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外部人材活用の伴走で内製化を進める、社員に残す仕事の決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 非IT企業を対象にした調査では、デジタル技術の活用の課題として67.4%の企業がノウハウの不足を挙げています。
- 企画と推進を担う人材は自社で育てる企業が72.1%で、IT企業との契約で確保する企業は11.7%にとどまります。
- 社外の人が社員と同じ作業に入る伴走では、社員に残す仕事を先に決め、社外の人の作業を社員へ少しずつ移します。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
社員だけでシステムを作れるようにしたいが、社内に教えられる人がいない。外部の人に頼むと作業は進むのに、社員が同じ作業をできるようにはならない——。デジタル技術の活用を進める企業では、こうした悩みを抱えがちです。労働政策研究・研修機構の2024年の調査でも、デジタル技術の活用の課題として「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」を挙げた企業が67.4%にのぼりました。*1 外部人材活用による内製化とは、社外の専門人材に開発の作業に加わってもらいながら、その作業を社員が担えるようにしていく進め方です。
社外の人が作業を引き受けるだけでなく、社員と同じ作業に入って進め方を伝える形を、本記事では伴走と呼びます。社内に教える人がいない企業に向いたやり方です。ただし万能ではなく、どの仕事を社員に残すかを決めないまま始めると、社外の人が抜けた後に同じ作業を社員だけでは回せません。本記事では、開発の現場を預かるマネージャーに向けて、社内だけで内製化が進みにくい背景、企業が人材をどう確保しているか、社員に残す仕事の決め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
外部人材活用による内製化とは
社外の人材を使う方法は、大きく分けると、IT企業と契約して開発の作業を任せる方法と、人材派遣で来てもらう方法があります。個人の専門人材に業務委託で加わってもらう方法も、IT企業との契約に近い使い方です。どれも、社員ではない人に自社の開発の作業を担ってもらう方法です。
内製化というと、プログラムを書く作業まで社員だけで行うことを思い浮かべるかもしれません。実際には、何を作るかを決める企画や、作ったシステムを動かし続ける運用の判断を社員が担っていれば、プログラムを書く作業の一部を社外の人が担っていても、内製化は進んでいると言えます。どこまでを社員の仕事にするかは、企業ごとに決めることになります。
伴走は、社外の人に作業を丸ごと任せるやり方と比べると違いが分かりやすくなります。丸ごと任せる場合、社外の人が作業を終えれば契約も終わり、社員の手元には完成したシステムと書類が残ります。伴走では、社外の人が社員と同じ作業に入り、設計の考え方や不具合の調べ方を作業の中で伝えます。そのうえで、社員が作業のどこまでを一人でできるようになったかを確かめながら、社外の人が担う作業を減らしていきます。
なぜ社内だけでは進みにくいのか
労働政策研究・研修機構は2024年1月から3月にかけて、情報通信業などを除く産業の従業員100人以上の企業4,000社に調査票を送り、347社から回答を得ました(回収率8.7%)。*2 デジタル技術の活用にあたっての課題(複数回答)では、「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」が67.4%で最も多く、「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材数の不足」が54.5%で続きました。*1
3番目は「デジタル技術導入にかかる予算の不足」の44.4%、4番目は「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材の育成のためのノウハウの不足」の40.3%です。*1 予算を除く3つは、ノウハウ、先導する人の数、育成のノウハウと、どれも知識と人に関わる項目です。社内に知識を持つ人がいなければ、社員を育てる方法も決められず、社員だけで内製化を進めるのは難しくなります。
同じ調査は、人材がそろっているかも尋ねています。デジタル技術の活用を支える人材について「必要な人材は十分に確保できている」と答えた企業は6.3%にとどまり、57.3%が「必要な人材を確保できていない」と答えました。*1 社員を社内で育てようにも、教えられる人がいない。この状態で内製化を進めるなら、社外の人に教える側として作業に入ってもらう方法が候補に挙がります。
企業は人材をどう確保しているのか
同じ調査は、デジタル技術の活用を支える人材を8つのタイプに分け、タイプごとに確保の方法を尋ねています(複数回答)。割合の分母は、そのタイプの人材を確保していると答えた企業です。*1 どのタイプでも「自社社員の育成・配転で確保」(配転は配置転換のこと)と答えた企業が50%以上ですが、「IT企業との契約を通じて確保」の割合はタイプによって大きく違います。
IT企業との契約が最も多いのは「アプリ系IT技術者」(アプリケーションを作る技術者)で41.9%、次いで「ユーザー向けデザインを担当する人材(UI/UXデザイナー)」の36.5%です。*1 UI/UXデザイナーは、画面の見やすさや使いやすさを設計する人を指します。反対に、DX(デジタル技術で事業や業務を変えること)の企画を担う「デジタル化・DXの企画や、実行推進を担う人材」は11.7%、「事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材(データサイエンティスト)」は17.9%にとどまります。この2つは、自社社員の育成・配転がそれぞれ72.1%と73.2%で、ほかのタイプより高くなっています。*1
企画と推進、データの分析は、自社の事業や業務を知っていることが前提になる仕事です。調査でも、デジタル技術の活用を支える人材に必要なこととして「会社が置かれた経営環境や事業環境を理解している」を挙げた企業が62.2%で最も多く、「自身でプログラミング、システム開発ができる」は18.2%でした。*1 一方で、アプリの開発や画面のデザインのように実際に動くものを作る仕事では、IT企業との契約を使う企業の割合が高くなっています。
社員に残す仕事と外部人材に頼む仕事
調査の結果を自社に当てはめると、社員に残す仕事と、外部人材活用で頼む仕事を分ける目安が見えてきます。何を作るかを決める企画、事業のデータを読む分析、社外の人が作ったものを受け入れるかどうかの判断は、社員の仕事として残します。アプリの開発や画面のデザイン、プログラムを書く作業は、社外の人に加わってもらいやすい仕事です。
デジタル技術の活用で重要な役割を果たす人材を尋ねた設問でも、経営者が60.2%、「社内で特にデジタル技術に精通した社員」が46.4%だったのに対し、「社外人材(導入作業を委託した発注先等含む)」は15.3%でした(複数回答)。*1 社外の人に作業を頼んでいても、活用を進める中心は社内の人だと考える企業が多いことが分かります。この考え方に沿って仕事を分けると、次のようになります。
| 仕事 | 主に担う人 | 伴走での進め方 |
|---|---|---|
| 企画(何を作るか、どの順番で作るかを決める) | 社員 | 社外の人は、決めるための材料の集め方を助言する |
| データの分析 | 社員 | 集計の手順を一緒に組み、社員が一人で繰り返せる形にする |
| システムの実装・設計 | 社外の人と社員 | 社員が書いた設計書を社外の人が確認し、直した理由を説明する |
| アプリの開発・画面のデザイン | 社外の人が中心 | できあがったものを受け入れるかどうかの確認は社員が行う |
| 運用(システムが止まったときの最初の調査と連絡など) | 社員へ少しずつ移す | 社員が手順書を書き、社外の人が確認する |
できあがったものを受け入れるかどうかの確認まで社外の人に任せてしまうと、社外の人が抜けた後に、そのシステムの中身を説明できる人が社内にいなくなります。社外の人が中心になる仕事でも、この確認だけは社員の担当として契約の前に決めておきます。
伴走で社員に移すこと
伴走を考えるうえで見ておきたいのが、社員の能力開発の課題です。デジタル技術の活用に向けた社員の能力開発の課題(複数回答)では、「指導する人材が不足している」が48.7%で最も多く、「会社としての支援体制が十分に整っていない」が40.6%、「能力開発に十分な時間が取れない」が29.7%でした。そもそも回答企業の47.3%は、デジタル技術の活用に向けた能力開発を実施していないと答えています。*1
能力開発をどこで行うかについては、「社内で実施」と「外部委託・アウトソーシングで実施」のどちらの方針に近いかを尋ねています。方針を答えた160社では、社内寄りが50.1%、外部委託寄りが50.0%で、ほぼ半々でした。*1 能力開発を社外に委ねる企業と、社内で育てる企業が同じくらいあるということです。伴走はその中間にあたり、学ぶ場所は社内の実際の仕事で、教える人は社外から来ます。
伴走では、作業の手順に加えて、後輩に教える力も社員に移します。調査で、デジタル技術の活用を支える人材に必要なこととして「同僚や部下を指導する能力がある」を挙げた企業は33.4%でした。*1 社外の人が抜けた後は、伴走を受けた社員が次の社員に教える側に回ります。社外の人と一緒に作業する間に、社員が後輩に作業を説明する機会も設けておくと、社内で教えられる人を増やせます。
つまずきやすい点
一つ目は、社員に残す仕事を決めないまま社外の人を迎えることです。作業の速い社外の人にすべてを任せると、開発は予定どおりに進みますが、契約が終わった時点で社員が一人でできる作業は増えていません。前の表のように、仕事ごとに主に担う人と、社員に移すことを書いてから始めます。
二つ目は、伴走を受ける社員の時間を確保しないことです。能力開発の課題として、十分な時間が取れないことを挙げた企業が3割近くあったのは先に見たとおりです。社員が普段の業務を抱えたまま伴走を受けると、社外の人の作業を横で見るだけになりがちです。伴走を受ける期間は、その社員の普段の業務を減らしておきます。
三つ目は、社外の人の担当を減らす時期を決めないことです。社員が一人でできる作業を確かめる日を決めておき、その時点で社外の人の担当を減らすか、続けるかを判断します。支援を終えて社員だけで作業を続けられるかを判断する基準は「内製化支援から自走へ、自走化判断で確かめる3つの基準」で、伴走を受けながら社員を育てる計画の立て方は「内製化支援の伴走を受けて社員を育てる、育成計画の立て方」で扱っています。
外部に委託するときに確認しておきたい点
社外の人に伴走を頼むときは、契約の前に次の点を書面で確かめておくと進めやすくなります。
- 社外の人が担う作業と、社員が担う作業(作業名と期間)
- 社員に説明してもらう内容(設計の考え方、不具合の調べ方、手順書の書き方など)
- 社外の人の担当を減らしていく時期と、そのときに確かめる社員の作業
- 作業の中で作った設計書や手順書を、自社の資料として残すこと
特に一つ目は、「販売管理システムの画面の開発を来年3月まで社外の人が担い、1月からは社員が一部の画面を担当する」のように、作業名と期間で書いておきます。社外の人が何をいつまで担うかが決まっていないと、社員に移す作業も決まりません。人を探す段階では、技術の経験に加えて、社員に作業を説明した経験があるかも確かめておくとよいでしょう。
まとめ:外部人材活用で確かめておきたい3つの点
外部人材活用で内製化を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、企画や分析、受け入れの確認のように社員に残す仕事と、社外の人に加わってもらう仕事を先に分けること。第二に、伴走では社外の人が社員と同じ作業に入り、作業の手順と説明の仕方を社員に移すこと。第三に、社外の人の担当を減らす時期と、そのときに確かめる社員の作業を決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「外部の人がいる間は進んだのに、抜けたら誰も直せない」という事態を避けやすくなります。社員に残す仕事の分け方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
伴走を頼む期間は、どのくらいを見込めばよいですか
社員に移す作業の数と、社員が作業に使える時間で決まります。まず移したい作業を書き出し、作業ごとに社員が一人でできるかを確かめる日を置くと、全体の期間を見積もれます。途中で確かめた結果によって、期間を延ばすか縮めるかを決めます。
伴走を受ける社員は、誰を選べばよいですか
社内でその仕事を続けて担当する予定の人を選びます。調査では、デジタル技術の活用に向けた能力開発の対象を「選抜した社員」とする企業が、方針を答えた企業の74.7%でした。*1 選ぶときは、異動の予定がないか、普段の業務を減らせるかも確かめておきます。
伴走を頼むと、作業を丸ごと委託するより費用はかかりますか
かかることがあります。社外の人が社員への説明に使う時間が、作業の時間に加わるためです。見積もりを比べるときは、説明に使う時間を作業とは別の項目にしてもらうと、何に費用がかかっているかが分かりやすくなります。
社外の人は、IT企業との契約と個人の業務委託のどちらで探せばよいですか
移したい作業の量と、教わりたい技術で考えます。複数の仕事を同時に社員へ移したいなら、何人かで担当を組めるIT企業との契約が向いています。特定の技術を1人に教えてもらうなら、その技術の経験がある個人に業務委託で加わってもらう方法もあります。
社員と一緒に開発を進める人材を探したいとき
社員に残す仕事と、社外の人に任せたい作業の整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.254『デジタル人材』の能力開発・確保をめぐる企業の取り組みに関する調査」(PDF)(https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/documents/0254.pdf)。出典:労働政策研究・研修機構「『デジタル人材』の能力開発・確保をめぐる企業の取り組みに関する調査」(2025年3月)。デジタル人材調査の図表2-2-5、2-3-1、2-3-4、2-3-6、2-4-4a、2-4-4b、2-4-10と、第2章第3節2(4)確保状況についての評価を参照。人材タイプの名称は図で短く表記(2026年9月確認)
- *2 参考:労働政策研究・研修機構「調査シリーズNo.254『デジタル人材』の能力開発・確保をめぐる企業の取り組みに関する調査」(https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/254.html)。出典:同調査の概要ページ(2025年4月3日掲載)。調査対象(農林漁業、情報通信業、複合サービス業、公務を除く産業の従業員100人以上の企業4,000社)、調査期間(2024年1月26日〜3月21日、郵送回収)、回答数(347社、回収率8.7%)を参照(2026年9月確認)