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エンジニア採用の採用要件の絞り方|職種ごとの課題と優先順位
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 人を採るのが難しいと答えた企業が最も多い職種は、情報セキュリティで23.9%でした。
- 社内で育てるのが難しい職種の1位はプロジェクトマネジメントで、49.9%の企業が挙げています。
- 採用要件は1つの職種に絞り、育成が課題の仕事は社内に残すと進めやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
メンバーが1人辞めたあとの求人で、採用要件を書き始めたら条件が10行を超えた。書き終えて読み返すと、これに当てはまる人が本当にいるのか自信が持てない——。欠員を埋めるエンジニア採用では、こうした悩みが起こりがちです。採用要件とは、その求人で任せる仕事と、応募する人に求める経験や技能を書き出したものです。
採用要件を絞るときの手がかりになるのが、同じ職種で他社が何に困っているかです。採るのが難しい職種なのか、社内で育てるのが難しい職種なのかが分かれば、その求人を採用で埋めるのか、社員を育てるのか、外部に委託するのかを先に決めやすくなります。ただし他社の数値は万能ではなく、その傾向がそのまま自社の求人に当てはまるわけではありません。本記事では、エンジニアを採用する開発現場のマネージャーに向けて、職種ごとに挙がった課題、採用と育成の課題の違い、採用要件の絞り方、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
職種ごとに挙がった課題
JUAS(一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査2026」は、東証上場企業とその子会社を対象に、2025年9月5日から10月24日にかけて行われた調査です。回収数は957社、有効回答率は21.3%でした。*1 この調査では、IT部門の人材の課題を12の職種に分けて尋ねています。課題があるときは「採用」「育成」「流出(人が辞めていくこと)」のうち主なものを1つだけ選ぶ形式です。
| 職種 | 採るのが難しい | 社内で育てるのが難しい | 辞めていく |
|---|---|---|---|
| IT・DX戦略や企画の担当 | 20.2% | 44.8% | 11.3% |
| 新技術の調査・検証の担当 | 20.3% | 45.4% | 9.0% |
| 顧客向けサービスの企画の担当 | 11.6% | 28.2% | 6.5% |
| プロジェクトマネジメントの担当 | 14.2% | 49.9% | 10.6% |
| 上流工程(業務分析・要件定義)の担当 | 15.0% | 46.6% | 11.6% |
| データ分析の担当 | 21.3% | 42.5% | 6.9% |
| 生成AIの担当 | 20.0% | 45.3% | 6.2% |
| インフラ・ネットワークの担当 | 19.2% | 36.7% | 12.5% |
| 情報セキュリティの担当 | 23.9% | 41.0% | 11.4% |
| アプリ設計・開発(ウォーターフォール) | 12.8% | 28.6% | 10.6% |
| アプリ設計・開発(アジャイル) | 13.8% | 37.0% | 7.9% |
| 運用管理・運用の担当 | 15.8% | 35.2% | 13.5% |
人を採るのが難しいと答えた企業がいちばん多かったのは、情報セキュリティの職種で23.9%でした。*1 データ分析の職種が21.3%、新技術の調査・検証の職種が20.3%と続きます。JUASの報告書は情報セキュリティについて、他の職種と比べて要員は足りているものの、技術が高度化しており採用が難しいと説明しています。*1
人が辞めていくことを挙げた企業は、どの職種でも採用や育成より少なく、いちばん高い運用管理・運用の職種でも13.5%でした。*1 欠員を埋めるときは、表の「採るのが難しい」と「社内で育てるのが難しい」の数値を比べます。なお、この設問に答えた企業の数は公表されていません。割合の順位は比べられますが、社数に置き換えて比べることはできません。
採用の課題と育成の課題の違い
どの職種でも、社内で育てるのが難しいと答えた企業のほうが、採るのが難しいと答えた企業より多くなっています。いちばん高いのはプロジェクトマネジメントの職種で49.9%、上流工程(業務分析・要件定義)の職種が46.6%、新技術の調査・検証の職種が45.4%と続きます。*1 採用を挙げた割合でいちばん高い23.9%と比べて計算すると、2倍を超える値です。
報告書は、プロジェクトマネジメントと上流工程について、自社の社員が主体となる業務であることから育成が課題になっていると説明しています。*1 どちらも、社内の関係者と話し合いながら仕事の進め方を決めていく役割です。社外から来た人が担えるようになるには時間がかかるため、社内で時間をかけて育てる仕事として考えておく必要があります。
新技術の調査・検証の職種は、採るのが難しいでも社内で育てるのが難しいでも3位に入りました。新しい技術の調査と、それを自社で使えるか確かめる検証の両方を1人に求めると、条件が膨らみます。新しい技術の調査だけを切り出して任せるなど、仕事を分けてから採用要件を書くと進めやすくなります。
なぜ採用要件が膨らむのか
欠員の求人で採用要件が膨らみやすいのは、辞めた人がしていた仕事をそのまま書き写してしまうためです。長く在籍した人は、本来の役割に加えて、周りの作業もいくつか引き受けていることがよくあります。設計もでき、運用も担当でき、若手の指導もできる——そうした人の仕事を1つの求人の採用要件にまとめると、いくつもの役割が混ざったままになります。
辞めた人の仕事を、表の12の職種に当てはめると、その求人に何職種分の仕事が入っているかが見えてきます。プロジェクトマネジメントと上流工程と運用管理が1つの求人に入っていれば、採用要件は3職種分になります。応募が来ない理由が、条件の厳しさではなく、1人に3人分の仕事を求めていることにある場合もあります。
採用要件をどう絞るのか
絞り方は、いま埋めたい求人を1つに決めるところから始めます。いくつもの役割を兼ねていた人の後任でも、その人がいちばん時間を割いていた仕事が、12の職種のどれに当たるかを決めます。
次に、その職種で他社が何を主な課題にしているかを表で確かめ、採るのが難しい職種か、社内で育てるのが難しい職種かを確かめます。情報セキュリティの職種なら採用を挙げた企業が12の職種で最も多く、プロジェクトマネジメントの職種なら育成を挙げた企業が最も多い、という具合です。
採るのが難しい職種だと分かったら、採用要件は、入社してすぐに任せる仕事に必要な経験だけに絞ります。将来任せたい仕事まで条件に加えると、当てはまる候補者がさらに少なくなるためです。社内で育てるのが難しい職種だと分かったら、その仕事は社内に残し、社員を育てる前提で考えます。
絞った採用要件は、「情報セキュリティの担当として、脆弱性診断(システムの弱点を調べる検査)の結果を整理し、対応の優先順位を決めた経験」のように、作業の名前で書いておくと、応募する側が自分の経験と比べやすくなります。
つまずきやすい点
一つ目は、各社が2番目に困っている課題まで表から読み取ろうとすることです。この設問は主な課題を1つだけ選ぶ形式なので、採用と育成の両方に困っている企業がどれだけあるかは示されていません。表の割合は、いちばんの課題として選ばれた割合として見ます。
二つ目は、他社の傾向をそのまま自社の答えにすることです。同じ職種の名前でも、会社によって担当する仕事の中身は違います。表は、自社の求人を採用で埋めるか、育成で埋めるかを考えるときの目安として使い、最後は自社で任せたい仕事から判断します。
三つ目は、採用要件から外した仕事を誰が担うかを決めないことです。外した運用や若手の指導の担当が決まっていないと、入社した人にまとめて任せることになり、次の欠員の求人でまた条件が膨らみます。外した仕事ごとに、社内の誰が担うか、外部に委託するかを決めておきます。
外部に委託するときに確認しておきたい点
外部に委託すると決めた仕事は、任せる作業と期間を書き出します。「脆弱性診断の結果の整理を来月末まで」といった書き方で構いません。作業と期間が決まっているほど、業務委託で加わる専門人材(フリーランスを含む)の中から合う人を探しやすくなります。
一方、社内で育てるのが難しい職種に当たる仕事は、社内に残しておくのが基本です。正社員の採用と外部への委託では、向いている場面が違います。その仕事を自社の役割として長く持ち続けたいなら採用、特定の期間だけ人手と専門知識を加えたいなら外部への委託が合っています。
採用要件の書き方そのものは「エンジニア採用のミスマッチはなぜ起きる?採用要件で防ぐ」で、求める能力の広げ方は「ポータブルスキル9要素で採用要件を広げる」で扱っています。社内の誰が何をできるかを把握するやり方は「スキルマップの整備」、育成の進め方は「スキルベースの人材育成」、人材の確保そのものが進まないときは「人材確保の課題はなぜ入れ子になるのか」をご覧ください。
まとめ:採用要件で確かめておきたい3つの点
エンジニア採用の採用要件を絞るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、埋めたい求人を1つに決め、その仕事が12の職種のどれに近いかを当てはめること。第二に、その職種が、他社にとって採るのが難しい職種か、社内で育てるのが難しい職種かを確かめること。第三に、採用要件は入社してすぐに任せる仕事に必要な経験だけに絞り、育成が課題の仕事は社内に残すことです。この3点を踏まえておけば、「採用要件を10行書いたのに、当てはまる人が1人も応募してこない」という事態を避けやすくなります。採用で埋めるか外部に委託するかに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
他社が社内に持たず外部に委託している職種はありますか
あります。IT部門の担当業務でない、または外部に委託していると答えた割合は、顧客向けサービスの企画の職種が48.1%で最も高く、次がアプリ設計・開発(アジャイル)の32.1%でした。*1
生成AIの担当者は、採用と育成のどちらが課題ですか
採るのが難しいと答えた企業が20.0%と比較的高い一方、辞めていくと答えた企業は6.2%にとどまります。*1 報告書は、採用が難しい理由として、比較的新しい技術であることを挙げています。*1 採用した人は残りやすいものの、採用すること自体が難しい職種です。
この調査は毎年確認できますか
JUASの企業IT動向調査は毎年実施され、報告書が公開されています。*2 職種ごとの課題の順位は年によって変わることがあるため、採用要件を見直す時期に最新版で確かめておくと、古い順位のまま判断せずに済みます。
採用要件を絞ったあとの人探しを相談したいとき
埋めたい求人を社員の採用で埋めるか、業務委託の専門人材に任せるかの切り分けからご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。
出典
- *1 参考:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)報告書(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:JUAS「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会発行。調査期間2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とその子会社、回収数957社・有効回答率21.3%。図表6-4-4(担当業務別 IT人材に関する課題感)、図表6-4-5(採用、育成、流出で課題感の高い担当業務)を参照。図と表は資料の数値をもとに作成したもので、資料の図表そのものではない(2026年9月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。調査が毎年実施され報告書が公開されていることの確認として(2026年9月確認)
- *3 参考:JUAS 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(https://juas.or.jp/)。発行元の確認として(2026年9月確認)