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DXの取り組み11項目の違い、実施中は38.8%から8.6%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 実施中の上端は38.8%:経営層のコミットメントでした*1。
- 下端は8.6%:技術的負債への対応で、していないが44.9%です*1。
- 「わからない」も12.1%で上端:ほかの10項目は3.6%から6.7%でした*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、直さないまま動いていたものが表に出てきます。
回避策で動いている処理、手で直している設定、理由の書かれていない例外。どれも本人がいる間は問題になりません。
手がかりは、DXについての取り組みの状況を企業に聞いた調査です。
IPAの調査では、実施中の上端が経営層のコミットメントで38.8%、下端が技術的負債への対応で8.6%でした*1。
下端の行は形も違います*1。「していない」が44.9%、「わからない」が12.1%で、どちらも11項目の上端です*1。
目次
本人がいる間は問題にならない
引き継ぎの資料に、回避策は書かれません。書くほどのことではないと本人が思っているからです。
抜けたあと、その回避策が動かなくなって初めて存在がわかります。直し方は誰も知りません。
この後回しの形を集計した調査があります*1。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、2023年6月12日に発行されました*1。
改版も記録されています*1。2023年7月25日に一部の設問の記載が改められています*1。
調査の時期も示されています*1。2022年11月から12月にかけて実施されたものです*1。
規模も書かれています*1。調査票の配布は7,864件で、回答は1,214件でした*1。
回答者の立場も示されています*1。企業の経営層や事業部門の責任者を対象としたとされています*1。
配布先も書かれています*1。組込みやIoTに関する協会や団体に加盟している企業などに配られたとされています*1。
調査項目の狙いも示されています*1。企業活動の状況のほか、組込みやIoTの産業の動向を把握するためのものとされています*1。
今回見るのはQ13です*1。DXについての取り組みの状況を聞いた設問です*1。
ここで注意が要ります*1。この設問の集計対象は回答者の全体ではありません*1。
別の設問で、DXに取り組んでいる企業として「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られています*1。そのうえでN=854です*1。
つまり、そもそも取り組んでいないと答えた企業は入っていません*1。取り組んでいる側の中での分布として読むことになります*1。
対象の区分も書かれています*1。ユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分です*1。
11の項目と5つの状態
設問の中身を確かめます*1。Q13は11の取り組みを並べ、それぞれの状態を聞く形です*1。
状態は5つです*1。実施中、準備中、検討中、していない、わからないから1つを選びます*1。
1つを選ぶ形なので、5つを足すと全体になります*1。複数回答ではありません*1。
項目名は資料の選択肢名を使っています*1。ただし1つだけ表記を変えました*1。
実施中の上端の行です*1。選択肢名では経営の最上位を指す語が使われていますが、本記事では「経営層のコミットメント」と表記しました*1。指している内容は同じです*1。
数値の出所も断っておきます*1。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数です*1。
丸め方も書いておきます*1。各区分を小数点以下1桁に丸めたため、行の合計は99.9から100.1の幅になります*1。2つの区分を足した値は、丸める前の値から筆者が算出しました*1。
出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
利用の条件も資料に書かれています*1。政府標準利用規約に準拠する形で、出典の記載と、編集や加工を行った場合はその旨の記載が求められています*1。
「その他」の行もありますが、回答数が7しかないため扱いません*1。少ない回答数の行で割合を論じても、意味のある差にならないためです*1。
行ごとの回答数も違います*1。817から830の幅があるため、隣り合う行の差を細かく論じることはしていません*1。
実施中は38.8%から8.6%
実施中の割合で並べます*1。上端は経営層のコミットメントで38.8%、回答数は830でした*1。
2番目は社内外でのビジョン共有で33.5%です*1。3番目が経営・事業部門・IT部門が相互に協力する体制の構築で28.8%でした*1。
ここまでは決めごとに近い項目が並びます*1。号令を出す、方針をそろえる、部門をつなぐ、という順です*1。
中位も見ておきます*1。失敗から学び、継続的に挑戦する仕組みの構築が25.1%、デジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保と外部との連携に向けた取り組みがともに22.5%です*1。
そのあとが続きます*1。事業部門におけるDXを担う人材の育成・確保が21.4%、DXの取り組みの事業(現場レベル)までの落とし込みが18.3%でした*1。
下位の3つも並べます*1。既存技術への依存からの脱却が15.0%、「業務に精通した人材」と「技術に精通した人材」を融合する仕組みが14.4%、技術的負債への対応が8.6%です*1。
上端と下端の差は大きいものです*1。38.8%と8.6%なので、4倍を超えるひらきがあります*1。
並べ直すと形が見えます*1。決めごとに近い項目が上に、人と過去の作りに関わる項目が下に来ています*1。
ただし、なぜそうなるかは資料に書かれていません*1。理由を尋ねた設問ではないため、因果については書けません*1。
過去の作りを外に出して直す進め方は、技術的負債の解消を外注で進めるで扱っています。
並べ方を変えると順位が入れ替わる
実施中に準備中を足して並べ直します*1。上端は経営層のコミットメントで47.3%のままです*1。
2番目と3番目は同じ値になります*1。社内外でのビジョン共有と、経営・事業部門・IT部門が相互に協力する体制の構築がともに42.6%でした*1。
実施中だけで見ると、この2つは33.5%と28.8%で5ポイント近く離れています*1。準備中を足すと差が消えます*1。
4番目と5番目も入れ替わります*1。デジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保が37.0%で4番目、失敗から学び、継続的に挑戦する仕組みの構築が35.0%で5番目です*1。
実施中では逆の順でした*1。失敗から学ぶ仕組みが25.1%で4番目、人材の育成・確保が22.5%で5番目です*1。
つまり、どこまでを進んでいると数えるかで順位が変わります*1。実施中だけを見るか、準備中まで含めるかで並びが違ってきます*1。
ですから中位の順位は、差がついたものとしては扱えません*1。
一方で、変わらないところもあります*1。どちらの並べ方でも下端は技術的負債への対応でした*1。実施中で8.6%、実施中と準備中を足して18.1%です*1。
2番目に低い行との差も見ておきます*1。融合する仕組みは実施中14.4%、足して24.9%でした*1。
この2つは、どちらも人と過去の作りに関わる項目です*1。決めごとの側とは違う位置に来ています*1。
下端の1行だけ形が違う
技術的負債への対応の行を、5つの状態で見ます*1。実施中が8.6%、準備中が9.5%、検討中が24.8%です*1。
「していない」が44.9%でした*1。11項目の上端で、次に高い融合する仕組みの37.4%より高い値です*1。
「わからない」も12.1%です*1。これも11項目の上端でした*1。
ほかの行と比べると幅が違います*1。残る10項目の「わからない」は3.6%から6.7%の範囲に収まっています*1。
つまり、手をつけていない企業が多いだけではありません*1。自社がどの状態にあるかを答えられない回答も、この行では多く出ています*1。
下から3行も見ておきます*1。既存技術への依存からの脱却が実施中15.0%、融合する仕組みが14.4%、技術的負債への対応が8.6%です*1。
「していない」もそれぞれ30.2%、37.4%、44.9%でした*1。下に行くほど手をつけていない側が厚くなっています*1。
引き継ぎの話に引き寄せると、この3行が担当者の離脱で表に出る側に当たります。決めごとは資料に残りますが、直していない箇所は本人の頭にしか残りません。
内製で抱えたまま進んだ場合に起きることは、システム内製化の失敗事例と回避策で整理しています。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、集計対象が絞られています*1。DXに取り組んでいると答えた企業だけが対象で、取り組んでいない企業は含まれません*1。
第二に、取り組みの中身がわかりません*1。実施中と答えた企業が何をしているかは示されていません*1。
第三に、程度の基準が示されていません*1。どこから実施中と答えるかは回答者の判断に任されています*1。ですから進み具合の比較はしていません*1。
第四に、していない理由がありません*1。なぜ手をつけていないのかを尋ねた設問ではないため、因果については書いていません*1。
第五に、結果も含まれません*1。実施した取り組みが何をもたらしたかを評価した集計ではありません*1。
第六に、11項目どうしのクロス集計がありません*1。どの取り組みとどの取り組みが一緒に進むのかは読めません*1。
第七に、行ごとに回答数が違います*1。817から830の幅があり、設問のN=854とも一致しません*1。
第八に、範囲があります*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野や、それより後の傾向は読めません*1。
なお、人材の確保そのものについての課題は、同じ調査の別の設問で聞かれています*1。この記事では扱う範囲を分けました*1。
この設問には位置づけ別、従業員数別、製品・サービスの提供先別、設立年別の集計も載っています*1。この記事では扱いませんでした*1。
抜けたあとに残るものを減らす4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 項目 | 実施中 | 実施中+準備中 | していない | わからない |
|---|---|---|---|---|
| 経営層のコミットメント | 38.8% | 47.3% | 28.9% | 3.9% |
| 社内外でのビジョン共有 | 33.5% | 42.6% | 31.6% | 3.6% |
| 経営・事業部門・IT部門が相互に協力する体制の構築 | 28.8% | 42.6% | 27.7% | 3.7% |
| 失敗から学び、継続的に挑戦する仕組みの構築 | 25.1% | 35.0% | 34.7% | 5.0% |
| デジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保 | 22.5% | 37.0% | 28.0% | 3.7% |
| 外部との連携に向けた取り組み | 22.5% | 33.1% | 32.3% | 5.8% |
| 事業部門におけるDXを担う人材の育成・確保 | 21.4% | 34.4% | 33.2% | 3.7% |
| DXの取り組みの事業(現場レベル)までの落とし込み | 18.3% | 32.9% | 34.2% | 4.8% |
| 既存技術への依存からの脱却 | 15.0% | 28.3% | 30.2% | 6.7% |
| 「業務に精通した人材」と「技術に精通した人材」を融合する仕組み | 14.4% | 24.9% | 37.4% | 5.2% |
| 技術的負債への対応 | 8.6% | 18.1% | 44.9% | 12.1% |
1段目は、直さないまま動いている箇所を書き出すことです。担当者ごとの記憶ではなく、1枚の一覧にします。
2段目は、直す順を並べることです。止まったときにどこまで影響するかで順位をつけます。
3段目は、分けることです。判断が要るものと、手が要るものを一覧の上で切り分けます。
4段目は、手が要る側を期間を区切って外へ出すことです。作業量が読める部分から動かします。
1段目を先に置く理由は、分布に出ています*1。この行は「わからない」が12.1%で11項目の上端でした*1。状態を数えるところから始まる、ということです*1。
担当者が抜けたあとに表に出るのも、たいていこの書き出しがされていない箇所です。本人の頭の中にしかなかったためです。
順番を逆にすると止まります。直す作業から先に始めると、どこまでやれば終わりかが決まりません。
3段目で分けるのは、判断まで外に出すと次に同じことが起きるからです。何を残して何を捨てるかの決めは社内に置きます。
フリーランスを含む業務委託は、4段目と相性があります。書き出しと順位づけが済んでいれば、範囲を区切って渡せるためです。
逆に、1段目が済んでいない状態で外に出すと、調べる作業から始まって見積もりが立ちません。
古い仕組みを抱えたまま人が足りなくなる場面は、レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。
社内で担う人を採る側の準備は、DX人材の採用、募集の前に決めておくことで整理しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野やそれより後の傾向は読めません*1。
まとめ:書き出しから始める
第一に、資料です。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は2023年6月12日に発行され、2023年7月25日に一部が改版されています。調査期間は2022年11月から12月で、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件でした。回答者は企業の経営層や事業部門の責任者です。第二に、集計対象です。Q13は回答者の全体ではなく、別の設問でDXに取り組んでいると答えた企業に絞られており、N=854でした。取り組んでいないと答えた企業は含まれません。第三に、設問です。11の取り組みそれぞれについて、実施中、準備中、検討中、していない、わからないから1つを選ぶ形です。第四に、数値の扱いです。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数です。各区分を小数点以下1桁に丸めたため行の合計は99.9から100.1の幅になり、2区分を足した値は丸める前の値から筆者が算出しました。第五に、実施中の並びです。上端は経営層のコミットメントで38.8%、次が社内外でのビジョン共有で33.5%、3番目が経営・事業部門・IT部門が相互に協力する体制の構築で28.8%でした。第六に、下端です。技術的負債への対応が8.6%で、上端との差は4倍を超えます。第七に、並べ方です。実施中に準備中を足すと、2番目と3番目がともに42.6%で並び、4番目と5番目も入れ替わります。どこまでを進んでいると数えるかで順位が変わるため、中位は差がついたものとしては扱えません。第八に、下端の形です。技術的負債への対応は「していない」が44.9%、「わからない」が12.1%で、どちらも11項目の上端でした。ほかの10項目の「わからない」は3.6%から6.7%です。第九に、限界です。取り組みの中身も、していない理由も、その結果も含まれず、行ごとの回答数も817から830の幅があります。
よくある質問
DXの取り組みで実施中が多いのはどれですか。
IPAの2022年度組込み/IoTに関する動向調査のQ13では、経営層のコミットメントが38.8%で上端でした。次が社内外でのビジョン共有の33.5%、3番目が経営・事業部門・IT部門が相互に協力する体制の構築の28.8%です。Nは854でした(確認日2026年9月4日)。
いちばん進んでいない取り組みは何ですか。
技術的負債への対応で、実施中は8.6%でした。「していない」が44.9%、「わからない」が12.1%で、どちらも11項目の上端です。ほかの10項目の「わからない」は3.6%から6.7%の範囲なので、この行だけ形が違います。
この数字は企業全体の割合ですか。
違います。Q13の集計対象は回答者の全体ではなく、別の設問でDXに取り組んでいる企業として「非常に活発」「活発」「あまり活発ではない」と答えた企業に絞られています。取り組んでいないと答えた企業は含まれていません。
順位はどれくらい確かなものですか。
中位は確かとは言えません。実施中に準備中を足すと、社内外でのビジョン共有と相互に協力する体制の構築がともに42.6%で並び、4番目と5番目も入れ替わります。どこまでを進んでいると数えるかで順位が変わるためです。
この調査から取り組みの中身はわかりますか。
わかりません。実施中と答えた企業が何をしているかも、していない理由も、その結果も含まれていません。どこから実施中と答えるかの基準も示されていないため、進み具合の比較もできない内容です。
出典
- *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。発行日・改版日・調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(PowerPoint)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pptx)。Q13の比率・回答数のデータ値の一次情報として。収録された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。Q13の設問文・集計対象の絞り込み条件・N・5つの状態の選択肢・利用ルールの一次情報として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。Q13の11の項目の並びと選択肢の確認として(2026年9月確認)