度、分解能といったデータの制約を洗い出す
- 載せる情報の一覧と、グラフの候補の案をつくる
- PowerPointやFigmaで、試作の画面を複数の案でつくる
- BIツールで実装する(データの取り込み、メジャーとリレーションの作成、グラフの配置)
- 完成後にチェックリストで確かめ、指摘を直す
BIツールで実装する段取りは、ガイドブックの利用マニュアルが、Power BIの場合の章立てとして示しています。事前準備、データの取り込み、メジャーとリレーションの作成、指標や表、チャートの配置、タイトルや文字サイズの調整、チャートの調整と進みます。*1 メジャー(集計の式)やリレーション(テーブルどうしの結び付き)は、データ基盤のテーブル設計を理解していないと組めません。可視化を頼む相手を探すときは、画面のデザインだけでなく、データ基盤側のSQLやテーブルを読めるかも確かめておきます。
データ基盤そのものの構築を頼む場合の役割分担は「フリーランス活用でデータ基盤を構築|社内に残す役割と任せる役割」で、基盤を移すときの数字の突き合わせは「フリーランス活用でデータ基盤のデータ移行、業務システムとの違い」で扱っています。
社内に残す判断
一方で、外部の人には決められない判断もあります。
- 誰が見て、見た後に何を決めるか(WhyとWho、見た後の行動)
- 指標の定義(たとえば「売上」を受注の時点で数えるか、計上の時点で数えるか)
- 試作への要望のうち、どれを反映するか
- 画面を見せる範囲と、閲覧の権限
指標の定義は、後回しにされやすい項目です。ガイドブックはグラフ設計の原則の中で、何を対象として集めたデータで、数値の意味が何で、いつ更新されたかといったデータの定義を参照できるようにするよう求めています。*1 定義そのものは業務の取り決めなので、社内で文章にして渡します。フリーランスは、その定義をメジャーの式に落とし込む役を担います。
完成した後の運用も社内の仕事です。ガイドブックは、実装の後もダッシュボードのアクセス数や利用頻度といった状況、組織の成熟度、関係者のデータリテラシーの変化に合わせて、構成や内容を更新し続けるとしています。*1 開かれなくなった画面に早く気づけるよう、閲覧の状況を見る担当を決めておきます。契約が終わった後に誰が画面を直すのかも、頼む前に決めておきたい点です。
納品前に確かめる27項目
ガイドブックには、完成したダッシュボードをレビューするためのチェックリストが付いています。項目は27あり、利用者の体験、指標と表・グラフのデザイン、テクニカル、データ設計、アクセシビリティの5つに分かれています。*1
最も項目が多いのはデザインの10項目で、グラフの色数が1〜5色程度に絞れているか、棒グラフの原点は0になっているか、データの更新日は記載されているか、などが並びます。利用者の体験の6項目には、本当に必要な情報だけに絞り込めているか、複数の利用者からのフィードバックを得て改善を重ねたか、が含まれます。
このチェックリストは、納品の受け入れ基準として使えます。発注のときに「このチェックリストを満たすこと」と書いておけば、フリーランスは作りながら自分で確かめられ、発注側も同じ表で確認できます。アクセシビリティの項目には一般公開の画面を想定したものも含まれるため、社内向けの画面なら当てはまる項目を選んで使います。
まとめ:可視化を頼む前に決めること
データ基盤の可視化をフリーランス活用で進めるときに、確かめておきたい点は3つです。第一に、BIツールで組む前に、誰が見て何を決めるかを社内で書き出し、データの制約を調べておくこと。第二に、ダミーデータの試作画面で関係者の合意を取り、要望は理由を聞いたうえで社内が取捨すること。第三に、指標の定義と完成後の運用の担当を社内に置き、納品はチェックリストで確かめることです。この3点を押さえておけば、「作ったのに誰も開かない画面」を防ぎやすくなります。試作や実装に手が回らなければ、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
試作の段階からフリーランスに頼んでもよいですか
頼めます。ガイドブックは、プロトタイプの数値はランダムのダミーデータで問題ないとしているので、本番のデータへの権限を渡す前から始められます。ただし、見る人と目的を書いた要件の資料は、社内で先に用意しておきます。
データ基盤が整っていなくても、可視化から始められますか
ガイドブックは可視化の方法に絞った資料で、データの準備やクレンジングは扱っていません。欠損や更新頻度の不足といったデータの制約が見つかれば、先にデータ基盤側を手当てするか、載せる情報を減らすかを選ぶことになります。どちらにするかは、要件の整理の段階で確かめておきます。
社内向けのダッシュボードでも、アクセシビリティは必要ですか
ガイドブックは、行政や準公共機関がデータを公開する場合の配慮として説明しています。社内向けでも、色だけで分類を見分けさせない、背景とグラフの色のコントラスト比を3:1以上にする、といった点は、見る人が増えるほど役に立ちます。どこまで求めるかは、見る人の範囲に合わせて決めます。
データ基盤の可視化を相談したいとき
画面を見る人と目的の整理から、試作と実装に加わるエンジニア探しまでご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブック」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/1948e3cd-736a-4378-9e31-039b08d11106/2a3a0ebc/20260331_resources_dashboard-guidebook_guidebook_02.pdf)。出典:2026年3月31日更新版。1.1二つの類型(提示型・探索型)、1.2対象範囲、1.3ダッシュボード作成の流れ、2章(要件の整理)、2.1の5W1H、2.2制約条件、3章プロトタイピング(利点・作る順番・ダミーデータ・要望の反映方針)、3.2載せるべき情報を選ぶ際の原則、3.4レイアウトの考え方、4.2グラフの種類と選び方、4.4グラフ設計の原則、5章実装、5.3利用マニュアルの章構成、5.4チェックリスト、4.3と5.5のアクセシビリティを参照(2026年10月確認)
- *2 参考:デジタル庁「ダッシュボードデザインの実践ガイドブックとデザインテンプレート」(https://www.digital.go.jp/resources/dashboard-guidebook)。出典:同庁の公開ページ。更新情報(2026年3月31日の正式版リリース)、公開の目的、対象とする読者、デザインテンプレート(Power BI用)を参照(2026年10月確認)