LASSIC Media らしくメディア

2026.10.21 らしくコラム

Apache GuacamoleとVPNの違い|使い分けと注意点

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

自宅の机でタブレットのブラウザに映る社内のデスクトップを操作する手

この記事の結論

  • Apache Guacamoleは、ブラウザだけで社内のPCやサーバーの画面を操作できる無料のオープンソースです。
  • VPNは端末を社内のネットワークにつなぎ、Guacamoleは画面だけを手元に送るので、手元にデータを残しません。
  • 社内への入り口になるため、暗号化と多要素認証、更新の担当を導入の前に決めておくことが大切です。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

自宅から社内のPCを使いたいが、VPNの接続ソフトを全員の端末に入れるのは手間がかかる。外部の協力会社に社内のサーバーを触ってもらいたいが、社内のネットワークにまでつないでほしくはない——。社外から社内のシステムを使う場面では、こうした悩みが起こりがちです。Apache Guacamole(アパッチ・ガカモーレ)は、Webブラウザだけで社内のPCやサーバーの画面を操作できるようにする、無料のオープンソースのソフトウェアです。

利用者の端末に専用のソフトを入れずに済み、手元にデータを残さない使い方ができます。ただし万能ではなく、手元でファイルを扱う業務が多いならVPNが合うこともあります。本記事では、情報システムの担当者に向けて、Apache Guacamoleの特徴、VPNとの違い、仕組みと導入の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

Apache Guacamoleとは

開発元はApache Guacamoleを、クライアントを使わないリモートデスクトップのゲートウェイ(社内のPCやサーバーへの入り口になる中継役)と説明しています。*1 「クライアントを使わない」とは、利用者のPCに専用のソフトやプラグインを入れなくてよいという意味です。一度サーバーに入れてしまえば、利用者に必要なのはWebブラウザだけになります。

  • Windowsの画面を操作するRDP、Linuxなどの画面を操作するVNC、サーバーをコマンドで操作するSSHといった標準的な接続方式に対応しています
  • ライセンスはApache License 2.0(商用でも自由に使えるオープンソースのライセンス)で、無料で使えます*1
  • 利用者ごとに、どのPCやサーバーにつなげるかを決められます。利用者は中央のサーバーにログインし、一覧から接続先を選ぶだけです*2
  • マウスとタッチ操作の両方に対応しているため、スマートフォンやタブレットのブラウザからも使えます

無料で使える一方、サーバーの用意や更新は自社で受け持つことになります。

VPNとの違い

社外から社内のシステムを使う方法として、まず候補に挙がるのがVPN(社内専用の通り道を作る仕組み)です。総務省のテレワークセキュリティガイドラインは、テレワークの方式を7種類に分け、VPN方式とリモートデスクトップ方式を別の方式としています。*4 Apache Guacamoleは、ブラウザから社内のPCの画面を操作する仕組みなので、リモートデスクトップ方式に近い使い方になります。

社用ノートPCとタブレットを両手で見比べる真上からの手元

Apache GuacamoleとVPNの違い
比べる点 VPN Apache Guacamole
何につなぐか 手元の端末を社内のネットワークにつなぐ ブラウザから、社内のPCやサーバーの画面につなぐ
利用者の端末に必要なもの VPNの接続ソフトと、業務で使うアプリ Webブラウザだけ
手元へのデータの保存 保存できる。通信が切れても作業を続けやすい 処理は社内のPC側で行い、画面だけを手元に送る
主な注意点 端末の紛失や盗難による情報漏えいへの備え 通信の遅れで操作が重くなること。入り口のサーバーの守り

ガイドラインは、VPN方式では端末にデータを保存できるため、情報の持ち出しや端末の紛失・盗難による漏えいへの対応が要ると書いています。*4 一方、リモートデスクトップ方式は手元へのデータ保存を制限できる代わりに、画面を送り続けるので通信の遅れの影響を大きく受けるとしています。*4 手元でファイルを編集する業務が多いならVPN、手元にデータを残したくない業務ならGuacamole、という分け方が基本です。

Apache Guacamoleの仕組み

Apache Guacamoleは、利用者のブラウザと社内のPCの間に入り、いくつかの部品で通信を受け渡します。*2

Apache Guacamoleの仕組みを左から順に並べた図。利用者のWebブラウザからHTTPSでGuacamoleのWebアプリへ、Webアプリからguacdへ、guacdからRDP・VNC・SSHで社内のPCやサーバーへつながる。

  • Webアプリ:利用者がブラウザで開く画面と、ログインの仕組みを受け持ちます
  • guacd:Webアプリから届いた指示を受け、RDPやVNCなどの方式で社内のPCやサーバーにつなぎます
  • 接続先:社内のWindowsのPC、Linuxのサーバーなど。画面の中身は接続先で処理されます

利用者とGuacamoleの間の通信はHTTPかHTTPSだけで済むため、社内のプロキシやファイアウォールがあっても使えると開発元は説明しています。*2 裏を返すと、Guacamoleのサーバーは社内への入り口そのものです。開発元は、通信をすべてSSL/TLSで暗号化するよう求めています。*3

導入の進め方

Apache Guacamoleの導入は、ソフトを入れる作業より、誰にどこへの接続を許すかを決める作業のほうが大切です。次の4つの段階で進めます。

  • ステップ1:接続先のPCやサーバーと、使う人の一覧を作る。誰がどこにつないでよいかを表にまとめる
  • ステップ2:入れ方を決める。サーバーに直接入れる方法と、Docker(ソフトを箱に詰めて動かす仕組み)を使う方法の2つがあります
  • ステップ3:利用者の情報をデータベースで管理し、社内のアカウントとつなぐか、多要素認証を付けるかを決める
  • ステップ4:通信の暗号化、パスワードの総当たり対策、操作の記録と更新の手順を決めてから使い始める

ステップ3では、設定ファイル1つで利用者を管理する簡単な方法もありますが、開発元は本番や外部に公開する環境には勧めないとしています。*3 多要素認証は、スマートフォンのアプリで一時的な番号を出すTOTPなどに対応しています。*3 ステップ4の総当たり対策には、同じIPアドレスからのログインの失敗が続くと止める拡張機能があります。操作の記録は、あとから画面の動きを再生できる機能で、*3 外部の人に社内のサーバーを操作してもらうときに役立ちます。

外部に頼むときに確認しておきたい点

Apache Guacamoleはライセンス費用がかからない代わりに、構築と保守の手間を自社で持つことになります。社内への入り口になるサーバーなので、構築や運用を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

サーバー室でラックにLANケーブルを差す技術者とノートPCを指す担当者

  • どこまで頼むか:サーバーの用意、Guacamoleの設定、社内アカウントとの連携、利用者への説明のうち、どれを任せるか
  • 守りの設計:暗号化の設定、総当たり対策、多要素認証をどう組み合わせるか
  • 接続の権限:誰がどのPCやサーバーにつなげるかの表を、誰が作って誰が更新するか
  • 更新の担当:Guacamoleや接続先の更新を誰がいつ行うか
  • 記録の扱い:操作の記録を残すか。残すならどこに、どのくらいの期間保存するか

ガイドラインは、VPN機器やリモートデスクトップのソフトに最新の更新を定期的に当てることを基本の対策に挙げています。*4 端末ごと画面を送る別の方式と比べたい場合はVDIとDaaSの違い、社内外を問わず毎回確かめる考え方はゼロトラスト導入支援の外注で扱っています。

まとめ:Apache Guacamoleで確かめておきたい3つの点

Apache GuacamoleとVPNのどちらを使うかを考えるうえで、確かめておきたい点は3つです。第一に、手元でファイルを扱う業務か、画面を操作できれば足りる業務かを分けて考えること。第二に、誰がどのPCやサーバーにつないでよいかを、導入の前に表にしておくこと。第三に、Guacamoleのサーバーは社内への入り口になるため、暗号化と多要素認証、更新の担当を最初に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「手軽につなげるようにしたが、守りが手薄なまま公開してしまった」という事態を避けやすくなります。構築や運用の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

Apache Guacamoleの構築では、Webアプリとguacdの2つの部品を、DockerかTomcatへの直接配置のどちらで動かすかを最初に決めます。利用者と接続先の情報はMySQL、MariaDB、PostgreSQLのいずれかで管理し、社内のActive DirectoryとはLDAPでつなぎます。通信はNginxなどのリバースプロキシでHTTPSに限り、TOTPによる多要素認証とログイン失敗の連続を止める拡張機能を有効にします。設計では、利用者のグループごとに接続を許すPCやサーバーと、操作の記録を残す接続を決めます。運用では、更新手順を文書にし、接続の履歴をもとに権限の見直しを提案します。

よくある質問

Apache Guacamoleは本当に無料で使えますか

ソフトウェアの利用料はかかりません。Apache License 2.0で公開されています。*1 ただし、サーバーの費用や、構築・更新の手間は自社で持つことになります。開発元のコミュニティのほか、別の会社による有償のサポートも案内されています。

VPNをやめてApache Guacamoleだけにできますか

画面を操作できれば足りる業務なら、置き換えの候補になります。一方で、手元の端末でファイルを編集する業務や、通信が不安定な場所で作業を続けたい業務はVPNのほうが向いています。業務ごとに分けて、両方を使い分ける形も考えられます。

Apache Guacamoleの導入を相談するとき、何を用意すればよいですか

接続したいPCやサーバーと、それを使う人の一覧があると話が早く進みます。あわせて、社内のアカウントの管理方法(Active Directoryなど)と、社外からの接続について社内で決めているルールがあれば用意しておくとよいでしょう。

社外から社内のシステムにつなぐ仕組みづくりのご相談

Apache Guacamoleなどを使ったリモート接続の仕組みの構築から、認証の連携、更新と記録の運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

無料相談はこちら

出典

  1. *1 参考:The Apache Software Foundation「Apache Guacamole」公式サイト(https://guacamole.apache.org/)。出典:クライアントを使わないリモートデスクトップのゲートウェイであること、VNC・RDP・SSHへの対応、Webブラウザだけで使えること、Apache License 2.0、コミュニティと有償のサポートについての記述を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:Apache Guacamole Manual「Introduction」「Implementation and architecture」(https://guacamole.apache.org/doc/gug/guacamole-architecture.html)。出典:利用者ごとの接続先の指定、マウスとタッチ操作への対応、HTTP/HTTPSだけで通信すること、Webアプリとguacdの役割の記述を参照(2026年10月確認)
  3. *3 参考:Apache Guacamole Manual「Installing Guacamole」「Securing a Guacamole install」「Multi-factor authentication」「Viewing session recordings in-browser」(https://guacamole.apache.org/doc/gug/security.html)。出典:直接配置とDockerの2つの入れ方、設定ファイルによる認証を本番に勧めないこと、SSL/TLSによる暗号化、総当たり対策の拡張機能、TOTPなどの多要素認証、操作の記録と再生の記述を参照(2026年10月確認)
  4. *4 参考:総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000752925.pdf)。出典:第3章のテレワーク方式の7分類、VPN方式とリモートデスクトップ方式の基本構成・メリット・デメリット、VPN機器やリモートデスクトップのソフトの更新に関する基本対策の記述を参照(2026年10月確認)
  5. *5 参考:apache/guacamole-server(GitHub)(https://github.com/apache/guacamole-server)。出典:リポジトリのライセンス(Apache License 2.0)を参照(2026年10月確認)




View