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2026.09.29 採用支援コラム

エンジニア採用で外注依存を見直す、技術責任者の職位と権限




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 技術責任者は、委託先から届く提案や成果物を社内の立場で確かめ、採否を決める役割です。
  • JUASの調査では、売上高100億円未満の企業の32.1%で、ITを統括するCIO等がいません。
  • 委託先の作業と専門知識の提供は引き続き任せ、提案は技術責任者が確かめて承認する流れにします。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

開発は長年、同じ委託先に任せてきた。新しい機能を相談しても、見積りが妥当なのかを社内の誰も判断できない——。外注依存が続いた会社では、こうした悩みが起こりがちです。そこで検討されるのが、社内で技術を判断する人を迎えるエンジニア採用です。ここでいう技術責任者とは、システムの作り方や、委託先から届く提案・成果物について、社内の立場で判断を下す役割の人を指します。テックリードやCTO(技術部門を統括する役員)と呼ばれる職位がこれに当たります。

技術責任者がいれば、委託先の提案を社内で比べて選べるようになります。ただし万能ではなく、職位と権限を決めないまま採用すると、決める権限のない立場になりかねません。委託先との役割も、なくすのではなく社内と分け直します。本記事では、開発の委託を続けてきた会社に向けて、技術責任者をどの職位に置く会社が多いか、職位と権限の決め方、委託先との役割の分け直し、そして採用で確かめたい経験を整理します。

夕日を背にした木製の船の舵輪。背景の海と手すりはぼけている。人も文字も写っていない

技術責任者とは

技術責任者の呼び方は会社によって違います。開発チームの中で設計や使う技術を決める人をテックリード、会社全体の技術の方針に責任を持つ役員をCTOと呼ぶことが多く、情報システム部門の部門長がその役割を兼ねている会社もあります。呼び方よりも大事なのは、技術について最後に決める人が社内にいるかどうかです。

外注依存が続いた会社では、この判断を委託先が事実上担っていることがあります。どの技術で作るか、どの順番で直すか、見積りの工数が妥当か——こうした問いに対して、委託先の説明を聞いて了承するだけになっている状態です。委託先の仕事ぶりに問題があるわけではありません。社内に提案を比べられる人がいないため、そのまま受け入れるしかないのです。

IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2023」は、日本企業で新しい開発手法や技術の活用が進まない背景の一つとして、ユーザー企業(システムを発注して使う会社)とベンダー企業(開発を請け負う会社)の双方が、互いに頼り合う関係を続けていることを挙げています。*2 技術責任者を採用する目的は、委託先との関係を断つことではありません。委託先の提案を社内で比べ、選べる状態にすることです。

技術責任者の職位

日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2026」は、2025年9〜10月に、東証上場企業とそれに準じる企業のIT部門長へアンケートを行っています(回答957社)。*1 調査では、CIO(情報システムを統括する役員)と、それに当たる人をまとめて「CIO等」と呼んでいます。その置き方を尋ねた結果では、「IT部門・業務を担当する役員がそれにあたる」が38.5%で最も多く、「IT部門・業務を担当する部門長がそれにあたる」が22.5%、CIO等はいないとする回答が21.8%でした。*1

CIOは情報システム全体の責任者で、開発の技術責任者と同じ役割ではありません。ただ、社内で技術の判断をまとめる人をどの職位に置いているかを知る手がかりになります。会社の規模で見ると違いがはっきりします。売上高100億円未満の企業(224社)では、部門長がそれにあたるが30.8%、CIO等はいないが32.1%で、専任と兼任のCIO等は合わせて11.6%でした。*1 売上高1兆円以上の企業では、専任と兼任の合計が56.3%です。*1

売上高100億円未満の企業では、部門長がそれにあたるとした割合が前年度の18.0%から30.8%に増え、いないとした割合は40.6%から32.1%に減りました。*1 JUASはこの変化を、規模の小さな企業でもITを統括して経営を補佐する役割を明確にしようとする動きとみています。

職位を先に決める理由

同じ調査は、DX(デジタル技術で事業や業務を変えること)の進み具合も尋ねています。「DXを推進できていると思うか」への答えをCIO等の置き方別に比べると、「非常にそう思う」と「そう思う」の合計は、専任のCIO等がいる企業で61.2%、兼任で47.9%、役員がそれにあたる企業で34.1%、部門長で29.3%、いない企業で22.0%でした(2025年度)。*1

CIO等の置き方別に、DXを推進できていると答えた企業の割合(非常にそう思うとそう思うの合計、2025年度)を並べた横棒グラフ。役職として定義されたCIO等がいる(専任)61.2%、役職として定義されたCIO等がいる(他の役職と兼任)47.9%、IT部門・業務を担当する役員がそれにあたる34.1%、IT部門・業務を担当する部門長がそれにあたる29.3%、CIO等はいない、あるいはCIO等に対する実質的な認識はない22.0%。出典は日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」図表3-2-2。

JUASは、CIOを置くとIT戦略を経営戦略の一部として決めやすくなり、DXの推進に結び付くと考えられる、と説明しています。ただし調査が示すのは置き方と推進状況の関係で、専任の責任者を置けばDXが進むという因果までは示していません。

それでも、技術責任者を採用する会社にとっては、職位を先に決めておく理由になります。役員として迎えるのか、部門長として迎えるのか、ほかの仕事と兼ねてもらうのか——この違いで、経営の議論に加わる機会も、技術の判断に使える時間も変わるからです。職位は、入社してから決めるものではなく、募集を始める前に決めておくものです。

権限として決めておくこと

DX白書2023は、デジタル化を率いるCDO(デジタル化を統括する役員)について、「CDOがどのような役割・権限を担うべきか明確にしたうえで」、DXを推進する人材を配置することが望ましいとしています。*2 技術責任者の採用でも同じで、何を決めてよいのかを採用の前に書き出しておきます。次の表は、事項ごとに誰が決めるかを分けた例です。

技術責任者に持たせる権限の分け方の例
事項 決める人の例
新しく作る機能に使う言語やクラウドの選び方 技術責任者が決める
委託先から届いた設計の案と見積りの採否 技術責任者が内容を確かめ、予算を持つ役員が承認する
納品されたプログラムや設計書の受け入れ 技術責任者が判断する
委託先との契約の更新や変更 技術責任者が意見を出し、経営が決める
委託先が担当するプログラムの細かな設計や書き方 委託先が決め、技術責任者に共有する

表の最後の行のように、委託先が決めてよい事項も書いておきます。技術責任者がすべてを自分で決めようとすると、承認を待つ間、委託先の作業が止まります。細かな設計を委託先に任せる代わりに、決めた内容を共有してもらう形にしておけば、技術責任者は後から確かめられます。

書き出した権限は、求人票にも載せます。どの事項を決める役割なのかが分かれば、応募する側も自分の経験と比べられます。「技術面の責任者」とだけ書いた求人では、判断を任されるのか、助言をするだけなのかが伝わりません。

委託先との役割の分け直し

システムを手に入れる方法には、既製のソフトウェアやSaaS(インターネット経由で使うソフトウェア)を使う、開発を委託する、社内で開発する、といった選び方があります。DX白書2023は、日本企業では競争力の中心になる事業でもそうでない事業でも、「既製のソフトウェアやSaaSの導入」「外部委託による開発」「内製による自社開発」の順に回答が多いと報告しています。*2 そのうえで、変革を進めるうえで「必要な技術・ノウハウを提供してくれる企業とのパートナーシップを構築することが重要である」と書いています。*2

社内に技術責任者を置いても、委託先の技術や人手が要らなくなるわけではありません。分け直しの基本は、判断を社内に移し、設計や開発の作業と専門知識の提供は委託先に引き続き任せることです。技術責任者が就いたら、まず委託先への依頼の窓口を技術責任者にまとめます。業務部門の担当者がそれぞれ委託先に相談していると、同じシステムへの依頼が別々に届き、どれから手をつけるかを委託先が決めることになりがちです。窓口をまとめれば、依頼の順番を社内で決められます。

委託先には、技術責任者を迎える理由と、変わる点・変わらない点を早めに伝えます。変わるのは、提案を技術責任者が確かめてから承認する点です。設計・開発・運用の作業はこれまでどおり任せる、と伝えておけば、委託先も担当する人の配置を考えやすくなります。社員に移す作業と委託を続ける作業の分け方は「エンジニア採用による外注依存の脱却計画、仕事を分けると進めやすい」で、技能を社内に残すかどうかで採用と委託を選ぶ考え方は「エンジニア採用と外注依存の分かれ目、技能を社内に残すかで選ぶ」で扱っています。

採用で確かめたい経験

技術責任者のエンジニア採用では、プログラムを書く力に加えて、委託先の提案を比べて選んだ経験があるかを確かめます。受託開発の会社で働いてきた人には提案を作る側の経験が、事業会社のIT部門で働いてきた人には提案を受けて選ぶ側の経験があります。どちらの経歴でも、見積りの工数をどう確かめたか、採らなかった案とその理由は何かを面接で尋ねると、判断をした経験があるかどうかが分かります。

もう一つは、技術の話を経営に説明した経験です。システムの状態や、改修にかかる投資の必要性を、技術を専門としない役員に説明して了承を得た経験があるかを聞いておきます。

決めておいた職位と権限は、選考の早い段階で候補者に示します。入社してから「予算の承認には関われない」と分かると、本人が思っていた仕事と食い違います。兼任で迎える場合は、兼ねる仕事の中身と、技術の判断に使える時間の目安も伝えておくと、候補者が引き受けられるかを判断しやすくなります。

つまずきやすい点

一つ目は、技術責任者が就いた直後に、委託先を一斉に切り替えようとすることです。これまでの経緯や設計の背景を知っているのは、委託先の担当者です。まず今の委託先から設計の説明を受けて判断の材料をそろえ、そのうえで委託を続けるか、ほかの委託先に替えるかを決めます。外注依存を見直すことと、委託先を替えることは同じではありません。

二つ目は、技術責任者に開発の作業まで任せてしまうことです。1人で判断と作業を抱えると判断が遅れ、委託先の作業も止まります。技術責任者の時間は、提案の確認や承認、経営への説明に使えるようにしておきます。作業を担う人が足りなければ、社員の採用か委託で人を増やします。

三つ目は、職位と権限を決めないまま採用することです。予算の承認や契約の更新に関われないと、委託先の提案に意見は言えても、結論はこれまでと同じ流れで決まります。採用の前に、前の表のように決める事項を書き出しておくことが、技術責任者を迎える準備になります。

まとめ:技術責任者の採用で確かめておきたい3つの点

外注依存を見直すために技術責任者をエンジニア採用で迎えるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、役員として迎えるのか部門長として迎えるのか、専任か兼任かを、募集の前に決めること。第二に、技術責任者が決める事項と、委託先が決めて共有する事項を書き出し、求人票にも示すこと。第三に、委託先には作業と専門知識の提供を引き続き任せ、提案は技術責任者が確かめてから承認する流れにすることです。この3点を踏まえておけば、「技術責任者を採用したのに、結局は委託先の提案をそのまま通している」という事態を避けやすくなります。技術責任者に求める経験や権限の整理に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

技術責任者の採用が決まるまでの間や、技術責任者の下で開発の作業を担う人が足りないときは、業務委託で開発に加わる専門人材を探す方法もあります。任せる作業と期間を決めておけば、社内の承認の流れを変えずに人を増やせます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

技術責任者を採用するまでの間、技術の判断は誰が担えばよいですか

ITを担当する役員か部門長が、当面の判断をまとめる方法があります。技術の助言をする専門家に業務委託で加わってもらい、提案の確認を手伝ってもらうこともできます。その場合も採否を決めるのは社内の人にしておくと、技術責任者が就いたときに引き継ぎやすくなります。

社内のエンジニアを技術責任者に登用してもよいですか

登用も選択肢の一つです。社内のシステムと業務を知っていることは強みになります。委託先の提案を比べて選んだ経験が少ない場合は、しばらくの間、提案の確認を外部の専門家と一緒に行う期間を設けると進めやすくなります。

技術責任者は1人いれば足りますか

システムの数と委託先の数によります。委託先が複数あり、それぞれ別のシステムを担当している場合、1人ですべての提案を確かめるのは難しくなります。技術責任者の下に、システムごとに提案を確かめる社員を置くことも検討します。

技術責任者の採用を相談したいとき

技術責任者に持たせる職位と権限の整理から、ご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026.pdf)。出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」(2025年度調査)。アンケート調査は2025年9月5日から10月24日、調査対象は東証上場企業とそれに準じる企業の計4500社、回収数957社(有効回答率21.3%)。図表1-1-13(年度別 CIOの設置状況)、図表1-1-14(売上高別 CIOの設置状況)、図表3-2-2(CIO設置状況別 DX推進状況)を参照。専任と兼任の合計、「非常にそう思う」と「そう思う」の合計は資料の値から筆者が足し合わせた(2026年9月確認)
  2. *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」(PDF)(https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108041.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」。第1部第5章の開発手法・技術の活用状況(図表1-29の説明)、第3部第4章の組織づくり(CDOの役割・権限)とソーシング手段(図表3-35の説明)を参照。企業調査は2022年6〜7月に実施、日本企業543社が回答(2026年9月確認)




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