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システム開発の外部委託|工程で切る任せ方と範囲の決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 日本情報システム・ユーザー協会の調査では、設計・実装・テストは外部委託が63.4%、システム企画は社内で担う内製が70.9%でした。
- 要件定義は機能要件で内製が多く、非機能要件では外部委託がわずかに多く、運用・保守は両者がほぼ同じ割合です。
- 委託するときは、手が足りない工程を1つ選び、任せる作業と期間を書き出してから相談先を探します。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
既存システムの改修で手が回らなくなり、一部の作業を外部に委託しようと考え始めた。ところが見積りを頼む段になって、要件を固めるところから任せるのか、設計より後の作業だけを任せるのかが決まらない——。システム開発の外部委託を考え始めた現場では、こうした迷いが起こりがちです。システム開発の外部委託とは、システムを企画し、作り、動かし続けるまでの仕事のうち、一部または全部を社外の会社や個人に任せることを指します。
どの工程を任せるかを決めるときの目安になるのが、他社の分け方です。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査」は、システム開発を5つの工程に分け、工程ごとに、社内で担う内製と外部委託のどちらが多いかを企業に尋ねています。*1 ただし万能ではなく、この調査は、工程の中のどの作業まで任せているかや、企業がその分け方を選んだ理由までは集計していません。本記事では、開発の現場を担当するマネージャーに向けて、他社がどの工程を委託しているか、要件定義の2つの工程の違い、委託する工程の決め方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
システム開発の外部委託とは
JUASの調査は、システム開発の仕事を、システム企画、機能要件定義、非機能要件定義、設計・実装・テスト、システム運用・保守の5つの工程に分けています。*1 システム企画は、何のために、どんなシステムを作るかを決める工程です。機能要件定義では、受注を登録する、請求書を発行するといった、システムに持たせる機能を決めます。
非機能要件定義は、機能以外の条件を決める工程です。画面が何秒で表示されるか、何人が同時に使えるか、障害が起きたときにどれだけ早く復旧させるか、情報をどう守るかといった条件がこれに当たります。設計・実装・テストは、決まった要件をもとにシステムを設計し、プログラムを作り、正しく動くかを確かめる工程です。システム運用・保守は、完成したシステムを動かし続け、不具合の修正や小さな改修を続ける工程です。
外部委託には、システム全体をまとめて1社に任せる形のほか、工程ごとに任せる相手を変える形や、一部の工程だけを任せる形もあります。どの工程を任せるかを決めるには、まずこの5つのうち、どこで手が足りないのかを確かめることになります。
他社はどの工程を委託しているのか
JUASの「企業IT動向調査2026」は、東証上場企業とその子会社を対象に、2025年9月5日から10月24日にかけて実施されました。回収数は957社、有効回答率は21.3%です。*1 工程ごとの分担には、工程によって886件から903件の回答がありました。
| 工程 | 内製の合計 | 外部委託の合計 | 回答数 |
|---|---|---|---|
| システム企画(システム化構想策定) | 70.9% | 17.6% | 886件 |
| 機能要件定義 | 46.1% | 31.5% | 884件 |
| 非機能要件定義 | 37.6% | 41.2% | 871件 |
| 設計・実装・テスト | 18.5% | 63.4% | 884件 |
| システム運用・保守 | 42.4% | 38.3% | 903件 |
外部委託の合計がいちばん多いのは設計・実装・テストで、63.4%でした。*1 報告書は、この工程ではベンダー(システム開発を請け負う会社)の力を活用している状況だとまとめています。反対に内製の合計がいちばん多いのはシステム企画で、70.9%です。*1 プログラムを作ってテストする工程は外部に委託し、何を作るかを決める工程は社内で担う企業が多いことになります。
内製の合計を高い順に並べると、システム企画が70.9%、機能要件定義が46.1%、システム運用・保守が42.4%、非機能要件定義が37.6%、設計・実装・テストが18.5%です。運用・保守を除いた4つの工程では、企画から要件定義、設計・実装・テストへと進むにつれて、内製の割合が下がっていきます。
機能要件定義と非機能要件定義の違い
要件定義をひとまとめに考えると、他社の分け方を見誤ります。機能要件定義は内製の合計が46.1%で、外部委託の31.5%を上回りました。一方、非機能要件定義は外部委託の合計が41.2%で、内製の37.6%を上回っています。*1 同じ要件定義でも、機能要件定義は内製が、非機能要件定義は外部委託が多くなっています。
差の大きさも違います。表の数値から差を計算すると、機能要件定義は14.6ポイント(割合どうしの差)、非機能要件定義は3.6ポイントです。非機能要件定義は外部委託がわずかに多いものの、内製とほぼ同じ割合で、「非機能要件は外部に委託するもの」とまでは言えません。
機能要件は、業務の流れや社内の決まりを知っている人でなければ決めにくい要件です。これに対して非機能要件は、性能や障害への備えといった技術の知識で決める部分が大きく、外部の専門家に案を作ってもらいやすい要件です。要件定義をまとめて社内に残すと決める前に、非機能要件の部分だけを外部に委託できないかを考えてみると、任せられる工程が一つ増えます。
運用・保守はなぜ決めにくいのか
システム運用・保守は、内製の合計が42.4%、外部委託の合計が38.3%です。*1 差を計算すると4.1ポイントしかなく、報告書も、内製と外部委託の割合は拮抗している(ほぼ同じである)としています。回答した903件の中に、主に内製する企業と主に外部委託する企業が同じくらいいることになります。
この工程では、他社の割合を見ても、委託するかどうかは決められません。24時間の当番が要るのか、障害の最初の連絡を社内と委託先のどちらが受けるのか、改修をどのくらいの頻度で行うのか——こうした条件は企業ごとに違います。運用・保守を委託するかどうかは、自社の条件を書き出してから決めることになります。
システム開発全体の方針を尋ねた問いでは、「内製・外部委託の混成」が44.0%でいちばん多く、報告書は、これに「内製を増やす」と「外部委託を増やす」を加えた70.2%を、内製と外部委託を使い分ける方針の企業として、大半を占めるとまとめています。*1すべてを社内で担うか、すべてを委託するかの二択ではなく、工程ごとに分けて考える企業が多いということです。
委託する工程をどう決めるのか
決め方は、いま手が足りない工程を1つ選ぶところから始めます。いくつもの工程をまとめて委託しようとすると、頼む作業の量が大きくなり、条件に合う相手が見つかりにくくなります。直近の案件で止まっている作業を書き出し、それが5つの工程のどれに当たるかを確かめてください。
次に、選んだ工程の割合を調査の数値と照らします。設計・実装・テストのように外部委託の合計が63.4%の工程なら、ほかの会社から同じ工程を請け負ってきた相手が多く、探しやすいと考えられます。システム企画のように内製の合計が70.9%の工程は、社内で担う企業が多い工程です。委託するなら、引き受けられる相手は限られると見込んで、早めに探し始めます。
工程が決まったら、任せる作業と期間を書き出します。たとえば「受注画面の改修について、画面どうしをつないだ動作確認の設計と実施を来月末まで」のように、作業の名前と終わりの時期まで書けていれば、見積りも頼みやすくなります。業務委託で加わる個人の専門人材(フリーランス)に頼む場合も、作業と期間が決まっているほど、条件に合う人を探しやすくなります。
つまずきやすい点
一つ目は、工程ごとに回答した企業が違うことを見落とすことです。この表は工程ごとの集計で、回答数も工程によって886件から903件と違います。そのため、「企画は内製、設計・実装・テストは外部委託」のように、1社がどの工程を組み合わせて委託しているかは読み取れません。
二つ目は、工程の名前だけで委託の中身を決めてしまうことです。同じ設計・実装・テストでも、その中のどの作業を任せるかは企業によって違い、調査はこの違いを集計していません。任せる作業は、次の節のように自社で決めておく必要があります。
三つ目は、他社で多い分け方をそのまま自社の分け方にしてしまうことです。運用・保守のように、内製と外部委託の差が4.1ポイントしかない工程では、どちらが多いかは決める手がかりになりません。他社の数値は、自社の分け方がほかの企業と比べて一般的なのか、少数派なのかを確かめるために使います。
外部に委託するときに確認しておきたい点
任せる工程が決まったら、設計から任せるのか、渡した仕様どおりに作ってもらうのかを分けて伝えます。前者なら設計の判断ができる経験が要り、後者ならプログラムの作成とテストを進められる人で足ります。この違いを伝えずに「開発を手伝ってほしい」と頼むと、作業が始まってから任せる作業を決め直すことになり、社内で確認する手間がかえって増えます。
何を作るかを決めるシステム企画は、社内に残しておくのがおすすめです。5つの工程のうち最も内製の割合が高く、内製の合計は70.9%でした。*1 この工程まで社外に委ねると、委託先から受け取った成果物が目的に合っているかを、社内で判断しにくくなります。
正社員を採用するか、外部の専門人材に頼むかも、工程で考えると決めやすくなります。その工程を長く自社で担いたいなら採用、決まった期間だけ人と知識を補いたいなら業務委託が向いています。どちらの場合も、任せる工程を1つに決めてからのほうが、求める経験の条件を書きやすくなります。
同じ調査をもとに、品質が崩れる要因を「システム開発の品質はなぜ崩れる?ベンダーのスキル不足が過半数」で、開発が遅れる要因を「開発遅延の要因は社員のスキル不足が46.5%を占める」で扱っています。テストの体制の組み方は「外部エンジニアのテスト体制、IPAが定める4つの区分」にまとめています。
まとめ:外部委託の工程で確かめておきたい3つの点
システム開発の外部委託で任せる工程を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、設計・実装・テストは外部委託が63.4%、システム企画は内製が70.9%と、他社の分け方が工程ごとにはっきり違うこと。第二に、要件定義は機能と非機能で多い側が逆になり、運用・保守は内製と外部委託が拮抗していて、自社の条件で決める必要があること。第三に、手が足りない工程を1つ選び、任せる作業と期間を書き出してから相談先を探すことです。この3点を踏まえておけば、「開発を手伝ってほしいと頼んだのに、作業が始まってから任せる作業を決め直すことになった」という事態を避けやすくなります。どの工程を委託するかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
調査の対象に中小企業は含まれていますか
含まれていません。企業IT動向調査2026の対象は、東証上場企業とその子会社です。*1 中小企業では、この調査の数値を目安として使い、最後は自社の人数や案件の量に合わせて決めます。
見積りを頼む前に、何を用意しておけばよいですか
任せる工程と作業の名前、終わりの時期、いま使っている技術や資料の有無を書き出しておくと、見積りを頼みやすくなります。資料が少ない場合は、そのことも最初に伝えておくと、委託先が作業の量を見込みやすくなります。
運用・保守を委託しても、社内に残しておく仕事はありますか
あります。どの改修を先に行うかの判断や、委託先から届く報告の確認は、社内で担う仕事として残しておくのがおすすめです。これらの判断まで委託先に任せると、システムが自社の業務に合っているかを社内で確かめにくくなります。
すべての工程をまとめて1社に委託するのはよくないですか
よくないとは言えません。ただし、何を作るかを決めるシステム企画まで委ねると、受け取った成果物を社内で評価しにくくなります。まとめて委託する場合も、企画の判断は社内に残しておくと進めやすくなります。
委託する工程が決まったら相談
設計・実装・テストを来月末まで、といった形で工程と期間が書けていれば、そのままご相談いただけます。まだどの工程を委託するか絞れていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)報告書(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。調査期間2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とその子会社、回収数957社・有効回答率21.3%。図表7-2-1(システム開発の内製/外部委託方針)と図表7-2-3(工程別 システム開発の内製/外部委託度合い)を参照。本文の表は図表7-2-3の数値から作成(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され、報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)