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エンジニア採用の技術用語、兼務人事が公的資料で意味を確かめる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 技術用語は職種名・工程名・技術名に分け、まず工程名の意味を、IPAが公開するITパスポート試験のシラバスなど公的な資料で確かめます。
- 同じ工程でも、厚生労働省のjob tagは「結合テスト」、シラバスは「統合テスト」と書くように、資料によって呼び方が分かれます。
- 定義と別の呼び方、求人票での言い換えを用語メモにまとめ、求人票と面接で同じ意味の言葉を使います。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
求人票に「要件定義から担当」と書いてほしいと現場から頼まれたが、どこまでの仕事を指すのか分からない。面接で候補者が「結合テストまで担当しました」と話したのに、それが自社のいう工程と同じなのかを確かめられない——。エンジニア採用を人事以外の仕事と兼ねて受け持つ会社では、こうした戸惑いが起こりがちです。エンジニア採用の技術用語とは、求人票やスキルシート(候補者の経験をまとめた書類)、面接に出てくる職種名、開発の工程名、言語やサービスの名前などを指します。
技術用語は、すべてを覚えなくても、公的な資料の定義で意味を確かめ、社内の用語メモにしておけば扱えます。求人票と面接で、同じ言葉を同じ意味で使えるようになります。ただし用語メモは万能ではなく、用語の意味が分かることと、候補者がその作業をどの程度こなせるかを見極めることは別の仕事です。本記事では、兼務人事(人事以外の仕事と兼ねて採用を受け持つ担当者)に向けて、技術用語の種類、意味を確かめる公的な資料、呼び方が分かれる工程の例、求人票と面接での使い方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
エンジニア採用の技術用語とは
求人票やスキルシートに出てくる技術用語は、3つに分けると整理しやすくなります。1つ目は「システムエンジニア」「プログラマー」のような職種名、2つ目は「要件定義」「詳細設計」「結合テスト」のような開発の工程名、3つ目は「Java」「SQL Server」のような言語や製品、サービスの名前です。兼務人事がまず押さえたいのは工程名です。工程名が分かると、求人票に書くことも面接で尋ねることも決めやすくなります。
職種名は、同じ仕事でも呼び方が一つに決まっていません。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、「システムエンジニア(受託開発)」の職業解説で、この職業が「アプリケーションエンジニア、アプリケーションスペシャリスト、業務系SE(システムエンジニア)などとも呼ばれる」と書いています。*1 求人票の職種名が候補者のなじんだ呼び方と違っていても、仕事の中身は同じということがあります。
言語や製品の名前は数が多く、名前だけを並べても仕事の中身は伝わりません。job tagの同じ職業解説も、仕事で使う技術として、クラウドサービスやプログラミング言語、データベースの製品名を並べています。これらは、どの工程で何を作るために使うのかと組み合わせて、はじめて任せる仕事の説明になります。
なぜ兼務人事がつまずくのか
つまずく理由の一つは、技術用語の意味と書き方が、資料や会社によって少しずつ違うことです。情報処理技術者試験を実施するIPA(情報処理推進機構)は、試験で使う用語の定義と表記について「原則として,一般に広く定着しているものを用いることを優先する」とし、専門性が高く、JIS(日本産業規格)に定められている用語はその規定に従うとしています。*2 そのため、資料によって呼び方や書き方がずれることがあります。
表記のゆれも認めています。語の終わりに「ー」を付けるかどうかは規格や分野によって異なるため、「ステークホルダとステークホルダー,デジタルとディジタル」のような表記は「いずれの使用も可とする」とされています。*2 求人票とスキルシートで表記が違っても、同じ語であることがあります。
もう一つの理由は、兼務人事には本来の仕事があり、面接の直前に分からない語を一つずつ調べる時間を取りにくいことです。よく出る工程名から先に意味を確かめてまとめておけば、面接のたびに調べ直さずに済みます。
意味を確かめる公的な資料
工程名や基本的な技術用語の意味を確かめるときに使いやすいのが、IPAが公開している「ITパスポート試験 シラバス」です。ITパスポート試験は、試験要綱で「職業人及びこれから職業人となる者が備えておくべき,IT に関する共通的な基礎知識」をもつ人を対象者像としています。*4 シラバスは、この試験で問う知識を細かく分けた「知識の細目」です。
2026年1月に改訂されたVer.6.5は、ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の3つに分かれ、大分類9、中分類23、項目63で構成されています。*3 項目の数はストラテジ系が24、マネジメント系が8、テクノロジ系が31です。*3 項目ごとに「目標」と「説明」があり、その下に、知識として習得すべき用語やキーワードの例が「用語例」として並びます。開発の工程名は、マネジメント系の「システム開発技術」と「開発プロセス・手法」の項目で説明されています。
兼務人事にとってこのシラバスが使いやすいのは、どこまで知っていればよいかの目安になる点です。たとえばデータベースの項目では、データの操作について「SQL の文法は問わない」と書かれています。*3 求人票に「SQL」とあっても、兼務人事に要るのは文法の知識ではありません。SQLがデータベースを操作する言語で、データの挿入や更新、選択に使われると分かれば足ります。
呼び方が分かれる工程の例
同じ工程でも、資料によって呼び方が少し違います。job tagの「システムエンジニア(受託開発)」の職業解説と、ITパスポート試験シラバスの「システム開発のプロセス」から工程名を拾って並べると、次のようになります。
| 作業の中身 | job tagの職業解説 | ITパスポート試験シラバス |
|---|---|---|
| システムに求める機能などを決める | 要件定義 | システム要件定義・ソフトウェア要件定義 |
| 画面やデータ、処理の方法を決める | 基本設計、詳細設計 | 設計(用語例に機能設計、詳細設計) |
| プログラムを作り、1つずつ確かめる | 単体テスト | プログラミング(単体テストの実施までを含む) |
| 組み合わせて動きを確かめる | 結合テスト、総合テスト | 統合・テスト(用語例に統合テスト) |
| 発注した側が確かめて受け取る | 受け入れテスト | 導入・受入れ(用語例に受入れテスト) |
| 動き始めた後の修正や改善 | 保守・管理 | 保守 |
違いが目立つのはテストの呼び方です。job tagは、部品どうしのデータの受け渡しや画面の切り替わりを確かめるテストを「結合テスト」、実際のデータを投入してシステム全体の動きを確かめるテストを「総合テスト」と呼んでいます。*1 シラバスは、単体テスト済のプログラムを統合し、要件どおりに動作するかどうかを確認することを「統合・テスト」とし、用語例に「統合テスト」を挙げています。*3 どちらの呼び方が出てきても、何と何を組み合わせて何を確かめたのかを尋ねれば、候補者の経験と自社の工程を比べられます。
設計について、job tagは要件定義をもとにデータベースの設計や画面構成などを固める段階を「基本設計」、扱うデータの形式や、プログラムの中の細かい処理の手順まで決めて設計書を作る段階を「詳細設計」と説明しています。*1 求人票に「基本設計から担当」と書くなら、画面やデータの形を決める段階から任せるという意味になります。
開発の進め方を表す言葉も、工程名とは別に押さえておきます。シラバスはアジャイルを「迅速かつ適応的にソフトウェア開発を行う軽量な開発手法」と説明し、関連する用語例にスクラム、スプリント、プロダクトバックログなどを挙げています。*3 求人票に「スクラムでの開発経験」とあれば、工程ではなく進め方の経験を指しているので、工程名と混ぜずに書き分けます。
求人票での使い方
求人票に技術用語を書くときは、工程名を先に決め、そのあとに言語や製品の名前を添える順番にすると書きやすくなります。「Javaの経験者」とだけ書くより、「販売管理システムの改修で、詳細設計から結合テストまでを担当。言語はJava」と書くほうが、任せる仕事が伝わります。
そのための下準備として勧めたいのが、社内の用語メモです。1語につき表の1行を使い、次の4つの欄を設けます。
- 求人票に書く呼び方
- 公的な資料での定義と、その資料名・版・ページ
- 別の呼び方(例:結合テストと統合テスト)
- 求人票で添える短い言い換え
定義の欄には、シラバスやjob tagの文をそのまま写します。自分で要約すると、意味が少しずつずれていくためです。言い換えの欄は兼務人事が下書きし、現場のエンジニアに一度読んでもらいます。自社の求人票に出てくる工程名から始め、面接で新しい語が出るたびに書き加えていけば十分です。
言い換えは、求人票でその語が最初に出るところに丸括弧で添えます。たとえば「結合テスト(組み合わせて動きを確かめる試験)」のように書けば、エンジニアでない読み手にも伝わり、エンジニアの候補者が読んでも意味は変わりません。求人票に載せる項目の決め方は「エンジニア求人票の書き方と必須14項目」で扱っています。
面接での使い方
面接では、候補者が使う技術用語を用語メモと照らしながら聞きます。候補者が「結合テストまで担当しました」と話したら、その語が用語メモのどの工程に当たるかを確かめたうえで、「どの部分とどの部分を組み合わせて、何を確かめましたか」と中身を尋ねます。
知らない語が出てきたら、その場で意味を尋ねてかまいません。「その言葉は、どの工程のどんな作業のことですか」と聞けば、候補者は経験を作業の言葉で説明し直してくれます。面接の記録には候補者の言葉をそのまま書き、聞き取った意味を括弧で添えておくと、現場のエンジニアが読んだときに食い違いません。
一方で、候補者の説明が技術として正しいか、その経験で自社の仕事を任せられるかは、現場のエンジニアが見極めます。技術の正解を判定しなくても人事が使える質問の型は「技術面接で人事が見極める5つの質問」で、採用と育成の仕事の分け方は「エンジニア採用を兼務人事で回す、採用と育成の仕事を分ける」で扱っています。
つまずきやすい点
一つ目は、略語の元の英語を調べたところで止まってしまうことです。シラバスの用語例には「SaaS(Software as a Service)」のように、元の英語を添えた略語が多く並びます。*3 元の英語を知るだけでは、何に使う言葉なのかまでは説明できません。シラバスでは、SaaSはシステム化の方法(自社開発、ソフトウェアパッケージ導入、他社のサービス活用など)を説明する項目の用語例として出てきます。*3 説明の文まで読むと、その語がどんな話の中で使われるのかが分かります。
二つ目は、用語メモを作り込みすぎることです。最初から数百の語を集めると、現場に一語ずつ確かめきれず、誤った言い換えが残ります。自社の求人票と面接に出てきた語に絞ります。
三つ目は、資料の版が変わることです。ITパスポート試験シラバスは、2021年10月のVer.6.0から2026年1月のVer.6.5までに5回改訂され、どの改訂にも用語例の追加や用語の見直しが含まれています。*3 用語メモの定義欄には版の番号を書いておき、年に一度は最新版と見比べます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
採用の一部を人材紹介会社や採用代行に頼むときも、用語メモは役に立ちます。依頼先が自社と違う呼び方で仕事を説明すると、候補者が思い描く仕事と求人票の中身がずれるおそれがあります。依頼の最初に用語メモを渡し、呼び方と言い換えをそろえてもらうとよいでしょう。
社員の採用が決まるまでの間の開発作業を、業務委託のエンジニアに任せる場合も同じです。依頼書の工程名と相手のスキルシートの工程名が同じ作業を指しているかを用語メモで確かめておくと、任せる作業の食い違いを防ぎやすくなります。スキルシートの読み方は「外部エンジニアのスキル確認、スキルシートは技術名より作業で読む」で扱っています。
まとめ:技術用語で確かめておきたい3つの点
エンジニア採用の技術用語を兼務人事が扱ううえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、技術用語を職種名・工程名・言語や製品の名前に分け、まず工程名の意味を公的な資料で確かめること。第二に、定義と別の呼び方、求人票での言い換えを、1語1行の用語メモにまとめておくこと。第三に、面接では候補者の言葉を用語メモと照らして中身を尋ね、技術として正しいかの見極めは現場のエンジニアに任せることです。この3点を踏まえておけば、「求人票に書いた工程と、候補者が思っていた仕事が違った」という事態を避けやすくなります。用語メモの作り方や求人票の書き方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
兼務人事がITパスポート試験を受ける必要はありますか
必須ではありません。シラバスはIPAのサイトで公開されているので、試験を受けなくても用語の意味を確かめる資料として読めます。
用語メモは、何語くらいから始めればよいですか
自社の求人票に出てくる工程名から始めます。要件定義から保守までの工程名だけなら、本文の表と同じ6行ほどに収まります。
公的な資料に載っていない製品名やサービス名は、どう調べればよいですか
提供している事業者の公式サイトの説明に当たり、用語メモにはその説明文と確認した日を書いておきます。定義を自分の言葉で書き直さない点は、公的な資料の場合と同じです。
候補者の使う呼び方が自社と違うとき、求人票を書き直すべきですか
書き直す必要はありません。求人票は自社の呼び方のまま、最初に出るところに短い言い換えを添えれば伝わります。候補者が使った別の呼び方は、用語メモの別名の欄に残しておきます。
エンジニアの求人票を相談したいとき
求人票に書く工程名と、任せる仕事の言い換えの整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「システムエンジニア(受託開発)」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/312)。出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「システムエンジニア(受託開発)」の職業詳細。職業別名・職業分類、「どんな仕事?」の職業解説(別の呼び方、要件定義から保守・管理までの工程)、よく使う道具、機材、情報技術等を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「試験で使用する情報技術に関する用語・プログラム言語など」Ver.5.1(https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/doe3um0000002djj-att/shiken_yougo_ver5_1.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「試験で使用する情報技術に関する用語・プログラム言語など」Ver.5.1(2023年11月)。1.情報技術に関する用語、4.データベース言語を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ITパスポート試験 シラバス」Ver.6.5(https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/omgdg50000005kn1-att/syllabus_ip_ver6_5.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「ITパスポート試験 シラバス(情報処理技術者試験における知識の細目)」Ver.6.5(令和8年1月)。はじめに・シラバスの構成・改訂履歴・目次、20.ソリューションビジネス、25.システム開発技術、26.開発プロセス・手法、55.データベース設計、56.データ操作を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱」Ver.5.6(https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/rcu1hd00000141gq-att/youkou_ver5_6.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構 試験要綱 Ver.5.6。2.試験の対象者像(1)ITパスポート試験を参照(2026年9月確認)