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蔵書管理システムの要件|貸出・返却と目録の一元管理
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託
この記事のポイント
- 蔵書管理システム(図書館システム)は、書誌・所蔵データの目録(カタロギング)、貸出・返却・予約・延滞、資料管理、OPAC(蔵書検索)を一元化する仕組みです。
- 目録データの記述は日本目録規則2018年版(NCR2018)、分類は日本十進分類法(NDC)、資料の識別はISBNなどの標準に沿います。国立国会図書館はJAPAN/MARCとして全国書誌データを提供しています。
- 文書管理や在庫管理と異なり「図書資料の管理」に特化する点が核です。外注時は目録データの移行・外部連携の範囲・資料管理方式(バーコード/RFID)の対応範囲を確認します。
目次
手作業の目録と貸出管理が抱える課題
企業内図書室や大学図書館、専門図書館の担当者にとって、蔵書の管理は日々の運用の根幹にあたります。台帳やカード目録、表計算ソフトで書名や所在を記録している現場も少なくないでしょう。ただ、この手作業には運用が拡大するほど負荷が積み上がる構造的な課題があります。
第一の課題は、目録づくりが属人化しやすいことです。書名や著者、出版者といった情報をどう記述し、どの分類に置くかは一定の規則に沿う必要があります。担当者ごとに書き方が揺れると、同じ資料でも表記が食い違い、後から探し出すのが難しくなります。
第二に、貸出と返却の記録を紙や表計算で追う方式では、誰がいつ借りたのか、返却期限を過ぎていないかを即座に把握しづらくなります。予約が重なったときの調整も煩雑です。第三に、現物と台帳を一冊ずつ突き合わせる蔵書点検には、まとまった人手と時間がかかります。こうした課題を一つの仕組みで受け止めるのが蔵書管理システムです。
蔵書管理システム(図書館システム)とは
蔵書管理システム(図書館システム)とは、図書館や図書室が扱う資料の書誌・所蔵データを登録し、貸出・返却・予約、資料の識別、蔵書検索までを一元的に扱うための業務システムを指します。中核にあるのが「目録(カタログ)」の考え方です。資料一点ごとにどんな情報を、どの規則に沿って記述するかが管理の土台になります。
日本国内では、書誌データの記述の拠り所として日本目録規則が広く参照されてきました。最新版である日本目録規則2018年版(NCR2018)は、日本図書館協会が国立国会図書館と協力して策定した規則です*1*2。NCR2018は書誌情報を「実体」と「その関連」でとらえるFRBR(書誌レコードの機能要件)の概念モデルを基礎に据えており、国際的な記述規則であるRDAとの相互運用性にも配慮されています*2。
資料をどの主題に置くかを決める分類には、日本十進分類法(NDC)が用いられます。NDCは総記・哲学・歴史・社会科学・自然科学・技術・産業・芸術・言語・文学という10区分を出発点に、0から9の数字で主題を細分していく分類法で、日本図書館協会分類委員会が維持しています*3。現行は新訂10版(2014年12月刊行)です*3。蔵書管理システムは、こうした規則に沿った書誌・分類データを蓄積し、日々の運用に活かす基盤といえます。
文書管理・在庫管理システムとの違い
当サイトでは「文書管理(DMS)」「記録管理」「在庫管理」といったテーマも扱っています。蔵書管理システムはこれらと似た側面を持ちながら、対象と管理の粒度は異なるものです。混同しやすいため、ここで違いを整理しておきます。
文書管理システムが扱うのは、主に組織が作成・受領する文書ファイルそのものです。版管理やアクセス権限、保存年限といった、文書のライフサイクル管理が中心になります。在庫管理システムが管理するのは、数量で把握する商品や部材で、入出庫と在庫数の増減を追う点に重きが置かれます。同じ品目であれば個体を区別しないことが一般的です。
これに対して蔵書管理システムは「図書資料」に特化します。一点ごとに書誌データ(書名・著者・出版者・ISBNなど)を作り、同じタイトルでも所蔵する現物(所蔵資料)を個別に識別して、貸出中か在架かといった状態を追跡する仕組みです。つまり、数量ではなく資料一点ずつの識別と状態管理が核になります。加えて、利用者へ資料を貸し出し、期限内の返却を促し、予約を受け付けるという「利用者との資料のやりとり」を扱う点が、文書管理や在庫管理には見られない特徴です。この違いが、後述する機能要素の設計を左右します。
蔵書管理システムの主な機能要素
蔵書管理システムの機能は、大きく「目録」「貸出・返却・予約」「資料管理」「OPAC(蔵書検索)」の4つに整理できます。それぞれを見ていきます。
目録(カタロギング)——書誌・所蔵データの記述
目録機能は、資料の書誌情報を規則に沿って登録する土台です。前述のとおり記述はNCR2018、分類はNDCが参照されます*2*3。書誌データをゼロから入力する負担を軽くする手段として、国立国会図書館が提供するJAPAN/MARCの活用があります。
JAPAN/MARCは、国立国会図書館が収集・整理した国内出版物の全国書誌データと典拠データを、機械可読目録(MARC)の形式で提供するものです*5。データはMARC21準拠のフォーマットで整えられ、週次で更新されています*5。国と地方公共団体のオープンデータの取り組みの一環として、2019年4月から国立国会図書館の書誌情報が広く提供されるようになりました*6。既存の書誌データを取り込めれば、目録作成の初期負担を抑えやすくなります。
貸出・返却・予約・延滞——利用者との資料のやりとり
貸出・返却機能は、利用者が資料を借りて返すまでの状態を記録します。誰がどの資料をいつまで借りているのか、返却期限を過ぎていないかを一覧で把握できるようにするのが基本です。予約機能では、貸出中の資料に対する予約を受け付け、返却され次第、次の利用者へ案内する流れを支えます。
延滞の把握や督促の通知、貸出上限の設定なども、この領域に含まれます。手作業では見落としがちな期限管理を仕組みで支えることで、担当者の負担と資料の所在不明を減らしていけます。
ISBN・バーコード・RFIDによる資料管理と蔵書点検
資料一点ずつを素早く識別するために、ISBNやバーコード、RFID(ICタグ)が使われます。ISBN(国際標準図書番号)は、図書を識別するための13桁の番号です。日本図書コード管理センターによれば、接頭記号・グループ(国や言語圏)記号・出版者記号・書名記号・チェック数字で構成されます*4。日本のグループ記号は「4」で、書店で見かける書籍JANコードは、このISBNをもとに生成されています*4。
現物の管理では、資料に貼ったバーコードやRFIDタグを読み取って、貸出・返却や蔵書点検の作業を進めます。RFIDは電波で非接触にデータを読み書きする技術で、複数のタグをまとめて読み取れる点が特徴です。書棚にかざしながら巡回して一括で読み取る運用にすれば、一冊ずつ確認する従来のやり方に比べ、蔵書点検の手間を軽くできます。どの識別方式を採用するかは、蔵書規模や運用体制に合わせて検討する材料になります。
利用者管理とOPAC(蔵書検索)
利用者管理は、貸出の対象となる利用者の登録と、貸出履歴・予約状況の管理を担います。OPAC(オンライン蔵書目録)は、利用者が自ら資料を検索できる仕組みで、書名や著者、分類などから所蔵と在架状況を確認できます。目録に蓄えた書誌データが、そのまま検索の入り口として利用者に開かれる形です。
近年は、館内の端末だけでなくWebからの検索や予約に対応する構成も一般的になりました。利用者が自分で資料を探し、予約まで済ませられるようにすることで、窓口の問い合わせを減らし、担当者がほかの業務に時間を割きやすくなります。
開発を外注する際に確認したい点
蔵書管理システムには市販のパッケージも存在します。ただ、企業内図書室や専門図書館では、扱う資料の種類や既存の業務フロー、社内システムとの連携要件が独特なことも多く、開発や機能追加を外部に委託する場面もあるでしょう。委託先を選ぶ際に確認したい点を、いくつか挙げます。
第一に、目録データの移行と取り込みの範囲です。既存の台帳や表計算、旧システムのデータをどこまで整えて移行できるか、JAPAN/MARCなど外部の書誌データをどのように取り込むかを、事前にすり合わせておきます*5*6。第二に、記述規則や分類への対応です。NCR2018やNDCといった規則にどこまで沿うかは、扱う資料や運用方針によって変わります*2*3。求める記述の粒度を委託先と共有しておくことが実務的です。
第三に、資料管理の方式です。バーコードで運用するのか、RFIDを導入するのかで、必要な機器や画面設計が変わります。第四に、社内の認証基盤や利用者データベースとの連携範囲、Webからの検索・予約への対応可否も確認したい点です。加えて、公開後の保守・運用をどこまで担ってもらえるかも、長期の運用を見据えると欠かせません。
これらの要件は、蔵書の規模や利用者数、既存システムの状況によって最適な形が変わります。現状の運用を棚卸ししたうえで、どこを内製し、どこを外注するかを切り分けて検討していくとよいでしょう。
まとめ:蔵書管理システムの要件を整理する3つの視点
本稿では、蔵書管理システム(図書館システム)の役割と機能要素を、国立国会図書館や日本図書館協会などの公式情報をもとに整理しました。要点は3つの視点にまとまります。第一に、蔵書管理システムは書誌・所蔵データの目録を土台に、貸出・返却・予約、資料管理、OPAC(蔵書検索)を一元化する仕組みです。記述はNCR2018、分類はNDCが参照されます*2*3。第二に、文書管理や在庫管理と異なり、資料一点ずつの識別と状態管理、利用者との資料のやりとりに特化する点が核になります。第三に、外注時は目録データの移行、規則への対応、資料管理方式(バーコード/RFID)、外部連携の範囲を確認したうえで、内製と外注の切り分けを見極めることが判断材料になります。
よくある質問
蔵書管理システムと文書管理システムは何が違いますか。
文書管理システムは組織の文書ファイルを版管理やアクセス権限とともに扱う仕組みです。蔵書管理システムは図書資料に特化し、資料一点ごとに書誌データを作り、同じタイトルでも現物を個別に識別して、貸出中か在架かといった状態を追跡します。利用者への貸出・返却・予約を扱う点も、文書管理には見られない特徴です。
ISBNやバーコード、RFIDは何のために使いますか。
資料一点ずつを素早く識別するために使います。ISBNは図書を識別する13桁の番号で、接頭記号・グループ記号・出版者記号・書名記号・チェック数字で構成されます*4。バーコードやRFID(ICタグ)を読み取ることで、貸出・返却や蔵書点検の作業を進められます。RFIDは複数のタグをまとめて読み取れるため、蔵書点検の手間を軽くしやすい方式です。
目録データはゼロから作成する必要がありますか。
すべてをゼロから作る必要はありません。国立国会図書館は、国内出版物の全国書誌データを機械可読目録としてJAPAN/MARCの形で提供しています*5。2019年4月からは書誌情報が広く提供されるようになりました*6。こうした外部の書誌データを取り込めれば、目録作成の初期負担を抑えやすくなります。
OPACとは何ですか。
OPAC(オンライン蔵書目録)は、利用者が自ら資料を検索できる仕組みです。書名や著者、分類などから所蔵と在架状況を確認できます。目録に蓄えた書誌データがそのまま検索の入り口になり、Webからの検索や予約に対応する構成も一般的になっています。
開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。
目録データの移行と取り込みの範囲、NCR2018やNDCといった記述規則・分類への対応方針、資料管理の方式(バーコードかRFIDか)、社内システムやWeb検索・予約との連携範囲をまず確認します。加えて、公開後の保守・運用をどこまで担ってもらえるかもすり合わせておくと、長期の運用を見据えた判断がしやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:国立国会図書館「日本目録規則2018年版(NCR2018)について」(プレーンテキスト表記:https://www.ndl.go.jp/jp/data/ncr/index.html )
- *2 出典:日本図書館協会「日本目録規則2018年版」(https://www.jla.or.jp/committees/mokuroku/ncr2018/)
- *3 出典:日本図書館協会「日本十進分類法(NDC)」(https://www.jla.or.jp/ndc/)
- *4 出典:日本図書コード管理センター「ISBNと書籍JANコードとは」(https://isbn.jpo.or.jp/index.php/fix__about/fix__about_3/)
- *5 出典:国立国会図書館「JAPAN/MARCデータ(毎週更新)」(プレーンテキスト表記:https://www.ndl.go.jp/jp/data/data_service/jnb_product.html )
- *6 出典:国立国会図書館「書誌データの提供」(プレーンテキスト表記:https://www.ndl.go.jp/jp/data/data_service/index.html )