LASSIC Media らしくメディア
類似プロジェクト参照とは、71.1%が前例を見て作っている
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 参照ありは71.1%:自社内の前例を見た案件の割合です*2。
- 方法論なしは43.9%:型から読めない案件が4割強あります*2。
- 図ごとにNが違う:738から1,382まで幅があります*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けた案件を引き取るとき、最初に確かめるのは何でしょうか。
コードを読む前に、その案件が何でできているかを知る必要があります。
手がかりは、案件の中身を6つの切り口で集計したプロファイルです。
IPAの資料では、自社内の類似プロジェクトを参照した案件が71.1%でした*1*2。
一方で開発方法論は43.9%が「なし」です*2。前例はあっても型はない、という形になります*2。
目次
引き取る前に案件の中身を確かめる
引き取りの相談は、たいていコードの話から始まります。ところが読む前に決めることがあります。この案件は何でできているのか、という点です。
その中身を業界の分布として測れる資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
該当する節は本編のA3.2です*2。主要なプロファイル以外の、その他のプロジェクトプロファイルを示すと位置づけられています*2。
ここに6つの図があります*2。作業概要、新技術の利用、業務パッケージの利用、類似プロジェクトの参照、開発方法論の利用、開発フレームワークの利用です*2。
いずれも案件の性質を表す項目です*2。規模や工数ではなく、どう作られたかを聞いています*2。
先に断っておく点があります*2。図ごとにNが違い、738から1,382まで幅があります*2。
だから割合の差は細かく論じません*2。同じプロジェクトの集合ではないためです*2。
数値の扱いを書きます*2*3。件数と比率は本編の図に示された値をそのまま引き、合計と割合の算出は図の値から筆者が行いました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
まず参照の有無を見ます*2。
自社内の類似プロジェクトの参照は71.1%
本編の図A3-2-4は、自社内の類似プロジェクトの参照の有無を示しています*2。有りが552件、無しが224件です*2。
Nは776になります*2。有りの割合は71.1%、無しは28.9%でした*2。
本編もそう記しています*2。開発のときに自社内の類似プロジェクトを参照したものは7割強であるとされています*2。
過去との比較も添えられています*2。2014年度から2019年度の69.4%とほぼ同じであると記されています*2。
つまり水準は動いていません*2。前例を見て作る進め方は、この6年ほどで大きく変わっていないと読めます*2。
引き取りの側から見ると意味が変わります。7割強の案件には、社内のどこかに参照された前例があることになります*2。
探す先があるという点が重要です。担当者が抜けても、似た構成の別案件から読み解ける可能性が残ります。
ただし残っているかは分かりません*2。参照した前例が今も参照できる状態かを示す集計は、今回参照した資料に記載はありません*2。
3割弱は参照なしです*2。224件が、社内に似た前例を見ずに作られたことになります*2。
集計の元も書かれています*2。類似プロジェクトの参照の有無という項目から集計したとされています*2。
図表の対応も記されています*2。この図は過去のデータ白書2018の図表4-5-2に対応するとされています*2。
社内へ知識を移す進め方は別に整理されています。内製化支援をナレッジ移転と伴走で進める方法が参考になります。
次に、方法論の側を見ます*2。
開発方法論は43.9%が「なし」
本編の図A3-2-5は、開発方法論の利用を5つの区分で示しています*2。Nは738です*2。
いちばん多い区分は「なし」でした*2。324件で43.9%です*2。
使っている側の内訳も出ています*2。構造化分析設計が151件で20.5%、オブジェクト指向分析設計が131件で17.8%です*2。
続きもあります*2。データ中心アプローチが83件で11.2%、その他が49件で6.6%でした*2。
使った側を合わせると414件です*2。筆者が算出すると56.1%になります*2。
本編もそう記しています*2。開発方法論を利用した開発が6割弱を占めるとされています*2。
順序も書かれています*2。開発方法論の中では構造化分析設計が2割強で最も多く、次いでオブジェクト指向分析設計、データ中心アプローチの順であるとされています*2。
過去との比較も添えられています*2。2014年度から2019年度とほぼ同じであると記されています*2。
引き取りの側から見ると、ここが重い数字になります。4割強の案件は、型から構造を推測できないことになります*2。
ただし良し悪しは書かれていません*2。どの方法論が引き取りやすいかを示す集計は、今回参照した資料に記載はありません*2。
読めるのは分布だけです*2。方法論に依っている案件と、依っていない案件の割合です*2。
要員が足りない状態で刷新に踏み込んだ場合の集計は別にあります。レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
次に、土台の側を押さえます*2。
フレームワークは60.7%、新技術は8.6%
本編の図A3-2-6は、開発フレームワークの利用を示しています*2。有りが632件、無しが410件です*2。
Nは1,042になります*2。有りの割合は60.7%、無しは39.3%でした*2。
本編もそう記しています*2。開発フレームワークを利用したプロジェクトはおよそ6割であるとされています*2。
過去との比較も添えられています*2。2014年度から2019年度の59.7%とほぼ同様であると記されています*2。
引き取りの側から見ると、土台が共有されている案件が6割ということになります*2。フレームワークの流儀を知っていれば、読む速度が上がる可能性があります。
ただし種類は分かりません*2。どのフレームワークを使ったかを示す集計は、今回参照した資料に記載はありません*2。
新技術の側も見ます*2。図A3-2-2では、新技術を利用したものが90件で8.6%でした*2。
利用していないものは960件で91.4%です*2。Nは1,050になります*2。
本編もそう記しています*2。開発で新技術を利用したプロジェクトは1割弱であるとされています*2。
過去との比較では動いていません*2。2014年度から2019年度と同様であると記されています*2。
引き取りの側には良い材料です*2。9割強の案件は、その時点で新しくない技術で作られていることになります*2。
つまり引き取る人が新しく学ぶ範囲は、多くの案件で限られます。読む対象は既知の技術の組み合わせになります*2。
次に、パッケージと母集団の違いを押さえます*2。
業務パッケージは14.0%/図ごとにNが違う
本編の図A3-2-3は、業務パッケージ利用の有無を示しています*2。有りが194件、無しが1,188件です*2。
Nは1,382になります*2。有りの割合は14.0%、無しは86.0%でした*2。
本編もそう記しています*2。システムを開発するときに業務パッケージを利用するケースは14%であるとされています*2。
過去との比較も添えられています*2。2014年度から2019年度の15.1%とほぼ同様であると記されています*2。
ここでNの違いを並べます*2。開発方法論が738、類似プロジェクトの参照が776、開発フレームワークが1,042、新技術が1,050、業務パッケージが1,382です*2。
差は600件を超えます*2。同じ節の中でも、答えた案件の数が項目によって大きく違うことになります*2。
だから割合を横に並べて引き算しません*2。それぞれが別の母集団に対する割合だからです*2。
読み方を限定します*2。この記事では各項目の中での割合と、水準が過去とどう変わったかまでにとどめます*2。
組み合わせも読めません*2。方法論もフレームワークも使っていない案件が何件あるか、といったクロス集計は記載がありません*2。
資料は理由を説明していません*2。なぜ項目によって答えた数が違うのかは書かれていません*2。
集計の元は項目ごとに示されています*2。業務パッケージ利用の有無、新技術を利用する開発か否か、開発フレームワークの利用といった項目名が並んでいます*2。
移行そのものを外に任せる進め方は別に整理されています。システム移行・データ移行を外注する進め方をご覧ください。
次に、分母が示されていない図を押さえます*2。
作業概要は件数だけで分母が示されていない
本編の図A3-2-1は、開発プロジェクトの作業概要を示しています*2。12の作業について件数が並んでいます*2。
いちばん多いのはソフトウェア開発で1,458件でした*2。次がプロジェクト管理の931件です*2。
続きも件数で出ています*2。品質保証が641件、移行が554件、インフラ構築が308件、現地の環境構築と調整が281件です*2。
さらに小さい区分もあります*2。保守が270件、運用構築が194件、顧客教育が125件、業務支援が124件です*2。
下の2つはごく少数です*2。コンサルティングが5件、その他具体的作業が3件でした*2。
ここで注意が必要です*2。この図には件数だけが示され、分母は図にも本文にも書かれていません*2。
複数回答であることも分かります*2。集計の元が開発プロジェクトの概要1から12という12個の項目だからです*2。
だから割合は自分で計算しません*2。分母が分からない以上、件数を足しても意味のある比率になりません*2。
使えるのは本編が示した2つの割合です*2。ほとんどがソフトウェア開発を含んでおり約10割を占め、次いでプロジェクト管理を含むものが6割強あるとされています*2。
それでも件数の大小は読めます*2。プロジェクト管理が931件、品質保証が641件、移行が554件と、開発以外の作業が広く含まれている形です*2。
引き取りの側にはここが効いてきます。開発だけで範囲を切ると、管理と品質保証と移行が抜け落ちます*2。
図表の対応も記されています*2。この図は過去のデータ白書2018の図表4-2-6に対応するとされています*2。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の別の指標を扱っています。
引き取る前に見る6つ
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*2。
| 項目 | 当てはまる側 | 件数 | N | 前回値 |
|---|---|---|---|---|
| 自社内の類似プロジェクトの参照 | 71.1% | 552 | 776 | 69.4% |
| 開発フレームワークの利用 | 60.7% | 632 | 1,042 | 59.7% |
| 開発方法論の利用 | 56.1% | 414 | 738 | ほぼ同じ |
| 業務パッケージの利用 | 14.0% | 194 | 1,382 | 15.1% |
| 新技術の利用 | 8.6% | 90 | 1,050 | 同様 |
1つ目は作業を数えることです。開発のほかに管理、品質保証、移行が含まれていないかを確かめます*2。
2つ目は前例を探すことです。社内に参照された類似の案件がないかを、担当者がいるうちに聞き出します*2。
3つ目は方法論の有無です。型に依って作られているなら、その型を知る人を当てられます*2。
4つ目はフレームワークの有無です。土台が共有されていれば、読む範囲を絞れます*2。
5つ目は業務パッケージの有無です。パッケージ上なら、設定と作り込みを分けて読むことになります*2。
6つ目は新しい技術の有無です。9割強の案件では既知の技術なので、まずここを疑わない形で進められます*2。
順番にも意味があります。作業の範囲を先に決めないと、あとの5つを確かめる対象そのものがぶれます。
この6つは短い時間で埋まります。担当者に聞くか、資料の有無を見るだけで判定できる項目だからです。
逆に、これを飛ばすと範囲が動きます。開発だけを引き取ったつもりが、移行と品質保証まで付いてくる形になります*2。
実務では、聞き取りと読み込みを分けることになります。何を確かめるかの決めは社員が持ち、資料の洗い出しと一覧化は外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。引き取りの数か月だけ人を足し、範囲が固まったら戻す形にします。
最後に時点を添えておきます*1。2022年公開の資料なので、直近の相場ではなく比較の基準として使う形になります*1。
まとめ:中身を6つで押さえる
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。件数と比率は本編の図に示された値で、合計と割合の算出は図の値から筆者が行いました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、節の位置づけです。本編A3.2節は主要なプロファイル以外のその他のプロジェクトプロファイルとされ、作業概要、新技術、業務パッケージ、類似プロジェクトの参照、開発方法論、開発フレームワークの6つの図が並んでいます。第三に、参照です。自社内の類似プロジェクトを参照した案件は552件で71.1%、参照しなかったものは224件で28.9%、Nは776でした。本編は7割強と記し、前回の69.4%とほぼ同じであるとしています。第四に、方法論です。なしが324件で43.9%、構造化分析設計が151件で20.5%、オブジェクト指向分析設計が131件で17.8%、データ中心アプローチが83件で11.2%、その他が49件で6.6%、Nは738でした。使った側を合わせると414件で56.1%になり、本編も6割弱と記しています。第五に、土台です。開発フレームワークの利用は632件で60.7%、Nは1,042でした。新技術の利用は90件で8.6%、Nは1,050です。業務パッケージの利用は194件で14.0%、Nは1,382でした。第六に、Nの違いです。738から1,382まで幅があるため、項目どうしで割合を引き算していません。第七に、作業概要です。ソフトウェア開発1,458件、プロジェクト管理931件、品質保証641件、移行554件などの件数が並んでいますが、分母は図にも本文にも書かれていません。この記事では件数の大小と、本編が示した約10割と6割強という2つの割合だけを使いました。項目どうしの組み合わせや、どの方法論が引き取りやすいかも今回の内容には含まれていません。
よくある質問
類似プロジェクトを参照した案件はどれくらいありますか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の図A3-2-4では、自社内の類似プロジェクトを参照したものが552件で71.1%でした。参照しなかったものは224件で28.9%、Nは776です。本編は7割強と記し、前回の69.4%とほぼ同じとしています(確認日2026年9月4日)。
開発方法論を使っている案件はどれくらいですか。
図A3-2-5では、なしが324件で43.9%でした。使った側は構造化分析設計151件、オブジェクト指向分析設計131件、データ中心アプローチ83件、その他49件で、合わせて414件の56.1%です。Nは738で、本編も6割弱と記しています。
項目ごとの割合を並べて比べられますか。
細かい比較はできません。図ごとにNが違い、開発方法論が738、類似プロジェクトの参照が776、開発フレームワークが1,042、新技術が1,050、業務パッケージが1,382です。同じプロジェクトの集合ではないため、割合の引き算はしていません。
作業概要の割合は分かりますか。
分かりません。図A3-2-1には件数だけが示され、分母は図にも本文にも書かれていません。複数回答のため件数を足しても比率になりません。使えるのは本編が示した、ほとんどがソフトウェア開発を含み約10割、次いでプロジェクト管理が6割強という2つの割合だけです。
新しい技術を使った案件は多いのですか。
少数です。図A3-2-2では新技術を利用したものが90件で8.6%、利用していないものが960件で91.4%、Nは1,050でした。本編は1割弱と記し、2014年度から2019年度と同様であるとしています。ただし技術の種類までは示されていません。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。図A3-2-1から図A3-2-6の件数・比率・集計対象データ・A3.2節の位置づけ・IPAの記述として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。同じ図の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成と、2005年からのデータ収集の沿革の記述として(2026年9月確認)