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外部人材活用で進める生成AIの導入、社内と専門家の役割の違い
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 生成AIの導入で専門家によるアドバイスやサポート体制がある日本企業は22.1%で、中小企業では27.8%と大企業の20.2%を上回ります。
- 白書が紹介する中小企業の事例では、課題をAIで解決すべきかの判断と、プロジェクトを始めた後の個別の相談で専門家の支援が特に有効だったとされています。
- どの業務を変えるかと、人と生成AIの作業の分担は社内で決め、専門家には判断の材料を出してもらい、技術面の相談に乗ってもらうと進めやすくなります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
生成AIのツールは入れたものの、使っているのは一部の社員だけ。どの業務に使えばよいかを社内で決めきれず、試しては止まってしまう——。生成AIの導入を始めた職場では、こうした状態が続きがちです。総務省の2026年の企業調査でも、日本では27.0%の企業が、生成AIによる業務の変革に組織として取り組んでいないと答えています。*1 生成AIの導入における外部人材活用とは、どの業務に生成AIを使うかの判断や導入の作業の一部を、社外の専門家や業務委託の専門人材に担ってもらうことを指します。
外部人材活用が役に立ちやすいのは、生成AIで解決する課題を選ぶときと、試し始めてから行き詰まったときです。ただし万能ではなく、どの業務を変えるかや社内のデータの扱いを決めることは、社内に残しておくほうが進めやすくなります。本記事では、開発チームをまとめるマネージャーに向けて、生成AIの導入状況、専門家の支援の使われ方、社内と専門家の役割の違い、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。
目次
生成AIの導入はどこまで進んだのか
総務省は2026年1〜2月に、日本・米国・ドイツ・中国の企業の管理職以上を対象にインターネット調査を行い、日本では515社(大企業353社、中小企業162社)から回答を得ました。*2 結果をまとめた「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIの活用方針を「積極的に活用する方針である」または「活用する領域を限定して利用する方針である」と答えた日本企業は合わせて68.9%で、前年度の調査の49.7%から大きく上がりました。何らかの業務で生成AIを利用している割合も86.4%と、前年度の55.2%から伸びています。*1
一方で、会社として業務を変える取り組みになっているかは別の話です。業務の変革に向けた組織的な取り組みを尋ねると、全社横断で取り組む企業が21.5%、部署ごとに業務の最適化を進める企業が32.4%、個人の生産性向上に組織として取り組む企業が11.7%でした。*1 残る27.0%は組織的な取り組みはないと答えており、中小企業に限ると45.6%と、大企業の18.1%の2倍を超えます。
環境整備に表れた専門家の支援
同じ調査は、生成AIによる業務の変革に向けて、どのような環境を整えているかも尋ねています(複数回答)。日本で最も多いのは、業務プロセスの見直しや活用の検討に必要な「スキルやノウハウを学ぶ環境がある」で39.9%、次いで「予算や人員が確保されている」が37.4%でした。外部人材活用のうち助言や支援にあたる「専門家によるアドバイスやサポート体制がある」は22.1%で、6つの取り組みのうち5番目です。
| 取り組み | 日本 | 米国 | ドイツ | 中国 |
|---|---|---|---|---|
| スキルやノウハウを学ぶ環境がある | 39.9 | 62.7 | 60.4 | 71.7 |
| 予算や人員が確保されている | 37.4 | 50.0 | 41.5 | 50.2 |
| 社内データの整備が進められている | 26.1 | 33.0 | 27.4 | 44.0 |
| 社内データを学習させたり、参照できるデータベースを構築したりしている | 24.5 | 57.2 | 54.4 | 73.0 |
| 専門家によるアドバイスやサポート体制がある | 22.1 | 27.2 | 25.6 | 24.6 |
| 社員が生成AIを使ったアプリなどを開発できる技術環境にある | 15.3 | 22.1 | 27.4 | 31.1 |
| 特に実施している施策はない・把握していない | 19.9 | 0.7 | 0.7 | 0.3 |
他の3か国と比べて差が大きいのは、生成AIに社内データを学習させたり、生成AIが参照できるデータベースを作ったりする取り組み(社内の資料をもとに生成AIが答えられるようにすること)です。日本の24.5%に対し、米国は57.2%、ドイツは54.4%、中国は73.0%でした。*1 専門家の支援体制は米国27.2%、ドイツ25.6%、中国24.6%で、日本との差は2.5〜5.1ポイントにとどまります。
企業規模で分けると、並び方が変わります。大企業では専門家の支援体制は20.2%で、6つの取り組みのうち5番目です。ところが中小企業では27.8%と大企業を上回り、スキルやノウハウを学ぶ環境の35.4%、予算や人員の確保の34.2%に次ぐ3番目に来ます。社内データの整備の17.7%よりも多い数字です。ただし、中小企業の26.6%は特に実施している施策はないと答えています。*1
専門家の助言が役に立った場面
白書は、専門の支援業者と組んで生成AIの導入を進めた中小企業として、奈良県や京都府南部で注文住宅や介護、保育などを手がけるアイニコグループを紹介しています。ChatGPTなどのAIツールは以前から社内にありましたが、使い方は個人にとどまり、業務全体にどう広げるかが課題だったといいます。
同社はまず支援業者と連携して全社員向けの勉強会を開き、その後、1年間のプロジェクトを集中して行いました。全10事業部から2名程度、計21名が参加し、各事業部の課題をもとに、生成AIで解決したい課題と目標を決めています。週1回1時間程度の勉強会で進み具合を確かめて専門家の助言を受け、3か月、6か月、12か月の時点で成果を共有しました。最終報告では、全10事業部の合計で年間2,247時間分の業務時間の削減が報告されています(同社が提供した数値)。*1
同社は、専門家の支援が特に有効だった局面を2つ挙げています。一つは課題を決めるときの「その課題はAIで解決すべきかどうか」という判断、もう一つはプロジェクトを始めてからの「このやり方ではうまくいかない」といった個別の相談です。*1 新しいツールを使うかどうかも、セキュリティ面の情報を確かめながら支援業者に相談して決めているとされています。
プロジェクトを終えた後も、同社は勉強会を月1回続け、困ったときに支援業者へ相談できる状態を保っています。2026年4月からは、各部門からAI活用の専任スタッフを選ぶ予定です。同社は、専門家の助言を受けながら進めたうえで、社内でAI活用を担う社員を置く順序をとっています。
社内と専門家の役割の違い
白書は、ヒアリングした先進企業の多くに共通する体制も整理しています。検討の出発点は事業部門の現場のニーズや課題で、そこにDX推進部門(全社のデジタル化を進める部署)が加わり、アイデアの提案、導入時の技術的な助言、セキュリティ対策、効果の測定、学習の機会づくりを受け持つという形です。推進を担う部署を持つ企業では、これらの役割を社内の部署が受け持っています。
推進を担う部署を置けない企業では、同じ役割の一部を外部人材活用でまかなうことになります。アイニコグループでも、課題を挙げたのは各事業部の社員で、専門家はその課題を生成AIで解決すべきかの判断と進め方の相談を受け持ちました。段階ごとに並べると次のとおりです。
| 進める段階 | 社内で決めること | 外部の専門家に頼めること |
|---|---|---|
| 課題を選ぶ | 現場で困っている業務を挙げ、どれから取り組むかを決める | その課題を生成AIで解決すべきかどうかの判断を助ける |
| 試して進める | 参加する社員と、成果を確かめる時期を決める | うまくいかないときの個別の相談に乗る |
| ツールを選ぶ | 使ってよいかを最終的に決め、利用のルールを周知する | セキュリティ面の情報をもとに導入の可否を一緒に検討する |
| 業務の流れを変える | どの作業を人が判断し、どの作業を生成AIに任せるかを決める | 社内の文書やデータを生成AIが読めるようにする仕組みの設計や開発を担う |
白書によると、先進企業は業務プロセスを作り直す際に「どのタスクはAIを人間の思考や判断の補助として用い、どのタスクはAIに自律的に実行させるべきか」を検討しています。*1 この分担は、業務の中身と、誤りが出たときに誰が責任を負うかを知っている社内の人が決めるものです。専門家には、生成AIの技術的な特性や他社の進め方といった、判断の材料を出してもらうと役割が重なりません。
個人の利用から業務の変革へ進める順序
白書は、効果を生むまでの段階を2つに分けて示しています。まず、ChatGPTのような、比較的安く導入できる一般向けの生成AIを社員の個人作業で使うことを組織として広げ、AIの特性や使える業務への理解を社内で深めます。そのうえで、人と生成AIがどう協力して働くかを決め、業務の流れ全体を、生成AIを使う形に作り直していきます。
最初の段階で気をつけたいのが、社員が個人の判断でAIを業務に使う「シャドーAI」です。入力した機密情報が流出するおそれがあるため、白書は情報漏えいの対策をした利用環境を社内に用意し、利用のルールやガイドラインを整えて周知することを挙げています。生成AIのリスク対策として「全社的な指針やガイドラインを整備している」と答えた日本企業は41.1%で、対策のなかでは最も多い一方、中小企業では29.1%にとどまります。*1
次の段階に進み、生成AIを使った製品やサービスを企画・導入するときは、公開前の審査が問われます。「製品・サービスの企画・導入段階で、専門的な知見から審査する体制がある」と答えた企業は、日本の26.1%に対し、米国では52.5%、中国では59.0%でした。*1 白書は、他の3か国では顧客向けの製品にも生成AIを使っており、それに合わせて審査や評価の体制が整いつつあると見ています。顧客向けのサービスに生成AIを使うなら、審査の知見を持つ専門家に加わってもらうのも一つの方法です。
つまずきやすい点
一つ目は、ツールを用意したところで止まってしまうことです。白書も、汎用の生成AIツールを入れても一部の積極的な社員だけが使い、全社での活用にまで至らない場合があると述べています。日清食品グループは、効果が見込める業務を部門ごとに選び、生成AIへの指示文のひな形を作って効果を測る取り組みを少しずつ広げ、社内の利用率が7割を超えたとされています。
二つ目は、作業時間の短縮だけを目標にすることです。生成AIの活用で生じうる影響を尋ねると、日本では「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%で最も多く、「製品・サービスの質の向上」は32.2%でした。*1 他の3か国では質の向上が最も多く挙がっています。時間の短縮だけを追うと、どの業務の質を上げるかを決めないまま進むことになります。
三つ目は、取り組む課題を選ぶところまで専門家に任せてしまうことです。前に見たとおり、アイニコグループでも課題を挙げたのは各事業部の社員でした。課題選びは、現場の困りごとを知っている社員が受け持つほうが進めやすくなります。
外部に委託するときに確認しておきたい点
外部人材活用を始める前に、頼む作業と期間を書き出しておきます。「営業部の問い合わせ対応に生成AIを使うかどうかの判断を1か月」「議事録作成の指示文のひな形作りと社内の勉強会を3か月、週1回1時間」——ここまで書けていれば、相談する相手も決めやすくなります。
次に、助言を頼むのか、作業まで任せるのかを分けます。課題の選び方や進め方の相談なら、生成AIの導入を支援した経験のある専門家が向いています。一方、日本企業で遅れている、社内の資料をもとに生成AIが答える仕組みづくりは設計と開発の作業で、業務委託で開発に加わる専門人材を探すことになります。
最後に、社内に残すものを決めておきます。取り組む課題の最終的な判断、社内データの扱いのルール、利用のルールの3つは、委託先が替わっても社内でわかる状態にしておくと、専門家の支援を終えた後も取り組みを続けやすくなります。
生成AIに関わる作業を外部に頼むときの調達の手順は「外部人材活用で生成AIの仕事を頼むときに行う5つのこと」で、社員が個人で使ってきた生成AIの記録の残し方は「生成AIの個人利用の引き継ぎで残す4つの記録」で扱っています。
まとめ:生成AIの導入で確かめておきたい3つの点
外部人材活用で生成AIの導入を進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、専門家の支援体制を整えている日本企業は22.1%で、中小企業では27.8%と大企業より多いこと。第二に、白書が紹介する事例では、課題を生成AIで解決すべきかの判断と、プロジェクトを始めた後の個別の相談で専門家の支援が特に有効だったこと。第三に、どの業務を変えるか、人と生成AIの作業をどう分けるかは社内で決め、専門家には判断の材料を出してもらい、技術面の相談に乗ってもらうことです。この3点を踏まえておけば、「ツールは入れたのに、一部の社員しか使っていない」という事態を避けやすくなります。頼む作業の決め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
この調査は、どのような企業に聞いたものですか
従業員10名以上で、2025年までにデジタル化の取り組みを始めた企業に勤める管理職以上の人に聞いたインターネット調査です。大企業と中小企業は業種ごとに従業員数で分け、製造業や情報通信業などは300人以上、卸売業・小売業とサービス業・その他は100人以上を大企業としています。*2
生成AIの効果を感じている企業が多いのは、どの業務ですか
議事録やメールの作成補助です。この業務で導入の効果があると感じると答えた日本企業は72.3%で、ほかの業務より目立って高い割合でした。活用している割合もこの業務が約7割で最も多くなっています。*1
社内システムの開発・運用で生成AIを使っている企業はどのくらいありますか
日本の社内システムの開発・運用では、「業務プロセスがAI中心に変更されている」企業が8.0%、部署内の特定の業務で使っている企業が24.5%、社員が個人作業の効率化で使っている企業が17.9%でした。合わせると50.4%です。残りは未導入が26.6%、わからないが18.7%、社内に該当業務はないが4.2%でした。*3
生成AIの導入で頼む作業が決まったら相談
「議事録作成の指示文のひな形作りを3か月」のように作業と期間が書けていれば、そのままご相談いただけます。社内で担うか外部に委託するかを決めきれていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状(PDF)(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/n1210000.pdf)。出典:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節。図表Ⅰ-2-1-1〜Ⅰ-2-1-10の企業向け調査の結果、アイニコグループの事例、企業活動における効果的なAI導入・活用に向けた考察(重要となる要素、図表Ⅰ-2-1-23の効果創出のステップ)を参照。図表の数値は総務省(2026)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」による。表と図は示された数値をもとに作成したもので、資料の図表そのものは複製していない(2026年9月確認)
- *2 参考:総務省「令和8年版 情報通信白書」付注(PDF)(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/pdf/01fuchuu.pdf)。出典:企業活動に関するアンケートの調査方法(インターネットアンケート調査、調査期間2026年1月〜2月、対象者の条件、日本の有効回答数515(大企業353・中小企業162)、企業規模の分類基準)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:総務省「令和8年版 情報通信白書」データ集(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/datashu.html)。出典:図表Ⅰ-2-1-1〜Ⅰ-2-1-10のCSVデータ。業務類型ごとの生成AI活用状況(日本)の「社内システム開発・運用」の値を参照(2026年9月確認)
- *4 参考:総務省「令和8年版 情報通信白書」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/r08.html)。発行元と公開ページの確認として(2026年9月確認)