LASSIC Media らしくメディア
ノウハウの蓄積・共有が87.4%、立場を分けても同じ水準
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- ノウハウの蓄積・共有は87.4%:10項目のうち4番目に高い値でした*1。
- 立場を分けても84.1〜89.9%:4つの区分で幅は5.8ポイントです*1。
- 「やや当てはまる」が46.7%:上位4項目でこの形はこの行だけでした*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、その人しか知らなかったことが次々と出てきます。
設定の理由、過去に踏んだ不具合、取引先ごとの決まりごと。どれも書かれていません。
手がかりは、現在の事業における課題を企業に聞いた調査です。
IPAの調査では、知識・ノウハウの蓄積・共有を課題とする企業が87.4%でした*1。10項目のうち4番目に高い値です*1。
しかも立場を問いません*1。企業の位置づけを4つに分けても84.1%から89.9%の間に収まっていました*1。
目次
抜けたあとに出てくるものが多すぎる
引き継ぎは、資料を渡して終わりにはなりません。渡すものが用意されていないからです。
手順書はあっても、なぜその手順なのかが書かれていない。過去の判断の理由が誰の頭にも残っていない。抜けてから、そのことに気づきます。
この状態を数えた調査があります*1。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、2023年6月12日に発行されました*1。
改版も記録されています*1。2023年7月25日に一部の設問の記載が改められています*1。
調査の時期も示されています*1。2022年11月から12月にかけて実施されたものです*1。
規模も書かれています*1。調査票の配布は7,864件で、回答は1,214件でした*1。
回答者の立場も示されています*1。企業の経営層や事業部門の責任者を対象としたとされています*1。
配布先も書かれています*1。組込みやIoTに関する協会や団体に加盟している企業などに配られたとされています*1。
調査項目の狙いも示されています*1。企業活動の状況のほか、組込みやIoTの産業の動向を把握するためのものとされています*1。
今回見るのはQ5です*1。現在の事業における課題について聞いた設問で、N=1,180でした*1。
設問の置かれ方も見ておきます*1。Q5は資料の中で「事業環境の変化」を扱う章の先頭に置かれています*1。
集計対象も設問ごとに書かれています*1。Q5の全体はユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業、その他の5区分が対象です*1。
回答の形も確かめておきます*1。10の項目それぞれについて、当てはまる、やや当てはまる、あまり当てはまらない、当てはまらない、どちらともいえないの5段階から選びます*1。
この記事では上の2段階を足して見ます*1。つまり「当てはまる」と「やや当てはまる」を合わせた割合です*1。
数値の出所も断っておきます*1。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数に丸められています*1。上位2区分の合計はそのデータ値から筆者が算出し、小数点以下1桁で示しました*1。
出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」です*1。示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました*1。
利用の条件も資料に書かれています*1。政府標準利用規約に準拠する形で、出典の記載と、編集や加工を行った場合はその旨の記載が求められています*1。
10項目のうち4番目が87.4%
全体の分布から見ます*1。首位は人材の確保・強化で92.5%、次が収益性の向上で92.1%でした*1。
3番目が製品・サービス・技術の確保・強化です*1。89.2%で、回答数は1,131でした*1。
そして4番目が知識・ノウハウの蓄積・共有でした*1。87.4%で、回答数は1,119です*1。
ここから下は水準が変わります*1。5番目の市場動向の取得が68.1%で、上の4つとは19ポイント以上離れています*1。
後半も並べておきます*1。コーポレート・ガバナンスの強化が50.1%、資金の確保が49.5%、設備の更新・拡張が48.8%です*1。
下端も見ておきます*1。サプライチェーンの再構築が35.4%、許認可等に係る規制・制度の緩和が23.1%でした*1。
「その他」の行もありますが、回答数が48しかないため扱いません*1。少ない回答数の行で割合を論じても、意味のある差にならないためです*1。
なお、人材の確保・強化については、その中でどこが難しいかを聞いた別の設問が同じ調査にあります*1。この記事では扱う範囲を分け、Q5の並びの中の1行として置くにとどめました*1。
ここで内訳を見ると、知識・ノウハウの蓄積・共有は形が違っています*1。当てはまるが40.7%、やや当てはまるが46.7%です*1。
上位4項目の中で、やや当てはまるのほうが多いのはこの行だけでした*1。ほかの3つは当てはまるが50.4%から68.0%を占めています*1。
下側も出しておきます*1。あまり当てはまらないが9.0%、当てはまらないが2.0%、どちらともいえないが1.6%でした*1。
否定の側は薄い形です*1。当てはまらないと答えた企業は50社に1社ほどにとどまります*1。
つまり今すぐ困っているというより、抱えたまま進んでいる形で答えられていると読めます*1。担当者が抜けたときに表に出てくる種類の課題です。
立場を分けても84.1%から89.9%
この設問には位置づけ別の集計も載っています*1。ユーザー企業、メーカー企業、サブシステム提供企業、サービス提供企業の4区分です*1。
区分の中身も資料に定義があります*1。組込みやIoTの製品を利用して調達する側、製品を開発して提供する側、部品やサブシステムを提供する側、受託開発や教育研修や運用などのサービスを提供する側です*1。
知識・ノウハウの蓄積・共有を、その4つで見ます*1。ユーザー企業が89.9%、メーカー企業が89.3%、サブシステム提供企業が84.1%、サービス提供企業が87.1%でした*1。
回答数も添えておきます*1。この行はそれぞれ296、253、176、356です*1。
幅は5.8ポイントです*1。上端と下端の差で、10項目の中では小さいほうに入ります*1。
ここで注意が要ります*1。4つの区分は別々の企業の集まりです*1。同じ企業を追いかけた集計ではありません*1。
集計対象の範囲も違います*1。全体の集計は「その他」を含む5区分ですが、位置づけ別は「その他」を含まない4区分です*1。
区分ごとの規模も見ておきます*1。人材の確保・強化の行で見ると、回答数は305、256、181、370でした*1。サブシステム提供企業がいちばん小さい区分です*1。
実際、位置づけ別の4区分の回答数を足すと、行ごとに全体の回答数より36から38少なくなります*1。全体には「その他」が含まれるためと読めます*1。
それでも、この幅の小ささには意味があります。作る側でも使う側でも、部品を出す側でもサービスを出す側でも、同じくらいの割合で課題になっているということです*1。
自社の業態が特殊だから起きている、という説明が成り立ちにくい形です*1。
下端に来たサブシステム提供企業も、水準としては8割台です*1。あまり当てはまらないと答えた割合が13.6%で、4区分の中では高いほうでした*1。
記録を残す仕組みそのものを外に出す進め方は、社内ナレッジベースシステムの外注の進め方で扱っています。
分かれる項目と、分かれない項目
10の項目を、4つの位置づけの幅で並べ直します*1。
幅が小さいのは上位の項目でした*1。人材の確保・強化が2.9ポイント、収益性の向上が4.0ポイント、知識・ノウハウの蓄積・共有が5.8ポイント、製品・サービス・技術の確保・強化が8.4ポイントです*1。
つまり上位4項目は、どの立場でも8割台から9割台に収まります*1。
下のほうは形が違います*1。設備の更新・拡張が26.7ポイントで上端、サプライチェーンの再構築が25.1ポイント、コーポレート・ガバナンスの強化が17.0ポイントと続きます*1。
中身も見ておきます*1。設備の更新・拡張はユーザー企業で63.4%、サービス提供企業で36.7%でした*1。
サプライチェーンの再構築も同じ形です*1。メーカー企業が48.6%で上端、サービス提供企業が23.5%で下端です*1。
この2つは持っているものが違えば当然変わる項目です*1。設備を持つ側と持たない側、部材を調達する側とそうでない側で分かれます*1。
残りの項目の幅も出しておきます*1。資金の確保が10.8ポイント、市場動向の取得が10.6ポイント、許認可等に係る規制・制度の緩和が7.3ポイントでした*1。
下端の項目も確かめておきます*1。許認可等に係る規制・制度の緩和は4区分で19.4%から26.7%にとどまり、どの立場でも上位には来ません*1。
並べ方を変えると、上位に来る項目ほど立場で分かれにくい、という形が見えます*1。ただしこれは10項目の並びから読める範囲で、なぜそうなるかは資料に書かれていません*1。
内製へ戻す場面での知識の受け渡しは、内製化支援をナレッジ移転と伴走で進める方法で整理しています。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、対処の有無ではありません*1。課題として当てはまるかを聞いた設問なので、何かをしたかどうかは含まれません*1。
第二に、理由がありません*1。なぜ課題になっているのかを尋ねた設問ではないため、因果については書いていません*1。
第三に、程度の基準が示されていません*1。当てはまるとやや当てはまるを分ける線は回答者の判断に任されています*1。ですから深刻さの比較はしていません*1。
第四に、行ごとに回答数が違います*1。全体の集計では1,080から1,150の幅があり、設問のN=1,180とも一致しません*1。
第五に、項目は排他ではありません*1。10それぞれに当てはまるかを答える形なので、足しても100%にはなりません*1。
第六に、4つの位置づけは別々の企業です*1。同じ企業の変化ではないため、業態が変わると課題も変わる、とは書けません*1。
第七に、範囲があります*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野や、それより後の傾向は読めません*1。
第八に、回答しなかった企業の状況は含まれません*1。配布7,864件に対し回答は1,214件です*1。
なお、この設問には従業員数別と、製品・サービスの提供先別の集計も載っています*1。この記事では扱いませんでした*1。
引き継ぎを止めない4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 項目 | 全体 | ユーザー | メーカー | サブシステム | サービス |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材の確保・強化 | 92.5% | 93.1% | 91.4% | 92.8% | 94.3% |
| 収益性の向上 | 92.1% | 93.7% | 93.0% | 89.7% | 92.6% |
| 製品・サービス・技術の確保・強化 | 89.2% | 88.9% | 94.6% | 89.9% | 86.2% |
| 知識・ノウハウの蓄積・共有 | 87.4% | 89.9% | 89.3% | 84.1% | 87.1% |
| 市場動向の取得 | 68.1% | 70.2% | 73.7% | 69.2% | 63.1% |
| コーポレート・ガバナンスの強化 | 50.1% | 59.5% | 50.2% | 52.6% | 42.5% |
| 資金の確保 | 49.5% | 55.0% | 52.6% | 49.1% | 44.2% |
| 設備の更新・拡張 | 48.8% | 63.4% | 52.6% | 45.3% | 36.7% |
| サプライチェーンの再構築 | 35.4% | 39.6% | 48.6% | 34.3% | 23.5% |
| 許認可等に係る規制・制度の緩和 | 23.1% | 26.6% | 26.7% | 20.5% | 19.4% |
1段目は、抜けたあと止まる作業を書き出すことです。担当者が持っていた作業ではなく、止まっている作業から数えます。
2段目は、分けることです。判断が要るものと、手が要るものを一覧の上で切り分けます。
3段目は、手が要る側を先に外へ出すことです。手順が決まっていて量がある作業から渡します。
4段目は、出した作業の記録を残す形にしておくことです。外に出した分だけ、書かれた手順が増えます。
この順番にする理由は、蓄積そのものを目的にすると動かないからです。分布でも、当てはまるより、やや当てはまるのほうが多い形でした*1。急ぎではないと判断されやすい種類の課題です。
作業を外に出すと、渡すために説明が要ります。その説明を書いたものが、そのまま記録になります。
逆に、判断まで外に出すと記録は残りません。決めた理由が社外に移るためです。
ですから判断は社内に置き、手が要る作業を外に出します。フリーランスを含む業務委託は、この切り分けと相性があります。期間を区切って人を足し、渡した範囲だけを受け持ってもらう形にできるためです。
離脱そのものを減らす話は別の軸になります。入社後の立ち上がりについては、なぜ中途エンジニアは早期に離職するのかで扱っています。
外に出す量の目安は、体制の中の比率から考えます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で分布を出しています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は組込みやIoTの分野が対象で、2022年11月から12月に実施されたものです*1。ほかの分野やそれより後の傾向は読めません*1。
まとめ:手が要る作業から外に出す
第一に、資料です。IPAの「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」は2023年6月12日に発行され、2023年7月25日に一部が改版されています。調査期間は2022年11月から12月で、調査票の配布は7,864件、回答は1,214件でした。回答者は企業の経営層や事業部門の責任者です。第二に、設問です。Q5は現在の事業における課題として10の項目を並べ、それぞれ当てはまるかを5段階で聞いています。N=1,180で、全体の集計対象は「その他」を含む5区分、位置づけ別は「その他」を含まない4区分でした。第三に、数値の扱いです。比率はPowerPoint版の資料に収録されたグラフのデータ値で、図中の表示は整数に丸められています。上位2区分の合計はそのデータ値から筆者が算出しました。出典はIPA「2022年度組込み/IoTに関する動向調査」で、示された値を用いて図と表を作成する編集と加工を筆者が行いました。第四に、全体の分布です。人材の確保・強化が92.5%、収益性の向上が92.1%、製品・サービス・技術の確保・強化が89.2%と並び、知識・ノウハウの蓄積・共有が87.4%で4番目でした。回答数は1,119です。第五に、内訳です。知識・ノウハウの蓄積・共有は当てはまるが40.7%、やや当てはまるが46.7%で、上位4項目のうちやや当てはまるのほうが多いのはこの行だけでした。第六に、位置づけ別です。ユーザー企業が89.9%、メーカー企業が89.3%、サブシステム提供企業が84.1%、サービス提供企業が87.1%で、幅は5.8ポイントでした。第七に、分かれる項目です。設備の更新・拡張は26.7ポイント、サプライチェーンの再構築は25.1ポイント、コーポレート・ガバナンスの強化は17.0ポイントの幅がありました。第八に、限界です。対処の有無も理由も含まれず、4つの位置づけは別々の企業なので同じ企業の変化ではありません。行ごとの回答数も1,080から1,150の幅があります。
よくある質問
ノウハウの蓄積・共有を課題とする企業はどのくらいですか。
IPAの2022年度組込み/IoTに関する動向調査のQ5では、知識・ノウハウの蓄積・共有について当てはまるが40.7%、やや当てはまるが46.7%で、合わせて87.4%でした。回答数は1,119です。設問のNは1,180でした(確認日2026年9月4日)。
それは10項目の中で何番目ですか。
4番目です。上には人材の確保・強化が92.5%、収益性の向上が92.1%、製品・サービス・技術の確保・強化が89.2%が並びます。5番目の市場動向の取得は68.1%なので、上位4項目とはそこで水準が変わります。
業種や立場によって違いはありますか。
位置づけ別ではユーザー企業が89.9%、メーカー企業が89.3%、サブシステム提供企業が84.1%、サービス提供企業が87.1%でした。幅は5.8ポイントで、10項目の中では小さいほうです。ただし4つの区分は別々の企業の集まりです。
立場で大きく分かれる項目はどれですか。
設備の更新・拡張が26.7ポイントで上端、サプライチェーンの再構築が25.1ポイント、コーポレート・ガバナンスの強化が17.0ポイントと続きます。設備の更新・拡張はユーザー企業で63.4%、サービス提供企業で36.7%でした。
この調査から対処の状況はわかりますか。
わかりません。Q5は課題として当てはまるかを聞いた設問で、何をしたかも、その結果も含まれていません。当てはまるとやや当てはまるを分ける基準も示されていないため、深刻さの比較もできない内容です。
出典
- *1 参考:IPA「2022年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/kumikomi-iot2022.html)。発行日・改版日・調査期間・配布数7,864件・回答数1,214件の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(PowerPoint)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pptx)。Q5の比率・回答数のデータ値の一次情報として。収録された値を用いた図表の作成という編集・加工を筆者が実施(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「組込み/IoTに関する動向調査」調査結果(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022.pdf)。Q5の設問文・集計対象の区分・N・5段階の選択肢・位置づけ別の4区分の名称・利用ルールの一次情報として(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「アンケート調査票」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/kumikomi/ps6vr7000001tewn-att/kumikomi-iot2022-chousahyou.xlsx)。Q5の10の項目の並びと選択肢の確認として(2026年9月確認)