LASSIC Media らしくメディア
TMS(配車・輸配送管理)システム開発を外注
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- TMS(Transport Management System)は、配車計画・ルート最適化・動態管理・運賃計算などをひとつの画面で扱う輸配送管理システムです。
- 2024年4月1日施行の改善基準告示により、トラック運転者の拘束時間・連続運転時間の上限管理は一段と細かくなりました(厚生労働省)。
- 元請事業者には実運送体制管理簿の作成が義務付けられ、下請け構造を可視化する管理体制が求められています(国土交通省)。
目次
TMS(輸配送管理システム)とは何か——配車と運行を一元管理する仕組み
TMS(Transport Management System)とは、受注・出荷指示から配車計画、運行中の進捗把握、輸送実績の集計までを一つの仕組みで扱う輸配送管理システムを指します。運送会社の配車担当者が紙やExcelで組んでいた配車表をシステム化し、ドライバーの拘束時間や車両の積載状況もあわせて管理できるようにする点が特徴です。
配車業務は、荷主から届く出荷指示を受けて車両とドライバーを割り当て、走行ルートを組み、実際の運行を見守り、終わったら実績を締めて運賃を計算するという一連の流れで構成されます。TMSはこの流れを分断せず、ひとつのデータとしてつなぐことを目的にしたシステムだといえます。配車担当者の経験や勘に頼っていた部分を、地図データや過去実績にもとづく計算に置き換えられる点が導入の動機になりやすいところです。
混同されやすい概念に「配車システム」があります。配車システムは配車計画の作成支援に機能を絞ったツールを指すことが多く、TMSはそこに動態管理・実績集計・運賃計算までを含めた、より広い範囲を指す言葉として使われる傾向があります。呼び方は提供会社によって幅があるため、導入検討時は自社が欲しい機能がどこまで含まれるかを個別に確認する姿勢が実務的です。
物流の2024年問題とTMS——改善基準告示への対応で問われる管理精度
TMSへの関心が高まっている背景には、いわゆる物流の2024年問題があります。働き方改革関連法によりトラック運転者にも時間外労働の上限規制が適用され、2024年4月からは年間960時間という上限のもとで運行計画を組む必要が生じました*2。国土交通省の運輸局は、この規制のもとでは「全員で残業30分の確保もできない」場面が生じかねないと説明しており、モーダルシフトや共同配送、DXの活用による運行管理の効率化を対応策として挙げています*2。
あわせて2024年4月1日には、自動車運転者の改善基準告示が改正・施行されました。厚生労働省の解説によると、年間の拘束時間は原則3,300時間以内(労使協定により年6か月まで3,400時間以内に延長可)、1か月の拘束時間は原則284時間以内(同様に年6か月まで310時間以内)とされています*1。1日の拘束時間は13時間以内が基本で、延長する場合も15時間まで、特例でも16時間が上限です*1。連続運転時間は4時間以内、休息期間は継続11時間以上を基本としつつ9時間を下回らないことが求められています*1。
これらの基準を守るには、ドライバーごとの拘束時間・運転時間・休息時間を日次で正確に積み上げて把握する必要があります。手作業の勤怠管理では、複数日にまたがる長距離運行や、荷待ちなどの手待ち時間を含めた計算が煩雑になりがちです。TMSに労務管理の機能が組み込まれていれば、配車計画を組む段階で上限に近いドライバーを把握し、割り当てを調整する運用がしやすくなります。
もう一つの制度変化として、貨物自動車運送事業法などの改正により、元請事業者には実運送体制管理簿の作成が義務付けられています。国土交通省の発表によると、実運送を担う事業者の名称などを記録・管理し、運送体制の透明化を図る狙いがあるとされています*3。あわせて一定規模以上の事業者には、下請けへの発注を適正化するための管理規程の整備や責任者の選任も求められています*3。複数の協力会社に運行を委託している企業では、TMSの車両・ドライバー・委託先を紐づける管理機能が、こうした記録作成の負担軽減につながる場面もあります。
TMSの主要機能——配車計画から動態管理・運賃計算まで
TMSが担う機能は提供形態によって幅がありますが、一般的に次のような機能群で構成されます。それぞれ単独のツールとして提供される場合もあれば、TMSの一部として統合されている場合もあります。
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| 配車計画・自動配車 | 納品先・時間指定・荷物量から、車両とドライバーの割り当てを組む機能。条件の組み合わせをシステムが計算し、案として提示する形が一般的です |
| ルート最適化 | 複数の配送先を回る順序を、走行距離や到着時刻の制約から算出する機能。地図データや道路情報との連携が前提になります |
| 積載計画 | 荷物の容積・重量と車両の積載能力を踏まえ、何台でどう積み合わせるかを決める機能。台数の削減にもつながる要素です |
| 運行・進捗管理 | 配車計画に対して、実際の運行がどこまで進んでいるかを管理する機能。遅延の把握や荷主への状況共有に使われます |
| 動態管理(GPS連携) | 車載端末やスマートフォンのGPSから位置情報を取得し、地図上で車両の稼働状況を確認する機能です |
| 実績集計・運賃計算 | 走行距離・積載量・待機時間などの実績をもとに運賃を計算し、請求データを作成する機能。基幹システムへの連携が想定されます |
| ドライバー労務管理 | 拘束時間・運転時間・休息期間を記録し、改善基準告示の基準に近づいたドライバーを配車計画の段階で把握する機能です*1 |
これらの機能をひととおり備えたTMSであれば、配車計画を組む段階でドライバーの労務状況を踏まえた割り当てができ、運行後は実績と運賃計算までを連続して処理できます。逆に、配車計画のみに特化した簡易なツールでは、動態管理や運賃計算を別システムで補う運用になりやすく、データの二重入力が発生しがちです。自社にとってどこまでの機能を一つのシステムに求めるかは、現状の業務フローの棚卸しから見えてきます。
WMS・基幹システムとの違いと連携——担う工程とデータの流れ
物流システムの検討では、TMSとWMS(Warehouse Management System。倉庫管理システム)が混同されることがあります。WMSは入荷・棚入れ・ピッキング・出荷検品など、倉庫内で完結する在庫と作業の管理を担う仕組みです。一方のTMSは、荷物が倉庫を出た後の配車・運行・実績を管理する仕組みであり、担う工程が明確に分かれています。
実務上は、WMSで確定した出荷指示がTMSに引き継がれ、TMSがそれをもとに配車計画を組むという連携関係になります。倉庫からの出荷タイミングと配車計画がずれると、積み込み待ちの車両が発生したり、逆に荷物が揃わないまま出発してしまったりする事態も起こり得るでしょう。両システムを別々のベンダーで導入する場合は、出荷確定データの連携仕様を事前にすり合わせておく必要があります。
基幹システムや受注システムとの関係も整理しておきたいところです。受注システムで確定した注文情報はTMSに渡され、配車計画の元データになります。運行が終わった後の実績・運賃データは、請求処理を担う基幹システムや会計システムに戻す流れが一般的です。この往復のデータ連携がAPIなどで自動化されているか、あるいは手作業でのファイル授受に頼っているかによって、日々の運用負荷は大きく変わってきます。既存の基幹システムが古い場合、連携方式の設計そのものが導入プロジェクトの大きな検討事項になります。
パッケージ導入かスクラッチ開発か——選定の判断軸
TMSの導入方法は、大きくパッケージ製品の導入とスクラッチ開発(自社仕様での新規開発)に分かれます。パッケージ製品は、配車計画・ルート最適化・動態管理などの標準機能があらかじめ用意されており、比較的短い期間で稼働を始められる点が利点です。提供会社による機能追加や法改正対応が継続的に行われる場合もあり、改善基準告示のような制度変更への追随を自社だけで抱え込まずに済む面もあります。
一方で、自社特有の商慣習(特殊な運賃体系、多段階の下請け構造、複数拠点をまたぐ配車ルールなど)が強い場合、パッケージ製品の標準機能だけでは対応しきれない部分が出てくることがあります。この場合は、パッケージにアドオン開発を組み合わせるか、スクラッチでの開発を選ぶかの判断が必要です。スクラッチ開発は自社の業務フローに合わせて仕様を組み立てられる反面、要件定義から本番稼働までの期間や費用は相応にかかり、法改正への対応も自社の開発体制で継続的に担う前提になります。
基幹システムとの連携が複雑な企業ほど、パッケージの標準連携機能で足りるか、追加開発が必要かの見極めが重要になります。既存の受注・基幹システムの仕様書を用意したうえで、複数のパッケージ製品やスクラッチ開発の提案を比較検討する進め方が、判断のずれを防ぎやすい方法です。
外注の進め方——現状把握から本番移行までの流れ
TMSの導入・外注を進める際は、まず自社の配車業務を可視化することから始めます。車両台数、ドライバー数、荷主・拠点の数、1日あたりの配送件数、既存の基幹システムとの連携要否といった情報を整理し、委託先に共有できる状態にしておくとよいでしょう。この段階の情報が曖昧なままだと、見積もりや提案の前提がぶれやすくなります。
次に要件定義を行い、必須機能と優先度の低い機能を切り分けます。改善基準告示の改正など制度変更への対応方針、GPS連携の方式、基幹システムとの連携範囲は、この段階で委託先とすり合わせておきたい項目です。要件が固まった後にベンダーを選定し、可能であれば一部拠点や一部車両でのPoC(概念実証)を経てから全社展開に移る進め方が、想定外の運用トラブルを減らすうえで有効です。
委託先を選ぶ際に確認しておきたい点は次の3つに整理できます。第一に、改善基準告示のような法改正に対して、提供会社側でどの程度追随した実績があるかです。第二に、既存の基幹・受注システムとのAPI連携やデータ連携の実績があるかという点も欠かせません。第三に、稼働後の保守体制として、障害対応や機能追加にどこまで応じてもらえるかです。導入して終わりではなく、制度変更や業務変化に合わせて改修が続くシステムであるという前提で、委託先を選ぶ姿勢が求められます。
。既存の配車業務の複雑さや、基幹システムとの連携範囲によって必要な工数は変わってきます。現状の業務フローを整理したうえで、パッケージ導入かスクラッチ開発か、内製と外注のどちらで進めるかを検討する流れが実務的です。
まとめ:TMS導入・外注で押さえる3つの判断軸
本稿ではTMS(輸配送管理システム)の位置づけと、外注検討にあたっての判断軸を整理しました。要点は3つです。第一に、TMSは受注・出荷指示から配車計画、運行・動態管理、実績・運賃計算までを一つの流れとして扱う仕組みであり、WMSとは担う工程が分かれています。第二に、2024年4月1日施行の改善基準告示により拘束時間・連続運転時間の管理が厳格化されており*1、実運送体制管理簿の作成義務も加わったことで*3、配車計画の段階から労務・委託先情報を扱えるシステムの必要性が高まったといえるでしょう。第三に、自社特有の商慣習や基幹システムとの連携範囲によって、パッケージ導入とスクラッチ開発のどちらが適するかが変わり、外注先選定の判断材料になります。
よくある質問
TMSとWMSは何が違いますか。
WMSは倉庫内の入荷・棚入れ・ピッキング・出荷検品などを管理する仕組みで、TMSは荷物が倉庫を出た後の配車計画・運行・実績を管理する仕組みです。担う工程が分かれており、実務では倉庫で確定した出荷指示をTMSに引き継ぎ、配車計画を組む連携関係になります。
改善基準告示の改正にTMSはどう対応できますか。
労務管理機能を備えたTMSであれば、ドライバーごとの拘束時間・運転時間・休息期間を記録し、上限に近づいた段階を配車計画の作成時点で把握できます。2024年4月1日施行の改善基準告示では、年間拘束時間3,300時間以内、連続運転4時間以内などの基準が定められています*1。
パッケージ型TMSとスクラッチ開発はどちらを選べばよいですか。
標準的な配車業務であればパッケージ製品のほうが短期間で稼働を始めやすい傾向があります。一方、特有の運賃体系や多段階の下請け構造など自社特有の商慣習が強い場合は、アドオン開発やスクラッチ開発を検討する余地があるでしょう。基幹システムとの連携範囲が判断材料の一つになります。
基幹システムとの連携は必須ですか。
必須ではありませんが、受注データの取り込みや実績・運賃データの請求システムへの連携を手作業に頼ると、日々の運用負荷が大きくなりがちです。API連携などでデータの往復を自動化できるかどうかは、TMS選定時に確認しておきたい点です。
TMSの導入・開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
改善基準告示のような法改正への追随実績、既存の基幹・受注システムとのデータ連携実績、稼働後の保守体制の3点を確認することが目安になります。あわせて一部拠点でのPoCを経てから全社展開する進め方も、委託先とすり合わせておくと判断がしやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)(https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice)
- *2 出典:国土交通省 東北運輸局「物流の『2024年問題』とは」(https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/00001_00251.html)
- *3 出典:国土交通省「報道発表資料:『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案』を閣議決定」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000747.html)