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リモート採用の採用エリア、全国採用ならIT技術者の4割が加わる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- リモート採用の採用エリアは、出社の回数と出社して行う作業から、通勤圏・日帰り圏・国内全域のどれにするかを決めます。
- 情報処理・通信技術者の約4割は1都3県の外に住んでおり、全国採用にすると候補になりうる人の範囲が大きく広がります。
- 採用エリアを広げても賃金と選考の基準は住む地域で変えず、応募できる範囲と出社の条件を求人に書いておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
リモート採用を始めることにしたものの、どこに住んでいる人まで応募を受け付けるのかが決まらない。全国採用にすると本当に候補者は増えるのか、それとも出社を考えて近くに絞るべきなのか——。エンジニアの採用を担当する方から、こうした迷いを聞くことがあります。採用エリアとは、応募を受け付ける人が住んでいてよい地域の範囲を指します。
出社が前提の採用では、事業所に通える範囲がそのまま採用エリアでした。リモート採用では住む場所と働く場所が切り離されるので、会社が範囲を決めて示す必要があります。本記事では、採用エリアの広さの選び方、国勢調査から分かるIT技術者の住む地域、出社の回数との関係、全国採用でも変えない基準、求人への書き方を整理します。
目次
採用エリアとは
採用エリアは、求人票の「就業の場所」とは別のものです。職業安定法施行規則は、労働者を募集するときに明示する事項として「就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。)」を挙げています。*3 就業の場所は働く場所を示す項目で、応募者がどこに住んでいてよいかまでは決めていません。
出社が前提の採用なら、この違いを意識する場面はほとんどありません。事業所の住所を書けば、通える人だけが応募してくるからです。一方、リモート採用では自宅が主な就業の場所になります。就業の場所の欄に「自宅(リモートワーク)」と書いただけでは、北海道に住む人が応募してよいのか、月に何回出社するのかは読み取れません。そこで、就業の場所とは別に、応募できる居住地の範囲を決めて書いておく必要があります。
本記事で扱うのは、会社が雇用する社員の募集です。業務委託で開発に加わってもらう人を探す場合は契約の形が違うので、最後の節で触れます。また、住む地域によって変わる税や社会保険の手続きは、本記事では扱いません。
採用エリアの4つの広さ
採用エリアの広さは、大きく4つに分けて考えると決めやすくなります。1つ目は通勤圏で、週に何日か事業所へ通える範囲です。出社の多いハイブリッド型の働き方なら、この範囲になります。2つ目は日帰りで出社できる範囲で、月に1〜2回、朝に家を出て用事を済ませ、その日のうちに帰れる地域です。新幹線や飛行機を使えば、通勤圏よりかなり広くなります。
3つ目は国内全域です。出社は入社時や年に数回の全体会議などに限り、そのたびに泊まりがけで来てもらう前提にします。4つ目は海外に住む人を含める形です。時差による打ち合わせの時間の制約が大きく、雇用の手続きも国内とは別の確認が要るため、エンジニアの社員採用では国内に限る会社が多いでしょう。
どの広さを選ぶかの決め手は、出社の回数と、出社して行う作業です。出社が少ないほど範囲を広げられますが、出社しなければできない作業が多い仕事では、範囲だけ広げても入社後に無理が出ます。範囲と出社の条件は、セットで決めるものと考えてください。
IT技術者はどこに住んでいるか
採用エリアを広げると、候補になりうる人はどのくらい増えるのでしょうか。手がかりになるのが、総務省統計局の「令和2年国勢調査」です。抽出詳細集計の第10表は、就業者を職業の小分類と住んでいる都道府県で集計しています。*1 ここでは、システムコンサルタント・設計者、ソフトウェア作成者、その他の情報処理・通信技術者の3つを合わせて「情報処理・通信技術者」として数えました。全国の合計は125万3,930人です。*1 なお、この表は抽出による集計で、数値は10人単位に丸められています。
住んでいる都道府県で最も多いのは東京都の34万4,570人で、全国の27.5%を占めます。次いで神奈川県が20万9,190人(16.7%)、埼玉県が10万5,670人(8.4%)、千葉県が9万8,180人(7.8%)でした。*1 1都3県を合わせると75万7,610人で、全国の60.4%になります。
裏を返すと、情報処理・通信技術者の39.6%にあたる49万6,320人は1都3県の外に住んでいます。*1 多い順に大阪府が7万9,160人、愛知県が6万4,200人、兵庫県が3万9,700人、福岡県が3万6,550人、北海道が2万5,950人です。1都3県の外で1万人を超える道府県は11ありました。*1 採用エリアを1都3県から国内全域に広げると、候補になりうる人の範囲はおよそ1.7倍になる計算です。
ただし、これは住んでいる人の数で、転職を考えている人の数ではありません。就業者全体に占める割合で見ると、全国が2.2%なのに対し、東京都は5.8%、神奈川県は5.0%です。*1 地方では割合こそ低いものの、人数で見れば無視できない規模の技術者が住んでいます。全国採用は、この人たちに求人を届ける方法と言えます。
東京の採用エリアは元から1都3県
国勢調査には、住んでいる場所ではなく働いている場所で集計した表もあります。職業の中分類「技術者」(情報処理・通信技術者のほか、機械や建築などの技術者を含む)で比べると、東京都に住む技術者は48万8,470人、東京都で働く技術者は76万3,400人でした。*2 東京都で働く技術者は、東京都に住む技術者の約1.6倍です。
反対に、周りの3県では住む人のほうが多くなっています。神奈川県は住む人が36万5,170人に対して働く人が27万2,590人、埼玉県は18万5,490人に対して9万3,220人、千葉県は16万620人に対して7万7,880人です。*2 1都3県の合計では、住む技術者が119万9,750人、働く技術者が120万7,090人で、ほぼ同じ数になります。*2
ここから分かるのは、東京の事業所に毎日通う前提の採用でも、採用エリアは元から東京都だけではなく、1都3県に広がっていたということです。リモート採用で通勤圏を選ぶと、出社前提の採用と同じ範囲の人を、同じ地域の会社と取り合うことになります。新しく候補に加わるのは、通勤圏の外に住む人です。全国採用に意味があるのは、この層に届くからです。
出社の回数から広さを決める
リモート採用の採用エリアは、出社の回数から逆算すると決めやすくなります。週に2〜3日の出社を求めるなら通勤圏、月に1〜2回なら日帰りで出社できる範囲、入社時と年に数回の全体会議だけなら国内全域、という対応が目安です。月に1回の出社でも、遠方から泊まりがけで来る人にとっては負担が大きいので、移動にかかる時間と費用を誰がどう持つかもあわせて決めておきます。
回数と並んで見ておきたいのが、出社して行う作業の中身です。社内にしかない検証用の機器を操作する、紙で保管している資料を扱う、顧客の事務所で打ち合わせをするといった作業が多い仕事では、出社の回数を減らしにくくなります。そうした作業がチームの一部に偏っているなら、その役割だけを通勤圏で採り、ほかの役割は国内全域で採るという分け方もできます。
決めた範囲は、入社後に簡単に変えないことも大切です。全国採用で遠方から入社した社員に、あとから週に何日も出社を求めれば、働き続けること自体が難しくなります。職業安定法施行規則が、就業の場所だけでなく「変更の範囲」まで明示事項に含めているのは、こうした食い違いを防ぐためでもあります。*3 将来、出社の回数を増やす可能性があるなら、その可能性も募集の段階で伝えておきます。
全国採用でも変えない基準
採用エリアを広げても変えないものが2つあります。1つ目は賃金の決め方です。賃金は任せる仕事と役割、求める経験で決め、応募者が住んでいる地域によって金額を変えないようにします。地方に住む人を、賃金を抑えて採れる相手として扱えば、同じチームで同じ仕事をする社員の間に説明のつかない差が生まれます。応募する側から見ても、住所で条件が下がる会社は選ばれにくくなるでしょう。
2つ目は選考の基準です。厚生労働省の指針は、労働者の募集を行う者なども含めて、「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項」を収集してはならないとしています。*5 職業安定法も、求職者の個人情報は業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集めるよう定めています。*4 採用エリアの確認に必要なのは、応募できる範囲に住んでいるか、または入社までに住む予定かという点だけで、出身地や地元に戻った理由を尋ねる必要はありません。
面接の進め方も、住む場所によって変えないようにします。遠方の応募者だけ面接の回数を減らす、近くに住む人だけ来社での面接にする、といった差をつけると、同じ基準で比べられなくなります。オンラインで面接するなら全員をオンラインにし、質問の項目と評価の基準をそろえておきます。
採用エリアを求人に書く
決めた採用エリアは、求人票に具体的に書きます。書いておきたいのは、応募できる居住地の範囲、出社する事業所と回数、出社の移動にかかる費用を会社が負担するかどうか、入社後に引っ越す場合の扱いの4つです。たとえば「居住地:日本国内(東京本社へ月1回、日帰りで出社できる方)」「居住地:日本国内であれば不問。出社は入社時と年2回の全体会議のみで、交通費と宿泊費は会社が負担」のように書けば、遠方の応募者も自分が対象かどうかを判断できます。
「フルリモート」「居住地不問」とだけ書くと、応募のあとで食い違いが見つかりがちです。面接が進んでから月に何度も出社が要ると分かり、遠方の応募者が辞退する、という形です。範囲を書いておけば、こうした辞退を減らせるうえ、応募する側も迷わずに手を挙げられます。
採用エリアを広げたあとに起こりやすいのは、応募が増えて選考が回らなくなることです。書類選考で見る経験と技術を先に決めておくと、応募の数が増えても判断がぶれにくくなります。入社後は、遠方に住む社員だけが会議の外で決まったことを知らない、という状態になりやすいので、決めたことはチャットや作業の管理表に書き残す習慣をチームでそろえておきます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
全国採用で社員が決まるまでの開発を、業務委託の専門人材に任せる場合もあります。その場合は、任せる作業と期間、打ち合わせの頻度、出社を求める日があるかどうか、貸与する機器と扱う情報の決まりを、契約の前に書き出しておきます。社員と業務委託の人が同じチームで働くなら、連絡に使う道具と作業の記録の残し方をそろえておくと、住む場所が離れていても情報の行き違いを減らせます。
まとめ:採用エリアで確かめておきたい3つの点
リモート採用で採用エリアを決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、出社の回数と出社して行う作業から、通勤圏・日帰りで出社できる範囲・国内全域のどれにするかを決めること。第二に、情報処理・通信技術者の約4割が1都3県の外に住んでいることを踏まえ、全国採用で新しく届く層を意識すること。第三に、範囲を広げても賃金と選考の基準は住む地域で変えず、応募できる範囲と出社の条件を求人に書くことです。この3点を踏まえておけば、「全国から応募を集めたのに、出社の条件が合わずに辞退が続いた」という事態を避けやすくなります。採用エリアを決めても候補者の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
採用エリアを全国にすれば、応募は増えますか
増えるとは限りません。国勢調査で分かるのは技術者が住んでいる地域の分布で、転職を考えている人の数ではないためです。ただ、情報処理・通信技術者の約4割は1都3県の外に住んでおり、通勤圏に絞っていたときには届かなかった人に求人を見てもらえる可能性は広がります。*1
応募者に今の住所を尋ねてもよいですか
採用エリアの範囲に住んでいるか、入社までに住む予定かを確かめるのは、募集の目的に沿った確認です。一方で、本籍や出生地は社会的差別の原因となるおそれのある事項として、指針が収集してはならないとしています。*5 出身地や地元に戻った理由を尋ねる必要はありません。
採用エリアを途中で狭めたいときはどうすればよいですか
これから募集する人については、求人票の範囲と出社の条件を書き直します。すでに入社している社員には、入社時に示した条件があるので、一方的に変えず、本人と話し合うのが基本です。就業の場所の変更の範囲を含めて何を示していたかを確かめ、判断に迷うときは社会保険労務士などの専門家に確かめてください。
採用エリアが決まったら相談
任せる仕事と、応募を受け付ける居住地の範囲が決まっていれば、そのままご相談いただけます。全国採用にするか通勤圏に絞るか決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:総務省統計局「令和2年国勢調査 抽出詳細集計」第10表(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521&tstat=000001136464&cycle=0&tclass1=000001136468)。出典:第10表「男女,従業上の地位,職業(小分類)別就業者数(15歳以上)-全国,都道府県,21大都市,特別区,人口50万以上の市」(2022年12月27日公開)。男女総数・従業上の地位総数の、職業小分類「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」を都道府県ごとに合計(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)
- *2 参考:総務省統計局「令和2年国勢調査 抽出詳細集計」第8-1表・第20-3表(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521&tstat=000001136464&cycle=0&tclass1=000001136468)。出典:第8-1表(常住地による職業中分類別就業者数)と第20-3表(従業地・通学地による職業中分類別就業者数)の、男女総数・職業中分類「技術者」の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の値を参照。第20-3表は従業地が不詳の者などを常住地で含む(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)
- *3 参考:職業安定法施行規則(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)。出典:第4条の2第3項第3号「就業の場所に関する事項(就業の場所の変更の範囲を含む。)」を参照(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)
- *4 参考:職業安定法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)第1項を参照(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)
- *5 参考:新潟労働局「指針(平成11年労働省告示第141号)(抄)」(https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-hellowork/jigyounushi/kousei_saiyou/kojinjouhou/shishin.html)。出典:第5 法第5条の5に関する事項 1(2)イと、注釈(注1)「職業紹介事業者等」には労働者の募集を行う者や求人者も含む、を参照(確認日2026年10月7日)(2026年10月確認)