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ニアショア開発のメリット・デメリットと向いている案件の見分け方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- ニアショア開発は国内の地方の会社に開発を委託するやり方で、日本語と時差の無さ、国内の法律で契約できる点が長所です。
- 費用の下がり幅や集められる人数には限りがあり、大人数を短期間で集める案件はオフショアなども比べます。
- 保守や改修を長く頼む案件に向いており、発注前に体制とやり取りの決まり、契約の形を確かめておくことが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
首都圏の開発会社に見積もりを頼むと、費用が年々上がっている。海外に委託するほどの規模ではないし、言葉や時差の不安もある——。社内にエンジニアが少ない会社では、こうした迷いが起こりがちです。ニアショア開発は、システムの開発や保守を、国内の地方都市にある開発会社や拠点に委託するやり方です。
日本語で同じ時間帯にやり取りでき、国内の法律のもとで契約できる点が持ち味です。ただし万能ではなく、費用の下がり幅や体制の大きさには限りがあり、案件によっては首都圏の会社や海外のほうが合うこともあります。本記事では、システムの発注を担当する方に向けて、ニアショア開発のメリットとデメリット、向いている案件の見分け方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
ニアショア開発とは
ニアショア開発は、海外に委託するオフショア開発と対になる呼び方です。一般社団法人日本ニアショア開発推進機構は、中国やインドなどで行われてきたオフショア開発に対して、日本の地方都市でのシステム開発を推進することを目的に、2012年7月に設立されました。*1 同じ委託でも、相手がどこにいるかによって、やり取りの手間や契約の前提が変わります。
| 項目 | 首都圏の開発会社 | ニアショア(国内の地方) | オフショア(海外) |
|---|---|---|---|
| 使う言葉 | 日本語 | 日本語 | 英語や現地の言葉。通訳を介すこともある |
| 時差 | なし | なし | 相手の国による |
| 契約の前提 | 国内の法律と商習慣 | 国内の法律と商習慣 | 相手の国の法律や商習慣も関わる |
| 打ち合わせ | 対面を組みやすい | オンラインが中心 | オンラインが中心 |
| 機構が挙げる特長 | - | コミュニケーションが容易、時差の最小化、国内法に準拠 | 大規模体制の構築、コストの削減 |
機構は、ニアショア開発の特長として「コミュニケーションが容易」「時差の最小化」「高い品質と国内法に準拠」を、オフショア開発の特長として「大規模体制の構築が可能」「コストの削減」を挙げています。*1 海外との違いをもう少し詳しく知りたい方は、オフショア開発とニアショア開発の比較で費用や品質の観点から整理しています。
ニアショア開発のメリット
ニアショア開発が改めて検討される背景には、IT人材の不足があります。経済産業省の2019年の調査は、IT需要が年2.7%程度伸び、労働生産性が年0.7%上がる前提で、2030年にIT人材が約45万人不足すると試算しました。*2 首都圏だけで開発の担当者を探す前提が苦しくなるなか、地方の開発会社は発注先の候補を広げる手段になります。

- 日本語で、同じ時間帯にやり取りできる:仕様の細かい相談や急ぎの確認を、通訳や時差の調整なしで進められます
- 国内の法律と商習慣で契約できる:契約書、個人情報の扱い、検収の進め方を、首都圏の会社と同じ前提で話せます
- 首都圏の会社より費用を抑えられることがある:機構は、首都圏の開発会社から切り替えることでコストの最適化ができると説明しています*1
- エンジニアを探す地域を全国に広げられる:首都圏の採用競争とは別の場所で、開発の担当者を確保できます
- 災害に備えて拠点を分けられる:機構は、南海トラフ地震や首都圏直下型地震のような災害に対し、地方に分散した開発で企業のリスクを下げられるとしています*1
テレワークが広がったことも、遠方の会社と仕事を進める助けになっています。総務省の通信利用動向調査では、常用雇用者100人以上の企業のうち、テレワークを導入している企業の割合が2025年8月末時点で50.1%でした。*3 オンラインの打ち合わせで離れた拠点と開発を進めることは、特別なやり方ではなくなりつつあります。
ニアショア開発のデメリット
一方で、ニアショア開発にも弱いところがあります。特に費用と体制の大きさは、発注前の期待と実際の結果がずれやすい点です。次の点を先に知っておくと、思っていたのと違ったという事態を減らせます。
- 費用の下がり幅には限りがある:機構もコストの削減はオフショア開発の特長に挙げています。*1費用をどこまで抑えられるかは、複数の見積もりを比べて確かめる必要があります
- 大人数の体制をすぐには組みにくい:一つの地方の会社で集められる人数には限りがあり、機構も大規模な体制の構築をオフショア開発の特長としています
- 顔を合わせる機会が減る:打ち合わせの多くがオンラインになり、小さな認識のずれに気づくのが遅れがちです
- 得意な技術や業務に差がある:会社ごとに、扱える言語、得意な業界、保守と新規開発のどちらが中心かが違います
- 発注側の管理の手間は残る:仕様の決定、進み具合の確認、受け入れのテストは、どこに頼んでも発注側の仕事です
どれも、ニアショアだから起こるというより、離れた場所の会社に委託するときに共通して起こりやすいことです。要件をどこまで文書にするか、定例の打ち合わせをどう組むかを決めておけば、多くは前もって手当てできます。
向いている案件・向いていない案件
メリットとデメリットを並べると、ニアショア開発が力を発揮しやすい案件の形が見えてきます。大まかには、日本語で細かく相談しながら長く付き合う案件ほど向いていて、短い期間に大人数を集めたい案件ほど向いていません。
たとえば、社内の業務システムの保守や、法改正にあわせた小さな改修を続けて頼む場合は、日本語でのやり取りと時差の無さがそのまま生きます。反対に、数か月のうちに大きな開発チームを立ち上げたい場合は、一社だけでは人数が届かないことがあります。そのときは複数の会社に分けて頼むか、首都圏の会社や海外の会社と組み合わせることも考えます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
ニアショア開発で委託先を選ぶときは、地方にあるかどうかよりも、その会社が自社の案件を最後まで回せるかを見ます。見積もりを頼む前に、次の点を確かめておきます。

- 体制:担当者の人数と役割、窓口になる人、担当者が抜けたときの代わりの立て方
- 得意な領域:同じ言語や同じ業界のシステムを扱った経験、保守と新規開発のどちらを主に受けているか
- やり取りの決まり:定例の打ち合わせの頻度、使う連絡の道具、仕様の変更をどう記録するか
- 契約の形:成果物の完成を約束する請負か、作業の遂行を約束する準委任か。検収のやり方と不具合の直し方
- 運用後の見直し:リリースのあとに品質や進み方を振り返る場があるか、改善をどう進めるか
費用の目安は、地域や技術によって幅があります。単価の考え方はニアショアSESの費用相場で整理しています。地方のIT企業に委託するときの評価の観点は、地方IT企業への委託メリットも参考にしてください。
まとめ:ニアショア開発で確かめておきたい3つの点
ニアショア開発を検討するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、日本語・時差なし・国内の法律という長所が、自社の案件で本当に生きるかを考えること。第二に、費用の下がり幅と集められる人数には限りがあると知ったうえで、見積もりを比べること。第三に、体制ややり取りの決まり、契約の形を、発注前に委託先とすり合わせることです。この3点を踏まえておけば、「安くなると思って地方の会社に頼んだのに、費用も手間も思ったほど減らなかった」という事態を避けやすくなります。委託先選びや体制づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
ニアショア開発の委託先はどうやって探せばよいですか
地域のIT企業の団体や、ニアショア開発を進める団体の情報を手がかりにする方法があります。日本ニアショア開発推進機構は、一般企業と地方のシステム開発会社向けのセミナーや情報交換会の開催を事業に挙げています。*1 候補が見つかったら、同じ技術や業界の経験があるかを面談で確かめます。
首都圏の会社とニアショアの会社を組み合わせることはできますか
できます。たとえば、要件定義や設計は社内や首都圏の会社で行い、開発や保守をニアショアの会社に頼む分け方があります。その場合は、どの工程をどの会社が受け持つかと、仕様を最終的に誰が決めるかを、契約の前に決めておくと進めやすくなります。
ニアショア開発でも対面の打ち合わせはできますか
委託先の方針と契約しだいです。立ち上げの時期や大きな節目だけ対面で集まり、ふだんはオンラインで進める形もとれます。移動にかかる交通費をどちらが持つかも、見積もりの段階で確かめておきます。
ニアショア開発・地方拠点の活用のご相談
業務システムの開発や保守の委託先選びから、離れた拠点との体制づくり、運用後の見直しまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:一般社団法人日本ニアショア開発推進機構 公式サイト(トップページ・ニアショア機構のビジョン・機構について)(https://www.nearshore.or.jp/vision/)。出典:設立の目的と設立年月、ニアショア開発とオフショア開発の特長の比較、首都圏の開発会社からの切り替えによるコスト最適化、災害に備えた地方分散型の開発、セミナー・情報交換会の事業概要の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年4月)(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf)。出典:IT人材の需給ギャップの試算(需要の伸び年2.7%程度・労働生産性の上昇年0.7%の前提で2030年に45万人)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(2026年5月29日公表)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000183.html)。出典:別紙1「ポイント」のテレワークを導入している企業の割合(50.1%、常用雇用者規模100人以上の企業、令和7年8月末時点)を参照(2026年10月確認)