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FP生産性とは、規模が大きいほど中央値が下がる指標
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 中央値は人月あたり15.07FP:新規開発の全年度でN=672です*1。
- 規模帯が上がるほど下がる:17.00から10.07まで単調に下がります*1。
- ばらつきは逆に広がる:標準偏差は19.95から35.71へ上がります*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
遅れたぶんを人数で埋める計算は、たいてい合いません。
残りの量を人数で割ると期間が出る、という形にしたいのですが、その割り算に入れる生産性の数字が社内にないからです。
手がかりは、開発プロジェクトの実績を集めた統計です。
IPAの資料では、新規開発のFP生産性の中央値が人月あたり15.07FPでした*1。N=672です*1。
ただし規模帯で分けると下がります*1。400FP未満の17.00から、3,000FP以上の10.07まで、順に低くなっていました*1。
目次
割り算に入れる数字がない
遅れの立て直しは、残りの量を数えるところから始まります。そこまでは社内でできます。
止まるのは次です。1人が1か月でどれだけ進むかを置かないと、何人を何か月足せばよいかが出ません。過去の案件ごとに条件が違うため、社内の平均も当てになりません。
この数字を集めた統計があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」です*1。
今回見るのは表A2-2-4です*1。FP規模別のFP生産性を、新規開発について集計したものです*1。
全年度のデータをまとめた集計です*1。件数はN=672でした*1。
資料に定義も書かれています*1。FP生産性は、FP規模を開発5工程の工数で除算したものとされています*1。
単位は2つあります*1。人時あたりのFP規模と、人月あたりのFP規模です*1。
換算の仕方も示されています*1。人時から人月への変換は、1人月=160時間を代用しているとされています*1。
この記事では、主に人月あたりの側で読みます*1。増員の話につながる単位だからです。
節の位置づけも書かれています*1。A2.2節はFP生産性についての分析結果を示す節とされています*1。
資料は対で見ることも勧めています*1。同じ対象データでのFP規模と工数の関係が別の節にあり、合わせて確認するとよいとされています*1。
出典はIPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
規模帯どうしの比較と差の算出も筆者が行っています*1。値そのものは資料に示されたものです*1。
どの案件が集計に入っているか
使う前に、母集団を確かめます*1。資料には層別定義が書かれています*1。
4つの条件が並んでいます*1。開発5工程がそろっているもの、開発プロジェクトの種別が新規開発、FP計測手法が明確なもの、FP実績値が0より大きいものです*1。
ここが重要になります*1。FPを計測していない案件は、そもそも母集団に入っていません*1。
工程の条件もかかります*1。5工程がそろっていない案件も外れています*1。
つまり、記録が整っている案件の分布として読むことになります*1。自社の全案件と同じ性質とは限りません*1。
種別も1つに絞られています*1。この表は新規開発だけを対象にしています*1。
ほかの種別も同じ節にありますが、件数が違います*1。改良開発はN=35、再開発はN=8でした*1。
再開発の表は、規模帯に分けるとほとんどの欄が空欄になっています*1。この記事では扱いません*1。
資料自身も断っています*1。改良開発の表にも再開発の表にも「データ数が少ない」と記されています*1。
年度を絞った表もあります*1。新規開発をある年度の範囲で集計したものでN=46です*1。
そちらについては資料自身が断っています*1。生産性の数値が上下しているが件数が少ないので言及しない、と書かれています*1。ですからこの記事でも踏み込みません*1。
見積もりの技法そのものを外に出す進め方は、工数見積り技法を外注で精度向上で扱っています。
全体は中央15.07、下端0.84から上端322.65
全体の分布から見ます*1。人月あたりのFPで、中央値は15.07でした*1。
四分位も出ています*1。P25が8.54、P75が29.74です*1。
両端は大きく離れます*1。下端が0.84、上端が322.65でした*1。
標準偏差も添えられています*1。25.13です*1。
平均も見ておきます*1。23.07で、中央値の15.07より高い値です*1。
上に長い分布だということです*1。少数の高い案件が平均を押し上げる形になります*1。
ですから掛け算の前提には中央値を置きます*1。平均を使うと、多くの案件より速い前提になります*1。
人時あたりの側も出しておきます*1。中央値が0.094、P25が0.053、P75が0.186、平均が0.144でした*1。
資料も全体について記しています*1。中央値は0.09FP/人時で、平均値は0.14FP/人時であるとされています*1。
この幅が、割り算をひとつの数字で済ませられない理由になります*1。P25とP75だけで3倍以上ひらいています*1。
人時あたりの両端も出しておきます*1。下端が0.005、上端が2.017、標準偏差が0.157でした*1。
人時あたりの標準偏差は0.157です*1。中央値0.094より大きい値になっています*1。
本記事では「下端」「上端」と呼びますが、資料では分布の両端を示す別の欄名になっています*1。値そのものは資料のものです*1。
規模帯が上がるほど中央値が下がる
次に規模帯で分けます*1。資料は400FP未満、400FP以上1,000FP未満、1,000FP以上3,000FP未満、3,000FP以上の4つに分けています*1。
件数も示されています*1。それぞれ166、221、201、84でした*1。
足すと672になります*1。全体のNと一致します*1。
件数がいちばん多いのは400FP以上1,000FP未満の帯でした*1。221件で、全体の3分の1ほどを占めます*1。
いちばん少ないのは3,000FP以上の帯です*1。84件でした*1。
中央値を並べます*1。17.00、15.80、14.25、10.07です*1。
規模帯が上がるほど下がっています*1。4つとも順序が崩れていません*1。
上端の帯と下端の帯の差も出しておきます*1。17.00と10.07なので、6.93ポイントの差です*1。
P25も同じ向きです*1。11.23、9.69、7.16、5.76と、こちらも単調に下がります*1。
人時あたりで見ても同じです*1。中央値は0.106、0.099、0.089、0.063でした*1。
ここまでは素直な形です*1。大きい案件ほど、真ん中あたりの案件の進みが遅いという分布になります*1。
ただし理由は書かれていません*1。なぜ下がるのかを分析した表ではないため、因果については書けません*1。
平均も並べておきます*1。24.51、23.45、23.87、17.29でした*1。
平均のほうは単調ではありません*1。3つ目の帯で少し上がってから、いちばん大きい帯で下がる形です*1。
P75は単調ではない
ところがP75は形が違います*1。31.19、28.62、32.36、17.80と並びます*1。
3番目で上がっています*1。1,000FP以上3,000FP未満の帯だけ、ひとつ前の帯より高い値です*1。
人時あたりでも同じ形です*1。P75は0.195、0.179、0.202、0.111でした*1。
つまり上位4分の1の側は、規模が上がっても下がり続けてはいません*1。
標準偏差も見ておきます*1。19.95、21.76、26.92、35.71と、こちらは単調に上がります*1。
上端の値も並べます*1。105.29、162.51、255.43、322.65でした*1。
下端は逆に順序がありません*1。1.98、2.30、0.84、1.89で、1,000FP以上3,000FP未満の帯がいちばん低い値です*1。
人時あたりの両端も添えます*1。下端は0.012、0.014、0.005、0.012で、上端は0.658、1.016、1.596、2.017でした*1。
上端だけは規模帯とともに上がっています*1。ただし1件の値なので、水準としては扱えません*1。
3,000FP以上の帯を人時あたりで並べておきます*1。P25が0.036、中央が0.063、P75が0.111、平均が0.108、標準偏差が0.223でした*1。
まとめると、規模帯が上がるほど真ん中は下がり、幅は広がるという形になります*1。
「大きい案件は生産性が低い」という言い方は、この分布とは合いません*1。低い側に寄りつつ、高い案件も残っているためです*1。
ですから規模帯ごとに1つの数字を当てても、幅の分だけ外れます*1。3,000FP以上ではP25が5.76、P75が17.80で3倍以上の差があります*1。
複数の見積もりを並べて確かめる進め方は、システム開発の相見積もりの取り方で整理しています。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、母集団が限られています*1。FPを計測していない案件も、開発5工程がそろっていない案件も入っていません*1。
第二に、種別が1つです*1。この表は新規開発だけで、改良開発や再開発は別の表になります*1。
第三に、理由がありません*1。生産性が低い案件と高い案件で何が違うのかを分析した表ではないため、因果については書いていません*1。
第四に、掛け合わせがありません*1。業種や言語や体制との組み合わせは、この表には示されていません*1。
第五に、年ごとの動きが読めません*1。全年度をまとめた集計だからです*1。
第六に、年度を絞った表には踏み込めません*1。資料が件数の少なさを理由に言及しないと書いているためです*1。
第七に、規模の単位が限られます*1。FPで測っていない現場では、そのままの数字を当てはめられません*1。
第八に、品質は含まれません*1。速く作れたかどうかであって、あとの不具合の量は別の集計になります*1。
なお、同じ節には規模と工数の関係を示す表や、規模あたりの設計書ページ数の表もあります*1。この記事では扱いませんでした*1。
遅れを人数で埋める前に置く4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| FP規模 | N | P25 | 中央 | P75 | 標準偏差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全体 | 672 | 8.54 | 15.07 | 29.74 | 25.13 |
| 400FP未満 | 166 | 11.23 | 17.00 | 31.19 | 19.95 |
| 400FP以上1,000FP未満 | 221 | 9.69 | 15.80 | 28.62 | 21.76 |
| 1,000FP以上3,000FP未満 | 201 | 7.16 | 14.25 | 32.36 | 26.92 |
| 3,000FP以上 | 84 | 5.76 | 10.07 | 17.80 | 35.71 |
1段目は、残っている量を規模の単位で数えることです。画面数でも機能数でも、社内で数えられる単位にそろえます。
2段目は、自社の実績から中央値を出すことです。平均ではなく中央値にします。
3段目は、P25とP75の幅を添えて期間の幅を出すことです。1つの日付ではなく、早い側と遅い側の2つを出します。
4段目は、幅の広い側でも収まる形に体制を組むことです。遅い側に振れたときに、人を足せる余地を先に確保します。
2段目で平均を避けるのは、分布が上に長いからです*1。全体でも中央15.07に対し平均23.07、3,000FP以上では中央10.07に対し平均17.29でした*1。
3段目で幅を出すのは、規模帯を絞っても幅が残るからです*1。3,000FP以上でもP25が5.76、P75が17.80です*1。
4段目が体制の話になります。遅い側に振れたときに人を足せなければ、幅を出した意味がありません。
実務では、社員の増員だけで幅を吸収するのは難しくなります。採用には時間がかかり、案件が終われば余ります。
フリーランスを含む業務委託は、この幅と相性があります。遅い側に振れた月だけ人数を足し、片づいたら戻せるためです。
逆に、判断まで外に出すと幅の管理そのものができなくなります。どこまで進んだかの見立ては社内に残します。
枠に何人を置くかは、要員の計画から決めます。要員計画に必要な4つの数字と決める順番で手順を出しています。
体制の中で外部が占める比率の分布は、外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で扱っています。
最後に範囲を添えておきます*1。この集計はFPで測られた新規開発の案件が対象で、記録の条件を満たしたものに限られます*1。自社の案件がこの母集団と同じ性質かどうかは、別に確かめることになります*1。
まとめ:中央値に幅を添えて置く
第一に、資料です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」の表A2-2-4を見ました。新規開発のFP生産性を、全年度のデータで集計したもので、N=672です。第二に、定義です。資料ではFP生産性をFP規模を開発5工程の工数で除算したものとしており、人時あたりのFP規模、または人月あたりのFP規模で示されています。人時から人月への変換は1人月=160時間を代用しています。第三に、母集団です。層別定義は開発5工程がそろっているもの、新規開発、FP計測手法が明確なもの、FP実績値が0より大きいものの4つで、FPを計測していない案件は入っていません。第四に、全体の分布です。人月あたりの中央値は15.07、P25が8.54、P75が29.74、下端が0.84、上端が322.65、標準偏差が25.13でした。平均は23.07で中央値より高く、上に長い分布です。第五に、規模帯です。400FP未満、400FP以上1,000FP未満、1,000FP以上3,000FP未満、3,000FP以上の4つで、件数はそれぞれ166、221、201、84でした。足すと672で全体と一致します。第六に、中央値の並びです。17.00、15.80、14.25、10.07と、規模帯が上がるほど下がります。P25も11.23、9.69、7.16、5.76と単調に下がりました。第七に、P75です。31.19、28.62、32.36、17.80で、1,000FP以上3,000FP未満だけ上がります。標準偏差は19.95、21.76、26.92、35.71と単調に上がりました。第八に、読み方です。規模帯が上がるほど真ん中は下がり、幅は広がる形なので、規模帯ごとに1つの数字を当てても幅の分だけ外れます。第九に、限界です。理由も、業種や言語との掛け合わせも、年ごとの動きも、品質もこの表には含まれていません。
よくある質問
FP生産性とは何ですか。
IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」では、FP規模を開発5工程の工数で除算したものと定義されています。人時あたりのFP規模、または人月あたりのFP規模で示され、人時から人月への変換は1人月=160時間を代用しています(確認日2026年9月4日)。
中央値はどのくらいですか。
新規開発の全年度の集計では、人月あたり15.07FPでした。N=672で、P25が8.54、P75が29.74です。人時あたりでは中央0.094、P25が0.053、P75が0.186でした。資料は全体について中央0.09FP/人時、平均0.14FP/人時と記しています。
規模が大きいと生産性は下がるのですか。
中央値とP25は下がります。中央値は400FP未満17.00、400FP以上1,000FP未満15.80、1,000FP以上3,000FP未満14.25、3,000FP以上10.07です。ただしP75は31.19、28.62、32.36、17.80で単調ではありません。標準偏差は単調に上がるため、真ん中は下がり幅は広がる形になります。
平均と中央値のどちらを使えばよいですか。
この分布では中央値です。全体で中央15.07に対し平均23.07、3,000FP以上では中央10.07に対し平均17.29と、平均が高く出ます。上に長い分布のため、平均を掛け算に使うと多くの案件より速い前提になります。
この数字をそのまま自社に当てはめられますか。
そのままは当てはめられません。集計はFP計測手法が明確でFP実績値が0より大きく、開発5工程がそろった新規開発に限られています。業種や言語との掛け合わせも、生産性が上下する理由も、品質も含まれていません。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。資料の公開ページ。収録範囲の確認として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。表A2-2-4のN・分位点・標準偏差、A2.2節のFP生産性の定義、層別定義、年度を絞った表についてのIPAの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。同じ図表の値の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の確認として(2026年9月確認)