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生成AIを業務で使うには、何から始めるか
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 生成AIは、最初に使う業務を1つ決め、入力してよい情報と出力の確かめ方を決めてから、期間を区切って試します。
- 使う業務と情報の扱いの決まり、効果の測り方を先に決めてから広げると、承認が通り使い続けられます。
- まず最初に試す業務を1つ選び、試行の計画を上長に出します。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
生成AIを業務で使い始めるには、最初に使う業務を1つ決め、入力してよい情報と出力の確かめ方を決めてから、期間を区切って試します。試す前に今の所要時間を記録しておけば、試行の後に同じ物差しで効果を比べ、広げるかどうかを上長に説明できます。
部署で数人が試し、使った人は便利だと言うのに広がらない。この状態の原因は、道具ではなく、任せる業務と使い方の決まりが無いことにあります。前半で最初の業務の選び方を、後半で始める手順、費用と効果の見積もり方、社内の決まりに書く項目、体制を整理します。
目次
試した人だけが便利な状態のままだと、何を失うか
試した人だけが自己流で使い続けると、どの業務で何時間減ったかを誰も数えていないため、効果を測れません。効果が分からなければ、有料の契約や部署全体への展開に投資するかを上長が決められません。決まりが無いまま顧客の情報や社内の資料を入力すれば、情報が社外へ持ち出される危険も残ります。
| 悩み | 読む章 |
|---|---|
| どの業務から使えばよいか分からない | 始める手順:業務の選定から試行・評価まで |
| 費用に見合うかを上長に説明できない | 費用と効果の見積もり方 |
| 入力してよい情報の線引きが無い | 社内の規程と情報の扱いで確かめる点 |
他社の状況も見ておきます。総務省の令和8年版情報通信白書によると、所属する企業の生成AI活用の方針を尋ねた調査で、「積極的に活用する方針である」と「活用する領域を限定して利用する方針である」の合計は、日本で68.9%でした。*1前年度の調査の49.7%から大きく上昇した一方、米国・ドイツ・中国と比べると引き続き低い結果です。*1
企業規模別では、同じ合計が大企業で74.0%、中小企業で58.1%で、いずれも前年度の調査より上昇し、特に中小企業で大きく上昇しています。*1方針を決めて使う企業が増えるなかで、自社がどの位置にいるかを次の3つで確かめてください。
- 生成AIを使ってよい業務を、文書か口頭で示しているか
- 業務で使ってよいサービスを決めているか
- 試した人の使い方が、部署の中で共有されているか
3つとも「いいえ」なら、まだ個人の試用の段階です。個人で使ってきた手順を部署に残す方法は、生成AIの個人利用の引き継ぎで残す4つの記録でも整理しています。
広がらない原因は、任せる業務が決まっていないこと
試した人が便利だと言っても広がらない部署で、広がりを止めているのは道具の性能より次の3つです。どれも、道具を替えても解決しません。
- 使う業務が決まっていない(何に使えばよいかを各自が考えるため、使う人と使わない人に分かれる)
- 入力してよい情報の決まりが無い(迷った人は使わない側に回る)
- 出力を見直す人がいない(誤りが混じったときの責任があいまいになり、使う場面が広がらない)
自分の部署で、次の3つに答えられるかを数えてみてください。1つでも答えられなければ、道具を比べるより先に、その項目を決めるほうが広がりにつながります。
- 使う業務と、その今の所要時間を言えるか
- 入力してはいけない情報を文書で示しているか
- 出力を確かめる人が決まっているか
3つが決まらないまま「誰でも自由に使ってよい」と伝えても、使う人は試した数人から増えにくく、効果の記録も残りません。反対に、業務を1つに絞って3つを決めれば、少人数の試行でも上長に示せる結果が集まります。
最初の業務を選ぶ4つの基準
最初の業務は、候補を2〜3個書き出し、次の4つの基準で比べて選びます。4つとも満たす業務から始めると、試行の結果を短い期間で集められます。

| 基準 | 目安 |
|---|---|
| 繰り返しの多さ | 同じ形で何度も発生する業務ほど試行の回数を稼げる |
| 扱う情報の機密度 | 顧客・個人の情報を含まない業務から始める |
| 確かめの手間 | 出力の誤りを人がすぐ見分けられるか |
| 効果の測りやすさ | 今の所要時間を記録し、前後で比べられるか |
4つのうち、扱う情報の機密度はほかの基準より先に見ます。繰り返しが多く効果も測りやすい業務でも、顧客や個人の情報を入力しないと進まないなら、入力の決まりが整うまで候補から外します。
推進役が最初の業務を決める場面
推進役が、提案書の下書きと社内文書の要約の2つを候補にしたときの判断の流れを、4つの基準に沿って示します。
| 判断の順 | 見ること | 判断 |
|---|---|---|
| 1. 繰り返し | 同じ形で何度も発生するか | 提案書の下書きは案件ごと、社内文書の要約は会議のたびに発生する |
| 2. 機密度 | 顧客の情報を含むか | 提案書は顧客名や条件を含む。社内文書の要約は顧客の情報を含まない文書に限れる |
| 3. 確かめの手間 | 誤りをすぐ見分けられるか | 要約は元の文書と見比べれば誤りに気づける |
| 4. 効果 | 前後で比べられるか | 要約1件にかかる今の時間を記録できる |
| 5. 決める | 期間と回数 | 顧客の情報を含まない社内文書の要約から、期間を区切って試す計画を上長に諮る |
提案書の下書きは効果が大きく見えても、顧客の情報を含むため、入力の決まりが整ってから2つめの業務として試します。最初の業務は効果の大きさより、決まりの中で無理なく回せるかで選びます。
後半で、始める手順、費用と効果の見積もり方、広げるか止めるかの材料、社内の規程と情報の扱い、体制を確かめられます。最初の業務の候補と今の所要時間を書き出した段階で、進め方を一緒に整理したい場合は次の窓口をご利用ください。
始める手順:業務の選定から試行・評価まで
始める手順は、業務を決め、決まりを作り、期間を区切って試し、測ってから広げる、の順です。手順ごとに残すものを決めておくと、試行の後に上長へ示す材料がそろいます。
| 手順 | やること | 残すもの |
|---|---|---|
| 1. 業務を決める | 4つの基準で候補を比べ、1つ選ぶ | 選んだ業務と選んだ理由 |
| 2. 今の時間を測る | 試す前に、1件あたりの所要時間を記録する | 試行前の記録 |
| 3. 決まりを作る | 使うサービス、入力してよい情報と禁じる情報、出力の見直し方を決める | 1枚の利用の決まり |
| 4. 期間を区切って試す | 少人数で、決めた期間と件数をこなす | 1件ごとの時間と、直した箇所 |
| 5. 測って判断する | 同じ物差しで比べ、続ける・広げる・止めるを決める | 上長への報告 |
手順4に入る前に、試行の計画を1枚にまとめて上長に出します。計画に次の項目がそろっていれば、上長は始めるかどうかをその場で判断できます。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 業務 | 試す業務と、4つの基準で選んだ理由 |
| 期間と件数 | 評価に使う件数と、それをこなす期間 |
| 参加する人 | 試す担当者と、出力を見直す人 |
| 使うサービスと決まり | 使ってよいサービスと、入力を禁じる情報 |
| 測るもの | 試行前と試行中の1件の所要時間、直した箇所 |
| 判断の条件 | 続ける・広げる・止めるを決める条件 |
手順3の出力の見直し方は、業務ごとに求める正確さで変わります。総務省が自治体向けに改訂したAI活用・導入ガイドブックの概要は、生成AIの「利用目的に応じて求められる正確性の水準が異なることを意識し、生成物を人が確認するルールを設定」することを挙げています。*2
企業でも、社内の会議の要約と顧客へ送る文書では、求める正確さが違います。業務ごとに「どこまで正確でなければならないか」と「誰が見直すか」を決めてから試すと、見直しにかかる時間も前もって見積もれます。
試行の期間は、業務の頻度から決めます。頻繁に発生する業務なら短い期間でも件数がそろいますが、月に1回の業務では評価に足りる件数がそろうまで長くかかります。期間より先に、何件こなしたら評価するかを決め、その件数をこなせる長さにします。
費用と効果の見積もり方
費用と効果は、利用料と準備・確かめの工数を費用に、短縮した時間を効果に置き、試行の実測で比べます。見込みの数字だけで比べると、試行の後に上長へ示す根拠が残りません。
| 区分 | 項目 | 測り方 |
|---|---|---|
| 費用 | 利用料 | 使う人数分の月額や年額を、提供元の料金表で調べる |
| 費用 | 準備の工数 | 決まりづくりや使い方の説明にかけた時間を、推進役が記録する |
| 費用 | 確かめの工数 | 出力を見直して直した時間を、1件ごとに記録する |
| 効果 | 短縮した時間 | 試行前の1件の時間から、試行中の1件の時間(見直しを含む)を引く |
| 効果 | 時間以外の変化 | 文書の質のばらつきなど、金額にしにくい点は別に書く |
試行中の所要時間には、出力を見直して直した時間も含めます。見直しの時間を抜いて計算すると、効果が実際より大きく見え、広げた後に思ったほど時間が減らないという結果になりかねません。
上長に出すときは、1か月あたりの費用の合計と、短縮した時間の合計を同じ表に並べます。時間を金額に置き換える場合は、どの単価を使ったかを表の下に書き添えます。部署全体に広げた場合の数字は、試行の実測に人数をかけた見込みとして、実測とは分けて示します。
広げるか止めるかを決める材料
広げるか止めるかは、試行の前に、続ける・広げる・止める条件を書いておき、その条件に照らして決めます。試した後で条件を決めると、結果に合わせて基準が動き、判断の理由を上長に説明しにくくなります。
| 判断 | 条件の書き方の例 | 次に行うこと |
|---|---|---|
| 続ける | 時間は減ったが、評価に足りる件数がそろっていない | 期間を延ばして件数をそろえる |
| 広げる | 見直しを含めても所要時間が減り、決まりに反する入力が無かった | 同じ業務を別の担当者や部署へ広げる |
| 止める・見直す | 見直しの時間が減った時間を上回った、または決まりに反する入力が起きた | 業務を替えるか、決まりを直してから再開する |
数字にしにくい点も、判断の材料に入れます。
- 出力のどこを直したか(事実の誤り、言い回し、構成のどれが多かったか)
- 決まりについて、利用者からどんな質問が出たか
- 使った人が、試行の後も続けたいと答えたか
広げると決めたときも、一度に全社へ広げず、同じ業務を別の担当者や部署で試すところから始めます。試行で作った決まりと指示文がほかの部署でも通用するかを確かめてから、2つめの業務を選びます。
直した箇所の記録は、次の業務を選ぶときにも使えます。事実の誤りを直すことが多かった業務は確かめの手間が大きく、言い回しの直しが多かった業務は、指示の書き方を共有すれば手間が減る見込みがあります。
社内の規程と情報の扱いで確かめる点
社内の規程と情報の扱いでは、入力してよい情報、出力の確かめ方、使うサービスの規約での入力内容の扱いの3つを確かめます。
日本ディープラーニング協会が公開している「生成AIの利用ガイドライン」のひな形は、データ入力に際して注意すべき事項と、生成物を利用するに際して注意すべき事項の2つのパートで構成されています。*3最初の決まりも、入力と出力の2つに分けて書くと抜けを見つけやすくなります。
| 項目 | 書く中身 |
|---|---|
| 使ってよいサービス | 業務で使ってよいサービスを特定して並べる |
| 入力を禁じる情報 | 顧客の氏名や住所などの個人情報、取引先から秘密として受け取った情報、自社の機密情報 |
| 出力の確かめ方 | 根拠や裏付けを自分で確かめる。社外へ送る文書は誰が見直すか |
| 質問の受け先 | 判断に迷ったときに誰に聞くか |
このひな形の解説は、利用してよいサービスを特定した上で列挙する方式(ホワイトリスト方式)で指定することを勧めています。*3また生成物については、「内容を盲信せず、必ず根拠や裏付けを自ら確認する」よう求めています。*3
使うサービスの規約での入力内容の扱いも確かめます。IPAの「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」は、チャットAIとユーザーとの実際のやりとりを、運営企業が将来のAI改良のための学習データとして流用する場合があると説明しています。*4同じ資料は、サービス規約や利用時の設定を確認することで、ユーザー入力を保存やAIの学習対象から除外できるとしています。*4
- 入力した内容が学習に使われるか、使わない設定があるか
- 入力した内容が、どれだけの期間保存されるか
- 個人向けの版と法人向けの版で、入力内容の扱いが違うか
顧客や個人の情報を含む業務は、最初の試行の対象から外しておきます。決まりと規約の中身を確かめ終えてから、2つめ以降の業務として検討します。
社内で進める体制と役割
社内で進める体制は、推進役・確認者・決裁者の役割を分けます。利用者が迷ったときの窓口は、推進役の一つにまとめます。役割があいまいなままだと、迷った利用者が誰にも聞けず、使わない側に回ります。

| 役割 | 受け持つこと |
|---|---|
| 推進役 | 業務の選定、試行の計画、使い方の共有、利用者からの質問を受ける窓口 |
| 確認者 | 出力の見直しの手順と、入力の決まりが守られているかを見る |
| 決裁者 | 試行の開始と、広げる・止めるの判断、利用料の承認 |
| 利用者 | 決めた業務で使い、所要時間と直した箇所を記録する |
総務省の自治体向けガイドブックの改訂の概要も、AIの利活用・リスク管理における責任者を明確にする必要を挙げています。*2あわせて、実際に利用する職員を増やすために、即時利用可能なプロンプト集や職員のレベル別の研修などに取り組むことが有効としています。*2
企業でも、試行で使った指示文(プロンプト)と直した箇所を部署で共有すると、次に使う人が同じ直しを繰り返さずに済みます。社員の使い方を高める教育も、業務を組み替える取り組みの一部です。
社内に詳しい人がいない場合は、推進役を1人決めたうえで、業務の選定や決まりづくりのどこまでを社内で行い、どこから専門の人材と進めるかを比べて決めます。最後は社内で回せる形を目標にすると、試行が終わった後も改善を続けられます。
まとめ:最初の業務を1つ決めて試す
生成AIを業務で使い始めるには、繰り返しが多く、顧客や個人の情報を含まない業務を1つ選び、入力してよい情報と出力の確かめ方を決めてから、期間を区切って試します。試す前の所要時間を記録しておけば、同じ物差しで効果を比べ、続ける・広げる・止めるを決められます。今日からできるのは、最初に試す業務を1つ、4つの基準の表で選んで書き出すことです。
よくある質問
無料の生成AIを業務に使ってよいですか
社内の決まりと、サービスの規約での入力内容の扱いを確かめてから判断します。入力した内容が学習に使われるか、どれだけの期間保存されるかを規約と設定で確かめ、使ってよいサービスとして決まりに書いてから使います。
最初の社内の決まりには何を書けばよいですか
入力してよい情報と禁じる情報、出力の確かめ方、相談の窓口の3点から書きます。使ってよいサービスも並べて書いておくと、利用者が迷いません。
効果はどう測ればよいですか
試す前の所要時間を記録し、試行後に同じ物差しで比べます。試行中の時間には、出力を見直して直した時間も含めます。
試行はどのくらいの期間にしますか
業務の頻度から、評価に足りる回数をこなせる長さを決めます。先に評価に使う件数を決め、その件数がそろう期間にします。
社内に詳しい人がいない場合はどうしますか
推進役を1人決め、社外に頼む範囲を比べてから決めます。業務の選定や決まりづくりのうち、社内で行う部分と専門の人材と進める部分を分けて考えます。
生成AIを業務に取り入れる進め方の相談
候補の業務とそれぞれの今の所要時間の目安、今ある情報の扱いの規程と使っているサービスの一覧をお手元にご用意いただければ、進め方をご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節1(1)生成AIの活用方針等(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121110.html)。出典:図表Ⅰ-2-1-1・図表Ⅰ-2-1-2の本文の割合を参照(確認日2026年10月30日)(2026年10月確認)
- *2 参考:総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブックの改訂について(概要)」(https://www.soumu.go.jp/main_content/001045562.pdf)。出典:「2.ガイドブック改訂のポイント」を参照(確認日2026年10月30日)(2026年10月確認)
- *3 参考:一般社団法人日本ディープラーニング協会「生成AIの利用ガイドライン【簡易解説付】」(第1.1版、2023年10月公開)(https://www.jdla.org/document/)。出典:2(解説)・4・6(1)を参照。資料室のページからダウンロード(確認日2026年10月30日)(2026年10月確認)
- *4 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」(https://www.ipa.go.jp/digital/ai/security/ai_security_tips.html)。出典:「1. クラウドAIに営業秘密は教えない」を参照(確認日2026年10月30日)(2026年10月確認)