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2026.10.06 採用支援コラム

エンジニア中途採用の内定辞退を防ぐ条件提示、何をいつ書面で示すか

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

面談用の丸テーブルに置かれたタブレット

この記事の結論

  • 情報通信業に転職した人の29.5%は、1か月の賃金総額が前の勤め先より減っており、候補者は賃金以外も含めて比べています。
  • 条件提示では、年収の総額だけでなく月額の内訳、所定労働時間と残業の見込み、業務の変更の範囲を分けて示します。
  • 示す時点を最終面接の前後・内定時・入社前に分け、変更があればその都度書面で伝えると、食い違いが起きにくくなります。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

内定を伝えた候補者から「提示された年収を今の会社と比べて、もう少し考えたい」と返事が来て、そのまま辞退された。書面を送ったあとで残業の見込みや勤務地について質問が続き、答えているうちに他社に決まった——。エンジニア中途採用では、条件の示し方が内定辞退の分かれ目になることがあります。条件提示とは、内定の前後に、賃金・労働時間・仕事の内容などの労働条件を候補者に示すことを指します。

候補者は、示された条件をいまの勤め先と並べて比べます。厚生労働省の転職者実態調査は、転職した人の賃金と労働時間が前の勤め先と比べてどう変わったかを尋ねており、比べられる中身を考える手がかりになります。ただし万能ではなく、この調査は転職を終えた人の回答で、内定を辞退した人の理由を数えたものではありません。本記事では、エンジニア中途採用を担うマネージャーに向けて、条件提示で示すもの、転職者の賃金と労働時間の変化、何をいつどう示すか、書面の渡し方と質問への答え方を整理します。

条件提示で示す労働条件

会社が採用する人に示す労働条件は、労働基準法第15条が定めています。使用者は、労働契約を結ぶときに、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。*4 明示する事項は労働基準法施行規則第5条に並んでおり、このうち次の事項は書面で示すことになっています。*5

  • 労働契約の期間
  • 就業の場所と従事する業務(変更の範囲を含む)
  • 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇など
  • 賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期(昇給を除く)
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

昇給は書面で示す事項から外されており、賞与や退職手当は、定めがある場合に示す事項に入るものの書面の対象ではありません。*5 ところが、候補者が条件を比べるときに知りたいのは、むしろ年収を左右するこうした項目です。条件提示を法令が求める書面だけにとどめるか、比べるための材料まで示すかで、候補者の受け取り方は変わってきます。

書面の様式としては労働条件通知書がよく使われます。記載事項と記録の残し方は労働条件明示のルールと記録管理で扱っているので、本記事では、候補者が何と比べ、それに合わせて会社が何をいつ示すかに絞ります。

前の勤め先と比べた賃金の変化

厚生労働省は、転職した人の就業の実態と意識を、受け入れた事業所と転職者本人の両方から尋ねる転職者実態調査を行っています。令和7年の調査は2025年10月1日時点の状況を尋ねたもので、個人調査の有効回答は7,310人でした。*1 ここでいう転職者は、雇用期間の定めがない、または1年以上の期間を定めて雇われたフルタイムの労働者のうち、2024年10月から2025年9月までに採用され、その前の1年間に別の企業で働いていた人です。*1

この調査は、いまの勤め先での1か月当たりの賃金総額が、直前の勤め先と比べてどう変わったかを尋ねています。いまの勤め先が情報通信業の人と、いまの仕事が専門的・技術的な仕事の人を、転職者全体と並べると次のとおりです。

前の勤め先と比べた1か月の賃金総額の変化を、3つの横向きの帯グラフで示した図。いまの勤め先が情報通信業の転職者は、増加した55.4%、変わらない15.1%、減少した29.5%。いまの仕事が専門的・技術的な仕事の転職者は、増加した40.5%、変わらない24.5%、減少した33.8%。転職者全体(産業計)は、増加した42.2%、変わらない20.9%、減少した36.0%。専門的・技術的な仕事は不明1.2%、産業計は不明0.9%を除いて表示。出典は厚生労働省「令和7年転職者実態調査」個人調査 第16表。

情報通信業の転職者では、賃金が増えた人が55.4%、変わらない人が15.1%、減った人が29.5%でした。*2 増えた人の内訳は、1割以上3割未満の増加が29.0%で最も多く、3割以上の増加も16.7%います。転職者全体の42.2%と比べると、情報通信業は賃金が増えた人の割合が高いといえます。

一方で、減った人も3割近くいます。情報通信業では、1割以上3割未満の減少が14.0%、3割以上の減少が7.7%でした。*2 専門的・技術的な仕事でも、増えた人40.5%に対して減った人が33.8%で、両者の差は大きくありません。*2 賃金が下がっても転職を選んだ人が、決して少なくない割合でいることになります。

前の勤め先と比べた労働時間の変化

同じ調査は、1週当たりの実労働時間が直前の勤め先と比べてどう変わったかも尋ねています。賃金と同じ3つの区分で並べると、次のようになります。

前の勤め先と比べた1週当たりの実労働時間の変化(令和7年転職者実態調査 個人調査 第18表、転職者に占める割合、単位は%)
区分 増加した 変わらない 減少した 増減D.I.(ポイント)
情報通信業(いまの勤め先の産業) 27.9 37.6 34.5 -6.6
専門的・技術的な仕事(いまの仕事の職種) 31.7 33.3 34.5 -2.8
産業計(転職者全体) 30.8 31.4 36.8 -6.0

情報通信業では、労働時間が減った人が34.5%、変わらない人が37.6%で、増えた人の27.9%を上回りました。*3 増減D.I.(増えた人の割合から減った人の割合を引いた値)はマイナス6.6ポイントです。賃金では増えた人が多かったのに対して、労働時間では減った人のほうが多いという違いがあります。

なお、公表されている集計表は賃金と労働時間を別々に集計しています。賃金が増えた人と労働時間が減った人がどの程度重なるのか、両方が改善した人がどれだけいるのかは、この表からは読み取れません。

数字から見える内定辞退の起き方

2つの数字を合わせると、候補者が条件提示を受け取ったときの比べ方が見えてきます。賃金の増減だけで転職先を決めているなら、賃金が減る転職を選ぶ人はもっと少ないはずです。実際には、情報通信業でも3割近くが賃金の減る転職を選んでいます。候補者は、賃金に加えて、労働時間や仕事の中身を含めた全体で、いまの勤め先と比べていると考えるのが自然です。

裏返すと、比べる材料がそろっていない条件提示は、候補者にとって判断しにくいものになります。年収の総額だけが書かれていて、残業代が含まれているのか、所定労働時間が何時間なのかが分からなければ、いまの勤め先と同じ物差しで比べられません。返事を考えている間に、他社から内訳の分かる提示が届けば、候補者がそちらを選ぶことは十分にありえます。

入社を決めた人が何を決め手にし、選考でどんな情報を受け取っていたかは、エンジニア中途採用の内定辞退、辞退理由を入社した人の回答から探るで扱っています。ここからは、条件提示の中身と渡し方に絞って、会社の側で準備できることを見ていきます。

何を示すか:月額の内訳と働き方

候補者がいまの勤め先と比べやすいように、条件提示では次の項目を分けて示すことを勧めます。

  • 月の賃金の内訳(基本給、手当、残業代を一定時間分含めて払うかどうか)
  • 賞与と昇給の決まり方(定めがある場合)
  • 所定労働時間と、残業が発生する見込み
  • 就業の場所と、在宅勤務の扱い
  • 任せる業務と、その変更の範囲
  • 入社日と、試用期間の有無

賃金は、年収の総額だけでなく月額の内訳まで書きます。調査が尋ねているのも1か月当たりの賃金総額で、候補者が手元の給与明細と並べて比べられるのは月額です。残業代を一定時間分含めて支払う場合に、何時間分でいくらなのかを基本給と分けて書いておかないと、総額だけを見て「いまより高い」と受け取られ、入社後に食い違いが生じます。

労働時間は、所定労働時間に加えて、配属先のチームで残業がどのくらい発生しているかを示せると、比べる材料になります。数字で示せないときでも、リリースの前に忙しくなる時期がある、夜間の障害対応の当番がある、といった働き方の実態を言葉で伝えるだけで受け取り方は違ってきます。任せる業務は、就業の場所とあわせて変更の範囲まで書面で示す事項です。*5 配置換えがありうるなら、その範囲もこの段階で伝えておきます。

年収の水準をどこに置くかは、本記事では扱いません。上限の決め方はエンジニア中途採用の年収上限で整理しています。

いつ示すか:内定の前と後

条件提示は、内定通知の書面1回で済ませるより、時点を分けたほうが食い違いが起きにくくなります。目安として、次の3つの時点に分けて考えます。

1つ目は、最終面接の前後です。この時点で、提示できる賃金の幅と入社日の候補を伝え、候補者の希望とのずれを確かめます。2つ目は、内定を伝えるときです。決まった条件を書面にして渡し、返事の期限も書き添えます。3つ目は、内定を承諾してから入社するまでの間です。条件に変更が出たら、その都度、変わった点を書面で伝えます。

人材紹介会社の紹介や求人広告を通じて応募した候補者の場合、変更の伝え方は職業安定法にも定めがあります。求人のときに示した業務の内容や賃金、労働時間などの労働条件を、労働契約を結ぶ際に変更する場合は、変更する内容を候補者に明示しなければなりません。*6 求人票と内定時の条件が違うときは、どこを変えたのかが候補者に分かる形で伝えます。具体的な示し方に迷うときは、都道府県労働局や社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

選考の早い段階で幅を伝えておくのは、内定時の書面で初めて条件を知った候補者が、期待との差に戸惑うのを避けるためです。カジュアル面談の段階でどこまで示すかはカジュアル面談と面接の違い、義務はどこからで扱っています。

書面の渡し方と質問への答え方

労働条件を書面で示す方法は、原則として書面の交付です。ただし、労働者が希望した場合は、ファクシミリや電子メールなどで送ることもできます。電子メールなどで送る場合は、受け取った人がその記録を出力して書面を作れるものに限られます。*5 PDFを添付して送るなら、電子メールでの受け取りを希望するかを候補者に確かめたうえで、印刷できる形式で送るのが無理のない方法です。

書面に書いた条件は、実態と違っていてはなりません。労働基準法は、明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。*4 書面を作るときは、配属先のマネージャーと人事の双方で、勤務地や残業の見込み、任せる業務が実態と合っているかを見ておきます。

書面を渡したあとの質問には、決まっていることと、まだ決まっていないことを分けて答えます。「賞与は業績によって変わります」という答えだけでは、候補者は比べようがありません。何を基準に、年に何回決めるのかといった決まり方を説明し、口頭で答えた内容が条件に関わるなら書面にも反映します。答えるまでに社内の確認が必要な質問は、いつまでに返事をするかを先に伝えます。

返事の期限を短くしすぎないことも大切です。在職中の候補者は、いまの勤め先との話し合いを並行して進めています。期限を設ける理由を書面に書き添えておけば、候補者も予定を立てやすくなります。辞退の申し出を受けたときの扱いは、エンジニア中途採用の内定辞退、民法は誰に予告を求めるかを参照してください。

まとめ:条件提示で確かめておきたい3つの点

エンジニア中途採用の内定辞退を条件提示の段階で減らすうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、賃金は年収の総額だけでなく月額の内訳まで示し、労働時間や業務の範囲とあわせて、いまの勤め先と比べられる形にすること。第二に、最終面接の前後に幅を伝え、内定時に書面で示し、変更があればその都度書面で伝えるように、示す時点を分けること。第三に、書面の内容を実態と照らし合わせ、質問には決まっていることと未定のことを分けて答えることです。この3点を踏まえておけば、「条件を比べているうちに他社に決まった」という事態を避けやすくなります。採用と並行して開発の手を確保したいときは、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

条件提示の準備と並行して、開発の作業を止めずに進める手立ても考えておけます。任せたい作業と期間が決まっていれば、社員として採用する人と、業務委託で開発に加わる専門人材とを並べて検討しやすくなります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

条件提示の書面は、電子メールで送ってもよいですか

候補者が希望した場合は、電子メールなどで送ることができます。受け取った人が記録を出力して書面を作れる形に限られるので、印刷できるPDFなどで送り、受け取り方を事前に確かめておきます。*5

候補者から年収の上乗せを求められたら、どう答えればよいですか

社内で決めた幅の中で応じられるかを確かめ、応じられない場合はその理由と、賞与や昇給の決まり方など年収を左右するほかの条件を説明します。答えるまでに時間がかかるなら、いつまでに返事をするかを先に伝えておきます。

内定後に配属先が変わった場合も、伝え直す必要がありますか

就業の場所や従事する業務は書面で示す事項なので、変わった点を書面で伝え直します。人材紹介会社や求人広告を通じて応募した候補者には、職業安定法でも変更内容の明示が求められています。個別の判断に迷うときは、専門家に確かめてください。

エンジニア中途採用の条件提示を相談したいとき

候補者に示す仕事の中身や働き方の整理から、ご相談いただけます。採用と並行して開発の手を確保したい段階でも構いません。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-r07-gaikyo.pdf)。出典:厚生労働省 政策統括官付参事官付 雇用・賃金福祉統計室。調査の概要(調査の目的、調査の対象期間及び実施期間、有効回答数、主な用語の定義「転職者」)を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 個人調査 第16表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040505226)。出典:第16表 性、産業・事業所規模・年齢階級・最終学歴・直前の勤め先を離職した理由・現在の勤め先での職種ほか、直前の勤め先と比較した現在の勤め先の1か月当たりの賃金総額の変化別転職者割合及び増減D.I.(構成比1)。性別計の産業計・情報通信業・専門的・技術的な仕事の行を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 個人調査 第18表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040505228)。出典:第18表 同、直前の勤め先と比較した現在の勤め先の1週当たりの実労働時間数の変化別転職者割合及び増減D.I.(構成比1)。性別計の産業計・情報通信業・専門的・技術的な仕事の行を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:e-Gov法令検索「労働基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。出典:第15条(労働条件の明示)第1項・第2項を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)。出典:第5条第1項(明示する労働条件)、第3項(書面で示す事項)、第4項(書面の交付と、労働者が希望した場合のファクシミリ・電子メール等)を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
  6. *6 参考:e-Gov法令検索「職業安定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:第5条の3(労働条件等の明示)第1項・第3項を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)




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