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職場アクセスの請求、英国が課した9項目と電子的な送付先
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- アクセスは立入りだけではない:労働者との連絡も含みます*2。
- 請求は電子的な宛先へ送れる:公開した連絡先が使われます*1。
- 合意はCACへ届けて効力:変更と撤回も同じです*4。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
社外の第三者が従業員へ直接連絡する経路を制度として持つとき、窓口をどこに置くかは情報システムの設計に返ってきます。英国が、その様式を決めました。
労働組合(職場へのアクセスの権利)(必要な情報)規則2026(SI 2026/756)が2026年7月6日に制定され、2026年10月30日に施行します*1。根拠は労働組合労働関係(統合)法1992の第5ZA章で、この章は雇用権利法2025が挿入したものです*2。
英国に拠点を持つ立場からも、海外の制度を参照する立場からも、何が「アクセス」なのか、どこへ届くのかが実務の起点になります。順に見ていきます。
目次
「アクセス」には、労働者との連絡が含まれる
まず全体像です*1*2*3*4。
定義は法の第70ZA条にあります*2。第4項はアクセスを二つに分けました*2。(a) 職場への物理的な立入りと、(b) 労働者との連絡です*2。
第5項が、その(b)の幅を広げています*2。労働者との連絡とは、労働者への情報の提供を含み、直接か間接かを問わず、あらゆる手段による連絡をいうと定めました*2。規則の説明覚書も、この立法の束が組合の職員が職場へ物理的に立ち入ることと、ほかの手段で労働者と連絡することの両方を可能にするものだと述べています*1。
アクセス協定そのものの定義は第2項です*2。適格な労働組合と事業者との間の合意であって、組合の一人以上の職員が、アクセスの目的のために職場へ物理的に立ち入るか、労働者と連絡するか、その両方を行うことを定めるもので、第70ZD条に基づいて締結されるか、第70ZE条により締結されたものとして扱われるものを指します*2。ここでいう適格な労働組合は、第3項により独立性の証明書を持つ労働組合です*2。
目的の範囲も限定されています*2。第6項のアクセスの目的は、労働者と会い、支援し、代表し、勧誘し、または組織すること(組合員であるかどうかを問わない)と、団体交渉を促進することの二つです*2。第7項は、争議行為を組織することは目的に含まれないと明記しました*2。
従業員の代表と会社との手続きを制度が様式で縛る構図は、国内にもあります。選出の手順を整理した過半数代表者の選出と読み比べると、英国側が連絡の手段まで制度の対象にした点の違いが見えます*2。
請求に書く9項目と、電子的な送付先
請求の様式が規則の第3条です*1。
第2項は形式を定めます*1。請求を行う労働組合を特定すること、組合の独立性の証明書の写しを付けること、書面で日付を入れること、そして送付の方法です*1。
送付の方法が二通りあります*1。一つは事業者の登記上の事務所、本社または主たる営業所へ、郵送または持参すること*1。もう一つが電子的な連絡による送付で、あて先は事業者が組合へ提供した電子的な連絡先、それが提供されていない場合は事業者が自らへの連絡用に公開している電子的な連絡先です*1。ここでいう電子的な連絡は、第2条により電子通信法2000の第15条第1項の意味によります*1。
この二段構えは、実務では一つの示唆になります*1。事業者が窓口を指定しなければ、公開している問い合わせ先が自動的にあて先になるからです*1。総合的な問い合わせフォームや代表アドレスしか公開していない場合、そこへ請求が届く前提で受信の運用を組むことになります*1。
| 項 | 記載する内容 |
|---|---|
| (a)(b) | 請求を行う組合職員の氏名と連絡先/アクセス協定の交渉を行う権限のある組合職員を少なくとも1名、氏名と連絡先 |
| (c)(d) | 法第70ZB条第1項に基づく請求である旨の記述/アクセスの目的(法定の目的のいずれか一つ以上) |
| (e) | アクセスを求める労働者の一般的な記述(組合が知る限りにおいて) |
| (f) | アクセスの性質。1回か複数回か/物理的な立入りか労働者との連絡か、その両方か/求めるアクセスの詳細/その理由/立入りを求める場合は事業者が職場を特定できる程度の記述/事業者へ求める協力/各回の頻度と継続時間 |
| (g)(h) | 協定の下でアクセスに責任を負う組合職員を少なくとも1名、氏名と連絡先/各回のアクセスの前に事業者へ与える予告期間 |
| (i) | 反復の請求である場合は、その旨と前回の請求の日付、および合意した条件の写し |
説明覚書は、(f)の水準を例で示しています*1。週に1回、職場の部屋を用意するといった程度の具体性で、求めるアクセスの種類と詳細、そしてその理由を書く、という説明です*1。
回答通知は、同意と不同意で書き分ける
事業者の側の様式が第4条です*1。
第2項は、通知を書面で日付を入れること、そして請求を行った組合職員として請求書に記載された連絡先へ送ることを求めます*1。請求の送付先が二通りあったのに対し、回答は請求書に書かれた連絡先へ返す構造です*1。
| 場面 | 記載する内容 |
|---|---|
| 共通 | 事業者の名称と、通知を出す事業者または代理人の連絡先/交渉を行う権限のある者を少なくとも1名、氏名と連絡先/法第70ZB条第4項に基づく通知である旨/請求に全部または一部について同意するか、しないか |
| 同意する場合 | 職場ごとに、協定の下でアクセスに責任を負う者を少なくとも1名/組合が求めた労働者の区分の一覧と、各区分のおおよその人数/立入りを求められた場合は、各職場の住所と場所の確認と必要な追加情報、および目的に照らして適した時間帯の一般的な情報/協力を提供できるかどうか |
| 同意しない場合 | 請求のどの部分に同意しないか/その理由の説明/実質的に同じ労働者について他の組合から先に請求を受けて交渉中または締結済みであることを理由に拒む場合は、その確認と当該組合の詳細 |
同意する場合の記載に、実務の負担が集まっています*1。労働者の区分の一覧と、各区分のおおよその人数を返す必要があるからです*1。職場ごと、区分ごとに人数を数えられる状態でなければ、期限内に返せません*1。
拒む理由として他の組合との先行が明文で置かれている点も特徴です*1。複数の組合から重なった請求が来たときに、どちらを先に扱っているかを事実として示す形になります*1。
反復の請求には短い経路があります*1。第4条第5項は、請求が第3条第3項(i)の反復の請求であり、事業者がその請求に付された条件に同意し、かつ前回の請求に対する回答通知で第3項を満たしていた場合に、第4項を適用するとしました*1。このとき通知は、法第70ZB条第4項に基づく通知である旨、反復の請求に付された条件に同意する旨の確認、前回の通知の時点で入手できていれば記載していたはずの新しい情報の3点で足ります*1。
合意は、CACへ届けて初めて形になる
交渉の帰着点が第70ZD条です*3。
同条第1項は、アクセス協定が締結されたといえる条件を四つ並べました*3。適格な労働組合が事業者へアクセス請求を行うこと、事業者が応答期間の満了前に回答通知を出すこと、交渉期間の満了前に、組合の職員がアクセスを持つ条件を書面で合意すること、そして両当事者が、その条件を定められた様式と方法で中央仲裁委員会(CAC)へ共同で通知することです*3。
応答期間と交渉期間の長さは、法の側では決まっていません*3。第70ZC条は、応答期間はアクセス請求が行われた日から始まる定められた期間、交渉期間は回答通知が行われた日から始まる定められた期間と書くにとどめ、長さを下位の法令へ委ねています*3。
CACへの通知の様式が、規則の第5条です*1。いずれの当事者が双方を代理して行ってもよいとしたうえで、書面で日付を入れること、法第70ZD条第1項に従って締結される旨を確認すること、双方により、または双方のために署名されること、アクセス協定の写しをCACへ提供することを求めます*1。
変更と撤回も同じ経路をたどります*4。第70ZG条第1項は、当事者がいつでも協定を変更または撤回できるとしつつ、第2項で書面によることを求めました*4。そして第5項が効力の条件です*4。当事者がCACへ共同で通知した場合にのみ効力を生じ、しかもCACへ通知された日の後の時点についてのみ効力が及ぶとされています*4。
規則の第6条が、その通知の様式です*1。書面で日付を入れること、法第70ZG条に基づく変更または撤回である旨の記述、双方による署名に加えて、変更の場合には変更される既存の協定の条件と新しい条件を含む協定の写しを提供します*1。合意の版を管理していなければ、この二つは出せません*1。
受け取る側が先に決めておくこと
条文を実務へ落とすと、決めておく点は四つに整理できます*1*2。
第一に、あて先です*1。電子的な連絡先を組合へ提供していなければ、公開している連絡先が請求のあて先になります*1。どのアドレスが公開されているかを棚卸しし、そこへ届いたものを誰が開くのかを決めておくことになります*1。
第二に、期限です*3。回答通知は応答期間の満了前に出さなければ、第70ZD条の締結の要件を満たしません*3。受信から回答までの内部の経路を、あらかじめ日数で設計しておく必要があります*3。
第三に、人数の集計です*1。同意する場合の回答通知は、労働者の区分ごとのおおよその人数を含みます*1。区分の定義を先に決めておかないと、請求を受けてから数え方を議論することになります*1。
第四に、版の管理です*1*4。協定の変更はCACへ届け出た日の後にしか効力が及ばず、届出には変更前の条件と変更後の協定の写しが要ります*1*4。合意書を版で管理し、どの時点でどの条件が有効だったかを再現できる形にしておくと、この要求にそのまま応えられます*1*4。
あわせて、労働者との連絡が手段を問わない点も見落とせません*2。社内の連絡基盤を経由する形でのアクセスが協定の対象になりうるため、協定を結ぶ段階で、どの経路を使い、どの範囲へ届けるのかを条件として書き込むことになります*2。組合の手続きに電子的な仕組みが入り込む流れは、英国が法定投票の要件を法令の別表に書き込んだ電子投票のシステム要件にも表れています*2。
なお、規則には第7条として見直しの規定が置かれました*1。国務大臣は随時この規則を見直し、目的、達成の程度、目的がなお適切かどうか、より規制の少ない仕組みで達成できる程度を報告に記して公表します*1。初回は施行日から5年以内、以後も5年を超えない間隔です*1。
まとめ:英国の職場アクセスの請求で押さえる3つの視点
英国では、労働組合(職場へのアクセスの権利)(必要な情報)規則2026が2026年7月6日午前11時15分に制定され、同日午後4時に議会へ提出されたうえで、2026年10月30日に施行します。適用はイングランドおよびウェールズとスコットランドです。根拠は労働組合労働関係(統合)法1992の第5ZA章で、この章は雇用権利法2025の第59条第2項が挿入し、2026年1月6日に特定の目的について施行しました。押さえたい視点は三つあります。第一に、アクセスの意味。第70ZA条第4項は、アクセスを職場への物理的な立入りと労働者との連絡の二つと定め、第5項は後者を、労働者への情報の提供を含み、直接か間接かを問わないあらゆる手段による連絡と定義しました。目的は、労働者と会い、支援し、代表し、勧誘し、組織することと、団体交渉を促進することの二つで、争議行為の組織は含まれません。第二に、請求の様式。請求は書面で日付を入れ、組合を特定し、独立性の証明書の写しを付けたうえで、登記上の事務所や本社などへ郵送または持参するか、事業者が提供した電子的な連絡先、それがなければ事業者が公開している電子的な連絡先へ送ります。記載事項は9項目で、アクセスの性質については、回数、立入りか連絡かその両方か、詳細、理由、職場の記述、求める協力、頻度と継続時間を書きます。第三に、効力の条件。アクセス協定は、請求、応答期間内の回答通知、交渉期間内の書面合意、そして中央仲裁委員会への共同の通知がそろって締結されます。変更や撤回も、中央仲裁委員会へ共同で通知した場合にのみ効力を生じ、その効力は通知された日の後の時点についてのみ及びます。変更の通知には、変更される既存の条件と、新しい条件を含む協定の写しを添えます。
よくある質問
この規則はいつから適用されますか。
2026年10月30日からです。労働組合(職場へのアクセスの権利)(必要な情報)規則2026は、2026年7月6日午前11時15分に制定され、同日午後4時に議会へ提出されました。適用地域はイングランドおよびウェールズとスコットランドです。根拠となる労働組合労働関係(統合)法1992の第5ZA章(第70ZA条から第70ZN条)は、雇用権利法2025の第59条第2項によって挿入され、2026年1月6日に特定の目的について施行しています。
「アクセス」には何が含まれますか。
職場への物理的な立入りと、労働者との連絡の二つです。法第70ZA条第4項がこの二つを挙げ、第5項は、労働者との連絡を、労働者への情報の提供を含み、直接か間接かを問わず、あらゆる手段による連絡と定義しています。アクセスの目的は、第6項により、労働者と会い、支援し、代表し、勧誘し、または組織すること(組合員であるかどうかを問いません)と、団体交渉を促進することの二つに限られ、第7項により争議行為を組織することは含まれません。
請求はどこへ届きますか。
規則第3条第2項(d)により、二通りあります。一つは、事業者の登記上の事務所、本社または主たる営業所への郵送または持参です。もう一つは電子的な連絡による送付で、あて先は、事業者が組合へ提供した電子的な連絡先です。そうした連絡先が提供されていない場合は、事業者が自らへの連絡用に公開している電子的な連絡先があて先になります。電子的な連絡の意味は、規則第2条により電子通信法2000の第15条第1項によります。
合意した内容はどこへ届け出ますか。
中央仲裁委員会(CAC)です。法第70ZD条第1項(d)は、当事者が合意した条件を定められた様式と方法でCACへ共同で通知することを、アクセス協定の締結の要件としています。規則第5条は、この通知がいずれの当事者から双方を代理して行われてもよいとしたうえで、書面で日付を入れ、法第70ZD条第1項に従って締結される旨を確認し、双方により署名され、協定の写しを添えることを求めます。変更や撤回も、法第70ZG条第5項により、CACへ共同で通知した場合にのみ効力を生じます。
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出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Trade Unions (Right to Access Workplaces) (Required Information) Regulations 2026」(SI 2026 No. 756・2026年7月6日制定/2026年10月30日施行)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/756/made)。様式の一次情報として。前文(労働組合労働関係(統合)法1992 第70ZB条第3項・第5項、第70ZD条第1項(d)、第70ZG条第5項(a)、第70ZN条、第293条第1項に基づくこと)、第1条(施行日と適用地域)、第2条の定義(CAC、電子的な連絡=電子通信法2000 第15条第1項、当事者、組合)、第3条(アクセス請求の形式、郵送・持参または電子的な連絡先への送付、記載9項目)、第4条(回答通知の形式、共通・同意・不同意の記載、反復の請求に対する簡略な通知)、第5条(CACへの届出)、第6条(変更・撤回の届出)、第7条(5年以内の初回の見直しと以後5年を超えない間隔)、および説明覚書を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「Trade Union and Labour Relations (Consolidation) Act 1992」第70ZA条(アクセス協定)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1992/52/section/70ZA)。定義の一次情報として。第2項(アクセス協定の定義)、第3項(適格な労働組合=独立性の証明書を持つ労働組合)、第4項(アクセス=職場への物理的な立入りおよび労働者との連絡)、第5項(労働者との連絡は情報の提供を含み、直接か間接かを問わずあらゆる手段による旨)、第6項(アクセスの目的の2つ)、第7項(争議行為の組織を含まない旨)、第8項から第11項(章の構成)、ならびに第5ZA章が雇用権利法2025 第59条第2項により挿入され2026年1月6日に特定の目的について施行した旨を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *3 参考:英国法令データベース「Trade Union and Labour Relations (Consolidation) Act 1992」第70ZB条・第70ZC条(アクセス請求と回答通知、期間)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1992/52/section/70ZB)。手続きの一次情報として。第70ZB条第1項(適格な労働組合が事業者へアクセスの請求を行える旨)、第2項(1回または複数回の請求、条件を含めうる旨)、第3項(定められた様式・情報・方法)、第4項(事業者が全部または一部について同意または不同意の通知を出せる旨)、第5項(通知の様式・情報・方法)、第6項(アクセス請求と回答通知の定義)、ならびに第70ZC条(応答期間はアクセス請求の日から、交渉期間は回答通知の日から始まる、それぞれ定められた期間である旨)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *4 参考:英国法令データベース「Trade Union and Labour Relations (Consolidation) Act 1992」第70ZD条・第70ZG条(交渉による締結、変更と撤回)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1992/52/section/70ZD)。効力の一次情報として。第70ZD条第1項(アクセス請求、応答期間内の回答通知、交渉期間内の書面合意、中央仲裁委員会への共同の通知という4つの要件)、第2項(中央仲裁委員会の決定により締結されたものとして扱われる場合は第70ZE条による旨)、ならびに第70ZG条第1項から第5項(いつでも変更・撤回できること、書面によること、変更後も協定として効力を持つこと、撤回により協定でなくなること、中央仲裁委員会へ共同で通知した場合にのみ、かつ通知された日の後の時点についてのみ効力が及ぶこと)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)