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エンジニア中途採用の責任者と、人事・開発現場の役割分担
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 責任者は、採用基準と面接の進め方を決め、面接する人全員に同じ考え方を伝える役目を持ちます。
- 任せる仕事と技能の評価は開発現場が、基準の点検と条件の説明は人事が受け持つと分けやすくなります。
- 面接官は選考の前に決め、質問と評価基準の打ち合わせを済ませてから面接に入ってもらいます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
面接のたびに質問が変わり、候補者どうしを比べられない。開発のリーダーは採りたいと言うのに、最後に誰が決めるのかがはっきりしない——。エンジニアの中途採用では、こうした食い違いが起こりがちです。エンジニア中途採用の責任者とは、採用基準と選考の進め方を決め、面接に加わる人全員が同じ考え方で選考できるようにする役目を持つ人を指します。
責任者を決めておくと、採用基準を誰が作り、面接の質問を誰が確かめ、採否を誰が決めるのかを、選考の前にそろえられます。ただし万能ではなく、責任者を置いただけで応募が増えるわけではありません。本記事では、エンジニアの中途採用を進める開発部門のマネージャーに向けて、責任者の役目、人事と開発現場の分担、面接官の決め方、そして採否と処遇を決める人を整理します。
中途採用の責任者とは
厚生労働省は、公正な採用選考のための社内体制を「公正採用選考システム」と呼んでいます。整えるときに配慮する点として挙げているのは、責任の所在の明確化、マニュアルやガイドラインによる全担当者への周知徹底、採用選考の方法や基準を点検して直すしくみの3つです。*1 中途採用の責任者は、この3つを社内で実際に回していく人と考えると分かりやすくなります。
この役目には、厚生労働省が名前を付けた制度もあります。「公正採用選考人権啓発推進員」(以下、推進員)です。厚生労働省の「採用選考自主点検資料」(以下、自主点検資料)によると、推進員は、事業所内で行われる採用選考が公正なものとなるよう、「事業所内での事務的な責任者(旗振り役)」を担うとされています。*2 仕事の例としては、採用基準の作成、応募書類に不適切な項目がないかの確認、面接時の質問の作成、それらを面接官や社長・役員と共有する研修会の開催、面接マニュアルの作成が挙げられています。
推進員は、「人事担当責任者など採用選考に関する事項について相当の権限を有する方」の中から選ぶとされ、選んだり替えたりしたときはハローワークに知らせます。*2 エンジニアの中途採用で責任者を決めるときも、採用基準と面接の進め方を決め、それを社内の面接官や役員に守ってもらえるだけの立場にある人を選ぶのが出発点になります。
なぜ責任者を決めておくのか
厚生労働省は公正採用選考特設サイトで、採用選考の担当者のうち一人でも就職差別につながるような不適切な対応をすれば、企業全体の社会的な信頼を失いかねないと説明しています。エンジニアの中途採用では、開発のリーダー、配属先の課長、人事、役員と、面接に加わる人が多くなりがちです。人数が増えるほど、選考の考え方を聞かないまま面接に入る人が出やすくなります。
面接に加わる役員も例外ではありません。自主点検資料は、採用面接の際に社長や役員が家族の状況などを尋ねる不適切な事例が見られるとしています。そのうえで、推進員が社長や役員を含む面接担当者全員に、公正な採用選考の考え方をどう伝えるかが重要だと述べています。最終面接を役員が担う会社ほど、責任者が役員にも事前に同じ説明をしておく必要があります。
採用を決める権限が社内で分かれている会社にも注意点があります。自主点検資料は、支社や支店がみずから採用を決める権限を持つ場合、本社の責任で正しい採用選考について十分に指導しておくよう求めています。開発部門が人事を通さずに候補者を集め、面接まで進める会社でも、責任者が開発部門の面接も同じ採用基準で行われているかを確かめておくと、部門ごとに採用基準がばらばらになるのを防げます。
人事と開発現場の分担
自主点検資料は、採用基準を決めるときの観点として、採用予定の職種の仕事にどんな適性・能力が必要か、採用時点で技能・経験・資格・将来的な可能性などがどの程度必要か、の2つを挙げています。このうち、どんな仕事を任せ、どの技能がどの程度要るかを具体的に言えるのは開発現場です。一方、基準に適性・能力と関係のない項目が入っていないか、面接する人全員が同じ手順で使えるかを確かめるのは人事の受け持ちです。
選考の作業ごとに分担の例をまとめると、次の表のようになります。責任者は、それぞれの作業に担当者の名前を書き込み、選考が始まる前に関わる人全員へ共有しておきます。
| 作業 | 開発現場(配属先の開発責任者) | 人事(採用の担当者) |
|---|---|---|
| 採用基準 | 任せる仕事と、必要な技能・経験の程度を書く | 適性・能力と関係のない項目がないかを確かめる |
| 求人票と応募書類 | 仕事の中身と使う技術を書く | 応募書類に不適切な項目がないかを確かめる |
| 面接の質問と評価基準 | 技能を確かめる質問と、合格とする答えの目安を決める | 質問が仕事の能力と関係のない事項に触れていないかを確かめる |
| 面接 | 技能と任せる仕事の説明を受け持つ | 労働条件と入社後の処遇の説明を受け持つ |
| 採否の決定 | 技能の評価を出す | 評価が同じ基準で付けられているかを確かめる |
人事と開発現場の分け方は、実際の企業の例でも見られます。厚生労働省が2025年3月にまとめた中途採用の調査研究は、中途採用の成果が良好な企業などを選び、14社の中途採用の責任者やそれに準ずる人から聞き取りをしています。正社員26人の電気・ガス業の企業では、面接を3回行い、1回目を採用部署の担当者、2回目を人事責任者と採用部署の責任者、3回目を社長が担当しています。選考を始める前に採用ポジションを決めておき、選考の間はそのポジションに照らして評価しているそうです。*3
正社員1,865人の製造業の企業では、書類選考の後に行うカジュアル面談(面接の前に、互いの意思を確かめる面談)を、採用担当者と配属予定先の部課長が一緒に受け持っています。*3入社後の働き方の食い違いがないよう、仕事の中身などの話をこの段階でほぼ済ませているといいます。どちらの企業でも、人事の担当者と配属先の責任者が同じ場に出ています。技能を確かめる人と条件を説明する人がそろっていれば、候補者が同じ質問を何度も受けずに済みます。
面接官の決め方
自主点検資料は、採用面接の点検項目として、面接官の人選は適切か、面接官の研修や打ち合わせはできたか、面接の質問内容は適切か、の3つを挙げています。評価については、あらかじめ評価基準を決めておくこと、面接マニュアルを作って面接担当者全員で共有すること、できるだけ客観的かつ公正に評価するため複数の面接担当者で選考することなどに留意するよう求めています。*2
エンジニアの中途採用では、技能を確かめる面接官を開発現場から出すことになります。先の調査研究では、正社員3,001人(総合職のみ)の製造業の企業が、1次面接官を採用ポジションのある職場のグループリーダー(課長以上くらいの職位)に任せています。この企業は面接官研修を希望制で行い、研修に参加したことがなく面接の経験も少ない社員を主な対象にしています。*3
研修で伝えている内容にも特徴があります。面接官から求職者へ情報を開示することも面接の目的の一つだとして、職場の現状や求職者に期待する役割を誠実に伝えるよう話しているそうです。研修を始める前には、採用した人が、会社の期待していた役割までは果たせないというミスマッチがあり、早期離職につながることもあったと振り返っています。
面接官を選ぶときは、任せる仕事を実際に知っている人であること、面接の前の打ち合わせに出られる人であること、の2つを条件にすると決めやすくなります。自主点検資料も、面接回数や面接選考メンバーをあらかじめ決め、面接担当者の事前打合せや面接のシミュレーションをしておくことが必要だとしています。エンジニアの経験がない人事担当者が技術面接で使える質問は「技術面接で人事が見極める5つの質問」で扱っています。
採否と処遇を決める人
採否の決定について、厚生労働省は、本人が求人職種の職務を遂行するために必要な適性・能力を持っているかという観点で、あらかじめ定めた基準に従って総合的に評価するよう求めています。最終面接を社長や役員が担う場合でも、その場の印象だけで決めるのではなく、1次面接までの評価と同じ基準で判断してもらえるよう、責任者が評価の記録と基準を渡しておきます。
処遇を誰が決めるかも、選考の前に決めておきたい点です。調査研究の聞き取りでは、正社員2,711名の不動産業の企業が、1次面接の評価結果を社内基準に照らし、入社直後の賃金を決めています。最終面接の評価が高かった場合は、想定よりも高い役職を示すこともあるそうです。*3 技能の評価と処遇の決め方がつながっていれば、開発現場の評価が条件の提示にもそのまま生かされます。
正社員473人の情報通信業の企業では、面接で求職者の持つ技能と本人がやりたいことを聞き、両者が見合う場合に採用しています。内定の承諾後にはあらためて面談をし、希望する働き方や仕事の中身をより具体的に聞き取っています。面接の段階では求職者も正直には言いづらいためだといいます。*3 内定の後にも本人の希望を聞き直し、働き方や仕事の中身を具体的にしている例です。
つまずきやすい点
一つ目は、面接官を面接の直前に決めてしまうことです。事前の打ち合わせができないまま、質問と評価基準を知らない人が面接に入ることになります。開発現場は予定が詰まりやすいので、求人を出す時点で、面接官の候補と打ち合わせの日程を先に押さえておきます。
二つ目は、応募者の情報を誰が見てよいかを決めていないことです。職業安定法に基づく指針は、求人を出す企業も含めて、個人情報の漏えいを防ぐ措置や、正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置などを講じるよう定めています。*2 面接官が増えるほど、応募書類を渡す相手も増えます。書類を見られる人は、その候補者の選考に加わる人に限っておきます。集めてはいけない情報は「応募者の個人情報で収集してはいけない3つの事項」で整理しています。
三つ目は、責任者を決めれば応募も増えると期待することです。責任者が整えられるのは、採用基準、面接の分担、採否の決め方といった選考の進め方です。応募そのものが少ないときは、募集の経路や、リモートワークの可否といった働き方の条件をあわせて見直します。
まとめ:責任者を決めるときの3つの点
エンジニア中途採用の責任者を決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、採用基準と面接の進め方を決め、役員を含む面接担当者全員に同じ考え方を伝えられる立場の人を責任者にすること。第二に、任せる仕事と技能の評価は開発現場が、基準の点検と条件の説明は人事が受け持つように、作業ごとに担当者を決めること。第三に、面接官と処遇を決める人を選考の前に決め、質問と評価基準の打ち合わせを済ませておくことです。この3点を踏まえておけば、「面接官によって言うことが違い、誰が決めたのか分からないまま内定を出していた」という事態を避けやすくなります。選考の分担や面接の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
公正採用選考人権啓発推進員は、どの会社が選任するのですか
厚生労働省は、一定規模以上の事業所に選任してもらう制度として運用しています。職業紹介事業者と派遣元事業主には、従業員の規模にかかわらず選任するよう求めています。*2 選任したときや選任替えをしたときは、ハローワークに知らせます。
推進員に選ばれた人が受けられる研修はありますか
あります。労働局とハローワークが、推進員を対象に公正な採用選考に関する研修会を開いています。社内の面接官向けの研修を組み立てるときにも、そこで得た内容を使えます。
開発責任者と人事責任者のどちらを、中途採用の責任者にすればよいですか
選考全体の責任者は、採用基準と面接の進め方を社内で守ってもらえる立場の人にし、技能の評価は開発責任者に任せる分け方が考えやすいでしょう。厚生労働省は推進員を「人事担当責任者など」相当の権限を持つ人から選ぶとしています。*2 開発責任者が全体の責任者を兼ねる場合は、人事が基準の点検を受け持ちます。
1回の面接は何分くらいを見込めばよいですか
自主点検資料は、30分程度の面接で見極めるには、どの点を見極める質問かを事前に検討しておく必要があるとしています。*2 質問の数は、時間内に評価基準をすべて確かめられる数にとどめ、必要な質問を掘り下げる時間を残しておきます。
エンジニアの中途採用の進め方を相談したいとき
採用基準の書き方や、人事と開発現場の分担の整理からご相談いただけます。
Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。
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出典
- *1 参考:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考の具体的な方法」(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html)。出典:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」。1 採用選考のための社内体制、8 採否の決定(内定)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:厚生労働省「採用選考自主点検資料~公正な採用選考を行うために~ 令和8年度版」(https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/assets/pdf/basic/02.pdf)。出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「採用選考自主点検資料 令和8年度版」。STEP2 採用基準(選考基準)・方法の決定、STEP5 採用面接、3 公正採用選考人権啓発推進員制度、4 求職者等の個人情報の取扱い(職業安定法に基づく指針〔平成11年労働省告示第141号〕の抄)を参照(2026年9月確認)
- *3 参考:厚生労働省「中途採用・経験者採用者が活躍する企業における情報公表その他取組に関する調査研究 結果報告書」(2025年3月)(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001489721.pdf)。出典:同報告書 第1章(ヒアリング調査の対象と方法)と、ヒアリング事例の報告(14社)を参照。企業の正社員数は報告書の記載による(2026年9月確認)