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エンジニア中途採用の採用スケジュールと予算策定、先に決める3つ
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 情報通信業では事業所の72.6%が今後3年間に転職者を採る予定で、予定がある事業所の47.8%は新卒と中途のどちらを優先するか決めていません。
- 採用スケジュールと予算は、新卒と中途の枠、入社してほしい月、給与の幅の順に決め、給与の幅は求人を出す前に固めます。
- 費用は工程ごとに出る月を書き、応募の状況、入社の遅い期限、翌年度の予算を組む時点の3つを見直しの時点として先に置きます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
予算は通ったのに、提示できる給与の上限が決まっておらず求人を出せない。候補者は見つかったのに、その年度の人件費の枠が残っていない——。エンジニア中途採用では、採用の日程と予算が別々の場で決まるために、こうした行き違いが起こりがちです。採用スケジュールと予算策定を一緒に組むとは、いつ、どの枠で、いくらで採るかを先にそろえ、日程と費用を同じ表の上で動かせるようにしておくことを指します。
本記事では、開発部門の責任者と人事の担当者に向けて、厚生労働省の調査で見た今後3年間の採用予定と新卒との優先、先に決める3つの点、費用が出る月の重ね方、見直しの時点、つまずきやすい点を整理します。
目次
日程と予算を同じ時期に組む理由
採用スケジュールは人事と開発の責任者が組み、予算は経理や経営企画が年度の始まる前にまとめる。多くの会社では、この2つが別々の場で進みます。日程の側は「いつ入社してほしいか」から考え、予算の側は「年度にいくら使うか」から考えるので、互いの前提が見えないまま決まってしまいます。
2つをつなぐのは、いつ、どの枠で、いくらで採るかの3点です。いつ入社してほしいかで、その年度に払う人件費の月数が決まります。中途と新卒のどちらの枠で採るかで、入社の時期をどこまで自由に選べるかが変わります。いくらで採るか、つまり給与の幅は、求人を出す時点で示さなければなりません。この3点が決まらないうちは、日程も予算も仮の数字のままです。
エンジニア中途採用の場合、開発の計画も絡みます。採れた人に何を任せるかが決まっていて、その仕事の始まる月も決まっているなら、入社してほしい月は開発の計画の側から逆に決まります。日程と予算と開発の計画の3つを同じ時期に作ると、どれか1つを動かしたときにほかの2つへの影響が見えます。
情報通信業の72.6%が3年内に採用を予定
厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」は、5人以上の常用労働者を雇う事業所に、今後3年間に転職者を採用する予定があるかを尋ねています(2025年10月1日現在、有効回答9,154事業所)。*1 ここでいう転職者は、雇われる前の1年間に別の企業で働いていた一般労働者で、短時間で働く人は含みません。*1
採用する予定があると答えた事業所は、調査産業計で63.6%、情報通信業で72.6%でした。*2 情報通信業は、調査した16の産業の中で最も高い値です。*1 予定はないと答えた情報通信業の事業所は4.3%にとどまり、22.3%は未定でした。*2 前回の令和2年調査では、調査産業計で予定ありは53.3%でした。*1
規模による差もあります。事業所の規模別に見ると、1,000人以上では90.5%、5〜29人では61.2%で、規模が大きいほど予定がある割合が高くなっています。*2 また、調査の時点で転職者がいる事業所では78.9%、いない事業所では54.7%でした。*2 直近の1年に中途で人を迎えた事業所のほうが、次の3年の採用も予定に入れている割合が高いという結果です。
3年という幅は、1年ごとに組む予算よりも長い期間です。エンジニア中途採用を毎年の予算策定のたびに一から議論するより、3年の見通しを先に置き、その中から今年度に採る人数と時期を切り出すほうが、年度をまたぐ採用も扱いやすくなります。
新卒と中途のどちらを先に採るか
同じ調査は、採用する予定がある事業所に、新規学卒者と比べてどちらを優先して採りたいかも尋ねています。情報通信業では、転職者を優先したいが33.5%、新規学卒者を優先したいが18.6%、どちらとも言えないが47.8%でした。*2 調査産業計では新規学卒者を優先したいは9.8%なので、情報通信業は新卒を重く見る事業所が比較的多い業種だといえます。*2
どちらとも言えないが半分近くを占めることは、予算策定の場面で問題になります。新卒の採用は多くの会社で年度の初めの入社を前提に組まれるのに対し、中途の採用は年度の途中のどの月にも入社が起こり得ます。どちらを主にするかが決まっていないと、採用スケジュールの起点も、人件費をその年度に何か月分載せるかも決まりません。
そこで最初に決めたいのが、予算の枠を新卒と中途で分けるかどうかです。分けるなら、中途の枠には「どの役割を、いつまでに」を書きます。分けずに1つの枠で持つなら、どちらで採れても同じ役割に充てられるのかを、開発の責任者と確かめておきます。新人を育てる時間を現場が取れない時期なら、中途の枠を先に動かすといった判断もここで行います。
規模別では、採用する予定がある1,000人以上の事業所のうち67.1%が、どちらとも言えないと答えています。*2 ほかの規模よりも高い値で、大きな組織では両方の採用を並べて進める前提で枠を組む必要があります。
最初に決めるのは入社してほしい月
枠が決まったら、次は入社してほしい月です。採用スケジュールはこの月から前へ、内定、選考、求人の公開の順にさかのぼって組みます。各工程にかける日数は他社の目安を借りず、自社の過去の採用で、求人を出してから最初の面接まで、最初の面接から内定までにかかった日数を拾って当てはめます。候補者が今の勤め先を離れるまでの期間は人によって違うので、面接の中で本人に確かめます。逆算の手順はエンジニア中途採用の採用スケジュール|10月入社から逆算の順番で詳しく扱っています。
入社してほしい月は、予算策定にもそのまま響きます。4月から翌年3月までを年度とする会社なら、入社が1か月後ろにずれるごとに、その年度に払う給与は1か月分少なくなり、その分は翌年度に移ります。入社の月を1点で決めず、「早ければこの月、遅くともこの月」という幅で置いておくと、予算の側も多い場合と少ない場合の2つの額で用意できます。
月を決める前に、その人に何を任せるかを書き出しておきます。リリースの準備に加わってほしいのか、次の年度から始まる改修の設計を担ってほしいのかで、入社してほしい月は変わります。任せる仕事の始まる月から、機材やアカウントの用意など受け入れの準備に要る時間をさかのぼった月が、入社してほしい月の目安になります。
給与の幅は求人を出す前に決める
3つ目に決めるのが給与の幅です。職業安定法第5条の3第1項は、労働者の募集を行う者などに対し、募集に応じて労働者になろうとする者へ「従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。*3 第2項は、求人者が職業紹介事業者などに求人を申し込むときにも、業務の内容や賃金などを明示しなければならないとしています。*3
自社で求人を出すときも、人材紹介の会社に求人を申し込むときも、賃金を示せる状態でなければ募集は始められない、ということです。予算策定の段階で給与の幅が決まっていないと、採用スケジュールの最初の工程で止まります。幅の下限と上限は、社内の等級と給与の規程に照らして決めます。上限の決め方はエンジニア中途採用の年収上限で扱っています。
第3項は、示した労働条件を労働契約の締結の前に変える場合に、変える内容を相手に明示しなければならないとしています。*3 選考の途中で予定より高い給与が必要になったときの手続きの細部は、社内の労務の担当者や専門家に確かめてください。予算の側では、幅の上限を超える提示が要るときに誰が判断するかを先に決めておくと、内定の直前で日程が止まらずに済みます。
費用が出る月を工程に重ねる
予算の項目を並べるだけでは、どの月にいくら出るのかが見えません。採用スケジュールの工程ごとに、どんな費用が出るかを重ねておくと、予算策定の段階で月ごとの支出の形が分かります。項目は次のように整理できます。
| 工程 | 出る費用の例 | 予算に書くときに確かめること |
|---|---|---|
| 求人の公開まで | 求人票の作成、求人広告の掲載 | 掲載する期間と、掲載をやめる条件 |
| 選考の間 | 面接を担当するエンジニアの時間、適性検査などの外部の道具、候補者の交通費 | 面接の回数と担当者、開発の計画から差し引く時間 |
| 内定から入社まで | 人材紹介を使った場合の手数料、入社の日に要る機材とアカウント | 手数料が生じる時点と返金の条件(契約で確かめる) |
| 入社の後 | 給与と社会保険料の会社負担、研修 | その年度に払う月数と、翌年度に続く額 |
給与と社会保険料の会社負担は入社した月から毎月続き、翌年度以降の予算にも載ります。一方、募集にかかる費用は採用が決まれば止まります。2つは性質が違うので、予算の表では行を分けておきます。給与以外の人件費の内訳はエンジニア中途採用の経営承認、採用予算は人件費の内訳で示すにまとめています。
表の中で見落とされやすいのが、選考の間の費用です。面接を担当するエンジニアの時間は請求書にならないので、予算に載らないまま開発の予定を圧迫しがちです。採用スケジュールに面接の回数と担当者を書いておけば、開発の計画の側でもその時間を前もって差し引けます。
見直しの時点を先に置いておく
採用は予定どおりに進まないことがあるので、見直しの時点は計画を作るときに決めておきます。置いておきたい時点は3つです。
1つ目は、求人を公開したあとで応募の状況を確かめる時点です。応募が想定より少なければ、求人票の書き方、募集の方法、給与の幅を見直します。この時点を採用スケジュールに書いておけば、気づいたときには入社してほしい月を過ぎていた、という事態を避けられます。
2つ目は、入社してほしい月の幅のうち遅いほうの月です。ここまでに内定が出ていなければ、その年度の人件費の扱いと、任せる予定だった仕事をどうするかを決めます。仕事のうち期間で区切れる作業は、業務委託などの外部の人材と組み合わせて進めることも選択肢になります。
3つ目は、翌年度の予算策定が始まる時点です。情報通信業では、今後3年間に転職者を採る予定の事業所が多くを占めていました。*2 今年度の採用の進み具合を、翌年度の枠の大きさと入社してほしい月に反映させる場として、この時点を使います。
つまずきやすい点
一つ目は、予算が承認されてから採用スケジュールを組み始めることです。承認が年度の始まりの直前だと、求人の公開が年度に入ってからになり、入社が年度の後半にずれ込みます。日程の案は予算の案と同じ時期に作り、承認と同時に募集を始められるようにしておきます。
二つ目は、新卒と中途の枠を1つの人数にまとめてしまうことです。「エンジニア5名」とだけ書くと、入社の時期が読めず、その年度の人件費も見積もれません。枠ごとに入社の月と人数を分けて書いておくと、片方が計画どおりに進まなくても、もう片方の予定は崩れません。
三つ目は、給与の幅を求人の公開の直前に決めることです。求人票を作る段階で上限について社内の合意が取れていないと、公開の日がずれ、後ろの工程がすべて押されます。業務の内容の書き方はエンジニア採用の求人票に書く業務内容で整理しています。
まとめ:日程と予算で先に決める3つの点
エンジニア中途採用の採用スケジュールと予算策定を一緒に組むうえで、先に決めておきたい点は3つに整理できます。第一に、新卒と中途のどちらの枠で採るのかを分け、中途の枠にはどの役割をいつまでに採るのかを書くこと。第二に、任せる仕事から入社してほしい月を幅で決め、その月からさかのぼって日程を組み、年度に払う月数を予算に反映させること。第三に、給与の幅を求人を出す前に固め、上限を超える提示が要るときの判断者も決めておくことです。そのうえで、費用が出る月を工程に重ね、見直しの時点を計画の段階で置いておけば、日程と予算のどちらか一方だけが先に進むことを防ぎやすくなります。任せる仕事に合う人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
採用スケジュールと予算は、どちらを先に作ればよいですか
同じ時期に作るのが基本です。そのうえで、決める順番は、新卒と中途の枠、入社してほしい月、給与の幅の3つです。この3つが決まれば、日程の案と予算の案を同じ前提で作れます。
選考を始めてから入社までに、どのくらいの期間を見込めばよいですか
一律に使える目安はありません。自社の過去の採用で各工程にかかった日数と、候補者が今の勤め先を離れるまでに要る期間を面接で確かめ、その2つをつないで見込みます。入社してほしい月を幅で置いておくと、見込みがずれたときにも予算を組み直さずに済みます。
人材紹介の手数料は、予算のどの月に載せればよいですか
手数料が生じる時点と、早期に退職した場合の返金の条件は契約によって異なります。紹介の会社と結ぶ契約でこの2点を確かめ、その時点に合わせて計上します。募集の費用なので、給与などの人件費とは行を分けておきます。
任せる仕事と時期が決まったら相談
エンジニアに任せる仕事と、入社や参画をしてほしい時期が分かっていれば、そのままご相談いただけます。給与の幅や採用の枠を決めきれていない段階でも構いません。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r07.html)。出典:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(2026年9月25日公表)。調査の概要(令和7年10月1日現在、5人以上の常用労働者を雇用する事業所、事業所調査の有効回答9,154事業所)、主な用語の定義(転職者)、事業所調査4「今後3年間の転職者の採用予定」と表7(令和2年調査の値を含む)を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Stat「令和7年転職者実態調査 事業所調査 第16表」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040505208&fileKind=4)。出典:第16表 産業・事業所規模・企業規模・転職者の有無、今後3年間に転職者を採用する予定の有無、採用の希望別事業所割合。構成比1(全事業所=100)と構成比2(採用する予定がある事業所=100)の、調査産業計・情報通信業・事業所規模別・転職者の有無別の行を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「職業安定法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)。出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3(労働条件等の明示)第1項〜第3項を参照(確認日2026年10月6日)(2026年10月確認)