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SESとレガシーシステム、移行の課題は?|提案なしが24.7%
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 何かを挙げたのは44.5%:IPAの2024年度ソフトウェア動向調査で、委託先の側の課題を1つ以上選んだのは回答対象384社中171社でした。*1 「その他」14社を含みます。
- 名前のついた4つでは計画が最多:「計画が提案されない」が95社、24.7%です。*1 「対応要員がいない」は63社、16.4%でした。*1
- 答えているのは発注した側だけ:回答したのはユーザー企業373社とユーザー系情報システム子会社11社です。*1 委託先で実際に何が起きたかを測った調査ではありません。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
レガシーシステムの移行をSES(システムエンジニアリングサービス。期間を決めて技術者に開発や運用へ入ってもらう契約の形)で進めようとしたが、移行が動き出さない。この場面を想定し、他社が委託先の側の課題として何を挙げているかを見ます。
公開データがあります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「2024年度ソフトウェア動向調査」です。*1 この記事の社数と割合は、公開されている回答データを数え直した値です。同じデータから誰でも数え直せます。*1
先に3つ断ります。この設問はベンダー、つまり開発や運用を請け負う事業者全般への見方を聞いたもので、SESに限った質問ではありません。*1 答えているのは発注した側だけです。*1 そしてこの設問は2025年度の調査には無く、2024年度が直近で聞かれた年度です。*2
目次
委託先の側に課題を挙げたのは44.5%
まず、レガシーシステムの定義です。調査は、老朽化・陳腐化、複雑化・肥大化、ブラックボックス化のいずれかに該当するシステムをレガシーシステムとみなす、としています。*1 ブラックボックス化は、ドキュメントなどが整備されておらず属人的に、つまり担当者の頭の中だけで運用・保守が行われ、障害発生元や仕様がわからない状態だと説明されています。*1
そのうえで、レガシーシステムの移行がうまく進まない原因として、ベンダー側に起因すると考えられる課題があれば当てはまるものを全て、という聞き方の設問があります。*1 回答対象は384社です。*1
| 選択肢 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 特になし | 110 | 28.6% |
| 計画が提案されない | 95 | 24.7% |
| わからない | 66 | 17.2% |
| 対応要員がいない | 63 | 16.4% |
| 必要な情報が共有されない | 48 | 12.5% |
| 放置した場合のリスクが共有されない | 41 | 10.7% |
| ベンダーへの委託は行っていない | 39 | 10.2% |
| その他 | 14 | 3.6% |
何らかの課題を挙げたのは171社、44.5%です。名前のついた4つ、つまり「計画が提案されない」「対応要員がいない」「必要な情報が共有されない」「放置した場合のリスクが共有されない」のいずれかが157社で、残る14社は「その他」だけを選びました。この集計はこの記事で行いました。
名前のついた4つでは「計画が提案されない」が95社、24.7%で最も多くなりました。*1 選択肢の文には、移行・最新化に向けた具体的なロードマップや技術提案がない、と書かれています。*1 「対応要員がいない」は63社、16.4%、「必要な情報が共有されない」48社、12.5%、「放置した場合のリスクが共有されない」41社、10.7%です。*1
複数選んだ企業もいます。4つのうち1つだけを選んだのが95社、2つが40社、3つが16社、4つすべてが6社で、合わせて157社。「計画が提案されない」を選んだ95社のうち51社は、ほかの課題も合わせて挙げています。複数回答なので、どの課題を重く見たかまでは分かりません。この数え直しはこの記事で行いました。
回答全体でいちばん多いのは「特になし」の110社、28.6%でした。*1
回答対象384社は発注する側だけ
384社が誰かです。答えたのはユーザー企業373社と、ユーザー系情報システム子会社、つまり親会社の情報システムを担当する子会社が11社で、開発を請け負う側の事業者は入っていません。*1 発注した側の見方を集めた数字です。
384社の作られ方はこうです。この設問は、前の設問でレガシーシステムを保有していると答えた企業と、過去に保有していたが今は保有していない企業だけが回答します。*1 前者322社と後者62社で、足すと384社です。
公開データ全体の回答は799社です。*1 レガシーシステムの有無を尋ねた設問に答えたのは682社で、残る117社は回答対象ではありません。*1 企業種別によって回答する設問が変わる調査です。*1 682社と384社の差である298社は、保有していないと答えた149社と、わからないと答えた149社です。*1
384社が重なりなくどう分かれるかも数えました。何らかの課題を挙げた171社、「特になし」110社、「わからない」66社、これら以外で「ベンダーへの委託は行っていない」だけを選んだ37社。足すと384社になります。表の39社との差の2社は、委託は行っていないと答えながら課題も挙げており、回答が食い違っています。この確認はこの記事で行いました。
分母の中身にも注意が要ります。384社には委託していない39社が入ったままなので、44.5%は委託している企業だけの割合ではありません。設問の回答条件はレガシーシステムの保有だけで、移行に着手したかどうかは問われていません。*1
人を入れる前に決める3つ
ここからは、レガシーシステムに外から人を入れる前に決める点を3つ挙げます。調査はSESと請負を分けていませんが、SESで技術者に入ってもらう場面に置き直しました。並べた順番は優先度ではありません。この3つはこの記事で組み立てました。
1つめは、移行計画を誰が書くかを決めることです。ロードマップや技術提案が出てこないという回答が95社ありました。*1 技術者に入ってもらう契約では、計画づくりを誰の仕事にするか決めないまま始まることがあります。計画を自社で書くのか、提案まで含めて頼むのかを先に分けます。
2つめは、既存システムの情報を誰が出すかを決めることです。「必要な情報が共有されない」は48社が挙げています。*1 選択肢の文には、システム構成や保守期限、既存の課題に関する情報が共有されていない、と書かれています。*1 ただし理由が相手側にあるとは限らず、自社に資料が残っていない場合もあります。
3つめは、その技術を扱える人が相手にいるかを、契約の前に確かめることです。「対応要員がいない」は63社でした。*1 対象のシステムで使われている言語やデータベースの名前を挙げて、経験のある人が今いるかを聞きます。これはこの記事の読み方です。
つまずきやすい難所
この数字を委託先との話に持ち込むとき、引っかかる点が3つあります。
1つめは、この設問がSESを名指ししていないことです。聞いているのはベンダー全般に対する見方で、契約の形は分かれていません。*1 SESで入ってもらった技術者の話か、請負、つまり成果物の完成まで任せる契約で頼んだ会社の話かは、区別できません。
2つめは、答えが発注した側の認識だということです。委託先に計画を書ける人がいなかったのか、こちらが提案を求めていなかったのかは、この調査では分かれていません。相手を責める材料にはなりません。これはこの記事の読み方です。
3つめは、1位の項目だけでは終わらないことです。「計画が提案されない」を選んだ95社のうち51社は、ほかの課題も挙げていました。計画さえ出てくれば動き出す、という読み方は半分の企業には当てはまりません。これはこの記事の読み方です。
自社の側で刷新が止まる理由は別の記事「レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足」で扱いました。そちらは自社の要員が足りない話で、この記事とは主語が違います。段階ごとの止まり方は「レガシー移行が進まない理由」にあります。
外注時に確認しておきたい点
この調査が聞いていないことは、自社で確かめることになります。3つ挙げます。この3つはこの記事で挙げたものです。
1つめは、計画が出てこない理由を相手に聞くことです。この設問は発注した側だけに尋ねています。*1 相手に聞くと、資料が渡っていない、判断する人が決まっていないなど、自社側の事情が出ることもあります。
2つめは、断られたときにどうするかを先に決めることです。調査は、対応要員がいないと答えた企業がその後どうしたかを聞いていません。社内で抱えるのか、別の相手を探すのか、先送りするのか。この分岐を契約の前に置きます。
3つめは、経緯を記録に残すことです。この調査で「わからない」と答えた企業は66社ありました。*1 なぜそう答えたかは尋ねられていません。自社については、誰が何を依頼して何が返ってきたかを残しておけば、あとから見直せます。
まとめ:4割が課題を挙げ、最も多いのは計画
読み取れることは4つです。第一に、IPAの2024年度ソフトウェア動向調査で、ベンダー起因の課題を尋ねた設問では、回答対象384社のうち何らかの課題を挙げたのが171社、44.5%でした。回答全体でいちばん多いのは「特になし」の110社、28.6%です。第二に、名前のついた4つでは「計画が提案されない」が95社、24.7%で最も多く、「対応要員がいない」は63社、16.4%でした。ただし95社のうち51社はほかの課題も挙げており、計画だけの話ではありません。第三に、回答したのはユーザー企業373社とユーザー系情報システム子会社11社で、発注する側だけです。384社には委託していない39社も入っているので、44.5%は委託している企業だけの割合ではありません。第四に、この設問はベンダー全般に対する見方を聞いたもので、SESに限らず、2025年度の調査には無くなっています。
よくある質問
レガシー移行で委託先の側の課題として多いのは何ですか
IPAの2024年度ソフトウェア動向調査では、「計画が提案されない」が回答対象384社中95社、24.7%で、名前のついた4つでは最も多くなりました。*1 「対応要員がいない」は63社、16.4%です。*1 確認日は2026年9月19日です。
回答した384社はどんな企業ですか
企業種別ではユーザー企業373社とユーザー系情報システム子会社11社で、開発を請け負う側の事業者は入っていません。*1 保有状況では、レガシーシステムを保有していると答えた322社と、過去に保有していたと答えた62社です。*1 業種や従業員数の内訳は集計していません。
「特になし」が28.6%というのはどういう意味ですか
ベンダー側に起因する課題として当てはまるものが無い、という回答です。*1 回答全体では最も多い答えでした。*1 なお「わからない」66社と「ベンダーへの委託は行っていない」39社は、課題が無いという意味ではありません。
この調査はSESについて聞いているのですか
いいえ。聞いているのはベンダー全般に対する見方で、契約の形は分かれていません。*1 SESの技術者の話か請負で任せた会社の話かは、この数字からは区別できません。
もっと新しい年度の調査はありますか
2025年度の調査は公開されていますが、この設問はそちらには無く、レガシーシステムの設問は2024年度の29問から3問に減っています。*2 ベンダー起因の課題が聞かれたのは、いまのところ2024年度が直近です。*2
移行の進め方から相談したいときは
計画づくりから頼むのか、作業に入ってもらうのかが決まっていない段階でもご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:IPA「2024年度ソフトウェア動向調査(企業向け)」調査結果の公開データと設問一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/result-software2024.html)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「2024年度ソフトウェア動向調査(企業向け)」。設問一覧のQ5-22「移行に関するベンダー起因の課題」の設問文と8つの選択肢、Q5-2「レガシーシステムの有無」の設問文とレガシーシステムの考え方(老朽化・陳腐化、複雑化・肥大化、ブラックボックス化)およびそれがQ5-22の回答条件であること、この2問の回答対象がユーザー企業とユーザー系情報システム子会社であること、企業種別によって回答対象の設問が変わることの一次情報として。表の社数と割合、企業種別の内訳、384社の内訳、複数選択の分布は、同ページで公開されている調査結果(選択肢項目文字列)のCSVをこの記事で集計した値(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「2025年度ソフトウェア動向調査」調査結果の公開ページと設問一覧(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/software-engineering/software2025.html)。2025年度の設問一覧にレガシーシステムの設問が3問(有無・影響・刷新の課題)しかなく、ベンダー起因の課題を尋ねた設問が無いことの確認として。2024年度のレガシーシステムの設問が29問であることは2024年度の設問一覧による(2026年9月確認)