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AIで変わる業務の把握、着手は1割前後にとどまる
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 着手が1割を超えたのは1項目:既存業務の把握の19.0%だけでした*1。
- 効果の高い側でも2割前後:内容が変わる業務の把握は22.4%です*1。
- 「効果:低」は効果なしではない:一定の効果はあったを含む区分でした*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
担当者が抜けたあと、その人の仕事をどう埋めるかで迷います。
人を足すべきなのか、道具で置き換えられるのか。分けて考えたいのですが、そもそも何をやっていたのかの一覧がありません。
手がかりは、AIの影響を踏まえた人材の育成や確保にどこまで着手したかを企業に聞いた調査です。
IPAの資料では、「着手している」が1割を超えたのは「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」の19.0%だけでした*1。
ほかの項目は1割に満たない状態です*1。ほとんどの項目で「検討の予定はない」が3割以上を占めていました*1。
目次
人を足すのか置き換えるのかが決まらない
抜けた人の穴を埋めるとき、選択肢は2つに見えます。人を入れるか、仕組みで置き換えるかです。
ところが手前で止まります。その人が何にどれだけ時間を使っていたかが、一覧になっていないからです。
この着手の状況を集計した資料があります*1。IPAの「DX動向2026」です*1。
公開の時期も示されています*1。2026年7月30日に公開され、データ集は同日に第1版が発行されています*1。
調査の時期も書かれています*1。2026年4月17日から6月12日にかけて実施されたものです*1。
規模も示されています*1。調査対象数は10,000で、有効回答数は1,799でした*1。
抽出の仕方も書かれています*1。企業データベースから業種や従業員規模で割付けて、ランダムに抽出したとされています*1。
調査項目の数も示されています*1。60問で、そのうち7問が回答者の属性を尋ねるものです*1。
想定回答者も書かれています*1。自社のDXの推進状況を把握している部署の責任者と、DXを推進する人材の状況を把握している部署の責任者です*1。
調査対象は日本の企業とされています*1。業種を限った調査ではありません*1。
発行元も示されています*1。IPAの経営企画センター 国際・産業調査部 産業調査室です*1。
資料の構成も見ておきます*1。DXの取組と成果の状況、AI・データ利活用の状況、DX・AIに関する人材、DX関連施策の認知・活用状況、調査概要の5つに分かれています*1。
言葉の定義も置かれています*1。この調査はDXを、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することと定義しています*1。
利用の条件も示されています*1。資料は著作権上の保護を受けており、引用や転載についてはIPAのウェブサイトの「著作権について」を参照するよう記されています*1。この記事では出所を明示しています*1。
この記事で使える数値の範囲
先に断っておきたいことがあります*1。この資料の図は、数値が図の中に描かれていて、文字として取り出せません*1。
ですからこの記事では、資料の本文が文章で述べている値だけを引いています*1。項目ごとの全区分の内訳は載せていません*1。
載せられるのは、資料が明記した数値と、資料自身の記述です*1。それ以外は推測になるため書きません*1。
資料の注記も引いておきます*1。グラフ内の数値の合計は、小数点以下の端数処理により100%にならない場合があるとされています*1。
つまり区分の値を足しても100になるとは限りません*1。この記事では区分を足した値は出していません*1。
差と倍率は筆者が算出しました*1。示された値から計算したもので、資料に載っている数字ではありません*1。
扱う範囲も分けておきます*1。DXを推進する人材の過不足やスキルの把握状況そのものは、同じ章の別の図表です*1。この記事では扱いません*1。
人材の採用そのものの決め方は、DX人材の採用、募集の前に決めておくことで扱っています。
着手が1割を超えたのは1項目だけ
今回見るのは図表4-13です*1。AIの影響による人材の育成や確保に関連する項目に、どこまで着手したかを尋ねたものです*1。
背景も資料に書かれています*1。AIの導入状況については、企業の58.0%がAIを導入または試験利用しているとされています*1。
つまり導入そのものは半数を超えています*1。そのうえで人の側の対応がどこまで進んだかを見る、という並びになります*1。
まず全体の傾向です*1。ほとんどの項目で「検討の予定はない」と答えた企業が3割以上を占めていました*1。
資料はここから踏み込んでいます*1。「検討中だが未着手」を含めると、多くの企業でAIの利活用とその拡大を踏まえた人材の育成や確保の対応が着手されていない状況にある、と記されています*1。
項目別に見ると1つだけ抜けています*1。「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」で、「着手している」が19.0%でした*1。
資料もこれを相対的に高いとしています*1。そのうえで、ほかの項目は1割に満たない状態にあると書かれています*1。
つまり、いま何をやっているかを数えるところまでは2割弱が動いていて、その先はほとんど手つかず、という並びです*1。
ここが引き継ぎの話につながります。抜けた人の業務を分けようとしても、1割前後の企業しか分ける材料を持っていないことになります。
ただし理由は書かれていません*1。なぜ着手が進まないのかを尋ねた設問ではないため、因果については書けません*1。
効果の高い側でも2割前後
次に図表4-14です*1。AI導入による効果の高低で分けて、着手の状況を見たものです*1。
資料の記述から入ります*1。効果が高いと実感している企業は、そうでない企業と比べて、すべての項目で「着手している」「検討を開始」の回答率が高いとされています*1。
資料が数値を挙げている項目は3つです*1。「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」の「着手している」は、効果が高い側で37.6%、低い側で23.8%でした*1。
2つ目も出しておきます*1。「内容が変わる業務の把握」は22.4%と10.6%です*1。
3つ目は「人材に必要なスキルの把握」でした*1。21.5%と12.0%です*1。
差を出すと13.8ポイント、11.8ポイント、9.5ポイントになります*1。倍率では1.58倍、2.11倍、1.79倍です*1。差と倍率はどちらも筆者が算出しました*1。
差がいちばん大きいのは1つ目、倍率がいちばん大きいのは2つ目です*1。どちらで並べるかで順序が変わります*1。
資料はこの3つを「大きな差が見られる」として挙げています*1。ほかの項目の個々の値は、本文には示されていません*1。
ここで見ておきたいのは水準です*1。効果が高いと実感している側でも、「内容が変わる業務の把握」は22.4%、「人材に必要なスキルの把握」は21.5%で、2割前後にとどまります*1。
つまり、うまくいっている側でも8割近くは着手していない項目だ、ということになります*1。
AIを実務に組み込む側の進め方は、生成AI業務組込み開発を委託する実践ガイドで扱っています。
「効果:低」は効果がなかった企業ではない
この図表には集計の定義が添えられています*1。読み違えやすいところなので引いておきます*1。
効果が高い側の定義です*1。「期待以上の効果があった」と「期待どおりの効果であった」を合わせて「AI導入効果:高」としています*1。
低い側も定義されています*1。「一定の効果はあった」と「期待した効果はまだ得られていない」を合わせて「AI導入効果:低」としています*1。
つまり低い側にも、一定の効果はあったと答えた企業が含まれます*1。効果がなかった企業だけを集めた区分ではありません*1。
ですから「効果が出ていない企業は23.8%しか着手していない」とは書けません*1。期待どおりには届かなかった企業まで含めた区分の値です*1。
この区分は資料が定めたものです*1。筆者が分けたものではありません*1。
もう1つ、順序の話もあります*1。着手したから効果が出たのか、効果が出たから着手できたのかは、この図表からは読めません*1。
資料の書き方もそこで止まっています*1。効果が高いと実感している企業ほど、業務変化や必要なスキルの把握といった先を見据えた育成や確保に取り組んでいる、という記述です*1。
関連の向きまでで、どちらが先かは書かれていません*1。ですからこの記事でも因果としては扱いません*1。
この集計から読めないこと
使う前に、限界を並べておきます*1。
第一に、前後関係がわかりません*1。着手が効果を生んだのか、効果が着手を後押ししたのかは示されていません*1。
第二に、着手の中身が含まれません*1。「着手している」と答えた企業が何をしたかは示されていません*1。
第三に、内訳の数値が取れません*1。資料の図から数値を文字として取り出せないため、本文が挙げた項目以外の値は書けません*1。
第四に、効果の高低は自己申告です*1。どこから「期待どおり」と答えるかの基準は示されていないため、水準の比較はしていません*1。
第五に、掛け合わせがありません*1。業種や従業員規模との組み合わせは、この図表には示されていません*1。
第六に、時期の範囲があります*1。調査は2026年4月17日から6月12日に実施されたもので、それより後の傾向は読めません*1。
第七に、人材の過不足そのものは別の図表です*1。この記事では扱う範囲を分けました*1。
なお、同じ章にはAI関連人材の充足状況の図表もあります*1。多くの人材種別で「不足している」が過半数を占めるとされています*1。
人材種別の名前も資料に挙げられています*1。AIに理解がある経営・マネジメント層、AIツールを活用して自社の事業に活かせる従業員、現場の知見と基礎的AI知識を持ち自社へのAI導入を推進できる従業員、データマネジメントの知見があり社内で企画・推進できる人材です*1。
そちらの個々の値も本文には示されていません*1。ですから順序や水準の比較はしていません*1。
業務を3つに分ける4段
ここまでの分布を、自社の手順に落とします*1。
| 項目 | 効果:高 | 効果:低 | 差 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握 | 37.6% | 23.8% | 13.8ポイント | 1.58倍 |
| 内容が変わる業務の把握 | 22.4% | 10.6% | 11.8ポイント | 2.11倍 |
| 人材に必要なスキルの把握 | 21.5% | 12.0% | 9.5ポイント | 1.79倍 |
1段目は、担当者ごとの業務を一覧に書き出すことです。役割名ではなく、実際にやっている作業を並べます。
2段目は、自動化できる分と人が要る分に分けることです。手順が決まっていて判断が入らない作業から先に印をつけます。
3段目は、人が要る分をさらに判断と手に分けることです。決めが必要な作業と、量をこなす作業を切り離します。
4段目は、手の側を期間を区切って外へ出すことです。作業量が読める部分から動かします。
1段目を先に置く理由は、資料の並びに出ています*1。着手が1割を超えたのは「既存業務の把握」だけでした*1。
2段目と3段目も、まだ手つかずの側です*1。効果が高いと実感している企業でも「内容が変わる業務の把握」は22.4%、「人材に必要なスキルの把握」は21.5%にとどまります*1。
順番を逆にすると止まります。自動化の道具から先に選ぶと、どの作業に当てるかが決まりません。
担当者が抜けたあとに困るのも同じところです。一覧がなければ、人を足すべき分と道具で置き換える分を分けられません。
実務では、3段目で切り出した手の側が外部要員の枠になります。フリーランスを含む業務委託は、この枠と相性があります。作業の範囲を区切って渡せるためです。
逆に、判断まで渡すと次に同じことが起きます。何を自動化して何を残すかの決めは社内に置きます。
渡す作業を手順の形にしておく進め方は、運用設計とRunbook整備を外注で進める方法で整理しています。
AIを扱う人の要件をどう置くかは、AI人材の採用で不足しているのは専門家ではないで扱っています。
最後に範囲を添えておきます*1。この調査は日本の企業を対象に2026年4月から6月にかけて実施されたもので、有効回答数は1,799です*1。それより後の傾向は読めません*1。
まとめ:一覧を作るところから始める
第一に、資料です。IPAの「DX動向2026」は2026年7月30日に公開され、データ集は同日に第1版が発行されています。調査対象は日本の企業で、調査期間は2026年4月17日から6月12日、調査項目は60問(うち回答者属性7問)、調査対象数は10,000、有効回答数は1,799でした。企業データベースから業種や従業員規模で割付けてランダムに抽出しています。第二に、使える範囲です。この資料の図は数値を文字として取り出せないため、本文が文章で述べている値だけを引いています。項目ごとの全区分の内訳は載せていません。第三に、着手の状況です。図表4-13では、ほとんどの項目で「検討の予定はない」が3割以上を占め、「検討中だが未着手」を含めると多くの企業で着手されていない状況とされています。第四に、抜けている1項目です。「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」の「着手している」が19.0%で、ほかの項目は1割に満たない状態でした。第五に、効果別です。図表4-14では、効果が高いと実感している企業のほうがすべての項目で回答率が高いとされ、資料は3項目を挙げています。既存業務の把握が37.6%と23.8%、内容が変わる業務の把握が22.4%と10.6%、人材に必要なスキルの把握が21.5%と12.0%でした。第六に、差と倍率です。筆者が算出すると13.8ポイントと1.58倍、11.8ポイントと2.11倍、9.5ポイントと1.79倍で、差と倍率で順序が変わります。第七に、定義です。効果:低は「一定の効果はあった」を含む区分なので、効果がなかった企業だけを集めたものではありません。第八に、限界です。着手と効果の前後関係も、着手の中身も、効果の高低の基準も示されていません。
よくある質問
AIの影響を踏まえた人材の対応は、どこまで進んでいますか。
IPAの「DX動向2026」の図表4-13では、ほとんどの項目で「検討の予定はない」と答えた企業が3割以上を占めています。「着手している」が1割を超えたのは「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」の19.0%だけで、ほかの項目は1割に満たない状態でした(確認日2026年9月4日)。
AIの効果が出ている企業は違うのですか。
資料によれば、効果が高いと実感している企業はすべての項目で「着手している」「検討を開始」の回答率が高いとされています。数値が挙げられている3項目では、既存業務の把握が37.6%と23.8%、内容が変わる業務の把握が22.4%と10.6%、人材に必要なスキルの把握が21.5%と12.0%です。
「効果:低」は効果がなかった企業ですか。
違います。資料の集計では「一定の効果はあった」と「期待した効果はまだ得られていない」を合わせて効果:低としています。一定の効果はあったと答えた企業も含まれるため、効果がなかった企業だけを集めた区分ではありません。
着手すれば効果が出るということですか。
そうは読めません。着手が効果を生んだのか、効果が出たから着手できたのかは資料に示されていません。資料の記述も「効果が高いと実感している企業ほど取り組んでいる」という関連の向きまでで、順序には触れていません。
項目ごとの詳しい割合は載っていますか。
この記事には載せていません。資料の図は数値が図の中に描かれていて文字として取り出せないため、本文が文章で述べている値だけを引いています。本文が挙げていない項目の値は書いていません。
出典
- *1 参考:IPA「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2026.html)。公開日2026年7月30日と最終更新日、収録章の構成の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「DX動向2026」(本文)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-2026.pdf)。図表4-13と図表4-14についての記述、19.0%・37.6%・23.8%・22.4%・10.6%・21.5%・12.0%、効果の高低の集計区分の一次情報として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「DX動向2026」(データ集)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/rcu1hd0000017uk8-att/dx-trend-data-collection-2026.pdf)。調査対象・調査期間・調査項目数・調査対象数・有効回答数・抽出方法・想定回答者、端数処理の注記、著作権の記載の一次情報として。2026年7月30日第1版発行(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ウェブサイトのご利用について」(https://www.ipa.go.jp/siteinfo.html)。引用・転載の条件として資料が参照を指示している記載の確認として。出所の明示を求めるもので、政府標準利用規約やクリエイティブ・コモンズへの言及はない(2026年9月確認)