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重要記録の保存、米NCUA規則が絞った5類型
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 残す対象は5類型に絞られた:永久保存を勧めた付録Aは廃止です*1。
- 外部保管は契約の一文で決まる:同時破壊を防ぐ旨があるかどうかです*1。
- ログの様式は各自で決めてよい:手作業での作成は求められません*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
バックアップの設計で長く残る問いがあります。何をどこまで残すのか、という線引きです。多く残すほど守りが厚くなる気がしますが、実際には探せない記録が増え、復旧そのものが遅くなります。
米国の全米信用組合監督庁(NCUA)は、この線引きを規則の側から引き直しました。2026年6月16日に公布された最終規則が連邦規則集第12編第749部を全部改正し、2026年7月16日に発効しています*1。1972年に作られた重要記録の保存規則を、2007年以来はじめて書き換えたものです*1。
金融機関向けの規則ですが、書かれているのは業種を問わない論点でした。復旧に必要な記録をどう定義するか、外部に預けた記録をどう自社の管理下と言えるか、保存の様式をどこまで規定するかを、公布された規則本文から順に見ていきます。
目次
残す対象を5類型に絞り、永久保存の勧めを廃止した
この改正でいちばん大きいのは、残す対象を減らした点です*1。
改正後の第749.1条は、重要記録を信用組合が重要な組合員サービスを復旧するために必要な記録のうち、最も新しく現行のものと定義しました*1。そのうえで、内容が5つ列挙されています*1。
| 区分 | 規則本文の内容 |
|---|---|
| ① 残高の一覧 | 直近営業日の終了時点における、組合員ごとの出資金・預金・貸付の残高一覧。残高が氏名または番号で個別に識別され、1口座に複数の貸付があれば別々に記載され、住所や電話番号など組合員を探し当てられる情報を含むこと |
| ② 財務報告 | 信用組合のすべての資産勘定と負債勘定を列挙した財務報告で、直近の月末時点のもの |
| ③ 銀行勘定調整 | 直近の月末時点の銀行勘定調整表 |
| ④ 取引先の一覧 | 金融機関に置いた口座、保険証券、投資の一覧と、それぞれの連絡先。直近の月末時点のもの |
| ⑤ 緊急連絡先 | 職員、役員、規制当局の事務所、および重要記録を支えるために使うベンダーの緊急連絡先 |
加えて信用組合は、追加の記録を重要と分類し、また必要と判断する範囲で重要記録の旧版を保持することができるとも書かれています*1。5類型は上限ではなく、規則の側が下限として並べたものという位置づけです*1。
合わせて廃止されたのが付録Aと付録Bでした*1。付録Aは記録の保存年限を推奨する一覧で、一部の文書は永久保存を勧める内容です*1。NCUAの理事会は、事前通知に寄せられた意見について実務上、付録Aは要件であるかのように従われており、その結果として付録Aは健全な記録保存の実務にとって障害となり、信用組合が使われないまま古びた記録を保持する事態を招いたと述べました*1。
推奨として書いたものが要件として読まれ、残しすぎを生んだ、という総括です*1。付録Bも規則の近くに指針を置く利点は、誤解される可能性を上回らないという理由で削除されました*1。ただし付録Bの大災害への備えに関する内容については、参考として利用したい信用組合のために、その内容を公表する予定とされています*1。規則から外して参考資料へ移す整理です*1。
意見の数と内訳も公表されました*1。2026年5月11日に締め切られた意見公募には19件が寄せられ、信用組合7、州および地域の連合会7、全国団体2、州の監督当局の団体1、個人1という構成です*1。うち6件が無条件の賛成、11件が概ね賛成しつつ論点を提示、反対は1件でした*1。
書面のプログラムに入れる3つの手続と、記録センターの距離
次に、体制として持つべきものです*1。
第749.2条は信用組合の理事会は、保険証書の交付から6か月以内に重要記録の保存プログラムを設ける責任を負うと定めます*1。プログラムは書面によるものとし、重要記録の複製を記録センターで保持する手続を含まなければならないとされ、その手続に入れる要素が3つ挙げられました*1。
1つ目が重要記録の保存に責任を負う職員を指名すること、2つ目が重要記録の保管と廃棄のスケジュール、3つ目が記録保存ログです*1。
この3つ目が、意見公募を受けて変わった箇所でした*1。規則案の段階では、ログに記録すべき項目が列挙されていました*1。これに対して9件の意見が、削除するか、または電子的な保管とデータの自動的なバックアップという現代の実務に合う形で、信用組合が自らのログに何を含めるかを決められる柔軟性を与える方向での修正を求めています*1。自動化された仕組みで保管され追跡されている情報を、手作業で作成または追跡することを求めるべきではないという指摘です*1。
理事会はこれを受け入れました*1。最終規則の第749.2条(a)(3)は重要記録の所在を突き止め、容易にアクセスすることに役立つ、信用組合が定めるところによる記録保存ログ。ログは、信用組合が定めるところにより電子形式その他いかなる形式でもよいという文言になっています*1。前文でも当庁は、信用組合が手作業でこのツールを作成または維持することを求めても期待してもいないと明言されました*1。
ログの目的も言葉にされています*1。信用組合にとっても当庁にとっても、重要記録がどこに保管されているかを知っていることが重要であるとし、記録保存ログの目的は、これらの記録が必要になったときに容易にアクセスできるようにすることにある。これは大災害の後においてとりわけ重要であると書かれました*1。何を書くかではなく、探せることが目的だという整理です*1。
保管先の条件は、距離で示されました*1。記録センターの定義は保管施設であって、他の連邦保険加入信用組合であってもよく、大災害の際に2組の記録が同時に失われることを避けられる程度に、信用組合の事務所から十分に離れた場所にあるものです*1。キロメートル数ではなく、同時に失われないことという結果で書かれています*1。この考え方はクラウドでの災害復旧で扱うリージョン選定の判断とそのまま重なります。
旧版の扱いも明記されました*1。他の法令が求める場合を除き、重要記録の旧版は、その現行版が保管された時点で廃棄してよいという条文です*1。現行版が二重化された時点で古い版を消してよい、という許可の形になっています*1。
外部に預けた記録は、契約の一文で扱いが変わる
実務で最も差が出るのは、ここです*1。
第749.2条(b)は重要記録の一部または全部を、事業所外のデータ処理業者によって保持している信用組合は、サービス契約において、当該データ処理業者が本番情報とバックアップ情報の同時の破壊に対する保護措置を講じることが定められている場合、それらの記録の保管について適合しているものとみなされると定めます*1。
自社で複製を持たなくても、契約にその一文があれば適合と扱われるという書き方です*1。裏を返せば、外部に預けているという事実だけでは足りません*1。契約書のどこにその条項があるかを示せることが、適合の証拠になります*1。委託先の管理そのものの進め方はベンダーマネジメントで扱う枠組みが土台になります。
加えて第749.3条が、機器と監督を求めます*1。信用組合は、自らの記録にアクセスするために必要な、記録センターのための機器またはソフトウェアを維持し、または第三者のサービス提供者と契約して維持させなければならないとされ、さらに信用組合が第三者のサービス提供者と契約して記録を維持させる場合、信用組合は、記録がこの条の要件を満たすことを確保するため、当該第三者のサービス提供者に対する実効的な監督を維持しなければならないと続きます*1。
読む側にとって重要なのは、義務が3層になっている点です*1。記録そのものの二重化、記録を読むための機器やソフトウェアの維持、そして委託先に対する監督の3つが別々に書かれています*1。バックアップは取れているが復元する環境が残っていない、という状態は、この条文では埋まりません*1。
| 層 | 求められること | 証拠になるもの |
|---|---|---|
| 記録の二重化 | 本番情報とバックアップ情報が同時に破壊されないこと | サービス契約の該当条項 |
| 読める環境 | 記録にアクセスするための機器またはソフトウェアの維持(自社または委託先) | 保守契約、動作するリストア環境 |
| 委託先の監督 | 要件が満たされていることを確かめる実効的な監督 | 点検の記録、報告の受領 |
復元できる状態を保つという観点は、規則の文面よりも先に運用の問題として現れます*1。リストア訓練で扱う「取れているが戻せない」の切り分けは、この3層のうち2つ目を実地で確かめる手段にあたります。
形式は問わない。条件は再現できることに置かれた
保存の形式については、規則は指定を避けました*1。
第749.4条は保存された重要記録は、信用組合の重要記録を復元するために使用できる形式であれば、いかなる形式でもよいとしたうえで、条件を3つ置きます*1。使用する形式は、記録内の情報を正確に反映し、法令または法の規則によりアクセスする権限を有するすべての者がアクセスできる状態を保ち、送信、印刷その他の方法により再現することができるものでなければならないという文言です*1。
この3条件は、この分野の連邦法に由来します*1。第749部は合衆国法典第15編第7001条(d)、すなわち電子署名法を取り込んでおり、記録の保持が求められる場合に電子記録の保持でその要件を満たすための条件がそこに定められています*1。規則本文の言い回しは、この条文をほぼそのまま写した形です*1。
第749.5条は、対象を第749部の外へ広げました*1。NCUAの規則が信用組合に一定の文書、記録または情報の保持を求める場合、信用組合は、記録内の情報を正確に反映し、権限を有するすべての者がアクセスでき、送信、印刷その他の方法により再現することができる形式であれば、いかなる形式でも用いることができるという規定です*1。
ただし、ここには検査に関する条件が付いています*1。信用組合は、検査の過程で検査官が記録にアクセスできるようにするために必要な機器またはソフトウェアを維持しなければならないとされました*1。読める環境を保つ義務が、外部検査の場面でもう一度書かれている形です*1。
この改正では、範囲の整理も行われました*1。改正後の第749.0条はこの部は、記録が破壊された場合に重要記録を特定し、保管し、復元するための重要記録保存プログラムを維持する、連邦保険加入信用組合の義務について定めると目的を述べたうえで、この部は、他の法令により信用組合に適用されうる記録保存の要件に優先するものではないと明記しました*1。第749部を満たしたことが、他法令の保存義務を免れる理由にはならない、という確認です*1。
細かい整合も取られています*1。第703.105条(d)は、報告を第749部の付録Aに従って保持することを求める規定でしたが、付録Aの廃止に伴って削除されました*1。規則の内部で参照が宙に浮くことを避けるための技術的な改正だと説明されています*1。
負担の見積もりも公表されました*1。書面の重要記録保存プログラムの保持と維持について、対象は4,339者、年間の負担は合計8,726時間とされ、内訳は既存の維持が4,331者で1者あたり2時間、新規の策定が8者で1者あたり8時間です*1。管理番号3133-0032として3年間の延長が申請されています*1。
自社のバックアップ設計に読み替える5つの論点
米国の信用組合向けの規則ですが、設計の言葉に置き換えられます。
第一に、復旧に必要な記録を先に定義することです。改正後の定義は、重要記録を重要な組合員サービスを復旧するために必要な記録と、目的から書きました*1。バックアップの対象を「本番のデータベース一式」と決めるのではなく、止まったサービスを立ち上げ直すのに何が要るかから並べると、対象が絞れます。残高の一覧に組合員を探し当てられる情報を含めるという条件は、その典型でした*1。データがあっても連絡先がなければ復旧しない、という発想です。
第二に、残しすぎを設計上の欠陥として扱うことです。NCUAは付録Aについて健全な記録保存の実務にとって障害となったと評価しました*1。保存年限の一覧を作ると、迷ったときに長いほうへ倒れます。記録管理と保存年限で扱う考え方に、旧版は現行版が保管された時点で廃棄してよいという明示的な許可を足すと、運用が動きやすくなります*1。
第三に、外部保管を契約の条項として点検することです。外部のデータ処理業者に預けた場合の適合は、サービス契約において、本番情報とバックアップ情報の同時の破壊に対する保護措置を講じることが定められているかどうかで決まります*1。同一リージョンの別アカウントに退避しているだけの構成は、この一文を書けません。契約書のどの条項が同時破壊を否定しているかを、対応表として持っておくと点検が短くなります。
第四に、読むための環境を別建てで持つことです。第749.3条は、記録の保持とは別に記録にアクセスするために必要な機器またはソフトウェアの維持を求めました*1。古い形式のアーカイブを残す場合、それを開くソフトウェアの保守期限が先に切れることがあります。保存の期限だけでなく、読み出す側の期限も台帳に載せる必要があります。この論点はIT-BCPの組み立てで扱う復旧手順の前提条件にあたります。
第五に、ログの様式を現場に委ねることです。最終規則は、ログの記載項目の列挙をやめ信用組合が定めるところによる形に変えました*1。自動的に採れている情報を人が書き写す運用は、更新が止まった時点で誤った台帳になります。バックアップ基盤の出力をそのまま所在の一覧として使い、足りない項目だけを手で足す形にすると、ずれが起きにくくなります。
誤解されやすいのは、規制が緩んだから残さなくてよいという読み方です。廃止されたのは推奨の一覧であり、書面のプログラム、複製の保持、記録センター、委託先の監督、読める環境の維持はいずれも規則本文に残りました*1。減らされたのは対象の広さで、体制そのものは条文として維持されています*1。同じく記録の電子的な保存を扱った規則案としてはSECの移転代理人規則で扱う統制の考え方が対になります。
まとめ:重要記録の保存規則から読み取る3つの視点
米国NCUAの最終規則は2026年6月16日に公布され、2026年7月16日に発効しました。連邦規則集第12編第749部を全部改正し、あわせて第703.105条(d)を削除しています。押さえたい視点は三つあります。第一に、対象の絞り込み。重要記録は、直近営業日の残高一覧、直近月末の財務報告、直近月末の銀行勘定調整、口座・保険証券・投資の一覧と連絡先、職員や規制当局やベンダーの緊急連絡先という5つに列挙され、追加で重要と分類することは各信用組合の判断に委ねられました。保存年限を推奨していた付録Aと、大災害への備えを説明していた付録Bは、要件のように読まれて残しすぎを招いたという理由で廃止されています。第二に、外部に預けた場合の条件。事業所外のデータ処理業者が保持している記録は、サービス契約に本番情報とバックアップ情報の同時の破壊に対する保護措置が定められていれば、保管について適合しているものとみなされます。加えて、記録にアクセスするための機器やソフトウェアの維持と、第三者のサービス提供者に対する実効的な監督が別途求められます。第三に、様式の扱い。保存の形式は復元に使えるものであれば問われず、条件は情報を正確に反映すること、権限を有する者がアクセスできること、送信や印刷などで再現できることの3つです。記録保存ログについても、意見公募を受けて記載項目の列挙が取りやめられ、様式は各信用組合が決め、電子形式でもよいとされました。
よくある質問
この規則はいつから効いているのですか。
2026年7月16日から効いています。2026年6月16日に連邦官報で公布された最終規則で、連邦規則集第12編第749部を全部改正し、あわせて第703.105条(d)を削除しました。もとになった規則案は2026年3月11日に公布され、意見公募は2026年5月11日に締め切られています。
付録Aが廃止されたということは、古い記録を捨ててよいのですか。
第749部の枠内では、他の法令が求める場合を除き、重要記録の旧版はその現行版が保管された時点で廃棄してよいとされています。ただし改正後の第749.0条は、この部が他の法令による記録保存の要件に優先するものではないと明記しています。廃止されたのはNCUAが推奨していた保存年限の一覧であって、他法令の保存義務が消えたわけではありません。
クラウド事業者に預けていれば、自社で複製を持たなくてよいのですか。
条件が付きます。第749.2条(b)は、事業所外のデータ処理業者が記録を保持している場合、サービス契約において当該業者が本番情報とバックアップ情報の同時の破壊に対する保護措置を講じることが定められているときに、保管について適合しているものとみなすと定めます。あわせて第749.3条が、記録にアクセスするために必要な機器またはソフトウェアの維持と、第三者のサービス提供者に対する実効的な監督を求めています。
記録保存ログには何を書けばよいのですか。
最終規則は記載項目を列挙していません。重要記録の所在を突き止め、容易にアクセスすることに役立つログを、信用組合が定めるところにより作ることとされ、電子形式その他いかなる形式でもよいとされています。前文でも、手作業でこのツールを作成または維持することは求めても期待してもいないと説明されました。目的は大災害の後に記録へ辿り着けることに置かれています。
出典
- *1 参考:米国連邦官報 全米信用組合監督庁「Records Preservation Program and Appendices—Record Retention Guidelines; Catastrophic Act Preparedness Guidelines」(最終規則・RIN 3133-AF61・91 FR 36073・2026年6月16日公布/2026年7月16日発効)(https://www.federalregister.gov/documents/2026/06/16/2026-12058/records-preservation-program-and-appendices-record-retention-guidelines-catastrophic-act)。全部改正された連邦規則集第12編第749部の規則本文(第749.0条の目的と他法令に優先しない旨、第749.1条の重要な組合員サービス・重要記録の5類型・追加分類の自由・記録センターの距離の定義、第749.2条の6か月以内の策定義務と3つの手続・事業所外のデータ処理業者に関する適合みなし・旧版の廃棄、第749.3条の機器またはソフトウェアの維持と第三者への実効的な監督、第749.4条と第749.5条の形式の条件および検査官のアクセス)、ならびに前文(付録Aと付録Bの廃止理由、19件の意見の内訳と2つの変更点、記録保存ログの柔軟化と手作業を求めない旨、第703.105条(d)の削除、合衆国法典第15編第7001条(d)の取り込み、対象4,339者・年間8,726時間の負担見積もりと管理番号3133-0032)を確認した。確認日は2026年9月7日。(2026年9月確認)