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開発リソース不足の対処法|残業・採用・業務委託の比べ方と選び方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 開発リソース不足は、手が足りない期間と、足りない仕事の中身の2つを書き出すと、手段を選びやすくなります。
- 短い山は残業、数か月で終わる作業は業務委託、続く仕事は採用が目安で、残業には法律の上限があります。
- 判断に関わる仕事は社内に残し、外部に頼むときは契約書に期間と作業の範囲と記録の置き場所を書きます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
案件が増えたのに、開発の手が足りない。今いるメンバーに残業をお願いするか、人を採用するか、業務委託で外部のエンジニアに入ってもらうか。どれも一長一短で、決めきれないまま日が過ぎてしまう企業は少なくありません。開発リソース不足とは、開発に必要な人数や技術が、いま抱えている仕事の量に対して足りていない状態を指します。
手段を選ぶときは、仕事の期間と、足りない仕事の中身の2つを見ると決めやすくなります。本記事では、エンジニアを預かる企業の実務者に向けて、3つの手段の違い、2つの見方、外部のエンジニアに頼むときの確認点を整理します。会社全体のIT人材不足への備えは「IT人材不足の対応の選び方|採用・育成・委託の比べ方」で、退職が原因の場合は「エンジニアが大量退職したときの立て直し方|止める仕事と補充の順番」で扱っています。
開発リソース不足とは
まず、どれくらいの企業が手の足りなさを感じているかを確かめます。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」によると、DXに取り組む日本企業のうち85.1%が、DXを進める人材の量について「やや不足している」か「大幅に不足している」と答えています。*1 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2026」では、システム開発を内製化するうえでの課題として、「開発人材の量の不足」が52.7%の企業から挙がりました。*2
一方で、IPAの調査では、人材の量が不足していると答えながら「人材確保を行っていない」と答えた日本企業が19.4%あります。*1 開発リソース不足は多くの企業で起きていますが、何も手を打たないまま抱え込んでいる企業も少なくないということです。
手が足りない原因は、仕事が増えた、人が辞めた、必要な技術を持つ人がいない、など会社ごとに違います。この記事では、仕事が増えて手が足りなくなった場合に絞ります。手段を選ぶ前に、次の3つを書き出します。
- 量:いま抱えている案件と、これから増える案件を並べ、足りない作業の量を書く
- 期間:その仕事がいつまで続くか、終わる時期の見込みを書く
- 中身:足りないのは、判断が要る仕事か、決まった手順で進められる作業か、特定の技術が要る仕事かを書く
残業・採用・業務委託の違い
開発リソース不足を埋める手段は、大きく3つあります。残業など今いる人の時間を増やすやり方、社員を採用するやり方、業務委託で外部のエンジニアに入ってもらうやり方です。業務委託とは、仕事を頼む契約のことで、社員のように雇うわけではありません。
| 見るところ | 残業など今の人の時間 | 社員の採用 | 業務委託 |
|---|---|---|---|
| 手を増やす方法 | 今いる人の働く時間を延ばす | 新しい人を雇う | 外部の人と仕事の契約を結ぶ |
| 動き出すまで | 新しい人を探す手順は要らない | 募集、選考、入社の手続きが要る | 人を探して契約を結ぶ手順が要る |
| 向く期間 | 短い山を越えるとき | 長く続く仕事 | 終わりが見える数か月などの仕事 |
| 気をつけること | 法律の上限と、続けたときの負担 | 採用後も続けて仕事を用意する必要 | 期間と作業の範囲を契約書で決める |
残業には法律の上限があります。労働基準法36条は、労使で協定を結んだ場合でも、時間外労働の限度を原則として1か月45時間、1年360時間と定めています。*3 通常は予見できない業務量の大幅な増加などで臨時的に超える場合も、1年720時間以内、1か月は休日労働を含めて100時間未満などの上限があります。*3 上限の内側でも、長く続ける前提にはしないほうがよいでしょう。残業は、短い期間のつなぎとして使うのが基本です。
仕事の期間で選ぶ
1つ目の見方は、足りない状態がいつまで続くかです。終わる時期の見込みで、向く手段が変わります。

- 数週間から1、2か月で終わる山(リリース前の追い込みなど):残業など今の人の時間で乗り切る。上限の内側で、終わる日を先に決めておく
- 数か月で終わる仕事(システムの移行、新しい機能の追加など):業務委託を検討する
- ずっと続く仕事(運用、保守、毎年の改修など):社員の採用を検討する
- 終わる時期がまだ見えない仕事:業務委託で始め、続くと分かった時点で採用に切り替えるかを決める
採用は、動き出すまでに時間がかかることがあります。IPAの調査では、人材を獲得するうえでの課題として「魅力的な処遇が提示できない」「募集しても応募が少ない」が、米国とドイツに比べて日本で突出していました。*1 募集を出せばすぐ人が入る、とは見込まず、採用を進めながら、その間の手当てを別の手段で用意しておく形が現実的です。
足りない仕事の中身で選ぶ
2つ目の見方は、足りない仕事の中身です。社内で判断が要る仕事と、切り出して渡せる作業とでは、向く手段が変わります。

- 何を作るか、どの順で進めるかを決める仕事:社内の社員で持つ。足りなければ、採用か今のメンバーの担当の入れ替えを考える
- 作業の内容が決まっていて切り出せる仕事(画面の改修、テストの実施、移行の作業など):業務委託を検討する
- 特定の技術が要り、社内に経験者がいない仕事:業務委託で経験者を探し、作業の記録を社内に残してもらう
JUASの調査では、多くの企業が内製と外部委託を使い分けようとしており、システム企画や要件定義といった上流工程が内製化の中心になっています。*2 判断に関わる仕事は社内、切り出せる作業は外部、という分け方は、調査に出ている企業の動きと合っています。IPAも、米国とドイツでは「特定技術を有する企業や個人との契約」の回答率が日本より高く、外部の力を柔軟に使っている企業が多いと考えられる、と述べています。*1
実際には、手段を組み合わせます。たとえば、当面の山は残業で乗り切り、数か月で終わる作業は業務委託に切り出し、続く仕事のために採用を進める、といった形です。人を増やしても遅れが戻らないときは、人数ではなく技術の不足が原因のことがあるため、「開発要員を増やしても開発遅延が戻らない理由と対処法」も確かめてください。
外部に頼むときに確認しておきたい点
業務委託で外部のエンジニアに頼むことにした企業は、契約書の案で次の5つを確かめます。契約の種類による違いは「業務委託と正社員の違い|企業がエンジニアを選ぶときの4つの基準」にまとめています。
- 期間と更新:頼む期間、延ばす手順、契約を終えるときの条件
- 作業の範囲と成果物:何をいつまでに、どの形で渡してもらうか
- 指示の窓口:誰が誰に連絡するか。依頼や変更を、外部の会社の窓口を通すか
- 記録の置き場所:作業の記録をどこに置き、終わるときに誰へ渡すか
- 社内に残す判断:何を作るか、どの順で進めるかは、社内の誰が決めるか
まとめ:手段を選ぶ前に確かめたい3つの点
開発リソース不足で手が足りないとき、残業・採用・業務委託のどれを選ぶかは、3つの点を確かめると決めやすくなります。第一に、足りない量と期間と中身を書き出すこと。第二に、数週間から1、2か月の山は残業、数か月で終わる作業は業務委託、続く仕事は採用を目安に、手段を組み合わせること。第三に、判断に関わる仕事は社内に残し、外部に頼む場合は契約書に期間と作業の範囲と記録の置き場所を書くことです。残業には労働基準法36条の上限があるため、長く続ける前提にはしません。迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
残業でしのぎながら、採用や業務委託の準備を始めてもよいですか
始めて構いません。残業には上限があり、長く続けにくいため、始める時点で終わる日を決め、並行して次の手段の準備を進めると、山を越えたあとに手が足りない状態へ戻りにくくなります。
業務委託のエンジニアに、社員と同じように指示を出してよいですか
指示の出し方には決まりがあり、契約の種類によっても扱いが変わります。依頼や変更の窓口を契約書で決め、個別の判断は専門家に確かめてください。詳しくは前述の契約の違いの記事で扱っています。
人が辞めて手が足りなくなった場合も、同じ選び方でよいですか
期間と仕事の中身で見る点は同じです。ただし、辞めた人の仕事の引き継ぎを先に済ませる必要があります。詳しくは「エンジニアが大量退職したときの立て直し方」で扱っています。
開発の手が足りず、残業・採用・業務委託のどれにするか迷うとき
手が足りない期間と、足りない仕事の中身の書き出しからご相談いただけます。手段がまだ決まっていない段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:IPA「DX動向2025」(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf)。出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)。第3章 DXを推進する人材(図表3-1・3-5・3-6)の本文を参照。2026年10月16日に確認(2026年10月確認)
- *2 参考:JUAS「企業IT動向調査2026(2025年度調査)」概要(PDF)(https://juas.or.jp/cms/media/2026/04/JUAS_IT2026summary.pdf)。出典:一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会。システム開発の節と総括を参照。調査の一覧は https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/ 。2026年10月16日に確認(2026年10月確認)
- *3 参考:労働基準法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。第36条(時間外及び休日の労働)を参照。2026年10月16日に条文を確認(2026年10月確認)