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育成就労制度|外国人雇用管理システムの備え
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 制度の位置づけ:技能実習制度を発展的に解消し、人手不足分野の人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました*1。
- 運用開始の時期:改正法は令和6年6月21日に公布され、育成就労制度は令和9年4月1日から運用が開始されます*1。
- システムの勘どころ:在留資格の管理だけでは足りません。計画・試験・転籍要件・外部機関とのやり取りを持つ形が要ります。
※ 本記事は2026年8月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
外国人の受け入れに関わる制度が、根本から組み替えられます。技能移転による国際貢献を目的としてきた技能実習制度が発展的に解消され、日本の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました*1。
根拠となる改正法は令和6年6月21日に公布され、育成就労制度は令和9年4月1日から運用が開始されるとされています*1。目的は、育成就労産業分野において3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、あわせてその分野の人材を確保することです*1。
本記事では、外国人を受け入れる企業の人事・情報システム部門と、その仕組みづくりを受託する立場に向けて、システムとして何を持つことになるのかを整理します。制度の解釈が要る部分は最新の公式資料と、社内の労務担当や行政書士・社会保険労務士の確認を経て進めてください。
目次
何が変わるのか——四つの仕組みが新しく置かれる
制度の骨格を、公表されている資料から整理します*1。
第一に、基本方針と分野別運用方針です。制度全体の基本方針と、育成就労産業分野ごとの運用方針が策定されます。分野別の運用方針では、生産性向上と国内人材の確保を行ってもなお不足する人数に基づいて分野ごとの受入れ見込数を設定し、これを受入れの上限数として運用するとされています*1。
第二に、監理支援機関の許可制です。育成就労が適正に実施されているかを監理する役割を担う監理支援機関が許可制になります。許可の基準は厳格化され、技能実習制度の監理団体も、監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行うことはできないとされています*1。
第三に、育成就労計画の認定制です。育成就労外国人ごとに作成する「育成就労計画」が認定制になります。計画には育成就労の期間(3年以内)、目標(技能、日本語能力)、内容等が記載され、外国人育成就労機構による認定を受ける形です*1。
第四に、送出しの適正性と受入環境の整備です。送出国との二国間取決めの作成や、送出機関に支払う費用が不当に高額にならない仕組みの導入、そして育成就労外国人の本人意向による転籍を一定の要件の下で認めることなどが挙げられています*1。地域協議会の組織による受入環境の整備も含まれます*1。
対象となる分野は、育成就労産業分野として17分野が設定されています。介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です*1。
人事システムで持つことになる情報
現状、外国人従業員の情報としてシステムに持っているのは、在留資格の種類と在留期限、そして在留カードの番号あたりでしょう。育成就労制度では、これに加えて管理する対象が増えます。
| 情報 | 中身 | システム側の扱い |
|---|---|---|
| 育成就労計画 | 期間(3年以内)、技能と日本語の目標、内容 | 個人ごとに持ち、認定の状態と進捗を追う |
| 技能の試験 | 技能検定基礎級、3級、特定技能1号評価試験など | 受験と合否の履歴。次に受けるべき試験の判定 |
| 日本語の試験 | A1相当以上、A2.1相当以上、A2.2相当以上など | 試験の種類と水準を持つ。分野ごとに設定が違う |
| 転籍の要件 | 試験の合格状況など、本人意向の転籍に必要な条件 | 条件を満たしたかを判定できる形で持つ |
| 外部機関 | 監理支援機関、外国人育成就労機構とのやり取り | 提出・受領の記録を残す |
この表でいちばん設計に影響するのが、試験の扱いです。就労開始までに日本語能力A1相当以上の試験に合格するか、それに相当する日本語講習を受講することが求められ、本人意向による転籍の条件としては技能検定基礎級等と日本語能力A2.1相当以上の試験が挙げられています*1。
つまり、試験は「一度受かればよいもの」ではなく、段階を追って複数回登場します。しかも技能と日本語という別系統があり、日本語の水準は分野ごとに設定されるとされています*1。単純に「日本語試験:合格」という一項目では表せません。
設計としては、試験を「種類×水準×受験日×結果」の記録として持ち、そこから「いまどの段階にいるか」を導く形が素直です。既存の人事システムに資格情報の項目があるなら、その枠組みを拡張できる場合があります。人事情報・タレントマネジメントの仕組みで扱うような、スキルや資格を持つ構造が土台になります。
あわせて、期限の管理が要ります。在留期限、計画の期間、試験の有効性、次の段階へ進む時期。これらが個人ごとにずれて訪れるため、担当者が一覧で見られる形にしておかないと運用が回りません。
転籍という新しい論点
技能実習制度と比べていちばん性格が変わるのが、転籍です。育成就労外国人の本人意向による転籍を、一定の要件の下で認めるとされています*1。
これは労働者としての権利保護を図るための仕組みですが、受け入れる企業の側から見ると、システムに新しい要求が生じます。
第一に、要件の判定です。転籍の条件として試験の合格状況が関わってくるため、個人がその条件を満たしているかを判定できる状態が必要になります。人が台帳を見て判断する運用でも回りますが、人数が増えると難しくなります。
第二に、受け入れ側としての手続です。他社から転籍してくる人を受け入れる場合、その人の計画や試験の履歴を引き継ぐことになります。自社で育てた人の情報と、外から来た人の情報が同じ構造で持てるかを確かめます。
第三に、送り出す側としての記録です。転籍していく人について、どこまでの育成が行われたのかを示す必要が生じ得ます。計画の進捗を記録として残していないと、後から示せません。
第四に、人員計画への反映です。転籍が起こりうるという前提は、要員の見立てに影響します。何年後に何人いる想定なのかが変わるため、配置や採用の計画と結びつけて見られる形が望ましいでしょう。
この論点は、既に外国人のIT人材を受け入れている企業にとっては馴染みのある構図でもあります。外国人エンジニアの受け入れで扱うような、在留資格と業務の対応づけを管理する考え方が、分野の違う職種にも広がっていくということです。
受入れ見込数という上限——計画側への影響
分野別の運用方針で受入れ見込数が設定され、これを受入れの上限数として運用するとされています*1。この点は、システムというより計画の話に見えますが、実務では両方に関わります。
採用の計画が制約を受けます。分野ごとの上限がある以上、自社が何人受け入れられるかは外部の状況に左右されます。採用の計画を立てるとき、確定した人数として扱えない部分が出てきます。
複数分野にまたがる企業では整理が要ります。製造と物流倉庫の両方を持つ企業、建設と資源循環に関わる企業。どの業務がどの分野に当たるのかを整理しないと、受け入れの見立てが立ちません。
配置の記録が問われる可能性があります。分野ごとに認められた受け入れである以上、その人がどの業務に従事しているかは制度上の意味を持ちます。実際の配置と、届け出た内容が食い違わない状態を保つ必要があります。
ここは勤怠や配置の記録と結びつく部分です。勤怠管理システムの開発で扱うような、誰がどの現場でどの業務に就いたかを記録する仕組みがあれば、説明の材料として使えます。逆にそこが曖昧だと、確認を求められたときに答えられません。
建設のように現場が動く業種では、この記録が特に重くなります。施工管理の仕組みで扱うような、現場ごとの就労の記録と人事情報がつながっているかを確かめておく価値があります。
外部機関とのやり取りを記録として残す
この制度では、企業が単独で完結する手続がほとんどありません。監理支援機関、外国人育成就労機構、送出機関、そして地域協議会。複数の相手とのやり取りが前提になります*1。
システムの観点で押さえたい点を挙げます。
第一に、提出と受領の記録です。いつ、どこへ、何を出したか。いつ、何を受け取ったか。これが残っていないと、後から経緯を説明できません。
第二に、書類の版です。計画は変更されることがあります。どの版が有効なのか、いつ差し替わったのかを持っておく必要があります。
第三に、相手側の識別です。監理支援機関は許可制になるため、許可を受けた機関かどうかが意味を持ちます。取引先として台帳に持ち、状態を更新できる形にしておきます。
第四に、機微な情報の扱いです。個人の国籍、家族の状況、試験の結果、面談の記録。閲覧できる範囲を絞る制御が必要になります。人事情報の一部として、通常の従業員情報と同じ水準の管理では足りない場合があります。
この構造は、他の制度対応でも繰り返し出てくるものです。社会保険の適用拡大への対応や育児介護休業法の改正対応と同様に、「手続を記録として残せる形にする」という設計が中心になります。個別に作るより、人事系の記録の枠組みとして一度整えておくほうが後の負担が軽くなります。
時間軸と、着手の順序
運用開始は令和9年4月1日とされています*1。ここから逆算して考えます。
いま確かめられること。自社の業務が育成就労産業分野の17分野のどれに当たるのか。現在受け入れている技能実習生が何人いて、いつまでの計画なのか。この整理は制度の細部が固まる前でも進められます。
先に整えておきたいこと。試験の記録を持てる構造、期限を一覧で見られる仕組み、外部とのやり取りの記録。これらは新制度でも既存制度でも役に立ちます。
詳細を待つ部分。分野ごとの日本語能力の水準や、転籍の要件の細部は運用の方針で定まります。判定のロジックを固定で書き込むと、変更のたびに開発が必要になります。設定として持てる形にしておくのが得です。
技能実習生を現在受け入れている企業では、移行の段取りも論点になります。施行の時点で在籍している人の扱い、修了後の進路。制度上の扱いは公式資料で確かめる必要がありますが、システムとしては「旧制度の記録と新制度の記録を並べて持てるか」が問われます。片方に寄せて上書きすると、経緯が失われます。
優先順位としては、受け入れ人数の多い分野から着手するのが現実的でしょう。介護や建設、製造のように人数が多い分野では、台帳が手作業の表計算のままだと運用が破綻します。
受託・委託で進めるときの要点
この種の仕組みづくりを外部と進める場合の要点を挙げます。
第一に、制度解釈の担い手を決めることです。どの業務がどの分野に当たるか、転籍の要件をどう判定するか。これは労務と法務の領域です。開発側は決まった解釈を仕様として実装する役割に集中します。
第二に、既存の人事システムの拡張か新設かを早く決めることです。資格や研修の情報を持てる枠組みがあるなら拡張できます。ない場合は別の台帳を作り、従業員コードで紐づける形になります。既存の構造を調べたうえで判断します。
第三に、判定を設定で表せる形にすることです。分野ごとの水準や要件は変わります。条件をコードに書き込むと、変更のたびに開発が必要になります。
第四に、多言語への対応を要件に含めるかを決めることです。本人が自分の計画や試験の状況を見られるようにするなら、日本語だけでは足りません。どこまで対応するかを最初に決めます。
第五に、閲覧範囲の設計を成果物に含めることです。国籍や家族の状況、面談の記録といった機微な情報を含むため、誰が何を見られるかの制御は後から足すのが難しくなります。
体制としては、外国人雇用の実務を理解している要員が入れるかが分かれ目になります。台帳の項目だけを設計する体制では、期限が個人ごとにずれる運用や、現場の配置と届け出の対応づけといった勘所に届きません。業務側と設計側が同じ場で話せる形を作れるかを、委託先を選ぶ観点に入れておくとよいでしょう。
まとめ:育成就労制度への備えで押さえる3つの視点
技能実習制度を発展的に解消して創設された育成就労制度は、令和6年6月21日に公布された改正法にもとづき、令和9年4月1日から運用が開始されます。育成就労産業分野における3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、あわせて人材を確保することが目的で、対象は17分野が設定されています。押さえたい視点は三つです。第一に、新しく置かれる仕組みが基本方針と分野別運用方針、監理支援機関の許可制、育成就労計画の認定制、そして送出しの適正性と受入環境の整備という四つであり、企業が単独で完結する手続がほとんどないこと。第二に、人事システムでは在留資格と期限だけでは足りず、育成就労計画、技能と日本語の試験の履歴、転籍の要件判定、外部機関とのやり取りの記録という四つを持つ構造が必要になること。第三に、分野ごとの日本語能力の水準や転籍の要件は運用の方針で定まるため、判定をコードに書き込まず設定として持てる形にしておくべきことです。まずは自社の業務が17分野のどれに当たるかを整理し、試験と期限を持てる台帳の構造から着手するのが堅実でしょう。
よくある質問
在留資格と在留期限を持っていれば足りますか。
足りません。育成就労制度では、個人ごとに作成する育成就労計画が認定制となり、期間と技能・日本語の目標、内容が記載されます。加えて技能と日本語の試験が段階を追って複数回関わり、本人意向による転籍にも要件が置かれます。これらを記録として持てる構造が必要になります。
試験の情報はどう持つべきですか。
「種類×水準×受験日×結果」の記録として持ち、そこから現在の段階を導く形が素直です。就労開始までの日本語能力の水準、転籍の条件となる技能検定基礎級等と日本語能力の水準など、段階ごとに求められるものが違い、日本語の水準は分野ごとに設定されるためです。単一の合否項目では表せません。
転籍が認められると、システムに何が要りますか。
要件を満たしたかを判定できる状態、他社から転籍してくる人の計画や試験の履歴を同じ構造で受け入れられること、送り出す人について育成の進捗を示せる記録、そして要員計画への反映です。人数が増えるほど、人が台帳を見て判断する運用では回らなくなります。
いま着手できることは何ですか。
自社の業務が育成就労産業分野の17分野のどれに当たるかの整理、現在受け入れている技能実習生の人数と計画の期限の把握、そして試験の記録と期限の一覧を持てる台帳の構造づくりです。いずれも制度の細部が固まる前に進められ、既存制度の運用にも役に立ちます。
分野ごとの要件が変わったら作り直しになりますか。
判定の条件をコードに書き込んでいると、そのたびに開発が必要になります。分野ごとの日本語能力の水準や転籍の要件は運用の方針で定まる部分があるため、条件を設定として管理できる形にしておくのが得です。設計の初期に決めておきたい点です。
外国人雇用管理の仕組みづくりはLASSICへ
元請(プライムベンダー)として、試験と資格の履歴設計から期限の一覧化、判定を設定で表す作り、閲覧範囲の設計までご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
出典
- *1 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)(https://www.moj.go.jp/isa/content/001452485.pdf)。改正法の公布日、運用開始日、制度の目的、基本方針・分野別運用方針、監理支援機関の許可制、育成就労計画の認定制、転籍、技能と日本語の水準の一次情報として(2026年8月確認)
- *2 参考:出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」(https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html)。改正法の公布日・施行日および育成就労産業分野の一覧の確認として(2026年8月確認)