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SMS送信者名の照合、豪州は24時間以内のデータで判定
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 未登録の送信者名は遮断される:2026年7月1日からです*1。
- 登録には裏づけが要る:商号・商標・ドメインで照合*1。
- 着信側の照合は24時間以内:データの鮮度も条文にあります*1。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
SMSの差出人欄に表示される名前は、これまで送る側が自由に決められました。銀行や配送業者の名を騙る手口が広がった理由でもあります。豪州は、そこに登録簿を挟みました。
電気通信(SMS送信者ID登録簿)業界標準2025をACMAが制定し、規定ごとに2025年10月15日、2025年11月30日、2026年7月1日の3段階で効力が発生します*1。根拠は電気通信法1997の第125AA条第1項で、大臣が出した指令2025の第5条から第8条に従って作られました*1。
実装の観点で読むと、要点は3つです。登録の条件、経路上での照合と遮断、報告と記録。順に見ていきます。
目次
対象は3業態、効力は3段階で立ち上がる
まず全体像です*1。
この標準が適用されるのは、搬送事業者、搬送サービス提供者、電子メッセージングサービス提供者の3業態です*1。ただし、搬送事業者や搬送サービス提供者が法定インフラ提供者としての立場で行う部分には適用されません*1。
電子メッセージングサービス提供者には、逃げ道が用意されています*1。自ら義務を果たすか、参加電気通信提供者である別の者と取決めを結び、その者に義務の一部または全部を代わりに果たしてもらうかを選べます*1。自社で登録簿と接続する実装を持たなくても、上流に寄せられる建て付けです*1。
効力の発生は3段階です*1。2025年10月15日に第1条から第8条、第15条第2項、第4部(方針と手順)、第6部(記録・保安・プライバシー)が動き出しました*1。2025年11月30日に第9条から第14条(登録の手続き)、第7部(利用者への通知)、別表1が加わります*1。そして2026年7月1日に、第15条第2項を除く第3部(送信・中継・着信の要件)と第5部(報告)が効力を持ちます*1。
この順番には意味があります*1。まず記録と体制、次に登録の受付、最後に遮断と報告です*1。登録の受付を先に開けてから、遮断を始めるという設計になっています*1。同じ豪州では、詐欺防止枠組みも3段階で義務を立ち上げていました*1。
入口の手続きも決まっています*1。送信者名つきメッセージを送信・中継・着信させる電気通信提供者は、法第484F条に基づく承認をACMAへ申請しなければなりません*1。さらに、ABNを持たない事業体に代わって登録の申請や送信を行いたい提供者は、認証電気通信提供者としての承認も別に申請します*1。
登録には「正当な用途」の裏づけが要る
送信者名を登録簿に載せるには、その名前を使う根拠を示す必要があります*1。
第11条第4項は、ABNを持つ事業体のために登録を申請する前に、発信側の提供者が正当な用途があることを確認しなければならないとしました*1。確認の方法は4つのうちいずれかです*1。
| 照合先 | 確認する内容 |
|---|---|
| 事業者名登録簿 | 登録された事業者名と送信者名が一致し、その事業者名の状態が「登録済み」であること |
| 豪州事業者登録簿 | 会社名と送信者名が一致し、ABNの状態が「有効」であること |
| 商標登録簿 | その事業体が所有し、商標登録簿または同等の国際的な登録簿に収録された商標と一致し、状態が「登録済み」であること |
| ドメイン名(whois) | whois.auda.org.auで当該事業体が登録者となっているドメイン名と一致し、そのドメインが実在する正当なウェブサイトに使われているか、送ったメールが不達にならないこと |
例外もあります*1。政府機関が、一致する名称のない送信者名を使おうとする場合で、その送信者名が緊急事態、または公衆の健康・保安に関する事項に関わるものであり、登録された事業者名や会社名、商標、ドメイン名ではなくその送信者名を使う理由について提供者が納得する証拠を示したときは、第4項の確認は不要です*1。
関連会社の扱いも規定されました*1。申請の前に、提供者はその事業体へ他の事業体の関連事業体に当たるかを尋ねます*1。当たる場合は、関連事業体のために法第484F条の承認を申請し、その関連事業体が、他の事業体の登録済み送信者名を含むメッセージを送る授権を受けていることを、その他の事業体に確認します*1。
既存の顧客への働きかけも義務です*1。発信側の提供者は、2026年7月1日より前に、既存の顧客それぞれへ連絡し、別表1の情報を書面で伝え、登録の申請を代行することを申し出なければなりません*1。新規の顧客や、既存の顧客が新しい送信者名を使いたい場合にも同じ手順が要ります*1。ABNを持たない事業体が相手の場合、申し出の義務は認証電気通信提供者でない限り適用されません*1。
発信・中継・着信で、義務の中身が違う
第3部は、経路上の立場ごとに要件を分けました*1。
発信側は、顧客のアカウントで送信者名つきメッセージを送れるようにする前に、その送信者名が当該事業体のものとして登録簿にあるかを確認します*1。登録がなければメッセージを遮断します*1。登録があっても、自社がその事業体から送信を授権されていることと、依頼してきた人物がその事業体から権限を与えられていることを確認するまで、アカウントを有効にしてはなりません*1。
取り消しへの対応も即時です*1。ACMAから、その送信者名について授権が失われた旨の通知を受けた場合、提供者はただちに当該アカウントを無効化し、その事業体のために当該送信者名を含むメッセージを送るのをやめなければなりません*1。あわせて、有効化したアカウントにはその事業体の権限ある代表者だけがアクセスできるようにする義務も置かれました*1。
中継側は、送ってきた提供者と、送る先の提供者の双方が参加事業者でなければ中継してはなりません*1。例外は2つです*1。豪州で発行された携帯番号が国際ローミングを使っている場合と、国際の電気通信サービス提供者から受け取った場合に、遮断したうえで中継する場合です*1。
着信側は、参加事業者から受け取ったメッセージだけを着信させます*1。着信させる前に、登録簿データを照合して送信者名が登録されていることを確認し、登録がなければ遮断します*1。
ここで注目したいのが第18条第5項です*1。「登録簿データを照合する」とは、着信させる24時間より前でないデータに照らして確認したことを意味すると定義されました*1。ローカルに複製を持つ実装を想定しつつ、その鮮度に上限を置いた書き方です*1。同期の頻度が、そのまま遵守の可否になります*1。
もうひとつ、第18条第6項は、送信者名が「Unverified」である場合、着信側は遮断しなくてよいとしました*1。未検証であることを明示する経路が残されています*1。
報告は2営業日と20営業日の2本立て
第5部が報告を定めます*1。
ひとつ目が追跡報告です*1。参加事業者が、ある送信者名つきメッセージが詐欺メッセージであると知ったとき、自社が発信側であればACMAへ報告します*1。発信側でなければ、そのメッセージを送ってきた提供者に対して、詐欺メッセージが通った経路の一部であることを通知したうえで、ACMAへ報告します*1。通知を受けた側も同じ手順を踏むため、経路をさかのぼる連鎖になります*1。
報告の中身も指定されています*1。書面で、詐欺メッセージの送信者名、送信先の総数、メッセージの内容に関する情報を含め、自社が発信側であればその旨と、送信者名を登録した事業体(または登録の相手方となった事業体)の身元を、発信側でなければメッセージを送ってきた提供者の身元と、関係する場合は国際パートナーまたはEMSPパートナーの身元を記載します*1。期限は、知った日から2営業日以内、かつ実行可能な限りすみやかにです*1。
ふたつ目が四半期報告です*1。四半期の末日から20営業日以内に、立場に応じた項目を書面でACMAへ提出します*1。項目は6区分に整理されました*1。
| 報告する立場 | 報告する内容 |
|---|---|
| 発信・中継・着信のすべて | 登録簿に関して他の提供者、事業体、受信者から受けた苦情の件数と種類 |
| 発信側 | 登録済みの送信者名を含めて送信したメッセージの総数と、未登録のため遮断したメッセージの総数 |
| 中継・着信 | 参加事業者ではないのに送信者名つきメッセージを送ろうとした提供者の身元 |
| 着信側 | 参加事業者から受け取ったメッセージの件数と、未登録のため遮断した件数 |
| 中継側 | 国際の電気通信サービス提供者から送られ、自社が遮断したメッセージの件数 |
| 認証電気通信提供者 | ABNを持たない事業体から登録の申請を求められたが、第12条第4項の事項を確認できず申請しなかった件数 |
数え方の設計が先に要る、という点が実務では効いてきます*1。遮断の理由を分類して記録しておかないと、四半期の集計で作り直しになります*1。
記録は2年、保安の侵害は通知の対象
第6部が、記録・保安・プライバシーをまとめて扱います*1。
第23条は、この標準への遵守を示す記録を保持することを求めます*1。そのうえで、誤用・妨害・喪失、および権限のないアクセス・改変・開示から記録を守るため、そしてこの標準や他の法で保持が求められなくなった記録を、保護された方法で破棄または処分するために、状況に応じたあらゆる合理的な措置を執ることとされました*1。
第24条は期間を定めます*1。記録は作成した日から2年保持し、ACMAから書面で請求を受けたときは5営業日以内に提出できるようにします*1。
第25条が、システムの保安です*1。参加事業者は、送信者名つきメッセージの送信に関わる情報技術のシステムと処理、および登録簿とのやり取りが保護された状態であるよう、あらゆる合理的な措置を執らなければなりません*1。そして、これらのシステムや処理について保安の侵害またはその疑いを知ったときは、何が起きたかと是正のために執った手順を、実行可能な限りすみやかにACMAへ通知します*1。
プライバシーの扱いも押さえています*1。第26条は、プライバシー法1988の適用を受けない参加事業者について、この標準に関連して特定の目的で集めた個人情報を、他の目的に使用・開示しないことを求めます*1。例外は、本人からの苦情の処理に必要な場合、本人の明示的な同意がある場合、豪州の法または裁判所・審判所の命令により求められ、もしくは認められる場合の3つです*1。保持が不要になった情報は、保護された方法で破棄します*1。
方針の整備も義務です*1。第19条はこの標準への遵守を達成するための方針と手順を、第20条は提供者の遵守に関する事業体からの苦情を扱い、記録し、解決するための方針と手順を、それぞれ実装することを求めました*1。
日本のIT部門は、どこを見ればよいか
この標準は豪州の制度で、日本の事業者に直接の義務を課すものではありません*1。ただし、SMSを業務で使う設計には示唆があります*1。
第一に、送信者名は資産として管理する対象になるという点です*1。登録の裏づけが商号・会社名・商標・ドメイン名に紐づくため、ブランド名の表記ゆれや、部門ごとに違う名前を使う運用は通りにくくなります*1。社内で使っている送信者名を棚卸しし、どの登記や商標に対応するかを整理しておくと、海外展開のときに動けます*1。
第二に、取り消しが即時に反映される前提の設計です*1。授権が失われた通知を受けたら、ただちにアカウントを無効化する義務があります*1。送信の設定を人手の作業に依存させていると、この即時性に追いつきません*1。送信者名ごとに有効・無効を切り替えられる制御点を、設定として持たせておく必要があります*1。
第三に、参照データの鮮度です*1。着信側の照合は24時間以内のデータで行うと定義されました*1。外部の台帳を複製して使う設計では、同期の周期と失敗時の扱いを仕様に書いておかないと、判定そのものが要件を満たさなくなります*1。同期の遅延を監視し、閾値を超えたら安全側(遮断)に倒すかどうかも、先に決める論点です*1。
第四に、集計の設計を先に置くことです*1。四半期報告は、送信件数、遮断件数、遮断の理由、相手方の身元といった粒度で求められます*1。あとから集計しようとすると、ログに必要な項目が残っていないことに気づきます*1。本人確認の記録でも同じ構図がありました。プリペイド携帯の本人確認は、確認の方法の名称を記録することを条件にしています*1。
まとめ:豪州のSMS送信者ID登録簿で押さえる3つの視点
豪州では、ACMAが電気通信法1997の第125AA条第1項に基づき、電気通信(SMS送信者ID登録簿)業界標準2025を制定しました。効力は3段階で、2025年10月15日に第1条から第8条・第15条第2項・第4部・第6部、2025年11月30日に第9条から第14条・第7部・別表1、2026年7月1日に第15条第2項を除く第3部と第5部が発生します。対象は搬送事業者、搬送サービス提供者、電子メッセージングサービス提供者で、法定インフラ提供者としての立場は除かれます。押さえたい視点は三つあります。第一に、登録の条件。送信者名つきメッセージを送信・中継・着信させる提供者は法第484F条の承認を申請し、ABNを持たない事業体に代わって登録や送信を行う場合は認証電気通信提供者の承認も要ります。ABNを持つ事業体のための登録では、事業者名登録簿の登録事業者名、豪州事業者登録簿の会社名、所有する商標、whois.auda.org.auで登録者となっているドメイン名のいずれかと送信者名が一致し、それぞれの状態が有効であることを確認します。政府機関が緊急事態や公衆の健康・保安に関わる送信者名を使う場合には例外が置かれました。第二に、経路ごとの義務。発信側は、有効化の前に登録の有無を確認し、未登録なら遮断し、登録済みでも自社の授権と依頼者の権限を確認します。ACMAから授権の喪失を通知されたら、ただちにアカウントを無効化します。中継側は、送り元と送り先の双方が参加事業者でなければ中継せず、国際ローミングあての場合と、国際の提供者から受けて遮断した場合に例外があります。着信側は、参加事業者から受けたものだけを着信させ、着信の24時間より前でない登録簿データで照合します。送信者名が「Unverified」であれば遮断は不要です。第三に、報告と記録。詐欺メッセージを知った場合は、経路の上流へ通知したうえで、知った日から2営業日以内にACMAへ書面で報告します。四半期の末日から20営業日以内には、立場に応じた6区分の情報を報告します。記録は作成日から2年保持し、ACMAの書面の請求から5営業日以内に提出します。情報技術のシステムと処理の保護にはあらゆる合理的な措置が求められ、侵害またはその疑いを知ったときは、内容と是正の手順をすみやかにACMAへ通知します。
よくある質問
いつから未登録の送信者名が止まるのですか。
2026年7月1日からです。業界標準2025の施行の表は、第15条第2項を除く第3部と第5部が2026年7月1日に効力を持つとしています。第3部が送信・中継・着信の各段階での確認と遮断の義務、第5部が追跡報告と四半期報告です。それ以前の段階として、2025年10月15日に第1条から第8条、第15条第2項、第4部(方針と手順)、第6部(記録・保安・プライバシー)が、2025年11月30日に第9条から第14条(登録の手続き)、第7部(利用者への通知)、別表1が効力を持っています。
送信者名はどうやって登録するのですか。
発信側の提供者を通じて申請します。第11条は、ABNを持つ事業体から依頼を受け、その事業体のためにメッセージを送ることに同意した提供者は、登録の申請を行わなければならないとしています。申請の前に、提供者は正当な用途を確認します。確認は、事業者名登録簿の登録事業者名、豪州事業者登録簿の会社名、事業体が所有する商標、whois.auda.org.auで事業体が登録者となっているドメイン名のいずれかと送信者名が一致し、それぞれの状態が有効であることによって行います。ABNを持たない事業体の場合は、認証電気通信提供者を通じて申請することになります。
着信側の照合は、毎回リアルタイムに行う必要がありますか。
その必要はありませんが、鮮度の上限があります。第18条第3項は、着信させる前に登録簿データを照合して送信者名が登録されていることを確認するよう求め、第18条第5項が「登録簿データを照合する」の意味を定義しています。それによれば、着信側の提供者は、送信者名つきメッセージを着信させる24時間より前でないデータに照らして確認していなければなりません。したがって、台帳を複製して使う実装であっても、24時間以内に同期していれば要件を満たします。
詐欺メッセージを見つけたら、どこへ報告しますか。
ACMAへ書面で報告します。第21条は、参加事業者が送信者名つきメッセージを詐欺メッセージであると知った場合の手順を定めています。自社が発信側であればACMAへ報告し、発信側でない場合は、そのメッセージを送ってきた提供者へ、詐欺メッセージが通った経路の一部であることを通知したうえで、ACMAへ報告します。報告には、送信者名、送信先の総数、内容に関する情報に加えて、発信側であれば登録した事業体の身元を、発信側でなければ送ってきた提供者の身元と、関係する場合は国際パートナーまたはEMSPパートナーの身元を記載します。期限は、知った日から2営業日以内かつ実行可能な限りすみやかにです。
出典
- *1 参考:オーストラリア連邦法令登録簿「Telecommunications (SMS Sender ID Register) Industry Standard 2025」(F2025L01235・2025年10月7日制定)(https://www.legislation.gov.au/F2025L01235/latest/text)。本記事の一次情報。第2条の3段階の施行(2025年10月15日/2025年11月30日/2026年7月1日)、第3条の根拠(電気通信法1997 第125AA条第1項と大臣指令2025の第5条から第8条)、第4条の適用(3業態、法定インフラ提供者の除外、電子メッセージングサービス提供者による委託)、第7条と第8条(法第484F条の承認、認証電気通信提供者の承認)、第9条(2026年7月1日前の既存顧客への連絡と申し出、新規・新送信者名の場合、非ABN事業体の扱い)、第10条(別表1の情報のウェブ公開)、第11条(関連事業体の確認、正当な用途の4経路、政府機関の例外、認証電気通信提供者の場合)、第12条(非ABN事業体)、第15条から第18条(非参加事業者の禁止、発信側の確認と遮断・授権の確認・ACMA通知時の即時無効化・アクセス制限、中継側の双方参加要件と国際ローミング/国際提供者の例外、着信側の照合と24時間の定義、Unverifiedの例外)、第19条と第20条(方針と手順、苦情処理)、第21条(追跡報告の連鎖と記載事項、2営業日)、第22条(四半期報告の20営業日と6区分)、第23条から第26条(記録の保持と保護、2年と5営業日、システムの保安と侵害の通知、プライバシー法の適用がない場合の取扱い)、ならびに第27条(利用者への定期の通知と2026年7月1日前後の一回限りの通知)を確認した。確認日は2026年9月10日。(2026年9月確認)