LASSIC Media らしくメディア
内製化支援 自走を目指す前の3つの人材不足
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 自走という選択肢は調査に無い:期待する効果の10項目にも課題の9項目にも「自走」という語はありません。*1
- 課題の上位3つはいずれも人材:開発人材の量52.7%、質49.6%、プロジェクトマネジメント人材44.4%です。*1
- 支援と自走の関係は書かれていない:内製化支援を受ければ自走できる、といった記載は今回の資料にはありません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
「内製化支援を頼んで、いずれは自社で開発を回せるようにしたい」。そう言われたとき、まず何を確かめればよいのか——。JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2026」は、システム開発の内製化について、企業が期待している効果と、進めるうえでの課題を、それぞれ選択肢を立てて集計しています。*1 自走に最も近い選択肢である「社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上」は、25年度に35.1%。24年度の43.9%から8.8ポイント下がりました。*1
この2つの設問を並べると、自走という言葉が社内で何を指しているのかを、先に決めておく必要があることがわかります。ただし、内製化支援を受ければ自走できるようになる、といった記載は、この資料にはありません。本記事では、開発の現場を預かるマネージャに向けて、調査が並べている期待効果、自走に近い項目の順位の動き、なぜ「自走できますか」だけでは決まらないのか、どう確かめるのか、つまずきやすい点、そして外注の勘所を整理します。
目次
JUASが並べている内製化への期待
JUASの「企業IT動向調査2026」は、東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社を対象にした調査です。調査期間は2025年9月5日から10月24日、25年度の回収数は957社で、有効回答率は21.3%です。*1 そのなかに、システム開発の内製化を扱った設問が2つあります。
1つめが、内製化に期待している効果です。複数回答で、25年度は863社、24年度は758社が答えています。*1
| 選択肢 | 25年度 | 24年度 |
|---|---|---|
| ビジネス構想の確実な反映 | 31.7% | 32.3% |
| ビジネススピードの向上 | 32.8% | 32.8% |
| ビジネスプロセスの改善・最適化 | 33.6% | 32.3% |
| 開発のリードタイム短縮 | 19.8% | 22.6% |
| 開発コスト削減 | 41.3% | 42.2% |
| 開発リソースの柔軟化 | 10.4% | 12.0% |
| 社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上 | 35.1% | 43.9% |
| システム仕様のブラックボックス化抑止 | 29.0% | 27.3% |
| その他 | 0.5% | 未調査 |
| 特に期待している効果はない | 8.5% | 未調査 |
25年度に最も高いのは「開発コスト削減」41.3%です。*1 次いで「社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上」35.1%、「ビジネスプロセスの改善・最適化」33.6%と続きます。*1
注意したいのは、10個の選択肢のどこにも「自走」という語がないことです。*1 社内で自走と呼んでいるものが、この10個のどれに当たるのかは、調査とは別に社内で決める必要があります。
自走に近い期待効果と、順位の入れ替わり
自走に最も近い選択肢は「社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上」です。この項目は24年度に43.9%で最も高かったものが、25年度は35.1%に下がりました。差は8.8ポイントです。*1
代わって最も高くなったのが「開発コスト削減」41.3%です。ただしこの項目自体は24年度の42.2%から0.9ポイント下がっています。*1 順位が入れ替わったのは、コスト削減が伸びたからではなく、ナレッジ蓄積の側が下がったためです。
報告書は、ベンダーの価格高騰の影響を受け、ナレッジの蓄積による中長期的な能力強化よりも目の前のコスト削減の優先度が急速に高まったと推察する、と書いています。*1 「推察する」とあるとおり、これは調査で確かめた因果ではありません。
25年度に1ポイント以上増えた項目は2つだけです。「ビジネスプロセスの改善・最適化」が32.3%から33.6%へ1.3ポイント、「システム仕様のブラックボックス化抑止」が27.3%から29.0%へ1.7ポイント。*1 自走に近い項目は、この2つには入っていません。
なぜ「自走できますか」だけでは決まらないのか
もう1つの設問が、内製化を進めるうえでの課題です。こちらも複数回答で、25年度は953社、24年度は959社が答えています。*1 回収数957社に対して953社なので、ほとんどの企業が答えた設問です。
| 選択肢 | 25年度 | 24年度 |
|---|---|---|
| 現行システムの仕様がわからない | 25.9% | 24.6% |
| 開発プロセスがわからない | 10.9% | 9.2% |
| 現行業務への理解不足 | 38.2% | 38.7% |
| システム企画力不足(ビジネス要件をシステム仕様に落とせない) | 34.5% | 30.2% |
| プロジェクトマネジメント人材の不足 | 44.4% | 38.3% |
| 開発人材の量の不足 | 52.7% | 50.8% |
| 開発人材の質の不足 | 49.6% | 45.2% |
| その他 | 2.4% | 1.3% |
| 特にない・わからない | 11.6% | 未調査 |
上位3つは「開発人材の量の不足」52.7%、「開発人材の質の不足」49.6%、「プロジェクトマネジメント人材の不足」44.4%です。*1 24年度からそれぞれ1.9ポイント、4.4ポイント、6.1ポイント増えています。*1
一方で「開発プロセスがわからない」は10.9%です。*1 「その他」と「特にない・わからない」を除いた7個の選択肢のなかで、これが最も低い値です。*1 手順の知識ではなく、担う人のところに回答が集まっている並びになっています。
ここは資料が述べていることではなく、2つの設問を並べて読めることです。「自走できますか」と一言で聞いても答えが返ってこないのは、期待と課題が別の設問で、しかも課題の側が人に集まっているためです。
どう確かめるのか
まず、社内で言う自走が、期待効果の10個のうちどれを指すのかを置き換えます。ナレッジの蓄積なのか、コストの削減なのか、システム仕様のブラックボックス化を抑えることなのか。*1 指しているものが違えば、確かめることも変わります。
次に、課題の9個から自社に当てはまるものを選びます。量が足りないのか、質が足りないのか、プロジェクトマネジメントを担う人がいないのか。*1 上位3つは別々の選択肢で、24年度からの増え方も違います。*1
そのうえで、誰がどの作業を何か月引き受けるのかを書き出します。「現行の在庫管理機能の仕様書を整理して3か月」「新機能の設計レビューを半年」——ここまで書ければ、社内で担えるものと、外部に委託するものが分かれます。
つまずきやすい難所
一つめは、自走を期限つきの約束として扱うことです。この調査は期待している効果と進めるうえでの課題を集計したもので、内製化支援を受ければ何か月で自走できる、といった記載はありません。
二つめは、集計の順位を自社の目標と取り違えることです。25年度に「開発コスト削減」が最も高かったのは863社を集計した結果であって、*1 自社が内製化に何を期待するかとは別の話です。
三つめは、上位3つをひとまとめの人材不足として扱うことです。量、質、プロジェクトマネジメントは別々の選択肢で、24年度からの増え方も1.9ポイント、4.4ポイント、6.1ポイントと違います。*1 どれが足りないのかで、探す人も変わります。
外注時に確認しておきたい点
内製化支援を頼むときは、任せる作業と期間を書いてから声をかけてください。「現行の在庫管理機能の仕様書を整理して3か月」といった粒度で構いません。外部の要員(フリーランスを含む業務委託)は、作業と期間がはっきりしているほど合わせやすい調達の仕方になります。
自走できるようになること自体を成果として約束させるのは避けてください。今回参照した資料に、内製化支援と自走の関係を示した記載はありません。約束できるのは、その期間に誰が何を担うかまでです。
プロジェクトマネジメントの判断は社内に残してください。課題の上位に「プロジェクトマネジメント人材の不足」44.4%が入っている以上、*1 ここを社外に委ねると、進め方を決める人がいなくなります。正社員の採用と外部の要員のどちらを選ぶかも、この判断が社内にあるかで変わります。
どの工程を社内で担い、どの工程を外部に委託しているかはシステム開発の外部委託|設計・実装・テストで63.4%で扱っています。同じ調査の別の図表です。
質の不足をどう確かめるかはスキル確認の4つの軸|外部の要員も含めて評価するにまとめました。
上流工程を担う人をどこから連れてくるかは業界経験のある人材|上流工程はOJT121件・採用9件で整理しています。
職種ごとに採用と育成のどちらが難しいかは採用要件を決める手順と企業の49.9%が社内育成に悩む職種にあります。
まとめ:内製化支援で押さえる3つの視点
内製化支援を頼む前に、自走が何を指しているのかを決めておくと、確かめることが決まります。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、25年度に最も高い期待効果は「開発コスト削減」41.3%で、自走に最も近い「社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上」は35.1%と、24年度の43.9%から8.8ポイント下がったこと。*1 第二に、内製化を進めるうえでの課題の上位3つは「開発人材の量の不足」52.7%、「開発人材の質の不足」49.6%、「プロジェクトマネジメント人材の不足」44.4%で、いずれも24年度より増えていること。*1 第三に、内製化支援を受ければ自走できるようになる、といった記載はこの資料にはないことです。この3点を踏まえておけば、「自走を目標に掲げたものの、何ができたら達成なのか誰も答えられない」という事態を避けやすくなります。自走が何を指すかを決め、課題の9個から自社に当てはまるものを選ぶところまでは社内でできます。その先、担う人が社内にいなければ、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
内製化に最も期待されている効果は何ですか
JUAS「企業IT動向調査2026」では、25年度は「開発コスト削減」41.3%です。*1 24年度に最も高かった「社内へのナレッジ蓄積による開発能力向上」は35.1%で、24年度の43.9%から8.8ポイント下がりました。*1 確認日は2026年9月18日です。
内製化を進めるうえでの課題の上位は何ですか
「開発人材の量の不足」52.7%、「開発人材の質の不足」49.6%、「プロジェクトマネジメント人材の不足」44.4%の3つです。*1 いずれも24年度より増えています。確認日は2026年9月18日です。
内製化支援を受ければ自走できるようになりますか
今回参照した資料に記載はありません。この調査は期待している効果と進めるうえでの課題を集計したもので、支援と自走の関係は扱っていないためです。確認日は2026年9月18日です。
選択肢に「自走」という言葉はありますか
ありません。期待する効果は10項目、課題は9項目で、いずれにも自走という語は含まれていません。*1 確認日は2026年9月18日です。
この設問に答えた企業は何社ですか
期待する効果は25年度863社・24年度758社、課題は25年度953社・24年度959社です。*1 調査全体の回収数は957社、有効回答率は21.3%です。*1 確認日は2026年9月18日です。
自走の中身が決まったら相談
「現行の在庫管理機能の仕様書を整理して3か月」といった形で作業と期間が書けていれば、そのままご相談いただけます。量・質・プロジェクトマネジメントのどれが足りないのか、まだ決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、設計や実装を担う要員も、プロジェクトマネジメントの経験がある要員も、作業と期間を決めたうえでお探しいただけます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会発行。アンケート調査は2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社、25年度の回収数957社・有効回答率21.3%。図表7-2-6(システム開発の内製化に期待する効果)および図表7-2-7(システム開発の内製化を進めるうえでの課題)の一次情報として。この記事は資料に示された数値をもとに表と図を筆者が作成した。資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」(調査報告書の一覧)(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(https://juas.or.jp/)。発行元の確認として(2026年9月確認)