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2026.08.27 らしくコラム

EUエコデザイン規則、売れ残り廃棄の禁止が先に来る




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • すでに発効している:規則2024/1781は2024年7月18日に発効し、エコデザイン指令2009/125/ECを置き換えました*1。
  • 近い期限は廃棄の禁止:繊維と履物の売れ残り消費者製品の廃棄の禁止が2026年2月9日から適用されます*1。
  • システムの勘どころ:在庫の処分を「数量・重量・理由」で記録できるか。ここが最初の関門です。

※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。

対象品目の要件を待つより先に、在庫の処分の記録が問われます。持続可能な製品のためのエコデザイン規則(Ecodesign for Sustainable Products Regulation、規則2024/1781)は2024年7月18日に発効し、従来のエコデザイン指令2009/125/ECを置き換えました*1。

変わったのは対象の広さです。従来は省エネに関わる製品が中心でしたが、ESPRでは食品、飼料、医薬品を除いて、ほぼすべての物理的な製品に対象が広がりました*1。ただし個別の要件は製品グループごとの委任法令で定まる仕組みであり、すべての製品にいますぐ要件がかかるわけではありません。

本記事では、EU向けに製品を出している企業の情報システム担当と、その仕組みづくりを受託する立場に向けて、先に来る期限と、そのために持つべきデータを整理します。制度の解釈が要る部分は規則の本文と専門家の確認を経て進めてください。

ハンガーに掛かった衣類が並ぶイメージ

先に来るのは要件ではなく「廃棄の禁止」

ESPRというと製品の設計要件の話に見えますが、期限が近いのは別の部分です*1。

EUエコデザイン規則(規則2024/1781)が2024年7月18日に発効しエコデザイン指令2009/125/ECを置き換えたこと、対象が省エネ関連製品からほぼすべての物理的製品へ広がり食品・飼料・医薬品が除かれること、繊維と履物について売れ残り消費者製品の廃棄の禁止が2026年2月9日から適用され大企業には廃棄した数量・重量・理由の年次開示が求められること、作業計画2025-2030の優先品目が鉄鋼とアルミニウム・繊維・家具・タイヤ・マットレスであること、そして修理可能性スコアなどの横断的な措置が予定されていることを整理した図

売れ残った消費者向け製品の廃棄の禁止が定められており、最初の対象は繊維と履物です*1。適用は2026年2月9日からとされ、同じ日付で、売れ残り消費者製品の廃棄に関する実施法令および委任法令の採択も挙げられています*1。他の分野へ広げる道筋も示されています*1。

あわせて報告の義務があります。大企業(いずれは中規模の企業も)は、廃棄した売れ残り製品について、数量、重量、理由を含む情報を年次で開示することとされています*1。

この三つの項目が、そのままシステムの要件になります。押さえたい点を挙げます。

第一に、処分を「事象」として記録することです。在庫システムでは、廃棄が数量の減少としてだけ記録されていることがあります。減った理由が「調整」や「その他」に丸められていると、報告の材料になりません。処分の理由を選べる形にしておく必要があります。

第二に、重量を持つことです。数量は在庫システムが持っていますが、重量を持っていない企業は少なくありません。製品マスタに重量の項目があるか、無いなら誰がどう埋めるかを決めることになります。梱包の重量を含むのか製品単体かも、あらかじめ揃えておきたい部分です。

第三に、「売れ残り」の定義を決めることです。返品されたもの、展示に使ったもの、季節を過ぎたもの、検品ではじいたもの。どこまでを対象として数えるかは制度の解釈が要ります。システム側では、処分の理由を細かく持っておけば、後から集計の範囲を変えられます。最初から粗い分類にすると、定義が固まったときに作り直しになります。

在庫の増減を理由つきで記録するという構造は、マスタデータの管理で扱うような、コード体系を整える作業と一体で進むことが多くあります。理由コードを増やすだけの改修に見えて、既存の集計や帳票に影響が及ぶ場合があるためです。

対象がほぼすべての製品に広がった

ESPRのもう一つの変化が、対象の広さです*1。

従来のエコデザイン指令は、省エネに関わる製品を中心とした枠組みでした。ESPRはこれを置き換え、食品、飼料、医薬品を除いて、ほぼすべての物理的な製品に及ぶ形になっています*1。

設定できる要件の種類も広く定められています*1。挙げられているのは、耐久性・再利用可能性・アップグレード可能性・修理可能性、保守と再生、エネルギーと資源の効率、循環を妨げる物質、再生材の含有率、再製造とリサイクルのしやすさ、カーボンフットプリントと環境フットプリント、廃棄物の発生量の制限、そして製品の持続可能性に関する情報の入手可能性です*1。

表1:制度が求める情報と、システム側で持つ対象
項目 内容 システム側で持つ対象
売れ残りの廃棄 繊維と履物は2026年2月9日から禁止 処分の事象と理由コード
廃棄の報告 数量・重量・理由を年次で開示 製品ごとの重量と集計の単位
デジタル製品パスポート 製品・部品・素材の情報を保持する 製品の識別子と紐づく属性
エコデザイン要件 耐久性・修理可能性・再生材含有率など 品目ごとの仕様値と根拠
対象品目 作業計画で優先する品目が示される 自社品目と対象分類の対応

この一覧を見て分かるのは、求められる情報の多くが、設計・調達・製造の各部門に散らばっているということです。再生材の含有率は調達、修理可能性は設計、重量は物流。一つの部門だけで揃う項目はほとんどありません。

そのため、システムの課題は「新しい機能を作る」より「既にある情報を製品コードで束ねる」ことに寄ります。商品情報の管理で扱うような、製品を軸に属性を集める仕組みが土台になります。

デジタル製品パスポートは「箱」である

ESPRを語るときによく出てくるのがデジタル製品パスポート(DPP)です*1。

DPPは、製品・部品・素材のためのデジタルな身分証として説明されており、持続可能性に関する情報を保持するものとされています*1。含まれ得る情報として、技術的な性能、素材とその産地、修理の履歴、リサイクルの可能性、ライフサイクルでの環境影響が挙げられています*1。

ここで実務上の注意があります。DPPは器であって、中身は製品グループごとの委任法令で決まります。「DPPに対応する」という言い方だけでは、何を入れるのかが定まりません。自社の製品が属するグループの要件が定まるまで、載せる項目は確定しないという理解が要ります。

それでも先に進められる部分はあります。

製品の識別子を決めることです。DPPは製品・部品・素材の単位で情報を持ちます。自社が製品コードしか持っていない場合、部品や素材の単位で情報を紐づけられません。どの粒度まで識別するかを決めるのが最初の作業になります。

素材と産地の情報を集める経路を作ることです。素材とその産地は挙げられている情報の一つです*1。この情報は調達先から得るものであり、社内には無い場合があります。取引先に依頼して集める運用を設計する必要があります。

修理の履歴を残すことです。修理の活動が情報の一つに挙げられています*1。修理を別の台帳で管理している企業では、製品の個体と修理の記録が紐づいていないことがあります。個体を識別できるかが分かれ目になります。

DPPそのものの構造については、デジタル製品パスポートの考え方で扱う内容が土台になります。ESPRはその法的な根拠を与える枠組みという位置づけです。

修理に関する情報という点では、別の規制も並行して動いています。修理する権利への対応で扱うような要求と、DPPに載せる修理の履歴は近い性格を持ちます。集める仕組みを二重に作らないよう、要件を並べて確認しておく価値があります。

どの製品が先に対象になるのか

個別の要件は委任法令で定まるため、どの品目が先に来るかを知っておくと計画が立てられます*2。

欧州委員会は2025年4月に「ESPRおよびエネルギーラベリング作業計画2025-2030」を採択しました*2。この作業計画は、今後5年間でエコデザインとエネルギーラベリングの要件を設定することを検討する優先的な製品を挙げるものです*2。

優先される製品として挙げられているのは、鉄鋼とアルミニウム繊維(衣料に焦点)家具タイヤマットレスです*2。循環経済への寄与という観点から選ばれたとされています*2。これらに加えて、いくつかのエネルギー関連製品も含まれます*2。

さらに横断的な措置も示されています*2。製品の修理可能性を促すための修理可能性スコアの導入と、電気・電子機器のリサイクル可能性に関する要件です*2。

この並びから読めることを整理します。

素材そのものが対象に入っています。鉄鋼とアルミニウムは最終製品ではなく中間の材料です。完成品を作る企業にとっては、調達する材料の側にも要件がかかる可能性があるということです。取引先から受け取る情報が増える前提で、受け入れの仕組みを考えることになります。

繊維と家具とマットレスが並んでいます。いずれも売れ残りの廃棄が問題になりやすい分野です。廃棄の禁止が繊維と履物から始まること*1と合わせて見ると、この分野への圧力が強いことが分かります。

横断的な措置は品目を選びません。修理可能性スコアは、対象になれば製品の仕様として表示することになります。スコアの算出に必要な情報を、設計の段階から持っておく必要が出てきます。

なお、委任法令の進め方については、エコデザインの委任法令と調達に関する実施法令を並行して評価し採択するとされています*2。調達の要件が同時に動くということは、公共調達に関わる企業では要件が二重に効いてくる可能性があります。

報告の枠組みとしては何と重なるか

ESPRの報告は単独で存在するわけではありません。既に別の枠組みで似た情報を出している企業も多くあります。

サステナビリティの開示との関係です。廃棄した売れ残り製品の数量・重量・理由*1は、環境に関する開示の一部として説明できる性格の情報です。開示データ基盤の作り方で扱うような、開示のために社内から情報を集める仕組みがあるなら、そこに項目を足す形が素直でしょう。

包装の規制との関係です。包装や梱包については別の規則が要求を出しています。EU包装規則で扱うような、包装の素材や再生材の含有率に関する要求と、ESPRの再生材含有率*1は近い情報を求めます。集める先が同じであれば、一度に集めたほうが取引先の負担も減ります。

国内のリサイクル制度との関係です。日本国内でも再生材の利用や廃棄の記録に関する制度が動いています。プラスチック資源循環の実務で扱うような枠組みと、EU向けの要求は目的が近く、集める情報が重なる部分があります。

排出量の算定との関係です。カーボンフットプリントと環境フットプリントが要件の種類に挙げられています*1。排出量の算定と開示で扱うような、製品単位での算定の仕組みがあると、要件が定まったときに使えます。

制度ごとに別の仕組みを立てると、同じ情報を何度も集めることになります。製品コードを軸に属性を集める場所を一つ決めて、そこから各制度の様式へ出すという構成にしておくと、制度が増えても出す先が増えるだけで済みます。

なお、参考として示されている数値を挙げると、現行のエコデザイン要件は2023年に最終エネルギー消費の12パーセントの削減を達成し、約346,000人の雇用を生んだとされています*2。制度の効果として説明されている数字であり、個々の企業の負担や便益を示すものではない点には注意が要ります。

着手の順序と、受託で進めるときの要点

優先順位をつけるなら、次の順になります。

第一に、繊維と履物を扱っているかを確かめることです。扱っているなら2026年2月9日*1が最も近い期限になります。扱っていなければ、優先品目*2に自社の製品が入るかを見ます。

第二に、処分の記録を整えることです。数量・重量・理由*1。とくに理由コードと重量の項目が既存の仕組みにあるかを確かめます。無ければ、そこから始まります。

第三に、製品の識別の粒度を決めることです。製品だけか、部品や素材まで識別するか。DPPの要件が定まったときに、粒度が足りないと作り直しになります。

第四に、取引先から情報を受け取る経路を設計することです。素材と産地、再生材の含有率。社内に無い情報をどう集めるかは、システムより先に業務の設計が要ります。

受託で進める場合の要点も挙げます。

委任法令待ちの部分を作り込まないことです。個別の要件は製品グループごとの委任法令で定まります。載せる項目が確定していない段階で画面や帳票を固めると、確定時に作り直しになります。属性を柔軟に増やせる構造を先に用意するほうが確かです。

理由コードは細かく持つことです。「売れ残り」の定義が後から絞られる可能性があります。細かく持っておけば集計の範囲を変えられますが、粗く持つと分解できません。

重量の定義を最初に決めることです。製品単体か、梱包を含むか、輸送の単位か。後から揃え直すのは手間がかかります。

他の制度と集める先を共通にすることです。包装、開示、排出量。取引先に何度も同じ依頼をすると、回答の質が落ちます。

体制としては、在庫と物流の実務、そして製品の設計情報の両方に触れられる要員が入れるかが分かれ目になります。処分の実態、重量の持ち方、部品表の構造。これらは仕様書の項目名だけを見ていても判断できません。業務側と設計側が同じ場で話せる形を作れるかを、委託先を選ぶ観点に入れておくとよいでしょう。

まとめ:ESPRへの対応で押さえる3つの視点

持続可能な製品のためのエコデザイン規則(規則2024/1781)は2024年7月18日に発効し、従来のエコデザイン指令2009/125/ECを置き換えました。押さえたい視点は三つです。第一に、期限が近いのは設計の要件ではなく売れ残りの廃棄であること。売れ残った消費者向け製品の廃棄の禁止は繊維と履物から始まり、2026年2月9日から適用されます。大企業はいずれ中規模の企業も含めて、廃棄した数量・重量・理由を年次で開示することとされているため、処分を事象として理由つきで記録できるかが最初の関門になります。第二に、対象がほぼすべての物理的な製品へ広がったこと。食品、飼料、医薬品が除かれ、要件の種類も耐久性や修理可能性、再生材の含有率、フットプリントまで幅広く定められています。ただし個別の要件は製品グループごとの委任法令で定まります。第三に、優先される品目が示されていること。2025年4月に採択された作業計画2025-2030では、鉄鋼とアルミニウム、繊維(衣料)、家具、タイヤ、マットレスが挙げられ、修理可能性スコアと電気・電子機器のリサイクル可能性という横断的な措置も示されました。まずは自社が繊維と履物を扱うかの確認と、処分の記録に数量・重量・理由が揃うかの点検から着手するのが堅実でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、在庫・製品情報・開示データに関わる業務システムの開発と改修を受託しています。処分を理由つきの事象として残す設計、製品コードを軸に属性を束ねる構造、取引先から情報を受け取る経路の設計、委任法令の確定を待つ部分を柔軟に保つ作りまで、制度が段階的に固まる案件に耐える形をご提案できるのが強みです。

よくある質問

ESPRはいつから効いているのですか。

規則2024/1781は2024年7月18日に発効し、従来のエコデザイン指令2009/125/ECを置き換えました。ただし個別の製品要件は製品グループごとの委任法令で定まるため、すべての製品にいますぐ要件がかかるわけではありません。一方で売れ残った消費者向け製品の廃棄の禁止は、繊維と履物について2026年2月9日から適用されます。

売れ残りの廃棄について何を記録すればよいのですか。

大企業(いずれは中規模の企業も)は、廃棄した売れ残り製品について数量、重量、理由を含む情報を年次で開示することとされています。在庫システムで廃棄が数量の減少としてしか記録されていない場合、理由が「調整」などに丸められて報告の材料になりません。処分を事象として扱い、理由を選べる形にしておく必要があります。

どの製品が先に規制の対象になりますか。

2025年4月に採択されたESPRおよびエネルギーラベリング作業計画2025-2030では、今後5年間で要件の設定を検討する優先的な製品として、鉄鋼とアルミニウム、繊維(衣料に焦点)、家具、タイヤ、マットレスが挙げられています。これらに加えていくつかのエネルギー関連製品も含まれます。あわせて修理可能性スコアと電気・電子機器のリサイクル可能性という横断的な措置も示されています。

デジタル製品パスポートには何を載せるのですか。

DPPは製品・部品・素材のためのデジタルな身分証として説明され、持続可能性に関する情報を保持します。含まれ得る情報として技術的な性能、素材とその産地、修理の履歴、リサイクルの可能性、ライフサイクルでの環境影響が挙げられています。ただし実際に載せる項目は製品グループごとの委任法令で定まるため、確定前に画面を固めると作り直しになります。

システムとしてまず何を用意すべきですか。

三つです。処分を理由つきの事象として記録できる在庫の仕組み、製品ごとの重量を持てる製品マスタ、そして製品コードを軸に素材や産地といった属性を束ねられる場所です。とくに重量は持っていない企業が多く、製品単体か梱包を含むかといった定義を最初に決めておかないと、後から揃え直す手間がかかります。

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出典

  1. *1 参考:欧州委員会「Ecodesign for Sustainable Products Regulation」(環境総局)(https://environment.ec.europa.eu/strategy/circular-economy/ecodesign-sustainable-products-regulation_en)。規則2024/1781という番号と2024年7月18日の発効、エコデザイン指令2009/125/ECの置き換え、対象がほぼすべての物理的製品へ広がり食品・飼料・医薬品が除かれること、デジタル製品パスポートの位置づけと含まれ得る情報、売れ残り消費者製品の廃棄の禁止が繊維と履物について2026年2月9日から適用されること、数量・重量・理由の年次開示、エコデザイン要件の種類、2026年2月9日の実施・委任法令の採択の一次情報として(2026年8月確認)
  2. *2 参考:欧州委員会 Green Forum「2025-2030 working plan」(https://green-forum.ec.europa.eu/news/2025-2030-working-plan-2025-07-11_en)。作業計画2025-2030が2025年4月に採択されたこと、優先品目(鉄鋼とアルミニウム、繊維、家具、タイヤ、マットレスおよびエネルギー関連製品)、修理可能性スコアと電気・電子機器のリサイクル可能性という横断的措置、エコデザイン委任法令と調達実施法令を並行して評価・採択すること、現行要件が2023年に最終エネルギー消費の12パーセント削減と約346,000人の雇用に寄与したとされることの確認として(2026年8月確認)




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