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2026.09.29 採用支援コラム

エンジニア採用の増員計画、資金調達のあとに決める採用の順番




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 資金調達後の増員計画は、人数より先に役割を書き出し、技術の方針を決める中核の役割から採用の順番を決めます。
  • 経営陣が採用を担う会社では選考に時間がかかりやすいため、入社してほしい月から逆算して募集を始めます。
  • 実装のように切り出せる仕事は業務委託や副業・兼業と組み合わせ、判断が要る役割は社員に任せます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

資金調達が決まったので、エンジニアを増やしたい。けれども、誰から採ればよいのか、いつまでに何人そろえればよいのかが決まらない——。創業から日の浅い会社や成長の途中にある会社では、こうした迷いが起こりがちです。資金調達後の増員計画とは、調達した資金で進める事業計画に合わせて、どの役割の人を、いつ、どの方法で迎えるかを決めた計画のことです。

増員計画があれば、正社員の採用と外部人材の使い分けを前もって決められます。ただし万能ではなく、事業の中身が変われば計画も見直すことになります。本記事では、エンジニア採用を担う開発部門の責任者に向けて、採用の順番、採用する時期、採用と外部人材の組み合わせ、そして外部に委託するときに確認したい点を整理します。

黒い鉄の手すり子と真ちゅうの手すりが続く、石造りのらせん階段を上から写した写真

資金調達後の増員計画とは

中小企業庁の「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」(2023年6月)は、人材戦略を3つのステップで検討するよう勧めています。経営課題と人材課題を見つめ直す、人材戦略を検討する、人材戦略を実行する、という順です。*1 増員計画もこの順で作ると、「何人採るか」より先に「どの課題のために、どんな人が要るか」が決まります。調達した資金で進める事業計画を読み、人が足りずに進まなくなりそうな開発の仕事を書き出すところから始めます。

どんな人が要るかは、会社の段階によっても変わります。経済産業省の予算で行われた「スタートアップエコシステムの創出にむけた大企業人材の流動促進に関する調査」(2022年3月)は、スタートアップの抱える課題は成長の段階によって異なり、創業前後から事業を始めて間もない時期は、人材不足や組織の仕組みが整っていないことで、事業の成長が止まるおそれがあると整理しています。 報告書の図では、シード期(事業を立ち上げる前後の段階)の課題を「人材・スキル不足」とし、アーリー期(事業を始めて間もない段階)以降は、組織の仕組みを作る知識が足りないことを課題に挙げています。*2

資金調達の額が決まると、経営陣は、エンジニアを何人採れるかを先に知りたくなります。ただ、ここで取り上げる資料は、調達額と採用人数の関係を数値では示していません。人数は、任せる役割と入社してほしい時期を決めてから数えるほうが、計画の根拠を社内に説明しやすくなります。

なぜ採用の順番が問題になるのか

ガイドラインは、求める人材を「中核人材」と「業務人材」に分けて考えるよう求めています。 中核人材は、各部門の中心となって難しい業務を担う人、複数の人員を指揮・管理する人、高い専門性や技能を持つ人などです。業務人材は、比較的定型的な業務を担う人や、中核人材の指揮・管理のもとで業務を行う人を指します。*1

順番の大切さは、ガイドラインにある対話の例によく表れています。新商品の販売に向けて営業部門に人を集めたところ、営業の方針をめぐって従業員の意見が衝突し、若手の離職が続いた会社の例です。支援機関は「欠員補充として若手を採用するより前に、リーダーを担える営業経験に長けた人材を採用すること」を検討してはどうかと助言しています。*1 専任の即戦力を採用するのが難しければ、副業・兼業人材を起用するのも選択肢だとしています。

営業の例ですが、開発チームでも同じことが起こります。設計の方針やコードの書き方を決める人がいないまま実装を担うエンジニアを増やすと、人ごとに作り方がそろわなくなりがちです。エンジニア採用では、先に技術の方針を決め、ほかのエンジニアの作業を確認して指示する中核の役割を採り、そのあとで実装やテストを担う人を増やす順が基本になります。

採用する時期の決め方

時期を決めるときは、選考にかかる時間を見込みます。先の調査は、シード・アーリー期のスタートアップには採用担当がおらず、経営陣が採用を担うものの、ダイレクトスカウト(企業から候補者に直接声をかける方法)の時間を確保できず、候補者を集められないうえ、面談の調整にも時間がかかると指摘しています。*2 候補者が大企業の選考も同時に受けていると、選考に時間がかかるスタートアップは、候補者が他社で決まってしまうこともある、という人材紹介会社の見方も載っています。

そのため増員計画には、入社してほしい月だけでなく、募集を始める月と、面接に出る人の予定も書いておきます。技術の方針を決める人を採るなら、面接にはCTO(技術部門を率いる役員)や開発の責任者が出ることになり、その間は開発の仕事に使える時間が減ります。面接の回数と担当者を先に決めておくと、開発の予定と並べて無理がないかを確かめられます。

採用の実務に手が回らない場合について、報告書はRPO(採用代行)を人材紹介会社に依頼することで、採用を早められると書いています。 ガイドラインも、内定までスピード感をもって対応できているか、内定後や入社後のフォローができているかを見直すよう勧めています。 選考の途中で連絡が途切れないようにすることも、時期どおりに入社してもらうための準備です。

採用と外部人材の組み合わせ

迎え方は正社員の採用だけではありません。報告書は、スタートアップの経営者に向けて「正社員、業務委託、兼業・副業、プロボノ、出向など、人材を獲得する手段は多岐にわたる」と述べ、自社の成長の段階や社風に応じた手段を使う必要があるとしています。*2 プロボノは、仕事で身につけた知識を生かして無償で手伝う活動です。

どの手段が合うかは、仕事を切り出せるかどうかで決まります。報告書は、副業では業務内容を定義して見通しておく必要があり、業務を期限と成果物の決まった単位に分けることが望ましいとしています。そのうえで、マーケティング、プログラミング、デザインや制作のように作業を切り出しやすい業務は副業・兼業に向いている一方、事業企画は業務内容を定義しづらい、と書いています。*2 開発でいえば、実装は切り出しやすい側に入り、技術の方針を決める役割は中身を前もって書き切るのが難しい仕事です。

社内に詳しい人がいない分野の人を採るときは、採用の基準が分からないため、まずは副業や業務委託で加わってほしい、というスタートアップ側の声も挙がっています。 副業でのマッチングは、カルチャーフィット(会社の考え方や働き方に合うか)を確かめる期間として好意的に受け止められており、将来的に正社員になればよいという認識もあると報告されています。*2

一方で、ガイドラインはアウトソーシング(外部化)について、費用がかかる、仕事のノウハウが社内に残らないといった影響も懸念されるとし、対象の事業が今後の事業方針の核であるかなどを確かめるよう求めています。 副業・兼業人材を迎える場合も、取り組んでもらいたい業務の切り出しと稼働期間の設定を前もって検討することが重要だとしています。*1 役割ごとに整理すると、次のようになります。

役割ごとの迎え方の例(この記事の整理)
役割 主な迎え方 増員計画に書くこと
技術の方針を決める人 正社員の採用。決まるまでは副業・兼業で加わってもらう 任せる判断の中身と、面接に出る人
実装やテストを担う人 正社員の採用と業務委託を組み合わせる 作業の名前と期間
社内に経験者がいない分野の人 まず副業や業務委託で加わってもらい、採用の基準を作る 採用に切り替えるかを決める時期
採用の実務 RPO(採用代行)への依頼 日程調整など、依頼する作業

大企業から迎える人に伝えること

中核の役割を、大企業で経験を積んだ人に任せたい場合もあります。報告書は、大企業からスタートアップに転職した経験のある101人に、転職でどのような変化があったかを聞いています(2021年5月)。仕事の楽しさは89%、仕事の自由度・裁量は93%が「大幅によくなった・よくなった」と答えました。*2

大企業からスタートアップに転職した101人に、転職でどう変わったかを聞いた結果の帯グラフ。仕事の楽しさは、大幅によくなった・よくなった89%、同水準10%、悪くなった1%、大幅に悪くなった0%。仕事の自由度・裁量は、同じ順に93%、5%、2%、0%。年収は、26%、23%、28%、24%。2021年5月の調査。出典は経済産業省予算事業「スタートアップエコシステムの創出にむけた大企業人材の流動促進に関する調査」(令和4年3月)。

年収は答えが分かれています。「大幅によくなった・よくなった」26%、「同水準」23%、「悪くなった」28%、「大幅に悪くなった」24%で、下がった人は合わせて52%です。*2 増員計画に中核の役割を入れるなら、年収の条件を先に決めておき、任せる仕事と裁量の大きさを面接で具体的に伝えます。報告書の総括にも、スタートアップの経営者は人材に求める成果とその時間軸まで明確にする、という指摘があります。

報告書は、大企業人材のうち、社会人としての基礎が身についた第二新卒(入社数年以内で転職する若手)と、マネジメントの経験があり、仕事の進め方を仕組みにしてほかの部署にも広げられる中間管理職に、スタートアップからの関心が高いとしています。特定の知見やスキルを持つ人材は、スタートアップで働く心構えが合わない場合は、正社員ではなく業務委託が好ましい、とも書いています。 同じ経験者でも、社員として迎えるか、業務委託で加わってもらうかを役割ごとに分けて考えることになります。

つまずきやすい点

一つ目は、調達額から人数を先に決めてしまうことです。人数だけが決まると、採りやすい実装の担当から先に決まり、技術の方針を決める人が最後まで決まらないことがあります。役割と順番を先に書き、人数はそのあとに数えます。

二つ目は、採用の実務を担う人を決めないまま募集を始めることです。日程調整や候補者への連絡を誰が行うかを、募集の前に決めておきます。

三つ目は、社外の人に見せる情報を決めていないことです。報告書は、スタートアップ側の懸念として、他社に知られると困る技術などの情報が、正社員以外から漏れることを挙げています。 業務委託や副業で加わってもらう前に、見せる資料と秘密保持の取り決めを契約で決めておきます。

外部に委託するときに確認しておきたい点

採用が決まるまでの開発を外部に委託するなら、任せる作業と期間を書き出してから相談します。「決済機能の実装とテストを3か月」「既存システムの保守を、社員の採用が決まるまで」のように書けていれば、引き受けてくれる人を探しやすくなります。技術の方針を決める判断は社内に残し、委託先には決めた方針に沿った作業を頼む形にしておくと、社員が入ったあとの引き継ぎも進めやすくなります。

採用を待つ間に外部人材に頼むときの決めごとは外部人材活用を採用難のつなぎにするとき決める4つのことで、来期に必要な人数の数え方は要員計画に必要な4つの数字と決める順番で扱っています。副業で加わってもらうエンジニアとの確認事項は副業エンジニアと契約する前に本人と確かめる5つのことに、資金調達と技術者の獲得を大学発ベンチャーの調査で見た内容は大学発ベンチャー調査の記事にまとめています。

まとめ:増員計画で確かめておきたい3つの点

資金調達後の増員計画を立てるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、人数より先に役割を書き出し、技術の方針を決める中核の役割から採用の順番を決めること。第二に、経営陣が採用を担う会社では選考に時間がかかるため、入社してほしい月から逆算して募集を始め、採用の実務を担う人も決めておくこと。第三に、実装のように切り出せる仕事は業務委託や副業・兼業と組み合わせ、判断が要る役割は社員に任せることです。この3点を踏まえておけば、「調達のあとに人を増やしたのに、開発の進め方が決まらない」という事態を避けやすくなります。エンジニア採用の順番や外部人材との組み合わせに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

増員計画で役割と時期が決まると、採用が決まるまでの開発をどう進めるかも判断できます。技術の方針を決める人の採用を進めながら、実装やテストのように作業と期間を書ける仕事は、業務委託で加わる専門人材に任せる方法もあります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

中核の役割を社内の人から育てることはできますか

できます。ガイドラインは、社内の人材を中核人材に育てる方向を「中核人材育成型」として挙げ、社内人材のモチベーション向上が期待できる一方、時間を要するので計画的な取組が必要だとしています。 採用が決まらないときに備えて、育成を並行させる計画にしておく方法もあります。

プロボノで手伝ってもらうときの注意点は何ですか

報告書は、プロボノでは雇用契約を取り交わしておらず、NDA(秘密保持契約)を締結することも少ないため、どこまで業務を依頼してよいか分からなかったり、技術や情報が流出したりする懸念があるとしています。 給与の支払いがないので、事業に共感してもらわないと続けて支援してもらいにくい、とも書いています。

国は副業・兼業の人の受け入れを支援していますか

政府が2022年にまとめた「スタートアップ育成5か年計画」は、人がスタートアップへ移りやすくなるよう、副業・兼業の促進を強化し、副業に人材を送り出す企業や副業の人材を受け入れる企業を支援する方針を示しています。 具体的な支援の中身は、年度ごとの施策で確かめます。

スタートアップへの投資額はどのくらい増えていますか

5か年計画によると、スタートアップへの投資額は3,600億円(2017年)から8,200億円(2021年)へと、過去5年間で2.3倍に増えました。計画は、これを2027年度に10兆円規模にする目標を掲げています。*3 投資額が増えても、1社が何人を採用できるかはこの数字からは分かりません。

増員計画の役割と時期が決まったら相談

採る順番と入社してほしい時期が書けていれば、そのままご相談いただけます。採用と外部人材のどちらで進めるか決めきれていない段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。技術の方針を担う社員の採用と、実装を任せる専門人材探しを並行して進められます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」(PDF)(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/hitodebusoku/guideline/guideline.pdf)。出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者 人材活用ガイドライン」(令和5年6月)。人材戦略検討の3ステップ(P6)、中核人材と業務人材(P15)、3つの窓(P16)、中途採用(P18)、副業・兼業/シニア人材等の活用(P20)、アウトソーシング(P26)、支援機関との対話の例(P28)を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:経済産業省予算事業「スタートアップエコシステムの創出にむけた大企業人材の流動促進に関する調査」(PDF)(https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/SUHRhokokusho.pdf)。出典:令和4年3月。経済産業省予算により一般社団法人社会実装推進センターが実施。101人調査(P13、2021年5月)、スタートアップ課題から見えた施策の方向性(P24〜26)、ステークホルダーへのメッセージ(P33〜34)、審査委員・アドバイザーからの評価・総括(P37)を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:内閣官房「スタートアップ育成5か年計画」(PDF)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/sdfyplan2022.pdf)。出典:スタートアップ育成5か年計画(2022年)。2.目標(投資額の推移と2027年度の目標)と、(4)スタートアップへの円滑な労働移動を参照(2026年9月確認)




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